みらい(新人医療事務)
先生、レセプトを見ていたら「採卵加算」って項目があったんですけど、これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
採卵加算は、不妊治療の一環として行う「採卵術」に対して、採取できた卵子の数に応じて上乗せされる加算です。令和8年度(2026年度)の医科点数表では、区分番号K890-4「採卵術」の注として規定されています。
みらい(新人医療事務)
卵子の数によって点数が変わるんですね。ということは、採卵術そのものの点数とは別枠なんですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。採卵術の所定点数は3,200点で、そこに採取された卵子の数に応じた加算が上乗せされる仕組みです。厚生労働省の告示ではこう書かれています。
厚生労働省告示(令和8年度)の記載
「K890-4 採卵術 3,200点 注 採取された卵子の数に応じて、次に掲げる点数をそれぞれ1回につき所定点数に加算する。イ 1個の場合 2,400点 ロ 2個から5個までの場合 3,600点 ハ 6個から9個までの場合 5,500点 ニ 10個以上の場合 7,200点」
みらい(新人医療事務)
つまり、採卵術本体の3,200点に加えて、卵子の数に応じた加算点数がプラスされるということですね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。加算は必ずイ〜ニのいずれか1区分だけを算定する形になっていて、複数区分をまとめて算定することはありません。
対象患者・実施要件
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんが対象になるんですか? 不妊治療なら誰でも対象になるんでしょうか。
あおい(元・医療事務)
対象は限定されています。厚生労働省の留意事項通知では、採卵術は不妊症の患者またはそのパートナーが次のいずれかに該当する場合であって、治療計画に従って実施した場合に算定するとされています。
対象となる患者の状態(留意事項通知より)
「採卵術は、不妊症の患者又はそのパートナーが次のいずれかに該当する場合であって、当該患者及びそのパートナーから採取した卵子及び精子を用いて、受精卵を作成することを目的として治療計画に従って実施した場合に算定する。その際、いずれの状態に該当するかを診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。ア 卵管性不妊 イ 男性不妊(閉塞性無精子症等) ウ 機能性不妊 エ 人工授精等の一般不妊治療が無効であった場合」
みらい(新人医療事務)
「摘要欄に記載」というのがポイントですね。当てはまる状態を書き忘れると差し戻しになりそうです。
あおい(元・医療事務)
そうですね。摘要欄への記載は算定の前提になっているので、レセプト作成時に必ず確認したい項目です。あわせて、実施前に排卵誘発を目的として使った薬剤の費用は別に算定できるとされています。治療方針についても、関係学会のガイドライン等を踏まえて適切に検討し、患者から文書による同意を得たうえで実施し、その同意文書を診療録に添付することが求められています。
みらい(新人医療事務)
文書同意と診療録への添付は必須なんですね。うっかり口頭同意だけで済ませていたら候補にならないということですか?
あおい(元・医療事務)
少なくとも、留意事項通知の記載どおりに運用されているかどうかは確認が必要です。文書同意の有無は算定候補かどうかを左右する重要な確認ポイントになります。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数区分をもう一度、表で整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
はい。採卵術本体と、採卵加算の4区分をまとめるとこうなります。
| 区分 | 採取された卵子の数 | 点数 | 医科診療行為マスターコード |
|---|---|---|---|
| (採卵術・本体) | - | 3,200点 | - |
| イ | 1個の場合 | 2,400点 | 150432170 |
| ロ | 2個から5個までの場合 | 3,600点 | 150432270 |
| ハ | 6個から9個までの場合 | 5,500点 | 150432370 |
| ニ | 10個以上の場合 | 7,200点 | 150432470 |

みらい(新人医療事務)
コードまで書いてあると、レセプトソフトで探すときに助かります。
あおい(元・医療事務)
医科診療行為マスターに登録されているコードと、告示の点数区分(イ〜ニ)を突き合わせて確認しています。採取個数の数え間違いがそのまま点数の間違いにつながるので、カルテの記録と摘要欄の記載を照らし合わせて確認するのが基本です。
算定にあたっての注意点(回数の考え方)
みらい(新人医療事務)
1回の治療で何度も採卵することってあるんですか? その場合、加算はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
実は同一の月経周期内に複数回採卵することもあります。この点については、厚生労働省の疑義解釈(令和4年度)で考え方が示されています。
回数の考え方(厚生労働省 疑義解釈資料 令和4年度)
「一の月経周期内において、①同一日に2回採卵を実施した場合 ②発育度合いが異なる卵胞について、初回の採卵の1週間後に2回目の採卵を実施した場合のそれぞれについて採卵術の算定方法如何。」という問いに対し、「①及び②のいずれの場合においても、一の月経周期ごとに1回に限り算定可。なお、同一月経周期内において採卵を複数回実施した場合における採取された卵子の数に応じた加算については、当該月経周期内において採取された卵子の合計の個数に応じて加算する。」と回答されています。
みらい(新人医療事務)
なるほど、採卵術そのものは月経周期ごとに1回しか算定できないけれど、加算区分は「その周期内で採れた卵子の合計数」で決まるということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。同じ月経周期内で複数回採卵しても、採卵術は1回分しか算定できません。その代わり、加算区分を判定するときの卵子数は周期内の合計で数える、という2段構えのルールです。この疑義解釈は令和4年度に示されたもので、当サイトが確認できた一次資料の範囲では、令和8年度時点でも同じ考え方が前提になっています。カルテに周期の開始日・採卵実施日ごとの採取個数を記録しておくと、後から加算区分を確認しやすくなります。
みらい(新人医療事務)
月経周期の区切り方自体もあいまいだと迷いそうです。
あおい(元・医療事務)
そこも疑義解釈で補足されています。「採卵術における『月経周期』とは、採卵を予定する直近の月経開始日から次の月経または破綻出血が起こるまでの期間」とされているので、カルテにこの起点を明記しておくと、複数回採卵があったときの合算範囲を判断しやすくなります。
生殖補助医療管理料との関係
みらい(新人医療事務)
採卵術は単独で算定するものなんですか? それとも他の管理料とセットになるんですか?
あおい(元・医療事務)
採卵術を含む一連の生殖補助医療は、区分番号B001の33「生殖補助医療管理料」による計画的な医学管理とセットで行われるのが基本です。この管理料には年齢要件があります。
生殖補助医療管理料の対象(留意事項通知より)
「生殖補助医療管理料は、入院中の患者以外の不妊症の患者であって、生殖補助医療を実施しているもの(実施するための準備をしている者を含み、当該患者又はそのパートナー(当該患者と共に不妊症と診断された者をいう。以下この区分において同じ。)のうち女性の年齢が当該生殖補助医療の開始日において43歳未満である場合に限る。)に対して、当該患者の同意を得て、計画的な医学管理を継続して行い、かつ、療養上必要な指導を行った場合に、月に1回に限り算定する。」
みらい(新人医療事務)
女性の年齢が43歳未満というのが条件なんですね。年齢を超えていたら、採卵加算自体も算定候補ではなくなるということですか?
あおい(元・医療事務)
年齢要件は生殖補助医療管理料の算定条件として示されているものです。採卵術・採卵加算そのものの算定要件とは区分番号が異なるので、両者を混同せずに、それぞれの要件を個別に確認する必要があります。自院での運用がどちらの整理になっているかは、診療録・治療計画書と突き合わせて確認するのが確実です。
みらい(新人医療事務)
施設側の届出は必要なんですか? 「施設基準の届出」ってよく聞きますが。
あおい(元・医療事務)
採卵術・採卵加算について、届出を明記した一次資料は、当サイトが確認できた範囲では見当たりませんでした。生殖補助医療は治療計画の作成・文書同意・診療録への添付といった運用面の要件が中心になっているため、届出の要否も含めて、算定前に地方厚生局や公式資料で個別に確認することをおすすめします。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、点数や要件は変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できた一次資料(告示・留意事項通知)の範囲では、採卵加算の点数区分(2,400点・3,600点・5,500点・7,200点の4区分)や、対象患者の考え方について、前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません(確認日: 2026年8月)。
改定の位置づけ
生殖補助医療(不妊治療)は令和4年度に保険適用が始まった比較的新しい枠組みです。採卵術・採卵加算はその中の1項目として、令和8年度時点でも同じ点数区分が維持されています。
みらい(新人医療事務)
制度自体は新しいけれど、点数の枠組みは安定しているんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし、改定のたびに疑義解釈が追加されることもあるので、実際に算定する際は最新の一次資料を確認する姿勢が大切です。

自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
では、実際にうちの医院で算定候補になるかを確認するには、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認するとわかりやすいですよ。
自院で確認する順番
- 対象患者が卵管性不妊・男性不妊(閉塞性無精子症等)・機能性不妊・一般不妊治療が無効であったケースのいずれかに該当するか確認する
- 治療計画を作成し、患者から文書による同意を得て、同意文書を診療録に添付しているか確認する
- 採卵術を実施した月経周期を特定し、その周期内での採卵回数・採取卵子の合計数を記録する
- 摘要欄に、該当する不妊の状態と、採取された卵子の合計数に応じた加算区分を記載する
- 生殖補助医療管理料など、あわせて算定する管理料の年齢要件・算定回数を別途確認する
みらい(新人医療事務)
この順番なら、レセプト担当としても迷わず確認できそうです。
よくある取り漏れ
あおい(元・医療事務)
実務でありがちな取り漏れも紹介しておきますね。
よくある確認漏れ
摘要欄の状態記載漏れ: 卵管性不妊・男性不妊・機能性不妊・一般不妊治療無効のうち、どれに該当するかの記載が抜けているケース。 同一周期内の合算漏れ: 同じ月経周期内で複数回採卵した場合、加算区分の判定を1回ごとの個数で計算してしまい、周期内合計での判定を見落とすケース。 同意文書の添付漏れ: 口頭同意のみで、文書同意・診療録への添付が確認できないケース。
みらい(新人医療事務)
どれも「記録があるかどうか」がポイントなんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。点数区分自体はシンプルですが、摘要欄の記載と診療録の記録が算定候補かどうかを左右します。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、よく聞かれそうな質問をまとめてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
いいですよ。一緒に整理しましょう。
みらい(新人医療事務)
採卵ができなかった、つまり卵子が0個だった場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
加算の区分(イ〜ニ)は「1個の場合」から始まっているため、採取できた卵子が0個のケースが加算の対象になるかどうかは、当サイトが確認できた一次資料の範囲では明記が見当たりません。採卵術本体の算定可否とあわせて、個別に確認が必要な論点です。
みらい(新人医療事務)
採卵加算だけを単独で算定することはできますか?
あおい(元・医療事務)
採卵加算は採卵術に対する「注」の加算として規定されているため、採卵術の算定と切り離して単独で算定するものではありません。
みらい(新人医療事務)
排卵誘発剤の費用は加算に含まれているんですか?
あおい(元・医療事務)
含まれていません。留意事項通知では、採卵術の実施前に排卵誘発を目的として用いた薬剤の費用は別に算定できるとされています。
参考にした公式資料
みらい(新人医療事務)
今日の内容の元になった公式資料も教えてください。
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)時点で確認できた一次情報は次のとおりです。
| 資料 | URL | 内容 |
|---|---|---|
| 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示) | https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf | K890-4 採卵術の点数・注(採卵加算4区分) |
| 疑義解釈資料の送付について(その1)不妊関連Q&A(令和4年度・事務連絡) | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21053.html | 採卵術の算定要件・月経周期ごとの回数の考え方 |
あおい(元・医療事務)
なお、対象患者の要件や生殖補助医療管理料との関係を示した留意事項通知(保医発)は、当サイトが参照した公式PDFのリンクが変更・失効しており、本文には掲載していません。最新の通知番号は厚生労働省のWebサイトで確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。対象患者の状態や治療計画の作成状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。