妊産婦緊急搬送入院加算とは?まず基本を教えてください
みらい(新人医療事務)
あおいさん、「妊産婦緊急搬送入院加算」っていう名前を初めて見たんですけど、これはどういう加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)現在の診療報酬で、区分A205-3として設定されている入院基本料等加算です。産科または産婦人科を標榜する病院が、母体や胎児の状態から緊急入院が必要な妊産婦を、救急搬送などで受け入れて入院させた場合に、入院初日に限り7,000点が加算される仕組みです。
みらい(新人医療事務)
病院限定なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、対象は病院です。診療所は対象になっていません。また、入院基本料等加算という位置づけなので、通常の入院基本料(特別入院基本料等を除く)や、対象となる特定入院料を現に算定している患者についてのみ加算されます。
みらい(新人医療事務)
「緊急搬送」というのは、救急車で運ばれてきた場合だけを指すんですか?
あおい(元・医療事務)
そこがポイントです。告示の注では、次の3つのケースが対象として挙げられています。
対象となる緊急搬送の3つのケース(令和8年度)
ア 救急搬送のケース: 妊娠に係る異常またはその他入院医療を必要とする異常が疑われ、救急車等により当該保険医療機関に緊急搬送された場合
イ 転院搬送のケース: 他の医療機関において妊娠に係る異常またはその他入院医療を必要とする異常が認められ、当該保険医療機関に緊急搬送された場合
ウ 助産所からの搬送のケース: 助産所において妊娠に係る異常またはその他入院医療を必要とする異常が疑われ、当該保険医療機関に緊急搬送された場合
みらい(新人医療事務)
救急車だけじゃなく、他院や助産所からの搬送も対象になるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。「入院医療を必要とする異常」であればよいので、妊娠そのものに関する異常に限らず、他の疾患で緊急入院が必要になったケースも含まれます。この加算の対象範囲を理解する最初のポイントです。
対象医療機関・対象患者を確認したい
みらい(新人医療事務)
うちの病院が対象になるか、まず何を確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
大きく2つの軸で確認します。1つは医療機関の要件、もう1つは患者の状態です。
| 確認軸 | 内容 |
|---|---|
| 医療機関 | 病院(産科または産婦人科を標榜) |
| 病棟・診療科 | 産科・産婦人科への入院に限らず、他科入院でも算定候補になり得る |
| 患者 | 母体または胎児の状態により緊急入院の必要がある妊産婦(産褥婦を含む) |
| 算定タイミング | 入院初日に限り1回 |
みらい(新人医療事務)
「他科入院でも算定候補になり得る」というのはどういうことですか?産科の病棟じゃなくてもいいんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。告示の留意事項では「緊急搬送された妊産婦が妊娠に係る異常以外の入院医療を必要とする異常が疑われる場合においては、当該保険医療機関において産科又は産婦人科の医師と当該異常に係る診療科の医師が協力して妊産婦の緊急搬送に対応することを評価するものであり、産科又は産婦人科以外の診療科への入院の場合においても算定できる」と説明されています。つまり、産科・産婦人科の医師と他科の医師が連携して対応したケースを想定した加算なんです。
みらい(新人医療事務)
なるほど、産科病棟に入院しなくても対象になり得るんですね。うちは対象外だと思い込んでいる病院もありそうです。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし、あくまで「産科または産婦人科の医師が関わって対応した」ことが前提です。単に妊産婦が別の診療科に緊急入院しただけで自動的に算定候補になるわけではない点は確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
「妊産婦」には出産後の方も含まれますか?
あおい(元・医療事務)
含まれます。告示の留意事項に「妊産婦とは産褥婦を含む」と明記されています。妊娠中の方だけでなく、出産後間もない産褥婦も対象になり得ます。
点数・算定コードの確認(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
具体的な点数とコードを整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)時点の内容はこちらの表の通りです。
| 区分番号 | 加算名 | 点数 | 算定単位 | 対象 |
|---|---|---|---|---|
| A205-3 | 妊産婦緊急搬送入院加算 | 7,000点 | 入院初日に限り1回 | 病院(産科・産婦人科標榜) |

みらい(新人医療事務)
入院初日だけなんですね。入院が長引いた場合も、初日以外は加算されないんですか?
あおい(元・医療事務)
その通りです。「入院初日に限り所定点数に加算する」と告示に明記されていますので、2日目以降の入院料には加算されません。
みらい(新人医療事務)
逆に、除外されるケースもあるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
あります。告示の注には「当該妊娠及び入院医療を必要とする異常の原因疾患につき、直近3か月以内に当該加算を算定する保険医療機関への受診歴のある患者が緊急搬送された場合を除く」という除外規定があります。つまり、同じ原因疾患で直近3か月以内にその病院を受診していた妊産婦が搬送された場合は、算定の対象から外れます。
みらい(新人医療事務)
「受診歴」って、健診とかも含まれるんですか?
あおい(元・医療事務)
含まれます。告示の留意事項では「受診歴とは妊婦健診及び往診等による受診を含む」とされています。ただし、当該病院が助産所の嘱託医療機関である場合、または当該病院の保険医が助産所の嘱託医である場合は、嘱託医療機関・嘱託医として実施した妊婦健診は受診歴に含まないという整理になっています。この場合は嘱託医療機関であること、または嘱託医の氏名を診療録に記載する必要があります。
施設基準を詳しく確認したい
みらい(新人医療事務)
施設基準はどうなっているんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準の届出通知(令和8年3月5日 保医発0305第7号)の「第3の2 妊産婦緊急搬送入院加算」に、3つの基準が示されています。
妊産婦緊急搬送入院加算の施設基準(令和8年度)
(1) 標榜科の要件: 産科または産婦人科を標榜している保険医療機関であること
(2) 医師配置の要件: 妊産婦である患者の受診時に、緊急の分娩について十分な経験を有する専ら産科または産婦人科に従事する医師が配置されており、その他緊急の分娩に対応できる十分な体制がとられていること
(3) 設備の要件: 妊産婦である患者の受診時に、緊急に使用可能な分娩設備等を有しており、緊急の分娩にも対応できる十分な設備を有していること
みらい(新人医療事務)
3つとも満たさないと、施設基準を満たしていることにはならないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。特に(2)の「専ら産科又は産婦人科に従事する医師」という表現は、他科と兼任の当直体制だけでは基準を満たすとは言い切れない可能性があるため、確認が必要なポイントです。
みらい(新人医療事務)
この施設基準は、地方厚生局への届出が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
ここが他の多くの加算と違うところです。同じ通知の「届出に関する事項」に「妊産婦緊急搬送入院加算の施設基準に係る取扱いについては、当該基準を満たしていればよく、特に地方厚生(支)局長に対して、届出を行う必要はないこと」と明記されています。つまり、施設基準は満たす必要がありますが、この加算専用の届出書を地方厚生局に提出する手続きは求められていません。
みらい(新人医療事務)
届出がいらないなら、何もしなくていいってことですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そこは誤解しやすいポイントです。届出手続きが不要というだけで、施設基準そのものは常に満たしている必要があります。院内で医師配置や設備の状況を記録・確認しておく体制は必要です。「届出不要=確認不要」ではありませんので、自院の体制が3つの基準に本当に該当するかどうかは、公式資料に照らして確認することをおすすめします。
届出不要でも確認が必要な理由
届出手続きが不要な加算であっても、施設基準を満たしていない状態で算定すると、後日の審査で過誤とされる可能性があります。医師の配置状況や分娩対応設備について、院内で定期的に確認する体制を持つことが望ましいです。
改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
気になるところですよね。今回の記事作成にあたっては、令和8年度の公式資料(告示・留意事項通知・施設基準通知)を確認していますが、前回改定(令和6年度)時点の同一資料までは今回のカグヤ一次情報の収集範囲に含まれていません。そのため、点数・施設基準・算定要件について、前回改定からの変更点は確認できていません。
改定差分の確認状況(2026年7月時点)
確認できたこと: 令和8年度時点で、区分A205-3 妊産婦緊急搬送入院加算は7,000点・入院初日限り・施設基準あり(届出不要)という内容で告示・通知に規定されている
確認できていないこと: 前回改定(令和6年度)時点の点数・施設基準との比較(一次資料の追加確認が必要)
みらい(新人医療事務)
つまり「変わっていない」と決めつけるのはよくないってことですね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。前回改定との比較については、令和6年度の公式資料が確認でき次第、この記事も更新する予定です。現時点では「令和8年度の内容として確認できる範囲」の情報としてご覧ください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちの病院がこの加算の算定候補になるか、どういう順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
こんな順番で確認するとスムーズです。
自院で確認する順番
-
病院であるか確認 — 妊産婦緊急搬送入院加算は病院が対象です。診療所は対象外です
-
産科または産婦人科を標榜しているか確認 — 施設基準(1)の要件です
-
緊急の分娩に対応できる医師配置を確認 — 専ら産科または産婦人科に従事し、緊急の分娩について十分な経験を有する医師が配置されているか(施設基準(2))
-
緊急時の分娩設備を確認 — 緊急に使用可能な分娩設備等を有しているか(施設基準(3))
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搬送のルートを確認 — 救急搬送・他院からの搬送・助産所からの搬送のいずれかに該当するか
-
直近3か月の受診歴を確認 — 同一原因疾患について、直近3か月以内に自院への受診歴(妊婦健診・往診等を含む)がある患者ではないか
-
入院基本料等の算定状況を確認 — 対象となる入院基本料または特定入院料を現に算定している患者か、入院初日であるか

みらい(新人医療事務)
これだけ確認することがあると、自分たちだけで判断するのは大変そうです。
あおい(元・医療事務)
そんなときは、加算チェッカーを使うと確認の見通しが立てやすくなります。自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。
算定上の注意点・よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
実務上、間違えやすいポイントはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。特に注意したいのはこちらです。
算定上の注意点
- 入院初日限定です。入院2日目以降には加算されません
- 直近3か月の受診歴がある場合は除外されます。同一の原因疾患で自院を受診していた患者が搬送された場合は対象外になり得ます
- 届出は不要ですが、施設基準の充足は常に必要です。届出手続きがないことと、基準を満たしているかどうかの確認は別問題です
- 対象となる入院基本料・特定入院料を現に算定している患者に限られます。すべての入院患者に自動的に算定できるわけではありません
- 産科・産婦人科以外への入院でも算定候補になり得ますが、産科または産婦人科の医師の関与が前提です
よくある取り漏れポイント
- 産科病棟以外に入院したケースを「対象外」と思い込んで確認していないケース
- 助産所からの搬送を見落とし、救急車搬送のみを対象と考えているケース
- 直近3か月の受診歴の有無(妊婦健診・往診を含む)を確認せずに算定しているケース
- 施設基準を満たしているかどうかを、医師配置・設備の両面から定期的に確認していないケース
- 産褥婦(出産後の患者)も対象になり得ることを把握していないケース
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後によくある疑問も聞いておきたいです。診療所でも、産科を標榜していれば対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、対象は病院に限られます。診療所は産科・産婦人科を標榜していても、この加算の対象にはなりません。
みらい(新人医療事務)
救急車ではなく、家族の車で搬送された場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
告示の要件は「救急車等により」という表現になっており、緊急搬送の実態として救急用の自動車等に相当するかどうかがポイントになります。個別のケースについては、自院の記録と公式資料を照らし合わせて確認が必要です。この記事だけで断定はできません。
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たしていることは、どうやって証明すればいいんですか?届出がいらないなら書類は何もいらないんですか?
あおい(元・医療事務)
届出書の提出は不要とされていますが、医師の配置状況や設備の整備状況について、院内で確認できる記録(勤務体制表や設備台帳など)を整えておくことが望ましいです。審査支払機関から確認を求められた際に、施設基準を満たしていることを示せる状態にしておくことをおすすめします。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省の公式資料を根拠としています。詳細な算定要件・施設基準は、必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号・区分A205-3) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号・A205-3関連部分) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html(令和8年度診療報酬改定について・厚生労働省。個別PDFのリンク変更に伴い改定ページに差し替え)
- 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第7号・第3の2 妊産婦緊急搬送入院加算) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html(令和8年度診療報酬改定について・厚生労働省。個別PDFのリンク変更に伴い改定ページに差し替え)
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。