みらい(新人医療事務)
先輩、入院患者さんの感染症対応で「特定感染症入院医療管理加算」っていう名前を見かけたんですけど、これってどんな加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)の区分A209ですね。感染症法で特に注意が必要とされている感染症の患者さんや、その疑いがある患者さんに対して、きちんとした感染防止対策をとりながら入院医療を提供した場合に算定候補になる加算です。
みらい(新人医療事務)
「特に注意が必要」というのは、具体的にどういう感染症なんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示・留意事項では、感染症法第6条第4項〜第6項に規定される三類・四類・五類感染症、同条第8項の指定感染症、そして「他者に感染させた場合に重症になるおそれがある感染症」やその疑似症患者のうち、感染対策が特に必要なものが対象と整理されています。狂犬病や鳥インフルエンザ、エムポックス、麻しん、新型コロナウイルス感染症、MRSA感染症など、幅広い感染症が具体的に列挙されています。
対象医療機関と対象患者
みらい(新人医療事務)
まず、うちみたいな診療所でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、この加算は入院基本料等加算(A章)の一つなので、病院の入院患者が対象です。診療所や外来、在宅では対象になりません。当サイトのデータでも、対象医療機関は「病院」、対象は「入院」に限定されています。
みらい(新人医療事務)
病院の中でも、特定の病棟だけが対象なんですか?
あおい(元・医療事務)
病棟の指定というより、「対象となる感染症の患者・疑似症患者であって、他者に感染させるおそれがあると医学的に認められる患者」に、標準予防策に加えて空気感染対策・飛沫感染対策・接触感染対策など感染経路の性質に応じた対策を講じて入院医療を提供したかどうかがポイントです。単に感染症の病名がついているだけでなく、実際にそうした感染対策を実施していることが前提になります。
対象となる感染症の例(一次資料より抜粋)
狂犬病 / 鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く) / エムポックス / 重症熱性血小板減少症候群(SFTSウイルスによるもの) / 腎症候性出血熱 / ニパウイルス感染症 / ハンタウイルス肺症候群 / ヘンドラウイルス感染症 / インフルエンザ(鳥・新型インフルエンザ等感染症を除く) / 後天性免疫不全症候群(ニューモシスチス肺炎に限る) / 麻しん / メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA) / RSウイルス感染症 / カルバペネム耐性腸内細菌目細菌感染症(CRE) / 感染性胃腸炎(ノロウイルスによるもの) / 急性弛緩性麻痺(エンテロウイルスによるもの) / 新型コロナウイルス感染症 / 侵襲性髄膜炎菌感染症 / 水痘 / 先天性風しん症候群 / バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症(VRSA) / バンコマイシン耐性腸球菌感染症(VRE) / 百日咳 / 風しん / ペニシリン耐性肺炎球菌感染症 / 無菌性髄膜炎(パルボウイルスB19によるもの) / 薬剤耐性アシネトバクター感染症 / 薬剤耐性緑膿菌感染症 / 流行性耳下腺炎 / 感染症法第6条第8項の指定感染症 / クロストリジオイデス・ディフィシル感染症 / 基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌感染症(ESBL)
これらは令和8年度の留意事項通知に列挙された対象疾患です。完全な原文はご自身でも一次資料を確認してください。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
肝心の点数はどうなっていますか?区分がいくつかあるって聞いたことがあるんですけど。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の告示(区分A209)では、「治療室の場合」と「それ以外の場合」の2区分です。1日につきの点数として、次のように整理されています。
| 区分 | 点数(1日につき) |
|---|---|
| 治療室の場合 | 200点 |
| それ以外の場合 | 100点 |

みらい(新人医療事務)
「治療室」というのは、ICUみたいな場所のことですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の区分見出しでは「治療室の場合」「それ以外の場合」としか書かれていないので、どの病室・治療室が「治療室」に該当するかは、施設基準や算定の実務上の取り扱いを個別に確認したほうが確実です。断定はせず、自院のレセプト担当や地方厚生局への確認をおすすめします。
算定できる日数と期間の考え方
みらい(新人医療事務)
この加算、入院中はずっと算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、1入院に限り7日を限度というのが基本のルールです。ただし例外もあって、当該感染症を他の患者に感染させるおそれが高いことが明らかで、感染対策の必要性が特に認められる患者については、この7日の上限から除かれます。また、疑似症患者については初日に限り所定点数に加算する、という取り扱いです。
7日を超えて算定候補になる場合の記録
留意事項では、特定感染症入院医療管理加算を算定した日から起算して7日目以降も、患者から排出される検体から感染性を有する病原体が現に検出されており、他の患者への感染の危険性が特に高いと医学的に認められる患者については、継続の対象となり得るとされています。この場合は、当該検体検査の結果および感染の危険性が特に高いと判断した根拠を、診療報酬明細書の摘要欄に記載する必要があります。
みらい(新人医療事務)
摘要欄への記載も必須なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。留意事項では「当該患者に係る感染症について、診療報酬明細書の摘要欄に記載すること」と明記されています。感染症名の記載は必須事項として押さえておきたいポイントです。
分離・同定検査が必要な感染症に注意
みらい(新人医療事務)
どの感染症でも、疑いがあれば算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
一部の感染症については、もう一段階確認が必要です。留意事項では、MRSA感染症・CRE・VRSA・VRE・ペニシリン耐性肺炎球菌感染症・薬剤耐性アシネトバクター感染症・薬剤耐性緑膿菌感染症・クロストリジオイデス・ディフィシル感染症・ESBL産生腸内細菌目細菌感染症については、「症状や所見から当該感染症が疑われ、分離・同定による当該細菌の検出および薬剤耐性の確認を行い当該感染症と診断した場合に対象となり、単なる保菌者は対象とならない」とされています。
みらい(新人医療事務)
つまり、菌を持っているだけでは対象にならないってことですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。検査で分離・同定と薬剤耐性の確認がされて初めて対象になる、という整理なので、カルテや検査結果の記録が重要になります。
施設基準・届出の考え方
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するには、事前に届出が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトのデータでは、特定感染症入院医療管理加算そのものについて、独自の施設基準の届出は求められていない区分として整理されています。他の入院基本料等加算に見られるような施設基準届出の様式も、一次資料の中では確認できていません。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、何も確認しなくていいってことですか?
あおい(元・医療事務)
そこは慎重に考えたいところです。この加算は入院基本料等加算(A章)の枠組みの中にあり、算定の前提となる入院基本料自体が地方厚生局長等への届出済みの病棟・病室であることが必要です。加算固有の届出はなくても、ベースとなる入院基本料の届出状況は必ず確認してください。最終的には自院の届出状況・地方厚生局への確認をおすすめします。
併算定の注意点
みらい(新人医療事務)
他の加算と一緒に算定することはできますか?
あおい(元・医療事務)
一次資料では、「特定感染症入院医療管理加算は、難病等特別入院診療加算と併せて算定できない」と明記されています。両方の対象になりそうな患者さんの場合は、どちらを算定するか整理しておく必要があります。
断定はできません
ここで紹介した点数・算定要件・併算定の可否は令和8年度の一次資料に基づく整理です。個別の患者・診療内容によって当てはまるかどうかは変わるため、「算定できます」と断定するものではありません。自院での確認が前提になります。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
特定感染症入院医療管理加算の対象疾患リストには、新型コロナウイルス感染症やエムポックスのように、比較的新しく指定された感染症も含まれています。ただ、当サイトが参照している一次資料(令和8年度の告示・留意事項)の範囲では、令和6年度からの点数・算定要件・対象疾患の変更点を直接比較できる「個別改定項目について」等の差分資料までは確認できていません(確認日: 2026年7月)。
みらい(新人医療事務)
つまり、変わったかどうかはまだ分からない、ということですね。
あおい(元・医療事務)
はい、正確に言うとそうなります。前回改定(令和6年度)との比較が必要な場合は、厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定について」のページで、個別改定項目の資料を直接確認することをおすすめします。当サイトでも確認でき次第、この記事に反映します。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
自院でこの加算が算定候補になるか、どういう順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
だいたいこの順番で見ていくとスムーズです。
自院で確認する順番
- 入院患者が対象疾患リストに該当する感染症・疑似症患者かを確認する
- 標準予防策に加え、感染経路に応じた感染防止対策(空気感染・飛沫感染・接触感染対策など)を実施しているかを確認する
- 分離・同定検査が必要な感染症については、検査で確認済みかをカルテで確認する
- 診療報酬明細書の摘要欄に感染症名(および7日超の場合は検査結果・判断根拠)を記載する
- 難病等特別入院診療加算との重複がないかを確認する
- 入院基本料の届出状況など、算定の前提条件を自院の届出台帳で確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなパターンがありますか?
あおい(元・医療事務)
よく聞くのはこのあたりです。
取り漏れが起きやすいポイント
摘要欄の記載漏れ: 感染症名の記載を忘れると、算定要件を満たしていても審査で疑義が生じることがあります。
保菌者との混同: 分離・同定検査が必要な感染症(MRSA・CRE等)について、検査確認前の保菌の疑いだけで算定候補と判断してしまうケースです。
7日超の記録不足: 7日を超えて算定候補になり得るケースで、検体検査の結果や判断根拠の記載が不足しているケースです。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、みんなが気になりそうな質問をまとめてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
いいですね。順番に答えていきます。
みらい(新人医療事務)
疑似症患者でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
はい、疑似症患者も対象に含まれていますが、初日に限り所定点数に加算する、という取り扱いです。継続的な算定にはならない点に注意してください。
みらい(新人医療事務)
治療室に入っていない一般病棟の患者でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
「それ以外の場合」の100点区分として算定候補になり得ます。ただし、対象疾患・感染対策の実施・摘要欄記載などの要件を満たしているかは別途確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
前回改定(令和6年度)から点数は変わりましたか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できている一次資料の範囲では、令和6年度時点との点数比較資料までは確認できていません。正確な比較が必要な場合は、厚生労働省の公式資料で確認することをおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する感染対策系の加算として、外来向けの外来感染対策向上加算もあわせて確認しておくと理解が深まります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。