みらい(新人医療事務)
部長、「難病等特別入院診療加算」って区分を見つけたんですけど、これってうちの病院で算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
区分でいうとA210ですね。入院基本料に上乗せする「入院基本料等加算」の一つです。まず大事な前提として、この加算は病院の入院患者にしか算定できません。診療所や外来には対象がない加算です。
みらい(新人医療事務)
病院限定なんですね。うちは病院なので、入院患者さんがいれば誰でも対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
いえ、誰でもではありません。この加算には実は2つの種類があって、それぞれ対象患者がまったく違うんです。まずはそこから整理しましょう。
難病等特別入院診療加算とは何か
みらい(新人医療事務)
「等」がついているので、難病の患者さんだけじゃないんですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。区分A210の「難病等特別入院診療加算」には、①難病患者等入院診療加算と②二類感染症患者入院診療加算の2つが含まれています。令和8年度の告示(区分A210)では「A210 難病等特別入院診療加算(1日につき) 1 難病患者等入院診療加算 250点 2 二類感染症患者入院診療加算 250点」と定められています。
みらい(新人医療事務)
2つとも250点で同じなんですね。じゃあ対象患者はどう違うんですか?
あおい(元・医療事務)
告示の注に書かれている定義を見ると、性格がかなり違うのがわかります。まず①難病患者等入院診療加算は、告示の注1で「難病患者等入院診療加算は、別に厚生労働大臣が定める疾患を主病として保険医療機関に入院している患者であって、別に厚生労働大臣が定める状態にあるもの(第1節の入院基本料(特別入院基本料等を含む。)又は第3節の特定入院料のうち、難病等特別入院診療加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)について、所定点数に加算する」と定義されています。
みらい(新人医療事務)
「別に厚生労働大臣が定める疾患」「別に厚生労働大臣が定める状態」って、具体的にはどこを見ればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
そこがこの加算の一番の確認ポイントです。対象疾患・対象状態は本文の告示ではなく別の告示(対象疾患等の一覧)で個別に列挙されています。私たちが確認できた一次資料の範囲では、この一覧の疾患名までは掲載を確認できていません。**自院の対象患者が該当するかは、地方厚生局や告示の別表原文で個別に確認する必要があります。**この点は断定せず、必ず確認という前提で進めましょう。
みらい(新人医療事務)
なるほど、名前だけ見て「難病だから対象」と決めつけちゃダメなんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。「主病として入院している」かつ「厚労大臣が定める状態」の両方を満たし、さらに入院基本料または特定入院料の側でもこの加算を算定できる病棟・病室であることが条件になります。3つの条件がすべて揃って初めて算定候補になる、という理解が安全です。
対象患者② 二類感染症患者入院診療加算
みらい(新人医療事務)
もう一つの二類感染症患者入院診療加算のほうは、もっとイメージしやすそうです。
あおい(元・医療事務)
こちらは対象がかなり限定されています。告示の注2では「二類感染症患者入院診療加算は、感染症法第6条第15項に規定する第二種感染症指定医療機関である保険医療機関に入院している同条第3項に規定する二類感染症の患者及び同条第7項に規定する新型インフルエンザ等感染症の患者並びにそれらの疑似症患者(第1節の入院基本料(特別入院基本料等を含む。)又は第3節の特定入院料のうち、難病等特別入院診療加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)について、所定点数に加算する」と定められています。
みらい(新人医療事務)
「第二種感染症指定医療機関」という指定を受けている病院じゃないと、そもそも対象にならないってことですね。
あおい(元・医療事務)
はい。まずこの指定を自院が受けているかどうかが最初の分かれ道です。指定を受けていない病院は、感染症法上の二類感染症の患者を入院させていたとしても、この加算のほうは算定候補になりません。指定の有無は都道府県・保健所の指定状況で確認できます。
みらい(新人医療事務)
難病患者等入院診療加算のほうと違って、こちらは「指定医療機関かどうか」がはっきりした条件なので確認しやすそうです。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし共通しているのは、どちらも「現に算定している入院基本料・特定入院料が、この加算を算定できる区分であること」という条件です。特別入院基本料や一部の特定入院料では、そもそもA210を算定できる組み合わせかどうかを個別に確認する必要があります。

施設基準・届出はどうなっているか
みらい(新人医療事務)
点数が高い加算だと、たいてい施設基準の届出が必要なイメージがあるんですけど、この加算はどうですか?
あおい(元・医療事務)
難病等特別入院診療加算については、私たちが確認した一次資料(基本診療料の施設基準等に関する令和8年厚生労働省告示第70号)の範囲では、この加算固有の施設基準や届出様式は確認できていません。当サイトでも、この加算は施設基準の届出が不要な項目として整理しています。
届出不要と「何もしなくていい」は別
届出そのものが不要でも、算定できるのは「入院基本料等加算」として告示に定められた条件(対象疾患・対象状態・第二種感染症指定医療機関であること等)を満たしている場合に限られます。届出が要らないからといって確認作業まで省略できるわけではありません。
みらい(新人医療事務)
届出は要らないけど、条件は毎回チェックしないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。むしろ届出という「一度出せば終わり」の手続きがない分、レセプトのたびに患者ごとの該当性を医事課で確認する運用が大事になります。自院の届出状況・運用体制の最終確認は、審査支払機関や地方厚生局への確認をおすすめします。
算定タイミング・回数・併算定の注意点
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングや、他の加算との組み合わせで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
実施上の留意事項(保医発通知)に、具体的な運用ルールが2つ示されています。1つ目は「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症患者については、菌の排出がなくなった後、3週間を限度として算定する」というものです。
みらい(新人医療事務)
MRSA感染症の患者さんは、菌がいなくなってからも3週間までは算定を続けられる、ということですか?
あおい(元・医療事務)
そういう読み方になります。逆に言うと、菌の排出がなくなってから3週間を超えて算定を続けることは想定されていません。カルテ・検査記録で「排出がなくなった日」を追えるようにしておく必要があります。
みらい(新人医療事務)
もう1つの注意点は何ですか?
あおい(元・医療事務)
併算定に関するものです。留意事項の(2)には「特殊疾患入院施設管理加算を算定している患者については算定できない」と明記されています。
みらい(新人医療事務)
特殊疾患入院施設管理加算を取っている患者さんには、この難病等特別入院診療加算は上乗せできないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい、同一患者に対する重複算定は認められていません。医事課のレセプトチェックで、この2つの加算が同じ患者・同じ日にダブって入力されていないかを確認する運用が必要です。特殊疾患入院施設管理加算の対象患者と重なりやすいケースなので、併算定チェックの仕組み化がおすすめです。
回数・期間の確認は個別患者ごとに
MRSA感染症の3週間という期間制限や、特殊疾患入院施設管理加算との併算定不可は、患者単位で管理する必要がある事項です。病棟全体としての届出ではなく、患者ごとのカルテ管理で対応する加算だという点を医事課・病棟スタッフで共有しておくと取り漏れ・重複算定の両方を防ぎやすくなります。

令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
前回改定(令和6年度)からの主な変更は確認されていません(本稿執筆時点・厚労省一次情報ベース)。令和8年度の告示(区分A210)でも、難病患者等入院診療加算・二類感染症患者入院診療加算ともに250点という点数と、対象患者の定義(注1・注2)は前回改定時点の枠組みと同じ考え方で維持されています。
みらい(新人医療事務)
変わっていないなら、去年までの理解のままで大丈夫ということですか?
あおい(元・医療事務)
点数と算定要件の枠組みは変わっていない前提で読めますが、対象疾患・対象状態を定める告示側の別表は改定のたびに見直しが入ることがあります。「A210自体は変わっていない」と「対象疾患の一覧が変わっていない」はイコールではないので、対象疾患の確認は令和8年度の最新の告示原文で行うようにしてください。
改定の見え方(令和6年度→令和8年度)
点数: 難病患者等入院診療加算250点・二類感染症患者入院診療加算250点で変更は確認されていません。算定要件の骨格(対象疾患・対象状態・指定医療機関であること)も同様に、一次資料の範囲で変更は確認されていません。対象疾患の一覧など別表側の改定有無は、令和8年度の告示原文で個別に確認してください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの病院で算定候補になるかを確認するには、どういう順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認していくと整理しやすいです。
自院で確認する順番
- 病院か診療所か: 診療所は対象外。病院かつ入院患者であることを確認する
- 現在算定している入院基本料・特定入院料が、A210を算定できる組み合わせになっているかを確認する
- 難病患者等入院診療加算に該当しそうな場合: 厚労大臣が定める疾患・状態の告示原文で対象疾患名を個別に確認する
- 二類感染症患者入院診療加算に該当しそうな場合: 自院が感染症法上の第二種感染症指定医療機関であるかを確認する
- 特殊疾患入院施設管理加算を同一患者に算定していないか、レセプトで重複チェックする
- MRSA感染症患者の場合は、菌の排出がなくなった日から3週間以内かどうかをカルテで確認する
みらい(新人医療事務)
こうやって順番に見ていくと、点数を見て終わりじゃないことがよくわかります。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。この加算は施設基準の届出という「入口のハードル」がない代わりに、患者ごとの該当性確認という「日々のハードル」がある加算です。医事課だけでなく、病棟の看護師・医師とも情報共有しておくと取り漏れが減ります。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなパターンがありますか?
あおい(元・医療事務)
よく聞くのは次のようなケースです。
取り漏れやすいポイント
第二種感染症指定医療機関の指定を受けているのに、二類感染症患者入院診療加算の対象患者を医事課側で把握できておらず算定していないケース。MRSA感染症患者について菌の排出がなくなった後も継続して算定してしまい、3週間の限度を超えて請求してしまうケース。特殊疾患入院施設管理加算と同一患者・同一日で重複して算定してしまうケース。いずれも患者単位の情報共有ができていないことが原因になりやすい取り漏れ・過剰算定です。
みらい(新人医療事務)
「取り漏れ」だけじゃなくて「算定しすぎ」のリスクもあるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい、この加算は両方向のリスクがあります。だからこそ届出の有無だけで判断せず、患者ごとの記録を丁寧に残しておくことが大切です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、みんなが気になりそうなことをいくつか聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
どうぞ。順番に答えていきますね。
みらい(新人医療事務)
難病患者等入院診療加算と二類感染症患者入院診療加算は、同じ患者に両方算定できますか?
あおい(元・医療事務)
告示の条文上、両方の要件(別に厚労大臣が定める疾患・状態の患者であること、かつ第二種感染症指定医療機関で二類感染症患者等に該当すること)を同時に満たす患者は想定しにくく、通常はどちらか一方の該当性を確認して算定する形になります。個別のケースは自院で確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
診療所でもこの加算を算定できる場面はありますか?
あおい(元・医療事務)
この加算は告示上、病院の入院患者を対象とする入院基本料等加算として整理されており、診療所は対象外です。診療所での算定候補にはなりません。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出をしていなくても算定できますか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の範囲ではこの加算固有の届出様式は確認できておらず、届出不要として整理されています。ただし対象患者の要件は毎回確認が必要です。最終的な取り扱いは審査支払機関にご確認ください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちの病院がこの加算の算定候補になるか、もう少し具体的に確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。対象疾患・指定医療機関の状況・現在の入院基本料などを入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。