依存症入院医療管理加算とは?まず基本を教えてください
みらい(新人医療事務)
あおいさん、「依存症入院医療管理加算」って初めて聞いたんですけど、どういう加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)の診療報酬では、アルコール依存症または薬物依存症で入院治療が必要な患者さんに対して、医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師等のチームが集中的かつ多面的な専門的治療を計画的に提供したことを評価する入院基本料等加算です。区分番号はA231-3になります。
みらい(新人医療事務)
「集中的かつ多面的」というのは、具体的にはどういうイメージですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には「アルコール依存症又は薬物依存症の入院患者に対して、医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師等による依存症に対する集中的かつ多面的な専門的治療の計画的な提供を評価したものであり、入院した日から起算して60日を限度として、当該患者の入院期間に応じて算定する」と記載されています。単に入院で経過観察するのではなく、治療プログラムを使ったチーム医療の計画的な提供が前提になっている加算です。
みらい(新人医療事務)
うちは精神科病棟がある病院なんですが、対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
対象になりうるかは病棟の種類だけでは決まりません。入院基本料等加算(A章)に位置づけられる加算で、入院基本料または特定入院料を現に算定している入院患者が対象であり、外来や在宅では算定できません。そのうえで、施設基準の届出、対象患者の要件、そして自院が算定している入院基本料・特定入院料がこの加算の対象に含まれるかを個別に確認する必要があります。
点数・算定要件の確認(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
具体的に何点になるんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)時点の点数はこちらです。入院期間に応じて2段階になっています。
| 区分 | 点数 | 算定単位 |
|---|---|---|
| 1 入院した日から30日以内 | 200点 | 1日につき |
| 2 入院した日から31日以上60日以内 | 100点 | 1日につき |

みらい(新人医療事務)
60日を超えたら算定できなくなるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。告示の注には「入院した日から起算して60日を限度として、当該患者の入院期間に応じ、それぞれ所定点数に加算する」と明記されています。入院61日目以降は、この加算の対象外になります。また、加算の対象になるのは「第1節の入院基本料(特別入院基本料等を除く。)又は第3節の特定入院料のうち、依存症入院医療管理加算を算定できるものを現に算定している患者」に限られます。つまり、算定できる入院基本料・特定入院料の種類自体にも条件がある点に注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
「算定できるもの」がどれかは、自院の入院基本料の種類次第ということですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。自院がどの入院基本料・特定入院料を算定しているかによって、この加算がそもそも組み合わせ可能な区分かどうかが変わります。この判定は個別性が高いので、レセプト担当者だけで判断せず、公式資料と自院の届出内容を突き合わせて確認することをおすすめします。
施設基準: どんな体制が必要ですか?
みらい(新人医療事務)
届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
必要です。地方厚生局長等への届出が前提になっています。施設基準の告示(令和8年厚生労働省告示第70号)には、依存症入院医療管理加算の施設基準として「アルコール依存症又は薬物依存症の診療を行うにつき必要な体制が整備されていること」と定められています。
みらい(新人医療事務)
ちょっと抽象的ですね……。具体的には何を整えればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
告示自体は「必要な体制が整備されていること」という簡潔な書きぶりですが、留意事項通知(令和8年3月5日 保医発0305第6号)を読むと、実際に求められている運用がわかります。特に確認したいのはこの3点です。
施設基準・運用面で確認すべき3点(令和8年度)
① チーム医療の体制: 医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師等が連携して治療にあたる体制 ② 治療プログラムの実施: 依存症治療のための治療プログラムを用いて計画的に治療を行う体制 ③ 診療計画の作成・説明・記録: 医師が看護師等と協力し、家族等と協議の上で詳細な診療計画を作成し、家族等に説明・交付するとともに写しを診療録に添付する運用
みらい(新人医療事務)
③の「診療計画」は、普通の入院診療計画書とは別に作るものですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、留意事項通知には「これにより入院診療計画の基準を満たしたものとされるものである」と記載されています。つまり、依存症入院医療管理加算のために作成する詳細な診療計画が、入院診療計画の基準を満たす扱いになる、という位置づけです。二重に書類を作る必要はありませんが、家族等への説明・交付・診療録への添付という一連の記録がきちんと残っているかがポイントになります。
みらい(新人医療事務)
家族等への対応は、診療計画の説明だけでいいんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、それだけではありません。留意事項通知の(4)には「家族等に対して面接相談等適切な指導を適宜行う」ともあります。診療計画の説明にとどまらず、入院期間中を通じて家族等への相談対応を継続することが求められています。
対象になる患者・ならないケース
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準告示では対象患者を「入院治療が必要なアルコール依存症の患者又は薬物依存症の患者」と定めています。留意事項通知でも「入院治療を要するアルコール依存症患者又は薬物依存症患者に対して、治療プログラムを用いた依存症治療を行った場合」が対象になると説明されています。
みらい(新人医療事務)
逆に、対象にならないケースもありますか?
あおい(元・医療事務)
あります。留意事項通知には「合併症の治療のみを目的として入院した場合は算定できない」と明記されています。つまり、依存症の既往がある患者さんでも、今回の入院目的が合併症(例えば身体疾患の治療など)のみであれば、この加算の算定候補にはならないということです。
算定できないケースに注意
- 合併症の治療のみを目的とした入院は対象外です(治療プログラムを用いた依存症治療そのものが行われていることが前提)
- 入院61日目以降は加算の対象外です(60日が上限)
- 加算の対象になる入院基本料・特定入院料の種類にも条件があります(現に算定している入院基本料等が「依存症入院医療管理加算を算定できるもの」である必要があります)
- 診療所では算定できません(病院の入院患者が対象)
みらい(新人医療事務)
「治療プログラムを用いた依存症治療を行った場合」というのがキーワードなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。単に依存症の既往歴がある患者さんが入院しているだけでは足りず、実際に治療プログラムに基づく計画的な治療が提供されていることが算定の前提になります。診療録や診療計画書に、治療プログラムの実施状況が確認できる記録を残しておくことが大切です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
令和8年度の改定で、この加算は何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
今回確認した一次資料——医科点数表(令和8年厚生労働省告示第69号)、施設基準告示(令和8年厚生労働省告示第70号)、実施上の留意事項(令和8年3月5日保医発0305第6号)、および厚労省の「令和8年度診療報酬改定について【全体概要版】」——の範囲では、依存症入院医療管理加算の点数(30日以内200点・31日以上60日以内100点)、対象患者、施設基準の骨格に関する変更点の記載は確認されていません(確認日: 2026年7月・厚労省一次資料ベース)。
みらい(新人医療事務)
つまり、令和6年度のときと同じ内容が続いているということですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の一次資料に基づく確認では「変更は確認されていません」というのが正確な言い方です。個別の過去改定との詳細な比較までは今回の確認範囲に含まれていませんので、より詳しい経緯を知りたい場合は、厚労省が公開している個別改定項目の資料もあわせてご確認ください。
改定差分の確認範囲(令和8年度)
| 項目 | 令和8年度(2026年度)確認結果 |
|---|---|
| 点数(30日以内/31日以上60日以内) | 200点/100点(変更点の記載なし) |
| 対象患者 | アルコール依存症・薬物依存症で入院治療が必要な患者(変更点の記載なし) |
| 施設基準の骨格 | 体制整備の要件(変更点の記載なし) |
| 確認した一次資料 | 告示第69号・告示第70号・保医発0305第6号・全体概要版 |
算定上の注意点・よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
実務でつまずきやすいポイントはどこですか?
あおい(元・医療事務)
いくつかまとめておきますね。
算定上の注意点
- 入院基本料等の種類の確認漏れ: 現に算定している入院基本料・特定入院料が「依存症入院医療管理加算を算定できるもの」に該当するかを個別に確認する必要があります
- 60日の起算日ズレ: 「入院した日から起算して60日」が基準です。転棟や病名変更のタイミングで起算日を誤認しないよう注意が必要です
- 合併症治療のみの入院との混同: 依存症の既往があっても、今回の入院目的が合併症治療のみであれば対象外になり得ます
- 診療計画の記録不備: 家族等への説明・交付、写しの診療録添付が記録として残っているかを確認してください
よくある取り漏れポイント
- 治療プログラムを実施しているのに、届出自体が未完了になっているケース
- 診療計画の作成はしているが、家族等への説明・交付・診療録への添付のいずれかが漏れているケース
- 家族等への面接相談等の指導記録が診療録に残っていないケース
- 60日を超えた期間も算定してしまっているケース(レセプト点検で見落としやすい)
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの病院で算定候補になるか確かめるには、どんな順番で見ればいいですか?
あおい(元・医療事務)
こんな順番で確認するとスムーズです。
自院で確認する順番
-
病院かどうか、対象の入院基本料等を算定しているか確認 — 依存症入院医療管理加算を算定できる入院基本料・特定入院料を現に算定しているか
-
施設基準の届出状況を確認 — 地方厚生局への依存症入院医療管理加算の届出が受理されているか
-
チーム体制を確認 — 医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師等による治療体制が整っているか
-
対象患者かどうかを確認 — 入院治療が必要なアルコール依存症または薬物依存症の患者で、合併症治療のみを目的とした入院でないか
-
治療プログラム・診療計画の実施状況を確認 — 治療プログラムを用いた計画的な治療、家族等への説明・交付・診療録への添付の記録があるか
-
算定日数を確認 — 入院した日から起算して60日以内か、30日以内・31日以上60日以内のどちらの点数区分に該当するか

みらい(新人医療事務)
こうして順番に並べてもらうと、確認漏れが防げそうです。
あおい(元・医療事務)
はい。特に精神科病棟を持つ病院では、複数の入院医療管理加算(強度行動障害入院医療管理加算や摂食障害入院医療管理加算など)が近い区分番号で並んでいるので、対象患者や施設基準を混同しないよう、加算ごとに一次資料で確認する習慣をつけることをおすすめします。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に気になる点をいくつか聞いてもいいですか?依存症の診断名があれば自動的に対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、診断名だけでは判断できません。留意事項通知にあるとおり「合併症の治療のみを目的として入院した場合は算定できない」とされています。実際に治療プログラムを用いた依存症治療が行われているかどうかがポイントになりますので、診療内容の実態を確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は、精神病床がある病院なら自動的に満たしていることになりますか?
あおい(元・医療事務)
そうとは限りません。施設基準告示では「アルコール依存症又は薬物依存症の診療を行うにつき必要な体制が整備されていること」が求められており、病床の種類だけで自動的に満たされるものではありません。地方厚生局への届出が受理されているかどうかを個別に確認してください。
みらい(新人医療事務)
60日を超えて入院が続く場合、他の加算に切り替わったりするんですか?
あおい(元・医療事務)
この記事で確認した一次資料の範囲では、60日超過後の代替加算についての記載はありません。60日を超えた期間の取り扱いについては、自院の算定状況に応じて公式資料や審査支払機関に確認することをおすすめします。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚労省公式資料を根拠としています。実際の届出・算定にあたっては、必ず一次資料をご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)別表第一 医科点数表 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 基本診療料の施設基準等の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第70号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001675854.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号)医科点数表 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001713882.pdf
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちの病院が算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や治療体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。