みらい(新人医療事務)
「身体的拘束最小化推進体制加算」って名前を最近よく聞くんですけど、これって新しい加算ですか?
あおい(元・医療事務)
はい、令和8年度(2026年度)の診療報酬改定で新設された加算です。区分番号はA235、点数は40点(1日につき)です。前回改定(令和6年度)にはこの加算自体は存在せず、令和8年度改定で新たに設けられました。
みらい(新人医療事務)
「身体的拘束」って、いわゆる抑制帯とかを使うことですよね。それを最小化する取組を評価する加算、ということですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。厚生労働省の資料では、身体的拘束を「抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限」と定義しています。そのうえで、病院長や看護部長等の管理職員が中心となり、身体的拘束を原則として行わないという組織風土を醸成し、質の高い取組を行う体制を評価するのがこの加算の趣旨です。
対象になる病棟・患者は
みらい(新人医療事務)
どんな病棟で算定できるんですか?うちは療養病棟があるので気になります。
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の「個別改定項目について」によると、対象になるのは次の入院料等を算定する病棟です。
| 対象となる入院料 |
|---|
| 療養病棟入院基本料 |
| 障害者施設等入院基本料 |
| 有床診療所療養病床入院基本料 |
| 地域包括ケア病棟入院料 |
| 特殊疾患入院医療管理料 |
| 特殊疾患病棟入院料 |
あおい(元・医療事務)
この一覧に含まれる入院料等を現に算定している患者のうち、施設基準に適合し地方厚生局長等に届け出た病棟に入院している患者が対象になります。有床診療所の療養病床も対象に含まれている点は見落としやすいので、注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
なるほど、病院だけじゃなく有床診療所も入っているんですね。うちは一般病棟だけなので対象外の可能性が高そうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。一般病棟入院基本料や急性期の病棟だけの医療機関は、この加算の対象病棟に含まれていない可能性があります。対象病棟に該当するかどうかは、まず自院の届出済み入院料の種類を確認することから始めてください。
点数と算定の考え方
みらい(新人医療事務)
点数はさっき40点って聞きましたけど、算定の単位も確認したいです。
あおい(元・医療事務)
点数は40点で、算定の単位は1日につきです。告示の注では次のように定められています。
告示の注(原文)
注 身体的拘束最小化について質の高い取組を行う体制その他の事項につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た病棟に入院している患者(第1節の入院基本料(特別入院基本料等を除く。)及び第3節の特定入院料のうち、身体的拘束最小化推進体制加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)について、所定点数に加算する。
あおい(元・医療事務)
つまり、対象の入院基本料や特定入院料を「現に算定している患者」であることが前提になります。入院基本料そのものを算定していない患者には、この加算だけを単独で算定することはできません。

施設基準で何を満たす必要があるか
みらい(新人医療事務)
施設基準はどんな内容なんですか?人員配置とか研修とか、具体的に知りたいです。
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の資料では、施設基準の骨子として次の4点が示されています。
施設基準の骨子(令和8年度・個別改定項目について)
体制: 当該保険医療機関において、身体的拘束の最小化に資する十分な体制が整備されていること 実績: 当該病棟において、身体的拘束の最小化に関する十分な実績を有していること 方針の掲示: 身体的拘束最小化のために病院全体として取組を行っていること、原則として身体的拘束を行わない方針であること及び身体的拘束の実施状況について、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること ウェブ掲載: 掲示事項について、原則としてウェブサイトに掲載していること
みらい(新人医療事務)
掲示だけじゃなくてウェブサイトへの掲載まで求められるんですね。それ、忘れそうです。
あおい(元・医療事務)
はい、ここは見落とされやすいポイントです。院内掲示だけで満足してしまうと、ウェブサイト掲載の要件が抜け落ちてしまう可能性があります。
あおい(元・医療事務)
さらに、留意事項通知では「質の高い取組」の中身として、具体的な実施事項が示されています。抜粋すると次のような内容です。
留意事項通知が示す具体的な取組(抜粋)
組織風土の醸成: 病院長及び看護部長等の管理職員が、自らの言葉で身体的拘束を原則として行わずにケアを行うことを目指して病院全体で取組を行うことを全ての職員に周知し、組織風土の醸成を図る 患者・家族への説明: 身体的拘束を行う可能性がある患者、認知症の患者及びせん妄・転倒等のリスクのある患者並びにその家族等に対し、原則として行わない方針であること、拘束を行う場合と行わない場合それぞれのリスクを説明する 複数職員での検討: 身体的拘束を実施するかどうかは職員個々の判断ではなく、医師・看護師等、当該患者に関わる複数の職員で検討する 実施時の記録: やむを得ず実施する場合は、実施の必要性等のアセスメント・患者家族への説明と同意・具体的行為や実施時間等の記録・二次的な身体障害の予防・代替策の検討を行う 解除に向けた継続検討: 身体的拘束を実施した場合は、解除に向けた検討を少なくとも1日に1度は行う
みらい(新人医療事務)
掲示や記録だけじゃなくて、日々の運用そのものが問われる加算なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。書類上の体制整備だけでなく、実際のケアの現場で継続的に取り組まれているかが重要になります。
届出は必要ですか
みらい(新人医療事務)
これって届出は必須なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、必須です。施設基準に適合し、地方厚生局長等に届け出た保険医療機関でなければ算定できません。届出済みであれば算定候補になりますが、届出前の段階では算定できません。まずは自院の届出状況を確認することが出発点です。
算定タイミング・注意したい点
みらい(新人医療事務)
算定するときに気をつけたほうがいいことはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、この加算は対象病棟の患者全員に自動的につくものではなく、施設基準に適合し届出をした病棟に入院している対象患者について、1日につき所定点数に加算するものです。対象入院料を算定していない日や、対象病棟以外に入院している患者には算定できません。
混同しやすい制度との違い
令和8年度改定では、入院料の通則にも「身体的拘束最小化の基準」が新設されており、この基準を満たさない保険医療機関は入院料等の所定点数から1日につき40点を減算(体制基準のみ満たす場合は20点減算)する仕組みが導入されています。これはA235 身体的拘束最小化推進体制加算(加算)とは別の制度です。「基準を満たさない場合の減算」と「質の高い取組を行う場合の加算」を混同しないよう、自院がどちらの位置づけにあるかを公式資料で確認してください。
みらい(新人医療事務)
加算と減算、両方に「身体的拘束最小化」という言葉が出てくるので、確かにややこしいです。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。名前が似ているので事務職員の間でも混同が起きやすいところです。届出資料を確認するときは、どちらの届出をしているか、あるいはこれから届け出ようとしているかを明確にしておくとよいでしょう。
令和8年度改定での変更点(新設)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定にはなかったんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい。厚生労働省の「個別改定項目について」(令和8年2月13日答申)では、「身体的拘束の最小化に向け、組織的に特に質の高い取組を行っている場合の体制評価を新たに設け」、対象となる入院料を算定する病棟で算定可能とする、と説明されています。実際の記載でも加算名の前に「(新)」という表示がついており、令和8年度(2026年度)改定で新設された加算であることが確認できます。前回改定(令和6年度)には、この名称・区分番号の加算は存在していませんでした。
あおい(元・医療事務)
あわせて、入院料の通則に定められている身体的拘束最小化に関する基準そのものも、組織風土や研修内容、実績・取組に関する要件が充実する形で見直されています。これは加算とは別の、入院料算定の土台となる基準の見直しです。
自院で確認する順番
- 自院で届け出ている入院料の種類を確認する(療養病棟入院基本料・障害者施設等入院基本料・有床診療所療養病床入院基本料・地域包括ケア病棟入院料・特殊疾患入院医療管理料・特殊疾患病棟入院料のいずれかか)
- 対象病棟における身体的拘束最小化の体制(組織風土の醸成・研修・患者家族への説明の仕組み)が整っているか確認する
- 身体的拘束の実施状況の院内掲示とウェブサイト掲載ができているか確認する
- 身体的拘束を実施した場合の記録・解除に向けた検討(少なくとも1日に1度)の運用ができているか確認する
- 施設基準の届出状況(届出済みか、これから届け出るか)を確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
実際に取り漏れやすいポイントって何ですか?
取り漏れやすいポイント
対象病棟の思い込み: 「病院なら対象」と思い込み、実際には対象の入院料一覧(療養病棟入院基本料等6種)に該当しない病棟で検討を進めてしまう 掲示の範囲不足: 院内掲示は行っていても、ウェブサイトへの掲載まで手が回っていない 個人判断での拘束実施: 身体的拘束の実施可否を職員個々の判断に任せてしまい、複数職員での検討という要件を満たせていない 通則の基準との混同: 入院料通則の「身体的拘束最小化の基準」(減算に関わる基準)とA235加算の施設基準を混同し、どちらを届け出ているか整理できていない
あおい(元・医療事務)
特に対象病棟の確認は最初のつまずきポイントになりやすいので、届出済みの入院料の名称を公式資料の一覧と照合するところから始めてください。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
一般病棟でも算定できますか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の資料に示された対象入院料の一覧には、一般病棟入院基本料は含まれていません。療養病棟入院基本料・障害者施設等入院基本料・有床診療所療養病床入院基本料・地域包括ケア病棟入院料・特殊疾患入院医療管理料・特殊疾患病棟入院料のいずれかを算定している病棟が対象です。自院の病棟がこれらに該当するかは、公式資料で確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
認知症の患者でなくても算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
対象入院料一覧に示された病棟に入院している患者であれば、対象患者の要件に認知症の診断名は明記されていません。ただし、留意事項通知では拘束を行う可能性がある患者・認知症の患者・せん妄や転倒等のリスクのある患者への対応が具体的に想定されているため、実務上は認知症等の患者が多い病棟での運用が中心になると考えられます。個々の患者が対象になるかどうかは自院での確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
前回改定(令和6年度)にあった関連の加算とは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、別のものです。前回改定(令和6年度・2024年度)の時点では、この名称・区分番号(A235)の加算は存在していませんでした。令和8年度(2026年度)改定で新設された加算ですので、前回改定(令和6年度)当時の資料の記載と混同しないよう注意してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。