みらい(新人医療事務)
産科病棟のカルテを見ていたら「ハイリスク妊娠管理加算」という文字が出てきました。うちの病院、産婦人科があるので算定候補になるか気になります。
あおい(元・医療事務)
いい質問ですね。ハイリスク妊娠管理加算は、令和8年度(2026年度)の医科点数表で区分A236-2に位置づけられている入院基本料等加算です。切迫早産や妊娠高血圧症候群重症など、特定の状態にある妊婦さんを入院管理した場合に算定できる可能性がある加算ですよ。
みらい(新人医療事務)
「算定できる可能性」ってことは、必ずもらえるわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。対象患者の状態、施設基準の充足、届出の有無など、いくつも確認すべきポイントがあります。今日は厚生労働省の告示・通知の内容に沿って、順番に整理していきましょう。
ハイリスク妊娠管理加算とは
みらい(新人医療事務)
そもそも、この加算はどんな場面を想定しているんですか?
あおい(元・医療事務)
早産のおそれや妊娠高血圧症候群重症など、リスクの高い妊娠状態にある患者さんを入院させて管理する場合に、通常の入院基本料に上乗せして算定できる加算です。対象は病院の入院患者に限られていて、外来では算定できません。当サイトが収録している一次資料の範囲では、施設基準への適合と地方厚生局長等への届出が前提になっています。
みらい(新人医療事務)
クリニックでは対象外なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。この加算は入院基本料等加算(医科点数表のA章)に分類されていて、病院の入院医療を対象にしています。診療所単独での算定は想定されていません。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんが対象になるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知では、次のような疾患等の妊婦であって、医師がハイリスク妊娠管理が必要と認めた者、とされています。実際の条文はかなり細かく条件が付いているので、まず一覧で確認しましょう。
| 区分 | 対象となる状態(通知の要件) |
|---|---|
| ア | 分娩時の妊娠週数が22週から32週未満の早産である患者(早産するまでの患者に限る) |
| イ | 妊娠高血圧症候群重症の患者 |
| ウ | 前置胎盤(妊娠28週以降で出血等の症状を伴う場合に限る)の患者 |
| エ | 妊娠30週未満の切迫早産の患者であって、子宮収縮・子宮出血・頸管の開大等の兆候があり、かつ前期破水合併や羊水過多症・過少症等の要件のいずれかを満たすもの |
| オ | 多胎妊娠の患者 |
| カ | 子宮内胎児発育遅延の患者 |
| キ〜コ | 心疾患・糖尿病・甲状腺疾患・腎疾患(いずれも治療中のものに限る)の患者 |
| サ〜ソ | 膠原病・特発性血小板減少性紫斑病・白血病・血友病・出血傾向のある状態(いずれも治療中のものに限る)の患者 |
| タ〜チ | HIV陽性の患者、Rh不適合の患者 |
| ツ | 当該妊娠中に帝王切開術以外の開腹手術(腹腔鏡による手術を含む)を行った患者又は行う予定のある患者 |
| テ | 精神疾患の患者(自院または他院で精神療法を実施しており、診療情報が文書提供されているものに限る) |
みらい(新人医療事務)
「治療中」ってどこまでが対象になるんですか?普段から通院している患者さんは全員入るのかな。
あおい(元・医療事務)
そこは要注意です。厚生労働省の通知には、治療中のものとは対象疾患について専門的治療が行われているものを指し、単なる経過観察のために年に数回程度通院しているのみの患者は算定できない、と明記されています。定期的な経過観察だけの患者さんは対象外になる可能性が高いので、カルテで治療内容を確認する必要がありますよ。
みらい(新人医療事務)
妊婦さんの定義自体にも注意点があるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。通知では、妊婦とは産褥婦を含まない、とされています。出産後の管理はこの加算の対象に含まれません。
算定できる患者の範囲に関する原文(要件の除外に注意)
厚生労働省の告示では、対象患者について「別に厚生労働大臣が定める患者(第1節の入院基本料(特別入院基本料等を除く。)又は第3節の特定入院料のうち、ハイリスク妊娠管理加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)」と定めています。特別入院基本料等を算定している患者は対象から除かれる点、算定できる入院料の区分が定められている点は、条文どおりに確認が必要です。
点数・算定単位(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
気になる点数を教えてください。
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)では、区分A236-2 ハイリスク妊娠管理加算(1日につき)1,200点、とされています。算定単位は1日につきで、入院日数分だけ積み上がる形です。

| 項目 | 内容(令和8年度) |
|---|---|
| 区分番号 | A236-2 |
| 加算名 | ハイリスク妊娠管理加算 |
| 点数 | 1,200点 |
| 算定単位 | 1日につき |
| 上限日数 | 1入院に限り20日を限度 |
| 対象 | 病院に入院しているハイリスク妊娠管理を要する患者 |
みらい(新人医療事務)
20日を超えて入院した場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示では、1入院に限り20日を限度として所定点数に加算する、とされています。21日目以降は、この加算については算定候補にならないと考えられます。ただし入院期間が通算される取り扱いになる入院については、1入院として扱われる点も通知に明記されているので、転棟・再入院がある場合は確認が必要です。
施設基準
みらい(新人医療事務)
どんな体制が整っていれば施設基準を満たせるんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の施設基準通知(基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて)では、次の4つが定められています。
ハイリスク妊娠管理加算に関する施設基準(通知の要件)
産婦人科の標榜: 産婦人科又は産科を標榜する保険医療機関であること 専従医師の配置: 当該保険医療機関内に、専ら産婦人科又は産科に従事する医師が、1名以上配置されていること 緊急分娩体制: 緊急の分娩に対応できる十分な体制及び設備を有していること 産科医療補償制度への加入: 公益財団法人日本医療機能評価機構が定める産科医療補償制度標準補償約款と同一の産科医療補償約款に基づく補償を実施していること
みらい(新人医療事務)
医師は1名でいいんですね。ハイリスク分娩管理加算はもっと人数が必要だったような…。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。関連する「A237」ハイリスク分娩等管理加算では専従の常勤医師3名以上・常勤助産師3名以上という別の施設基準が定められています。ハイリスク妊娠管理加算とハイリスク分娩等管理加算は施設基準が別物なので、混同しないよう注意してください。当院がどちらの届出をしているか、あるいは両方届け出ているかを確認しておくと安心です。
届出
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たしていれば自動的に算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、届出が必要です。厚生労働省の施設基準通知では、ハイリスク妊娠管理加算の施設基準に係る届出は、別添7の様式38を用いること、とされています。施設基準を満たしていても、地方厚生局長等への届出が済んでいなければ算定候補にはなりません。
みらい(新人医療事務)
届出済みかどうかは、どこで確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
自院の届出書類の控えや、施設基準管理を担当している事務部門に確認するのが確実です。届出済みであれば算定候補になりますが、届出の有無を必ず確認してください。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定回数や、他の加算との組み合わせで注意点はありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。整理しますね。
算定タイミング・併算定の注意(通知の原文に基づく)
厚生労働省の通知では、当該加算は、1入院に20日を限度として所定点数に加算する、とされています。また、1入院の期間中に、「A237」ハイリスク分娩等管理加算を算定するハイリスク分娩管理又は地域連携分娩管理とハイリスク妊娠管理を併せて行うことは可能であり、ハイリスク妊娠管理加算とハイリスク分娩管理加算又は地域連携分娩管理加算を併せ、1入院当たり28日を限度として算定できる、とされています。ただし、ハイリスク分娩管理加算又は地域連携分娩管理加算を算定する日と同一日に行うハイリスク妊娠管理に係る費用は、ハイリスク分娩管理加算又は地域連携分娩管理加算に含まれ、別に算定できない、と明記されています。同一日の重複算定にならないよう、レセプト点検の際に確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
28日という上限は、ハイリスク妊娠管理加算だけの日数とは別ってことですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。ハイリスク妊娠管理加算単独では20日が上限、ハイリスク分娩等管理加算と合わせた場合は1入院当たり28日が上限、という二段階になっています。どちらの加算を何日算定したか、日々の管理表で突き合わせておくと確認漏れを防げますよ。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
気になりますよね。ただ、今回確認できた一次資料(令和8年厚生労働省告示第69号・第70号、留意事項通知、施設基準通知)の範囲では、ハイリスク妊娠管理加算の点数・対象疾患・施設基準について、前回改定(令和6年度)からの変更点は確認されていません(確認日: 2026年7月)。
改定差分の確認方針(中立)
点数が変わっていなくても、施設基準や算定要件だけが変わる改定もあるため、点数・算定単位・施設基準・対象患者・様式の5点をそれぞれ一次資料で照合しています。今回はいずれも令和8年度時点の一次資料上で従来と同じ内容が確認できました。新しい変更点が判明した場合は、当サイトで随時この記事を更新します。
みらい(新人医療事務)
「変わっていないと確認した」ことも、ちゃんと書いてくれるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。確認していないのと、確認した結果変更がなかったのとでは意味が違いますから、両方をきちんと区別して書くようにしています。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの病院で確認する順番ってどうすればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のステップで確認していくと、抜け漏れが少なくなります。
自院で確認する順番
産婦人科又は産科を標榜しているか確認する 専ら産婦人科又は産科に従事する医師が1名以上配置されているか確認する 緊急の分娩に対応できる体制・設備があるか確認する 産科医療補償制度の補償約款に基づく補償を実施しているか確認する 施設基準の届出(様式38)が地方厚生局長等に提出済みか確認する 入院患者が対象疾患の要件を満たし、治療中と言える内容か、カルテで確認する

みらい(新人医療事務)
順番に見ていけば、うちが算定候補かどうかの見当がつきそうです。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただ、この順番はあくまで確認の目安です。最終的な判断は、自院の届出内容と個々の患者さんの診療記録を突き合わせて行ってください。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなパターンがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
いくつか典型的なパターンがあります。
よくある取り漏れ
経過観察のみの患者を対象に含めてしまう: 治療中ではなく単なる経過観察で通院している患者は算定対象外です 産褥婦を妊婦として計上してしまう: 通知上、妊婦には産褥婦を含みません 20日・28日の上限管理が曖昧になる: ハイリスク妊娠管理加算単独の上限とハイリスク分娩等管理加算との合算上限を混同しやすい部分です 同一日の重複算定: ハイリスク分娩管理加算等を算定する日のハイリスク妊娠管理費用は、別立てで算定できません
よくある質問
みらい(新人医療事務)
いくつか質問してもいいですか?診療所でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
この加算は入院基本料等加算に分類されていて、対象は病院の入院患者です。当サイトが収録している一次資料の範囲では、診療所(無床診療所)は対象に含まれていません。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出をしていない病院はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
施設基準を満たしていても、地方厚生局長等への届出(様式38)が済んでいなければ、この加算は算定候補になりません。届出状況を必ず確認してください。
みらい(新人医療事務)
ハイリスク分娩等管理加算と両方届け出る必要はありますか?
あおい(元・医療事務)
両方の届出をするかどうかは、自院の産科体制次第です。ハイリスク妊娠管理加算とハイリスク分娩等管理加算は施設基準が別なので、どちらか一方だけを届け出ている病院もあります。自院がどちらを届け出ているかは、施設基準の届出書類で確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。