みらい(新人医療事務)
「精神科救急搬送患者地域連携紹介加算」という名前を初めて見ました。うちの病院、精神科病棟があるんですが対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)の診療報酬で区分番号A238-6として設けられている加算ですね。精神科救急で緊急入院した患者さんを、他の医療機関へ転院させて地域で連携するときに算定候補になる加算です。ただし対象になるかどうかは、現在算定している入院料の種類と届出状況によって変わりますので、まず一緒に条件を確認していきましょう。
みらい(新人医療事務)
「紹介加算」ということは、送り出す側の病院が対象なんですね?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。緊急入院した患者さんの診療情報を他院に提供して転院させた、いわば「送り出し側」の病院が対象になります。受け入れる側の病院には、対になる「精神科救急搬送患者地域連携受入加算(A238-7)」という別の加算が用意されています。今日はこの紹介加算(A238-6)に絞って、点数・施設基準・算定タイミングを確認していきますね。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
まず、どんな病院・患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)の注書きでは、対象がかなり細かく限定されています。主な条件は次の3点です。
対象の条件(令和8年度)
- 医療機関: 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生局長等に届け出た保険医療機関(病院)
- 患者: 緊急に入院した患者のうち、第3節の特定入院料のうち精神科救急搬送患者地域連携紹介加算を算定できるものを現に算定している患者に限る
- 行為: 入院した日から起算して60日以内に、診療情報を文書で提供したうえで他の保険医療機関に転院させた場合
みらい(新人医療事務)
「第3節の特定入院料のうち算定できるものに限る」というのが、ちょっと難しいです。
あおい(元・医療事務)
ここが一番間違えやすいポイントです。すべての入院患者が対象になるわけではなく、精神科救急に関わる特定入院料(例えば精神科救急急性期医療入院料など)を現に算定している患者さんに限られます。実際に当サイトが確認できた一次資料の範囲では、精神科救急急性期医療入院料の告示本文にこの加算の名称が明記されており、当該入院料を算定する患者については包括対象から除外され、別途算定できる整理になっています。ただし対象となる特定入院料は複数あり、自院がどの入院料を算定しているかによって対象かどうかが変わるため、断定はできません。自院が算定している特定入院料の種類を、告示の第3節に照らして確認してください。
みらい(新人医療事務)
診療所は対象外なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、この加算は入院基本料等加算(A章)に位置づけられており、外来では算定できません。対象は病院の入院患者に限られます。
点数とコード
みらい(新人医療事務)
点数はどれくらいなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数は次のとおりです。
| 区分番号 | 名称 | 点数 | 算定単位 |
|---|---|---|---|
| A238-6 | 精神科救急搬送患者地域連携紹介加算 | 1,000点 | 退院時1回 |

みらい(新人医療事務)
「退院時1回」というのは、入院期間中に何回も算定できるものではないんですね?
あおい(元・医療事務)
そうです。転院という1回きりの出来事に対する加算なので、対象の入院について退院時に1回限りの算定になります。同じ入院で複数回算定することはできません。
みらい(新人医療事務)
さっき出てきた「受入加算」のほうは点数が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、対になるA238-7(精神科救急搬送患者地域連携受入加算)は2,000点で、算定単位も「入院初日」と異なります。紹介側と受入側で、点数・算定単位ともに別の設計になっている点に注意してください。
施設基準と届出
みらい(新人医療事務)
施設基準はどんな内容ですか?
あおい(元・医療事務)
告示の注書きでは「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関」という形で施設基準への適合と届出が求められています。当サイトが確認できた一次資料の範囲では、この加算単独の詳細な人員配置基準までは確認できていません。具体的な基準の内容は、基本診療料の施設基準等の告示(令和8年厚生労働省告示第70号)で確認したうえで、自院が現在算定している特定入院料の届出状況とあわせて確認する必要があります。
断定できない点
施設基準の詳細な充足状況(人員配置・体制等)は、当サイトの一次資料の確認範囲だけでは判断できません。自院の届出済み特定入院料の種類・施設基準の適合状況は、必ず地方厚生局への届出内容と公式資料で確認してください。
みらい(新人医療事務)
届出は必要なんですね?
あおい(元・医療事務)
はい、必要です。「届出をしていないので算定できない」ということも起こり得ますので、まず自院の現在の届出状況(どの特定入院料をどの施設基準で届け出ているか)を確認することが最初のステップになります。
算定要件とタイミング
みらい(新人医療事務)
「60日以内」というのが気になります。何の60日ですか?
あおい(元・医療事務)
対象患者が緊急に入院した日を起算日として、60日以内に転院させた場合に限られます。60日を超えてからの転院は、この加算の対象にはなりません。入院日をきちんと記録し、転院までの日数を管理しておくことが重要です。
みらい(新人医療事務)
「診療情報を文書により提供」というのも要件になっていますね。
あおい(元・医療事務)
そうです。単に転院させるだけでなく、当該患者に関する診療情報を文書で他の保険医療機関に提供したうえで転院させることが要件になっています。診療情報提供書などの記録が残っていることが前提になりますので、転院時の文書提供の運用ルールを事務方でも把握しておくと安心です。
算定タイミングの確認順序
- 対象患者が緊急入院した日を確認する
- 入院時にどの特定入院料を算定しているか確認する(精神科救急搬送患者地域連携紹介加算を算定できる入院料か)
- 転院までの日数が入院日から60日以内であるか確認する
- 診療情報を文書で提供したうえで転院させたか確認する
- 退院時に1回に限り算定候補として整理する
併算定の注意点
みらい(新人医療事務)
併算定で気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
一つ重要な確認事項があります。過去の疑義解釈(平成24年度・疑義解釈資料の送付についてその1)で、次のような質問と回答が示されています。
疑義解釈(平成24年度)で示された考え方
質問: A238-6精神科救急搬送患者地域連携紹介加算及びA238-7精神科救急搬送患者地域連携受入加算は、特別な関係にある医療機関に転院した場合でも算定可能か。
回答: 算定できない。
みらい(新人医療事務)
「特別な関係にある医療機関」というのは、グループ病院みたいなイメージですか?
あおい(元・医療事務)
一般的には資本関係や役員の兼務などで特別な関係にあると認められる医療機関を指す考え方です。この疑義解釈は平成24年度に示されたものですが、地域の医療機関との連携を評価する加算の趣旨を踏まえると、現在も同様の考え方が前提になっている可能性があります。ただし年数が経過している解釈ですので、転院先が特別な関係にある医療機関に該当する場合は、最新の取り扱いを審査支払機関や地方厚生局に確認することをおすすめします。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わったことはありますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できた一次資料(令和8年厚生労働省告示第69号・関連の留意事項通知・疑義解釈)の範囲では、前回改定(令和6年度)からのA238-6の点数・算定要件についての変更点は確認されていません(確認日: 2026年7月・当サイトが収録している一次資料ベース)。点数は1,000点、算定単位は退院時1回、算定要件も60日以内の転院・診療情報の文書提供という枠組みのままです。
変更の有無は必ず個別改定項目でも確認
改定の都度、点数や算定単位が変わらなくても、対象となる特定入院料の範囲や施設基準の細目が見直されることがあります。当サイトの確認範囲を超える詳細な変更点については、厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定の概要」「個別改定項目について」もあわせてご確認ください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの病院としては何から確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認するのがおすすめです。
自院で確認する順番(令和8年度)
- 精神科の入院基本料・特定入院料の届出状況を確認する(どの入院料を届け出ているか)
- その入院料が「精神科救急搬送患者地域連携紹介加算を算定できるもの」に該当するか、告示の第3節と照らして確認する
- A238-6の施設基準への適合状況と届出内容を地方厚生局への届出書で確認する
- 対象患者の入院日・転院日を確認し、60日以内かどうかを確認する
- 転院時に診療情報を文書で提供した記録が残っているか確認する
- 転院先が特別な関係にある医療機関に該当しないか確認する

みらい(新人医療事務)
これを順番に見ていけば、算定候補かどうかの見通しが立てられそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。特に1番目と2番目、「そもそも対象になる特定入院料を算定しているか」を最初に確認することが近道です。ここが対象外であれば、以降の確認は不要になります。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
見落としがちなポイントはありますか?
あおい(元・医療事務)
現場でよく聞くのは次のようなケースです。
よくある取り漏れ
- 60日のカウント漏れ: 入院日ではなく転院を決めた日から数えてしまい、実際には60日を超えていたケース
- 対象入院料の勘違い: 一般の精神病棟入院基本料を算定している患者を対象と誤認してしまうケース(対象は精神科救急搬送患者地域連携紹介加算を算定できる特定入院料に限られます)
- 文書提供の記録不備: 診療情報を文書で提供した記録が残っておらず、算定の裏付けが取れなくなるケース
- 受入加算との混同: A238-7(受入加算・2,000点)と点数・算定単位を混同してレセプトに反映してしまうケース
みらい(新人医療事務)
どれも「うっかり」で起きそうなことばかりですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。特に日数計算と対象入院料の確認は、事務担当者だけでなく医師・看護師とも情報共有しておくと取り漏れを防ぎやすくなります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、よく聞かれる質問も確認しておきたいです。外来患者は本当に対象外なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、対象外です。この加算は入院基本料等加算に位置づけられており、入院患者に限られます。外来診療での算定はできません。
みらい(新人医療事務)
受入加算(A238-7)と両方を同じ病院で算定することはありますか?
あおい(元・医療事務)
紹介加算(A238-6)は転院元の病院、受入加算(A238-7)は転院先の病院がそれぞれ算定するものです。同一の患者・同一の転院について、同じ病院が両方を算定することは想定されていません。自院が紹介側・受入側のどちらの立場かをまず整理してください。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出はどこに出せばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
地方厚生局長等への届出になります。具体的な届出様式・添付書類は、基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについての通知で確認できますので、自院の担当窓口や社会保険労務士等とも相談しながら進めることをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
この加算は精神科の病院ならどこでも届出できるものですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準に適合していることが前提ですので、「精神科病院だから自動的に対象」というわけではありません。届出には施設基準への適合が必要ですので、すべての精神科病院で届出済みとは限らない点に注意してください。自院が未届出の場合は、施設基準の内容を確認したうえで届出の要否を検討することになります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです。
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。現在算定している特定入院料や届出状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する 精神科救急搬送患者地域連携受入加算 や 精神疾患診療体制加算 も同じ精神科領域の加算として合わせて確認しておくと、届出や体制の確認漏れを見つけやすくなります。
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。