精神科入退院支援加算とは
みらい(新人医療事務)
先輩、精神科病棟のカルテを見ていたら「精神科入退院支援加算」という名前を見つけました。これってどんな加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
精神科の入院患者さんが、安心して退院・転院できるように支援した場合に算定候補になる加算ですよ。令和8年度(2026年度)の告示では、区分A246-2として整理されています。
みらい(新人医療事務)
入退院支援というと、一般病棟にもある入退院支援加算と似た仕組みですか?
あおい(元・医療事務)
考え方は近いですが、こちらは精神病棟・精神療養病棟等に入院している患者さんを対象にした専用の加算です。退院時に1回だけ算定できる点数になっています。
みらい(新人医療事務)
名前だけだと「退院のときに何かすればもらえる」ように見えてしまいますが、実際はどうなんでしょう?
あおい(元・医療事務)
そこは慎重に確認したいところです。対象患者の条件や、施設基準の届出があるかどうかで算定候補になるかが変わってきます。順番に見ていきましょう。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
まず、どんな医療機関が対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
入院基本料等加算(A章)に区分される加算なので、精神病棟入院基本料や精神療養病棟入院料など、精神科入退院支援加算を算定できる入院料を算定している病院が対象になります。診療所は対象外です。
みらい(新人医療事務)
患者さん側の条件も何かあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生局長等に届け出た保険医療機関が、次のいずれかの入退院支援を行った場合に、退院時1回に限り算定候補になります。
算定要件の2つのパターン
イ(在宅療養希望のケース): 退院困難な要因を有する入院中の患者であって、在宅での療養を希望する方に対して入退院支援を行った場合。ただし、精神科入退院支援加算を算定できる入院基本料・特定入院料を現に算定している患者に限られます。 ロ(連携転院を受け入れたケース): 連携する他の保険医療機関で当該加算を算定した患者の転院(1回の転院に限る)を受け入れ、その患者に入退院支援を行った場合。
みらい(新人医療事務)
イとロ、どちらか一方を満たせばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。どちらのパターンに当てはまるかを、まず自院のケースに当てはめて確認する必要があります。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
肝心の点数はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の告示(区分A246-2)では、次のように整理されています。
| 区分 | 内容 | 点数 |
|---|---|---|
| 精神科入退院支援加算 | 退院時1回に限り算定 | 1,000点 |
| 精神科措置入院退院支援加算(注2) | 措置入院患者の退院支援を行った場合に上乗せ | 300点 |

みらい(新人医療事務)
300点の方は別の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
注2に規定された上乗せ算定です。次の章で詳しく説明しますね。
精神科措置入院退院支援加算(注2の上乗せ算定)
みらい(新人医療事務)
措置入院の患者さんって、退院支援の内容も違うんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。精神保健福祉法第29条または第29条の2に規定する入院措置に係る患者について、都道府県、保健所を設置する市または特別区と連携して退院に向けた支援を行った場合に、精神科措置入院退院支援加算として、退院時1回に限り、300点をさらに所定点数に加算する、という規定になっています。
みらい(新人医療事務)
つまり措置入院の患者さんは、行政との連携が条件になるということですね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。一般の患者さんの入退院支援(イ・ロ)とは条件が異なるので、対象患者が措置入院かどうかを最初に確認しておくと整理しやすいですよ。
併算定できない加算(除外規定)
みらい(新人医療事務)
他の加算と一緒に算定できないケースもあるんですよね?
あおい(元・医療事務)
あります。告示の注1では、次の加算・料金を算定する場合は精神科入退院支援加算を算定できない、と明記されています。
| 除外対象 | 区分 |
|---|---|
| 精神保健福祉士配置加算 | A103精神病棟入院基本料の注8 |
| 精神保健福祉士配置加算 | A312精神療養病棟入院料の注5 |
| 精神科地域移行実施加算 | A230-2 |
| 精神科退院指導料 | I011 |
併算定チェックを忘れずに
上記の加算・料金をすでに算定している患者については、精神科入退院支援加算を重ねて算定することはできません。レセプト作成前に、同一患者で他の入退院支援関連の加算・指導料を算定していないかを必ず確認してください。
みらい(新人医療事務)
名前が似ている加算が多くて、混同しそうです。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。特に精神科退院指導料(I011)は名前が似ているので、算定履歴を見落とさないようにしたいですね。
施設基準
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は具体的に何を満たせばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の施設基準告示では、精神科入退院支援加算の施設基準として、次のような体制整備が挙げられています。
自院で確認する順番
- 院内に、入退院支援及び地域連携業務を担う部門が設置されていること
- その部門に、入退院支援・地域連携業務の十分な経験を有する専従の看護師または専従の精神保健福祉士が配置されていること
- 専従の看護師が配置されている場合は専任の精神保健福祉士が、専従の精神保健福祉士が配置されている場合は専任の看護師が、それぞれ配置されていること
- 各病棟に、入退院支援・地域連携業務に専従として従事する専任の看護師または精神保健福祉士が配置されていること
- その他、入退院支援等を行うにつき十分な体制が整備されていること
みらい(新人医療事務)
「専従」と「専任」が混ざっていて、ちょっと難しいです。
あおい(元・医療事務)
はい、ここは慎重に確認したいポイントです。専従・専任の使い分けや人員配置の実態は、自院の届出状況・公式資料に照らして確認が必要です。当サイトの整理は一次資料に基づいていますが、最終的な判断は届出資料と地方厚生局への確認をおすすめします。
取り漏れが起きやすいポイント
入退院支援を担う部門はあっても、専従・専任の要件を満たす人員配置が病棟単位で確認できておらず、届出内容と実態がずれているケースがあります。人事異動があった際は、専従・専任の配置が継続しているかを定期的に見直すと安心です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
今回、当サイトが確認できた一次資料(令和8年厚生労働省告示第69号・第70号)の範囲では、精神科入退院支援加算そのものの新設・廃止や点数の変更を示す記載は見つかっていません。前回改定(令和6年度)からの変更点は、今回確認できた一次資料の範囲では特定されていません(確認日: 2026年7月)。
みらい(新人医療事務)
「変わっていない」と言い切れるわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。改定のたびに施設基準の細かい表現が調整されることもあるので、断定はできません。詳細な改定履歴は、厚生労働省の疑義解釈資料や個別改定項目についての資料でも確認しておくと安心です。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、私たちの病院ではどう確認していけばいいんでしょう?
あおい(元・医療事務)
次の順番で見ていくとわかりやすいですよ。
自院で確認する順番
- 精神病棟入院基本料・精神療養病棟入院料等、精神科入退院支援加算を算定できる入院料を算定している患者かを確認する
- 施設基準の届出(部門設置・専従/専任の看護師または精神保健福祉士の配置)が地方厚生局に提出されているかを確認する
- 対象患者が「退院困難な要因があり在宅療養を希望する患者(イ)」か「連携医療機関からの転院受け入れ患者(ロ)」に該当するかを確認する
- 措置入院患者の場合は、精神科措置入院退院支援加算(300点)の要件である行政との連携実績があるかを確認する
- 精神保健福祉士配置加算・精神科地域移行実施加算・精神科退院指導料など、併算定できない加算を同一患者で算定していないかを確認する

みらい(新人医療事務)
この順番で見ていけば、算定候補かどうかの整理がしやすそうです。
あおい(元・医療事務)
特に3と5は見落としやすいので、レセプト担当と病棟担当で情報を共有しながら確認するのがおすすめです。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
精神科病棟に関連する他の加算とはどう違うんですか?
あおい(元・医療事務)
たとえば精神科隔離室管理加算は、隔離室での管理体制に着目した加算で、退院支援そのものを評価するものではありません。依存症入院医療管理加算も対象患者や算定の趣旨が異なります。名前が似ている加算は、それぞれの算定要件を別々に確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
退院支援を行ったこと自体は、どうやって記録しておけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
退院困難な要因の評価や、支援の実施内容、連携先とのやり取りなど、算定要件に対応する記録を残しておくことが前提になります。記録の様式や保管方法は、自院の運用と公式資料の記載内容をあわせて確認してください。
みらい(新人医療事務)
転院を受け入れた場合(ロ)は、何回でも算定できますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、告示では「1回の転院に限る」と明記されています。同じ患者について複数回の転院受け入れがあっても、算定は1回に限られる点に注意が必要です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。