みらい(新人医療事務)
「精神科急性期医師配置加算」って名前は聞いたことがあるんですけど、うちのような一般病院でも関係あるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
これは精神科の病棟がある病院向けの入院基本料等加算です。精神病棟に常勤の医師を手厚く配置していることを評価する加算で、令和8年度(2026年度)も区分A249として設けられています。診療所や外来では算定対象になりません。
みらい(新人医療事務)
「手厚く配置」というのは、具体的にどれくらい医師がいればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、この加算の趣旨がこう説明されています。「精神科急性期医師配置加算は、精神症状とともに身体疾患又は外傷を有する患者の入院医療体制を確保している保険医療機関の精神病棟や、急性期の精神疾患患者及び治療抵抗性統合失調症患者(クロザピンの新規導入を目的とした患者に限る。)に密度の高い入院医療を提供する精神病棟において、医師を手厚く配置することを評価したものである」とされています。単に医師が多いだけでなく、急性期の精神疾患やクロザピン導入といった密度の高い医療を担う病棟が対象になります。
対象医療機関・対象病棟
みらい(新人医療事務)
どんな病棟が対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
告示の注では、対象患者をこう定めています。「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た病棟に入院している患者(第1節の入院基本料(特別入院基本料等を除く。)又は第3節の特定入院料のうち、精神科急性期医師配置加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)について、当該基準に係る区分に従い、それぞれ所定点数に加算する」となっています。つまり、精神病棟入院基本料や精神科急性期治療病棟入院料など、精神科の入院基本料・特定入院料を現に算定している病棟が前提です。
みらい(新人医療事務)
なるほど、病棟の種類ごとに算定できる区分が違うんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。施設基準の通知を見ると、区分ごとに対象になる病棟が分かれています。整理すると次の表のとおりです。
| 加算区分 | 主な対象病棟 | 点数 |
|---|---|---|
| 精神科急性期医師配置加算1 | 施設基準(4項目)を満たす精神病棟(複数の入院基本料・特定入院料が対象になり得る) | 600点 |
| 精神科急性期医師配置加算2 イ | 精神病棟入院基本料(10対1・13対1・15対1)、特定機能病院入院基本料(精神病棟) | 500点 |
| 精神科急性期医師配置加算2 ロ | 精神科急性期治療病棟入院料 | 450点 |
| 精神科急性期医師配置加算3 | 精神科急性期医師配置加算2に準じる病棟(移行率等の基準を緩和した区分) | 400点 |
対象は診療所・外来には及びません
この加算は入院基本料等加算(A章)であり、対象は病院の入院患者に限られます。診療所や外来診療では算定対象になりません。自院が該当するかは、まず精神病棟の入院基本料・特定入院料の種類を確認してください。
点数(令和8年度・1日につき)

みらい(新人医療事務)
点数はさっきの表の通りでいいんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい、告示本文の点数区分をそのまま引用すると次のとおりです。「1 精神科急性期医師配置加算1 600点/2 精神科急性期医師配置加算2 イ 精神病棟入院基本料等の場合 500点 ロ 精神科急性期治療病棟入院料の場合 450点/3 精神科急性期医師配置加算3 400点」。単位は1日につきで、月単位ではありません。
みらい(新人医療事務)
1日ごとにこの点数が加算される、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。ただし届出をしている病棟に現に入院している患者に限られるので、届出前の期間や対象病棟以外への入院では算定候補になりません。
施設基準(医師配置・自宅等移行率・クロザピン実績)
みらい(新人医療事務)
ここが一番気になるところです。医師の配置人数って、具体的に決まっているんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、施設基準の通則にはっきり書かれています。「当該病棟における常勤の医師は、当該病棟の入院患者の数が16又はその端数を増すごとに1以上配置されていること。なお、当該病棟における常勤の医師は、他の病棟に配置される医師と兼任はできない」とされています。つまり入院患者16人ごとに常勤医師1人以上が必要で、他病棟との兼任医師をカウントすることはできません。
みらい(新人医療事務)
兼任できないというのは結構厳しい基準ですね。区分ごとに追加の要件もあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。加算1の施設基準は次の4項目です。まず、措置入院患者・鑑定入院患者・医療観察法入院患者・クロザピン新規導入目的の入院患者を除いた新規入院患者のうち6割以上が、入院日から起算して3月以内に退院し自宅等へ移行すること。次に、クロザピンを新規に導入した実績が過去5年間に15件、または過去1年間に3件以上であり、かつクロザピンを使用する患者数が年間6人以上であること。さらに、精神疾患に係る時間外・休日・深夜の外来診療(電話等再診を除く)が年間20件以上、かつ入院件数が年間8件以上であること。最後に、当該病棟に常勤の精神保健指定医が2名以上配置されていることです。
加算2イ(精神病棟入院基本料等の場合)の主な要件
精神病床を除く病院全体の許可病床数が100床(一定地域では80床)以上で内科・外科・耳鼻科・眼科・整形外科・精神科を標榜していること、精神病床の許可病床数が病院全体の50%未満かつ届出精神病棟が2病棟以下であること、24時間の救急医療提供体制(第二次救急・救命救急センター・高度救命救急センター・総合周産期母子医療センター等、またはこれと同様に24時間救急患者を受け入れる体制)があること、精神科リエゾンチーム加算の届出を行っていること、直近3か月の新規入院患者の5%以上が精神科身体合併症管理加算の対象患者であること、救急搬送された身体疾患合併の精神疾患患者を病院到着後12時間以内に毎月5人以上(直近3か月平均)診察する体制があることが求められます。
みらい(新人医療事務)
加算2のロ(精神科急性期治療病棟入院料の場合)は、また別の基準なんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準通知では「2の(1)及び(3)を満たすものであること」とされていて、加算1の基準のうち自宅等移行率6割以上の要件と、精神疾患に係る時間外・休日・深夜の外来診療が年間20件以上かつ入院件数が年間8件以上という要件(加算1の(3)と同じ)を満たせばよいとされています。加算3については、自宅等移行率が4割以上(要介護認定を申請し介護老人保健施設等へ退院した場合は4月以内でも可)、クロザピン新規導入実績が過去5年間10件または過去1年間2件以上かつ使用患者数年間4人以上、そして加算1と同じ時間外等外来・入院件数の要件を満たすことが必要です。
施設基準の充足は自院での確認が必要です
医師の配置人数、自宅等移行率、クロザピンの実績件数、精神保健指定医の配置数はいずれも自院の実績データに基づく基準です。記事の内容だけで充足を判断せず、自院の入院・退院データやクロザピン使用実績を確認したうえで、施設基準を満たすかどうかを個別に確認する必要があります。
届出
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たしていたら、あとは待っていれば算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、届出が前提です。施設基準通知には「精神科急性期医師配置加算に係る届出は別添7の様式40の13及び様式53を用いること」と定められています。届出を行い、地方厚生局長等に受理されて初めて、その病棟に入院する患者について算定候補になります。届出が済んでいない期間は、施設基準を満たしていても算定候補にはなりません。
算定タイミング・注意点
みらい(新人医療事務)
実務でつまずきやすいポイントはありますか?
あおい(元・医療事務)
クロザピンの実績カウントで注意が必要です。疑義解釈では「『A249』精神科急性期医師配置加算1の施設基準において、『入院又は外来においてクロザピンを使用する患者数が年間に6人以上であること。』とあるが、入院及び外来でクロザピンを使用する1人の患者は、当該要件において2人とカウントすることは可能か」という質問に対し、「不可。なお、精神科急性期医師配置加算3の施設基準においても同様の取扱いである」と回答されています。同じ患者を入院と外来で二重にカウントすることはできません。
みらい(新人医療事務)
自宅等への移行率の数え方も細かそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。疑義解釈では、退院後に一定の施設へ入所した場合の扱いや、再入院時の移行率算入の考え方についても具体的な回答が示されています。例えば、退院先が例示された介護老人保健施設・介護医療院・特別養護老人ホーム以外でも、特定施設入居者生活介護や共同生活援助など一定の施設に退院した場合は同様の取扱いになるとされ、また身体合併症の再発による再入院など、入院期間が通算されない再入院であれば自宅等へ移行した者として計上できるとされています。移行率の算定は自院の退院先データを丁寧に確認する必要があります。
精神保健指定医の兼務についての取扱い
疑義解釈では、精神科急性期医師配置加算1などの施設基準で配置が求められる常勤の精神保健指定医について、配置されている病棟での業務に従事したうえで外来業務等それ以外の業務に従事することは可能とされています。ただし施設基準の通則にある「他の病棟に配置される医師との兼任不可」という配置医師数のカウント上のルールとは別の論点なので、両方を混同しないよう自院で確認しておくとよいでしょう。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
前回の改定と比べて、何か変わった点はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集している一次資料の範囲では、令和6年度からの点数や施設基準の大きな変更点は確認されていません(確認日: 2026年7月)。疑義解釈(その27、2025年5月29日発出)では、精神科急性期医師配置加算1の施設基準における精神保健指定医の配置について令和6年度の時点ですでに同様の枠組みが運用されていたことがうかがえます。令和8年度も引き続き同じ加算区分(1〜3)と点数構成が維持されている状況です。
改定差分は限定的な確認範囲です
この記事の改定差分の確認は、当サイトが収集している厚労省の一次資料(告示・留意事項通知・疑義解釈)の範囲に限られます。より詳細な経年変化を確認したい場合は、厚生労働省の令和8年度診療報酬改定の特設ページで最新の告示・通知をご確認ください。
参考にした公式資料
みらい(新人医療事務)
この記事の内容は、どの資料をもとに書かれているんですか?
あおい(元・医療事務)
点数区分は厚生労働省の告示「診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)」、施設基準は「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第7号)」、実務上の疑問点は厚生労働省の疑義解釈資料に基づいています。厚生労働省の令和8年度診療報酬改定の特設ページ(令和8年度診療報酬改定について)や疑義解釈の一覧ページ(疑義解釈資料の送付について)から、最新の告示・通知本文を確認できます。
自院で確認する順番

自院で確認する順番
自院の精神病棟が、精神病棟入院基本料・特定機能病院入院基本料(精神病棟)・精神科急性期治療病棟入院料のいずれかを算定しているか確認する 当該病棟の常勤医師数が、入院患者16人ごとに1人以上(他病棟との兼任を除く)を満たしているか確認する 狙う区分(加算1・2イ・2ロ・3)に応じて、自宅等移行率、クロザピンの新規導入実績・使用患者数、時間外等の外来・入院件数、精神保健指定医の配置数などの実績データを集計する 加算2イを狙う場合は、病床数・標榜科・精神病床割合・24時間救急体制・精神科リエゾンチーム加算の届出状況など病院全体の体制も確認する 様式40の13及び様式53を用いて地方厚生局長等へ届出を行う
よくある取り漏れ
見落としやすいポイント
自宅等移行率の分母から除外される患者(措置入院患者・鑑定入院患者・医療観察法入院患者・クロザピン新規導入目的の入院患者)を正しく除外できているか、クロザピンの実績件数を入院・外来で二重カウントしていないか、精神保健指定医の配置人数が加算区分ごとの要件(加算1は2名以上)を満たしているかは、自院の集計で誤りが生じやすい項目です。届出前に実績データを再点検することをおすすめします。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
加算1と加算3、どちらを目指せばいいのか迷いそうです。
あおい(元・医療事務)
どちらが有利かは一律には言えません。加算1は自宅等移行率6割以上・精神保健指定医2名以上などクロザピン実績も含めて要件が手厚い分、点数も600点と高く設定されています。一方、加算3は自宅等移行率4割以上など要件がやや緩やかな分、400点になっています。自院の実績データと体制を踏まえて、どの区分の施設基準を満たせるかを個別に確認することが必要です。
みらい(新人医療事務)
診療所でも算定候補になることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ。この加算は入院基本料等加算(A章)に位置づけられており、対象は病院の精神病棟に入院する患者に限られます。診療所や外来では対象外です。
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たしていれば、届出をしなくても算定できますか?
あおい(元・医療事務)
できません。施設基準に適合しているだけでは足りず、地方厚生局長等への届出(様式40の13及び様式53)が受理されて初めて、その病棟に入院する患者について算定候補になります。届出の有無は必ず確認が必要です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する 精神病棟入院時医学管理加算 や 精神病棟入院基本料 も同じ精神科領域の加算として合わせて確認しておくと、届出や体制の確認漏れを見つけやすくなります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。