みらい(新人医療事務)
先生、「がんゲノムプロファイリング評価提供料」って名前は聞いたことがあるんですけど、正直まだピンときていなくて…。うちのクリニックでも関係あるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
がん診療に関わる医療機関だと気になりますよね。区分番号はB011-5で、令和8年度の点数表では12,000点が設定されています。ただし対象になるのは、がんゲノムプロファイリング検査(区分番号D006-19)を実施し、その結果をエキスパートパネルで検討したうえで患者さんに説明した場合に限られます。まずは何のための加算なのか、順番に確認していきましょう。
がんゲノムプロファイリング評価提供料とは
みらい(新人医療事務)
そもそも、この加算はどんな場面で出てくるものなんですか?
あおい(元・医療事務)
がん患者さんの腫瘍組織や血液を使って、100以上のがん関連遺伝子を一度に調べる「がんゲノムプロファイリング検査(D006-19)」という検査があります。この検査で得られた包括的なゲノムプロファイルの結果を、がん薬物療法や遺伝医学の専門知識を持つ医師、遺伝カウンセリング技術を持つ人などによる検討会(エキスパートパネル)で検討し、治療方針等を文書で患者さんに説明した場合に、B011-5として評価される仕組みです。告示の注書きには次のように書かれています。
告示の注(原文)
対象検査: 区分番号D006-19に掲げるがんゲノムプロファイリング検査により得られた包括的なゲノムプロファイルの結果について評価する加算です。 検討の主体: がん薬物療法又は遺伝医学に関する専門的な知識及び技能を有する医師、遺伝カウンセリング技術を有する者等による検討会(エキスパートパネル)での検討が前提です。 回数: 患者1人につき1回に限り算定するとされています。
あおい(元・医療事務)
つまり、単独で算定できる加算ではなく、D006-19の検査実施が前提になっている点がポイントです。検査を実施していない段階では、この加算の対象にはなりません。
点数とコードの整理(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数だけでも整理しておきたいです。
あおい(元・医療事務)
前提となるD006-19の点数も含めて表にまとめますね。
| 区分番号 | 名称 | 点数 | 年度 |
|---|---|---|---|
| B011-5 | がんゲノムプロファイリング評価提供料 | 12,000点 | 令和8年度 |
| D006-19「1」 | がんゲノムプロファイリング検査(固形腫瘍を対象とする場合) | 44,000点 | 令和8年度 |
| D006-19「2」 | がんゲノムプロファイリング検査(造血器腫瘍又は類縁疾患を対象とする場合) | 44,000点 | 令和8年度 |

みらい(新人医療事務)
D006-19の方は、地方厚生局への届出が必要な検査なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。D006-19の告示には「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において実施した場合に限り算定する」と明記されています。検査自体は届出制の施設基準がはっきりしている一方で、B011-5の告示の注には「届け出た」という語がなく、「別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において」とだけ記載されています。この表現の違いは後ほど施設基準・届出のセクションで詳しく見ていきます。
算定要件(固形腫瘍と造血器腫瘍で条件が分かれる)
みらい(新人医療事務)
固形腫瘍か、血液のがんかで条件が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、留意事項通知では次のように整理されています。
留意事項通知(原文抜粋)
固形腫瘍の場合: D006-19「1」固形腫瘍を対象とする場合を行った場合であって、得られた包括的なゲノムプロファイルの結果を医学的に解釈するための多職種(がん薬物療法に関する専門的な知識及び技能を有する医師、遺伝医学に関する専門的な知識及び技能を有する医師、遺伝カウンセリング技術を有する者等)による検討会(エキスパートパネル)で検討を行った上で、治療方針等について文書を用いて患者に説明した場合に患者1人につき1回に限り算定する。 造血器腫瘍等の場合: D006-19「2」造血器腫瘍又は類縁疾患を対象とする場合を行った場合であって、エキスパートパネルで検討を行った上で、治療方針等について文書を用いて患者に説明した場合に造血器腫瘍又は類縁疾患の同一疾患につき1回に限り算定する。
あおい(元・医療事務)
造血器腫瘍のケースでは「同一疾患につき1回」という表現になっていて、固形腫瘍の「患者1人につき1回」とは回数の数え方が少し異なる点に注意が必要です。
エキスパートパネルを省略できる場合
みらい(新人医療事務)
検討会って、必ず開かないといけないものなんですか? 省略できる場合もあるって聞いた気がします。
あおい(元・医療事務)
固形腫瘍を対象とする場合に限り、一定の条件を満たせばエキスパートパネルを省略しても差し支えないとされています。留意事項通知の原文では、ア・イ・ウの条件が示されています。
エキスパートパネル省略の条件(原文に基づく整理)
ア: D006-19「1」固形腫瘍を対象とする場合を行った場合であること。 イ: C-CAT調査結果において、二次的所見を疑う病的変異が検出されない場合であること。 ウ①: 検査により得られた遺伝子変異に基づいて投与可能な医薬品が存在する場合(検査に用いた体外診断用医薬品若しくは医療機器の薬事承認若しくは認証された使用目的又は関連学会の定める指針に従う場合に限る)。 ウ②: C-CAT調査結果において、検査により得られた遺伝子変異に基づいて投与可能な医薬品が、臨床試験又は治験等も含め存在しない場合。
あおい(元・医療事務)
イとウの判断にあたっては、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の調査結果を参照することとされています。省略できるかどうかは個別の検査結果に左右されるため、自院だけで判断せず、C-CATの調査結果と照らし合わせて確認することが必要です。
みらい(新人医療事務)
C-CATって、名前は見たことがありますけどよくわかっていませんでした。
C-CATへのデータ提出について
あおい(元・医療事務)
C-CATは、がんゲノム医療の情報を集約する厚生労働省委託の管理センターです。留意事項通知には、検査実施時に患者さんから得られた同意に基づいて、遺伝子のシークエンスデータ(FASTQ、BAM又はCRAM)、解析データ(VCF、XML、YAML又はJSON)及び臨床情報等を、保険医療機関又は検査会社等からC-CATに提出した場合に算定するとされています。ただし、患者さんから同意が得られなかった場合は、この限りではないとも書かれています。
みらい(新人医療事務)
同意が得られなかったら、加算自体が算定できなくなるんですか?
あおい(元・医療事務)
通知の文言上は「同意に基づき…提出した場合に算定する。ただし、同意が得られなかった場合は、この限りではない」とされており、同意の有無によって取り扱いが変わる仕組みです。実際の運用でどう扱うかは、記載内容だけで断定せず、自院の状況に応じて確認することをおすすめします。あわせて、データ提出の手続きにあたっては個人情報の保護に係る諸法令を遵守することも明記されています。
施設基準・届出(現時点で確認できていること・できていないこと)
みらい(新人医療事務)
さっき出てきた「別に厚生労働大臣が定める施設基準」って、具体的にはどんな内容なんですか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、告示の注書きには「別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において」という記載があるだけで、当サイトが収録している一次資料の範囲では、B011-5そのものの施設基準の個別項目(人員配置や実施体制の詳細など)までは確認できていません。
みらい(新人医療事務)
そうなんですね…。じゃあ、確認する手がかりはないんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
参考として、同じくがんゲノム医療に関わる「がんゲノム拠点病院加算」という関連加算では、施設基準が「がんゲノム医療中核拠点病院等の整備について」(令和4年8月1日健発0801第18号厚生労働省健康局長通知)に基づく指定とされています。これはあくまで別の加算(がんゲノム拠点病院加算)についての記載であり、B011-5自体の施設基準・届出要否を直接示すものではない点にご注意ください。B011-5の施設基準・届出要否については、地方厚生局や公式の施設基準届出様式で個別に確認が必要です。がんゲノム拠点病院加算 の記事でも、がんゲノム医療に関わる施設の指定制度について整理していますので、あわせて確認してみてください。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
タイミングや回数の制限で、気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
固形腫瘍の場合は「患者1人につき1回に限り」、造血器腫瘍又は類縁疾患の場合は「同一疾患につき1回に限り」という違いがあります。同じ患者さんでも疾患が変われば、再度算定できる可能性があるという整理です。
算定候補として確認したいポイント
D006-19(がんゲノムプロファイリング検査)を実施していない段階では、B011-5は算定候補になりません。検査結果をエキスパートパネルで検討した記録、または省略要件(ア・イ・ウ)を満たすことを示す記録が必要です。治療方針等の説明を「文書を用いて」行ったことも要件のひとつであり、口頭説明のみでは要件を満たさない可能性があります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から何か変わった点はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
前回改定(令和6年度)からの変更点について、当サイトが収録している一次資料の範囲では変更は確認されていません。今回ご紹介した12,000点という点数、エキスパートパネルでの検討やC-CATへのデータ提出といった要件は、いずれも令和8年度の告示・留意事項通知(令和8年3月5日保医発0305第6号)に基づく記載です。改定年度をまたいで内容を参照する際は、必ず年度を確認したうえで最新の一次資料にあたるようにしてください。

自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
情報が多くて、どこから手をつけたらいいか迷います…。
あおい(元・医療事務)
確認する順番を整理しておきますね。
自院で確認する順番
施設基準の確認: 告示上の「別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関」に該当するかを、地方厚生局や公式資料で確認する。 D006-19の実施状況の確認: がんゲノムプロファイリング検査(固形腫瘍または造血器腫瘍)を実施し、包括的なゲノムプロファイルの結果を得ているかを確認する。 エキスパートパネルの検討記録の確認: 多職種による検討会を実施した記録、または省略要件(ア・イ・ウ)を満たすことを示す記録が残っているかを確認する。 説明文書の確認: 治療方針等について、文書を用いて患者に説明した記録があるかを確認する。 C-CATへのデータ提出状況の確認: 患者の同意に基づき、シークエンスデータ・解析データ・臨床情報等をC-CATに提出したかを確認する。同意が得られなかった場合の記録もあわせて残す。
あおい(元・医療事務)
この順番で確認していくと、抜け漏れに気づきやすくなります。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな見落としってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
いくつか整理してみますね。
見落としやすいポイント①
D006-19の検査結果が出た段階で満足してしまい、エキスパートパネルでの検討や文書での説明といった、B011-5側の要件を満たす記録が残っていないケースがあります。検査と評価提供料は別の要件セットだと意識しておくことが大切です。
見落としやすいポイント②
固形腫瘍と造血器腫瘍で「患者1人につき1回」「同一疾患につき1回」と回数の数え方が異なるため、同じ感覚でカウントしてしまうと算定回数を誤る可能性があります。疾患区分ごとに整理して記録しておくと確認しやすくなります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。