みらい(新人医療事務)
循環器内科のあるクリニックさんから「心大血管疾患リハビリテーション料」について聞かれたんですけど、正直まだよくわかっていなくて…。これって心臓リハビリのことですよね?
あおい(元・医療事務)
そうです。区分番号H000「心大血管疾患リハビリテーション料」ですね。心筋梗塞や狭心症、心臓の手術のあとの患者さんなどに対して、運動療法を中心としたリハビリテーションを行ったときに算定候補になる点数です。令和8年度(2026年度)の診療報酬でも、(Ⅰ)と(Ⅱ)の2区分に分かれています。
みらい(新人医療事務)
2区分あるんですね。何が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
ひとつは施設基準の厳しさ、もうひとつは点数です。(Ⅰ)のほうが人員配置・設備の要件が手厚く、点数も高くなります。(Ⅱ)は循環器内科・心臓血管外科の常勤医師体制などの要件が(Ⅰ)よりゆるやかに設定されている代わりに、点数は下がります。どちらも「循環器内科又は心臓血管外科の医師が心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する」ことが前提になっている点は共通です。
みらい(新人医療事務)
なるほど。まずは点数から教えてください。
心大血管疾患リハビリテーション料の点数(令和8年度)
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表(区分番号H000)では、次のとおり定められています。1単位あたりの点数で、理学療法士・作業療法士・医師・看護師のいずれが実施しても、また集団療法であっても、同じ区分の中では点数は変わりません。
| 区分 | 実施者 | 点数(1単位) |
|---|---|---|
| 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ) | 理学療法士による場合 | 205点 |
| 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ) | 作業療法士による場合 | 205点 |
| 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ) | 医師による場合 | 205点 |
| 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ) | 看護師による場合 | 205点 |
| 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ) | 集団療法による場合 | 205点 |
| 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ) | 理学療法士による場合 | 125点 |
| 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ) | 作業療法士による場合 | 125点 |
| 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ) | 医師による場合 | 125点 |
| 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ) | 看護師による場合 | 125点 |
| 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ) | 集団療法による場合 | 125点 |

みらい(新人医療事務)
へえ、実施した職種で点数が変わるわけじゃないんですね。どちらの区分になるかで決まると。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。そしてこの点数は「無条件で使える」わけではなく、治療開始日から150日を限度に算定するのが原則です。厚生労働省の告示(医科点数表 区分番号H000)の注1には、次のように定められています。
告示の原文(要点)
算定日数の限度: 「別に厚生労働大臣が定める患者に対して個別療法又は集団療法であるリハビリテーションを行った場合に、当該基準に係る区分に従って、治療開始日から150日を限度として所定点数を算定する。ただし、別に厚生労働大臣が定める患者について、治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合その他の別に厚生労働大臣が定める場合には、150日を超えて所定点数を算定することができる」(告示・区分番号H000 注1)。
みらい(新人医療事務)
150日を超えても算定できる場合があるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい、対象患者の範囲や医学的判断の要件が細かく定められていますので、150日を超えるケースは、自院の患者さんが該当するかどうかを一つずつ確認する必要があります。また、標準的算定日数を超えて実施する場合は、注6により「1月に13単位を限度として算定できる」とされています。
みらい(新人医療事務)
施設基準も気になります。うちのクリニックでも取れる可能性ってあるんでしょうか?
施設基準(Ⅰ)の確認ポイント
あおい(元・医療事務)
心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)の施設基準は、特掲診療料の施設基準等(令和8年3月5日付 保医発0305第8号)第9に定められています。主なポイントは次の3つです。
自院で確認する順番
- 医師体制: 循環器内科又は心臓血管外科を標榜する届出保険医療機関で、循環器内科又は心臓血管外科の医師が実施時間帯に常時勤務し、かつ心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する専任の常勤医師が1名以上勤務していること。急変時に対応できる体制も必要です。
- 理学療法士・看護師の人員: 心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する専従の常勤理学療法士及び専従の常勤看護師が合わせて2名以上、または専従の常勤理学療法士か専従の常勤看護師のいずれか一方が2名以上勤務していること(いずれの組み合わせでも1名は専任の従事者で差し支えない)。
- 専用の機能訓練室と器械・器具: 病院は内法30平方メートル以上、診療所は内法20平方メートル以上の専用の機能訓練室を有し、酸素供給装置・除細動器・心電図モニター装置・トレッドミル又はエルゴメータ・血圧計などの器械・器具、および運動負荷試験装置を備えていること。
あおい(元・医療事務)
原文では次のように定められています。
施設基準(Ⅰ)の原文(要点)
「心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する専従の常勤理学療法士及び専従の常勤看護師が合わせて2名以上勤務していること又は専従の常勤理学療法士若しくは専従の常勤看護師のいずれか一方が2名以上勤務していること。なお、いずれの組合せの場合であっても、うち1名は専任の従事者でも差し支えない」(特掲診療料の施設基準等 第9・令和8年3月5日保医発0305第8号)。
みらい(新人医療事務)
診療所でも20平方メートル以上の専用の訓練室が必要なんですね。それはハードルが高そう…。
あおい(元・医療事務)
そうですね。既存のリハビリ室を他の疾患別リハビリテーションと共有する場合は、実施時間帯が重ならなければ差し支えないとされていますが、面積や器械・器具はそれぞれの基準を満たす必要があります。ここは自院の設備を実際に測って確認するのが確実です。
みらい(新人医療事務)
(Ⅱ)のほうは基準がゆるやかって話でしたけど、具体的には?
施設基準(Ⅱ)との違い
あおい(元・医療事務)
(Ⅱ)の施設基準は、届出様式の記載上の注意(特掲診療料の施設基準に係る届出書 添付書類)に次のように示されています。
施設基準(Ⅱ)に関する届出様式の記載(要点)
「心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ)を届け出る場合、『標榜診療科』については記載が不要であるが、循環器内科又は心臓血管外科を担当する医師及び心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する医師が心大血管疾患リハビリテーションを実施する時間帯において常時勤務していなくてはならない」(特掲診療料の施設基準に係る届出書 記載上の注意)。
あおい(元・医療事務)
(Ⅰ)が「標榜診療科の医師が常時勤務」+「経験を有する専任の常勤医師1名以上」という2段構えの要件なのに対して、(Ⅱ)は循環器内科・心臓血管外科を担当する医師と経験を有する医師(非常勤も含む)が実施時間帯に勤務していればよい、という組み立てです。専従の理学療法士・看護師の人数要件や訓練室の細かい面積基準についても(Ⅰ)と(Ⅱ)で差があるため、詳しい要件は特掲診療料の施設基準等の原文で必ず確認してください。
みらい(新人医療事務)
なるほど、(Ⅱ)のほうが取り組みやすそうに見えますが、それでも医師の体制は必須なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。心大血管疾患リハビリテーションは、専任の医師の指導管理の下で実施することが前提です。留意事項通知では「医師が直接監視を行うか、又は医師が同一建物内において直接監視をしている他の従事者と常時連絡が取れる状態かつ緊急事態に即時的に対応できる態勢であること」と定められています。医師の関与なしに理学療法士だけで完結させることはできません。
対象になる患者と実施内容
みらい(新人医療事務)
そもそも、どんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知(令和8年保医発0305第6号)では、大きく2つのグループに分けられています。
対象患者の原文(要点)
「急性発症した心大血管疾患又は心大血管疾患の手術後の患者とは、急性心筋梗塞、狭心症、開心術後、経カテーテル大動脈弁置換術後、大血管疾患(大動脈解離、解離性大動脈瘤、大血管術後)のものをいう。なお、心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ)を算定する場合、急性心筋梗塞及び大血管疾患は発症後(手術を実施した場合は手術後)1月以上経過したものに限る」(留意事項通知)。
あおい(元・医療事務)
もう一つは慢性心不全や末梢動脈閉塞性疾患など、慢性の心大血管疾患で呼吸循環機能や日常生活能力が低下している患者さんです。たとえば慢性心不全であれば「左室駆出率が40%以下」「脳性Na利尿ペプチド(BNP)が80pg/mL以上」といった、いずれかの数値基準に該当することが目安として示されています。
みらい(新人医療事務)
数値で線引きされているんですね。実施時間はどれくらいなんですか?
あおい(元・医療事務)
標準的な実施時間は1回1時間(3単位)程度とされています。入院中でない患者さんについては、1日あたり1時間(3単位)以上、1週間で3時間(9単位)を標準とする、という定めになっています。実施にあたっては、日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会合同の「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」に基づいて行うことも求められています。
加算の種類にも要注意
みらい(新人医療事務)
基本の点数以外にも加算があるって聞きました。
あおい(元・医療事務)
はい、入院中の患者さんを対象にしたものを中心に、いくつかの加算が注に定められています。次の表にまとめました。
| 加算名 | 対象 | 点数 | 算定できる期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 早期リハビリテーション加算 | 入院中の対象患者 | 1単位60点(4日目以降は25点) | 入院した日から14日を限度 |
| 初期加算 | 入院中の対象患者 | 1単位45点 | 発症・手術・急性増悪から7日目又は治療開始日のいずれか早い方から14日を限度 |
| 急性期リハビリテーション加算 | 入院中の重症患者等 | 1単位50点 | 同上14日を限度 |
| 休日リハビリテーション加算 | 入院中の対象患者(休日実施) | 1単位25点 | 発症等から7日目又は治療開始日のいずれか早い方から30日目までを限度 |
| リハビリテーションデータ提出加算 | 入院外の対象患者 | 月1回50点 | データを継続提出している場合 |
算定タイミングの注意
これらの加算は、それぞれ算定できる患者・期間・要件が個別に定められており、単純に足し算できるとは限りません。たとえば急性期リハビリテーション加算の対象患者は、ADLの評価であるBIが10点以下など、留意事項通知に定められた具体的な基準に該当する必要があります。加算ごとに原文の要件を確認したうえで、自院の患者さんが該当するかを個別に判断することが必要です。
みらい(新人医療事務)
加算だけでもかなり細かいんですね…。
あおい(元・医療事務)
そうですね。特に急性期リハビリテーション加算は、診療報酬明細書の摘要欄に算定根拠となった要件を日毎に記載することも求められています。記録の運用まで含めて確認しておくと安心です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
心大血管疾患リハビリテーション料について、当サイトが収集している一次資料(令和8年度の医科点数表・留意事項通知)の範囲では、点数・算定要件・施設基準の主な内容に、前回改定(令和6年度)からの変更点は確認されていません(確認日: 2026年8月)。
改定差分の確認範囲
点数(205点/125点)、150日の算定日数制限、早期リハビリテーション加算・初期加算・急性期リハビリテーション加算・休日リハビリテーション加算・リハビリテーションデータ提出加算の各点数、施設基準(Ⅰ)の人員・設備要件について、令和8年度の一次資料の記載を確認しました。当サイトが保有する令和6年度時点の一次資料との突き合わせが十分でない項目もあるため、詳細な差分については厚生労働省の「個別改定項目について」等の公表資料もあわせてご確認ください。
あおい(元・医療事務)
改定のたびに算定要件や様式が細かく見直されることもあるので、「前回から変わっていないはず」と思い込まず、届出のタイミングで最新の一次資料を確認する習慣をつけておくと安心です。
自院が算定候補かを確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちのクリニックが対象になるか、どういう順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のような順番で確認していくとわかりやすいです。
自院で確認する順番
- 標榜科と医師体制の確認: 循環器内科又は心臓血管外科を標榜しているか、心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する医師が実施時間帯に勤務できるかを確認します。
- 人員体制の確認: 心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する専従の常勤理学療法士・常勤看護師を、必要人数配置できるかを確認します。
- 設備の確認: 専用の機能訓練室の面積(病院30平方メートル以上・診療所20平方メートル以上)と、酸素供給装置・除細動器・心電図モニター・運動負荷試験装置などの器械・器具の有無を確認します。
- 区分(Ⅰ)(Ⅱ)どちらに該当するかの判断: 上記1〜3の充足度に応じて、どちらの区分で届出可能かを判断します。
- 地方厚生(支)局への届出: 施設基準に適合しているものとして、地方厚生(支)局長に届出を行います。

みらい(新人医療事務)
こうして順番に並べてもらえると、何から手をつければいいかイメージできます。
あおい(元・医療事務)
特に専用の機能訓練室と人員体制は、他の疾患別リハビリテーションとの兼ね合いも出てくる部分なので、リハビリ部門と事務方で早めにすり合わせておくのがおすすめです。
よくある取り漏れ
見落としやすいポイント
150日超の取り扱い: 治療開始日から150日を超える患者さんについて、対象要件を確認しないまま算定を止めてしまい、本来算定できるはずの13単位/月の枠を使えていないケースがあります。 加算の重複算定可否: 早期リハビリテーション加算・初期加算・急性期リハビリテーション加算・休日リハビリテーション加算は、それぞれ別に算定できる場合とできない場合があり、対象患者の要件を取り違えると過大算定・過少算定のどちらのリスクもあります。 同一日の検査費用の取り扱い: 心大血管疾患リハビリテーション料の所定点数には、同一日に行われる心電図検査・負荷心電図検査・呼吸心拍監視等の費用が含まれています。別立てで算定してしまわないよう注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
加算の重複算定のところ、うっかり間違えそうです…。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。加算ごとに対象患者・算定できる期間・他の加算との併算定可否が細かく分かれているので、算定する前に留意事項通知の該当部分を都度確認するくせをつけておくと安全です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。