認知症患者リハビリテーション料ってどんな加算?
みらい(新人医療事務)
先輩、「認知症患者リハビリテーション料」っていう名前を初めて見たんですけど、これって普通のリハビリの加算とは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
区分番号でいうとH007-3ですね。名前のとおり、重度の認知症の患者さんに対して、行動・心理症状の改善や認知機能・社会生活機能の回復を目的に行うリハビリテーションに対する評価です。令和8年度(2026年度)の医科点数表でも240点(1日につき)として設定されています。
みらい(新人医療事務)
「重度の認知症の患者さん」って、具体的にはどういう患者さんなんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知では、対象になるのは「A314」認知症治療病棟入院料を算定している患者さん、または認知症疾患医療センターに入院している患者さんのうち、重度認知症(後で説明するランクM相当)に該当する方、と整理されています。誰にでも算定できる加算ではなく、入院先の要件と患者さんの状態の両方が絡む点が特徴です。
対象医療機関・対象患者を確認する
みらい(新人医療事務)
まず「うちの病院で対象になり得るか」を確認したいんですが、どこを見ればいいですか?
あおい(元・医療事務)
ポイントは2つです。1つ目は、患者さんが入院している病棟・医療機関の種類。2つ目は、患者さんの認知症の重症度です。厚生労働省の留意事項通知には、次のように書かれています。「認知症患者リハビリテーション料は、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届出を行った保険医療機関において算定するものであり、重度認知症の患者(「A314」認知症治療病棟入院料を算定する患者又は認知症疾患医療センターに入院している患者に限る。)に対して、認知症の行動・心理症状の改善及び認知機能や社会生活機能の回復を目的として、作業療法、学習訓練療法、運動療法等を組み合わせて個々の症例に応じて行った場合について算定する。」(厚生労働省 留意事項通知)
みらい(新人医療事務)
「重度認知症の患者」というのは、どうやって判断するんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では「ここでいう重度認知症の患者とは、「「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」の活用について」(平成18年4月3日老発第0403003号。基本診療料施設基準通知の別添6の別紙12及び別紙13参照)におけるランクMに該当するものをいう。ただし、重度の意識障害のある者(JCS(Japan Coma Scale)でⅡ-3(又は30)以上又はGCS(Glasgow Coma Scale)で8点以下の状態にある者)を除く。」と定義されています(厚生労働省 留意事項通知)。判定基準そのものは院内のカンファレンスや主治医の評価記録を確認する必要があるので、「なんとなく重そうだから対象」と自己判断しないことが大切ですね。
みらい(新人医療事務)
認知症疾患医療センターというのも初めて聞きました。
あおい(元・医療事務)
都道府県知事や指定都市市長が指定した、基幹型または地域型の認知症疾患医療センターのことです。自院がこれに該当するかどうかは指定状況を確認する必要があります。認知症治療病棟入院料(A314)を算定していない一般病棟でも、認知症疾患医療センターとしての指定があれば対象になり得る、という整理です。
点数・区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はさっき240点っておっしゃってましたけど、算定の単位も確認したいです。
あおい(元・医療事務)
表にすると次のとおりです。
| 区分番号 | 加算名 | 点数 | 算定単位 |
|---|---|---|---|
| H007-3 | 認知症患者リハビリテーション料 | 240点 | 1日につき |

あおい(元・医療事務)
加えて、算定できる期間と回数にも上限があります。厚生労働省の医科点数表の「注」には、「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、重度認知症の状態にある患者(区分番号A314に掲げる認知症治療病棟入院料を算定するもの又は認知症に関する専門の保険医療機関に入院しているものに限る。)に対して、個別療法であるリハビリテーションを20分以上行った場合に、入院した日から起算して1年を限度として、週3回に限り算定する。」と書かれています(厚生労働省告示・医科点数表)。
みらい(新人医療事務)
つまり「入院から1年以内・週3回まで・1回20分以上の個別リハビリ」という枠組みなんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。240点という点数だけでなく、この期間・回数の縛りをセットで押さえておかないと、算定が続けられなくなる月が出てきてしまいます。
施設基準を確認する
みらい(新人医療事務)
届け出るための施設基準がけっこう細かそうですね……。
あおい(元・医療事務)
はい、大きく分けると「医師の要件」「PT・OT・STの配置」「機能訓練室・器械器具」の3本柱です。まず医師の要件は、施設基準の通知で「認知症患者のリハビリテーションを行うにつき、十分な経験を有する専任の常勤医師が1名以上勤務していること。」と定められています(厚生労働省 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて)。
みらい(新人医療事務)
「十分な経験を有する」というのは、どのくらいの経験なんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準の通知では「十分な経験を有する専任の常勤医師とは、以下のいずれかの者をいう。ア認知症患者の診療の経験を5年以上有する者イ認知症患者のリハビリテーションに関し、適切な研修を修了した者」とされています(厚生労働省 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて)。つまり「認知症診療5年以上の経験」か「所定の研修(6時間以上・国や医療関係団体等が主催)を修了していること」のどちらかです。研修修了で要件を満たす場合は、修了証などの記録を確認しておく必要があります。なお、週3日以上・週22時間以上勤務する専任の非常勤医師を、一定のルールで常勤換算に算入できる取り扱いもあります。
みらい(新人医療事務)
医師以外の職種の要件はどうですか?
あおい(元・医療事務)
リハビリを直接担当する側の職種の要件です。施設基準の通知には「専従の常勤理学療法士、常勤作業療法士又は常勤言語聴覚士が1名以上勤務していること。」とあります(厚生労働省 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて)。さらに、リハビリを行う場所と道具についても「治療・訓練を十分実施し得る専用の機能訓練室を有していること。」という要件があります(厚生労働省 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて)。
施設基準チェックの落とし穴
専従と専任の違い: PT・OT・STは「専従」、医師は「専任」という言葉が使われています。専従の職員は、リハビリ以外の業務との兼任範囲が限定されるため、勤務実態が要件どおりか確認が必要です。 機能訓練室の共用: 「専用」の機能訓練室は、当該療法を実施する時間帯において専用であればよく、その時間帯以外に他の用途で使うこと自体は妨げられません。時間帯の運用ルールを院内で明確にしておくと安心です。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
施設基準がわかりました。じゃあ届出ってどうすればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準に適合していることを、地方厚生(支)局長に届け出て初めて算定できる仕組みです。届出をしていない期間にリハビリを実施しても、この加算では算定候補になりません。届出様式や添付書類は地方厚生局が案内している届出一覧・様式を確認するのが確実です。
届出は自己申告では完結しません
施設基準を満たしていると院内で判断していても、地方厚生(支)局への届出が受理されていなければ算定候補にはなりません。届出済みであれば候補になる、という前提で、まず届出の受理状況を確認してください。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
実際にリハビリを行うときの、算定の細かいルールも知りたいです。
あおい(元・医療事務)
誰が実施するかについても定めがあります。留意事項通知では「認知症患者リハビリテーション料は、対象となる患者に対して、認知症リハビリテーションに関して、十分な経験を有する医師の指導監督の下、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が個別に20分以上のリハビリテーションを行った場合に算定する。また、専任の医師が、直接訓練を実施した場合にあっても、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が実施した場合と同様に算定できる。」とされています(厚生労働省 留意事項通知)。
みらい(新人医療事務)
PT・OT・STが行う場合と、医師本人が行う場合の両方があるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。ただし1対1が原則で、人数の上限も決められています。「認知症患者リハビリテーション料を算定すべきリハビリテーションは、1人の従事者が1人の患者に対して重点的に個別的訓練を行う必要があると認められる場合であって、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士と患者が1対1で行うものとする。なお、当該リハビリテーションを実施する患者数は、従事者1人につき1日18人を上限とする。」と留意事項通知に定められています(厚生労働省 留意事項通知)。
あおい(元・医療事務)
さらに、リハビリテーション計画の作成にも要件があります。「認知症患者リハビリテーションを行う際には、定期的な医師の診察結果に基づき、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士等の多職種が共同してリハビリテーション計画を作成し、「H003-2」リハビリテーション総合計画評価料1を算定していること。」とされています(厚生労働省 留意事項通知)。
みらい(新人医療事務)
リハビリテーション総合計画評価料 を算定していることが前提なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい、多職種でリハビリ計画を作って、その評価料の1(H003-2の区分1)を算定していることが条件になっています。単独では成立せず、この評価料とセットで運用が組まれている加算です。
あおい(元・医療事務)
併算定については、明確な制限があります。留意事項通知には「認知症患者リハビリテーションを算定している患者について、疾患別リハビリテーション料、「H007」障害児(者)リハビリテーション料及び「H007-2」がん患者リハビリテーション料は別に算定できない。」と定められています(厚生労働省 留意事項通知)。
他のリハビリ料との重複算定に注意
同じ患者さんに、疾患別リハビリテーション料(脳血管疾患等・運動器・呼吸器など)、障害児(者)リハビリテーション料(H007)、がん患者リハビリテーション料(H007-2)を、同時に算定することはできません。レセプト作成時にどのリハビリ料で請求しているか、確認が必要です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
今回、当サイトが確認できた一次資料(厚生労働省の医科点数表・留意事項通知)の範囲では、認知症患者リハビリテーション料(H007-3)の点数・算定要件・施設基準について、前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません(確認日: 2026年8月・厚生労働省一次情報ベース)。
みらい(新人医療事務)
「確認されていない」というのは「絶対に変わっていない」という意味ではないんですか?
あおい(元・医療事務)
そうですね。当サイトが参照できる公式資料の範囲で差分が見当たらなかった、という意味に留めています。細かな告示・通知の改正や疑義解釈が別途出ている可能性もあるので、直近の改定情報や疑義解釈は随時確認していただくのが確実です。断定はせず、確認できる範囲での整理としてお伝えしています。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
情報が多いので、確認する順番を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
では、次のステップで確認していきましょう。
自院で確認する順番
- 対象になり得る患者さんがいるか(A314認知症治療病棟入院料を算定している、または認知症疾患医療センターに入院している、重度認知症〈ランクM相当〉の患者さん)を確認する
- 専任の常勤医師(認知症診療5年以上、または所定の研修修了)が1名以上いるかを確認する
- 専従の常勤理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が1名以上いるか、専用の機能訓練室と必要な器械・器具があるかを確認する
- 施設基準の届出を地方厚生(支)局に提出し、受理されているかを確認する
- リハビリテーション総合計画評価料1(H003-2)を算定できる体制(多職種共同のリハビリ計画作成)が整っているかを確認する
- 上記が整った段階で、算定候補として扱えるかを院内で最終確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなパターンがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
いくつか代表的なものを挙げますね。
回数・期間の管理漏れ
週3回・入院日から起算して1年という上限を、レセプト担当だけでなくリハビリ実施側でも共有できていないと、上限を超えて実施してしまったり、逆に算定できる回数を余らせてしまったりします。カレンダーや実施記録で期間・回数を可視化しておくと安心です。
H003-2との連動漏れ
認知症患者リハビリテーション料は、リハビリテーション総合計画評価料1(H003-2)の算定が要件になっています。H003-2側の多職種カンファレンスの記録が抜けていると、H007-3の算定要件も満たせなくなる可能性があるため、両方の記録をセットで確認する運用が安全です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。対象患者の状態や、医師・PT/OT/STの配置状況、届出の有無を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する 認知症治療病棟入院料 や リハビリテーション総合計画評価料 と合わせて確認しておくと、算定の全体像がつかみやすくなります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。