みらい(新人医療事務)
精神科病棟のあるクリニックさんから「医療保護入院等診療料って、うちも算定候補になるんでしょうか」って聞かれたんですが、正直まだよく分かっていなくて…。
あおい(元・医療事務)
医療保護入院等診療料(区分I014)ですね。精神保健福祉法に基づく入院をしている患者さんの治療計画づくりや、退院に向けた多職種の支援を評価する診療料です。令和8年度の点数と算定要件を一つずつ確認していきましょう。
みらい(新人医療事務)
お願いします!まず、そもそもどんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
対象になるのは、精神保健福祉法第29条第1項の措置入院、第29条の2第1項の緊急措置入院、第33条第1項の医療保護入院、第33条の6第1項の応急入院のいずれかで入院している患者さんです。この4つの入院形態のどれかに該当するかが、まず最初の確認ポイントになります。
みらい(新人医療事務)
措置入院とか医療保護入院とか、入院の種類によって使い分けるものなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。精神科の入院制度を扱っている医療機関であれば、日常的に出てくる区分だと思います。
医療保護入院等診療料とは(対象患者と点数)
みらい(新人医療事務)
それで、点数はどのくらいなんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、医療保護入院等診療料は2つの区分に分かれていて、医療保護入院等診療料1が300点、医療保護入院等診療料2が400点です。それぞれ算定できる場面が違うので、区別して考える必要があります。

みらい(新人医療事務)
1と2、どう違うんですか?
あおい(元・医療事務)
医療保護入院等診療料1は、精神保健指定医が治療計画を策定し、その計画に基づいて治療管理を行った場合に、患者さん1人につき1回に限り算定候補になります。入院期間中1回限りという理解で大丈夫です。医療保護入院等診療料2は、1を算定した患者さんに対して多職種で退院支援を行った場合に算定するもので、こちらは繰り返し算定できる仕組みになっています。
みらい(新人医療事務)
2のほうは繰り返し算定できるんですね。回数の制限はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。入院日から起算して6か月までの間は3か月に1回、6か月を過ぎたら6か月に1回が上限です。「毎月算定できる」わけではないので、そこは確認が必要ですね。
1と2の算定候補になりうる場面
医療保護入院等診療料1: 精神保健指定医が治療計画を策定し、治療管理を行った入院期間中に1回、算定候補になります。 医療保護入院等診療料2: 1を算定した患者に対し、多職種で退院支援のカンファレンスを行った際に、回数の上限内で算定候補になります。
算定要件(治療計画とカンファレンス)
みらい(新人医療事務)
医療保護入院等診療料1のほうは、治療計画を作ればすぐに算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
治療計画を策定するだけでなく、精神保健指定医が「その治療計画に基づいて治療管理を行った」ことが条件になります。厚生労働省の告示では、施設基準に適合し届出をした保険医療機関において、精神保健指定医が治療計画を策定し、当該治療計画に基づき治療管理を行った場合に、患者1人につき1回に限り算定する、とされています。
みらい(新人医療事務)
治療計画を作って終わり、ではなく、実際にその計画に沿って治療していることが前提なんですね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。留意事項通知でも、患者さんに対する治療計画と説明の要点を診療録に記載することが求められています。カルテに残っていないと、後から算定の妥当性を説明しづらくなってしまいます。
みらい(新人医療事務)
医療保護入院等診療料2のほうのカンファレンスは、誰が出席する必要があるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、出席者として主治医、看護職員(担当看護職員が望ましいとされています)、そして病院の管理者が出席を求める職員が必須とされています。退院後生活環境相談員が選任されていて、主治医・看護職員とは別の職員であれば、その相談員もカンファレンスに参加する扱いです。患者さん本人やご家族、地域援助事業者などは、本人が出席を希望する場合に参加する位置づけになっています。
みらい(新人医療事務)
患者さん本人が必ず出席しないといけないわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。ただし、本人には開催日時や趣旨を事前に丁寧に説明し、出席希望の有無を確認すること、参加しない場合でもカンファレンスの内容を説明することが求められています。ここは記録の残し方も含めて確認しておきたいところです。
みらい(新人医療事務)
退院支援というと、ほかにも似たような名前の加算がある気がします。
あおい(元・医療事務)
はい、一般病棟等で多職種による入退院支援を評価する精神科入退院支援加算という加算もあります。医療保護入院等診療料2とは対象患者や算定要件が異なるので、混同せず別々に要件を確認しておくと安心です。
医療保護入院の場合はみなし規定あり
医療保護入院の患者については、精神保健福祉法第33条第6項第2号に規定する委員会(医療保護入院者退院支援委員会)の開催をもって、カンファレンスの開催とみなすことができるとされています。この場合、「措置入院者及び医療保護入院者の退院促進に関する措置について」(令和5年11月27日障発1127第7号)に規定する医療保護入院者退院支援委員会の審議記録の写しを診療録等に添付することが必要です。運用しているかどうかは自院で確認が必要です。
施設基準(精神保健指定医の配置と行動制限最小化委員会)
みらい(新人医療事務)
施設基準のほうも聞きたいです。どんな体制が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の整理では、まず常勤の精神保健指定医が1名以上配置されていることが基準になります。ただし、週3日以上常態として勤務し、所定労働時間が週22時間以上の非常勤の精神保健指定医を2名以上組み合わせて、常勤医師の勤務時間帯と同じ時間帯に配置していれば、常勤配置とみなせる扱いもあるようです。
みらい(新人医療事務)
常勤が1人いなくても、非常勤の組み合わせで基準を満たせる場合があるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし細かい配置の条件があるので、自院の勤務体制がその条件に当てはまるかどうかは、慎重に確認したほうがいいです。
みらい(新人医療事務)
もう一つの基準もあるんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい。行動制限最小化に係る委員会での活動も基準に含まれています。具体的には、行動制限についての基本的な考え方ややむを得ず行動制限する場合の手順などを盛り込んだ基本指針の整備、月1回程度の病状改善や行動制限の状況についての検討会議の開催、精神科診療に携わる職員全員を対象にした精神保健福祉法や隔離拘束の早期解除に関する研修会を年2回程度実施すること、という3つの活動です。
みらい(新人医療事務)
委員会を作るだけじゃなくて、実際に会議や研修をちゃんと回している実績が必要なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。名目上の委員会があるだけでは基準を満たしているとは言いにくいので、開催実績や研修実施の記録を残しているかを確認しておくと安心です。
施設基準の確認ポイント(要確認)
精神保健指定医の配置: 常勤1名以上、または一定条件を満たす非常勤2名以上の組み合わせで基準を満たすとみなせる場合があります。自院の勤務表と照らして要確認です。 行動制限最小化委員会の実績: 基本指針の整備、月1回程度の検討会議、年2回程度の研修会という3つの活動実績が必要です。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たしていそうだったら、あとは届出をすればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、医療保護入院等診療料の施設基準に係る届出は、様式48という様式を用いることになっています。届出済みであれば算定候補になりますが、届出をしていない状態で算定要件だけ満たしていても、算定候補にはなりません。届出の有無は必ず確認してください。
みらい(新人医療事務)
届出のタイミングとか、注意点はありますか?
あおい(元・医療事務)
届出の具体的な提出手順や添付書類は、地方厚生局の案内や様式の記入要領を確認しながら進めることになります。当サイトでは一次資料の範囲での要件整理をお伝えしていますので、実際の届出作業は自院の担当者や審査支払機関、地方厚生局にも確認しながら進めるのが安全です。
医療保護入院等診療料2の算定タイミング(疑義解釈も踏まえて)
みらい(新人医療事務)
さっき出てきた「入院日から起算して6か月」の「入院日」って、具体的にはいつを指すんですか?
あおい(元・医療事務)
いい質問ですね。実はこの点、疑義解釈でも取り上げられています。令和8年6月17日の疑義解釈資料(その8)の問17で、「入院日」は精神保健福祉法第29条第1項、第29条の2第1項、第33条第1項又は第33条の6第1項のいずれかに規定された入院の開始日のうち、最初の日を指すとされています。
みらい(新人医療事務)
最初の日、というのがポイントなんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。ただし、他の入院形態から精神保健福祉法第33条第1項に規定する医療保護入院に切り替えが行われた場合は、その切り替え後の第33条第1項の入院開始日を指す、という取り扱いになっています。入院形態が途中で変わったケースでは、起算日の考え方を間違えやすいので、疑義解釈の内容を確認しながら記録しておくと安心です。
回数の起算日を取り違えないよう要確認
医療保護入院等診療料2の「3か月に1回」「6か月に1回」という回数制限は、最初の入院開始日を起点に数えます。入院形態が途中で切り替わった患者さんについては、疑義解釈の取り扱いに沿って起算日を確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
入院の途中で任意入院に切り替わった患者さんの場合はどうなるんですか?切り替え後に退院支援をしたら、そこでも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
そこも疑義解釈で明確にされています。令和8年7月17日の疑義解釈資料(その10)の問4では、医療保護入院等で入院し医療保護入院等診療料1を算定した患者さんが、任意入院に切り替えて入院を継続した場合、切り替え後に多職種で退院支援を行っても、医療保護入院等診療料2は算定できないとされています。
みらい(新人医療事務)
任意入院に変わったあとの退院支援は、対象にならないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。医療保護入院等診療料は、措置入院、緊急措置入院、医療保護入院、応急入院での入院中に、医療保護入院等診療料1を算定した患者さんに対して多職種で退院支援を行った場合に算定するもの、という位置づけだからです。任意入院はこの4つの入院形態には含まれないので、切り替え後の退院支援は算定候補になりません。
任意入院への切り替え後は算定対象外(疑義解釈その10・問4)
医療保護入院等で入院し医療保護入院等診療料1を算定した患者さんが、任意入院に切り替えて入院を継続した場合、切り替え後に多職種で退院支援を行っても医療保護入院等診療料2は算定できません(令和8年7月17日疑義解釈資料その10・問4)。当該診療料は、措置入院・緊急措置入院・医療保護入院・応急入院での入院中に、医療保護入院等診療料1を算定した患者に対して多職種で退院支援を行った場合に算定するものです。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前の改定から、何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは正直にお伝えしておきたいのですが、当サイトが収録している一次資料(令和8年度の告示・留意事項通知・疑義解釈)の範囲では、医療保護入院等診療料そのものの点数や算定要件について、前回改定(令和6年度)からの変更点を示す個別改定項目の資料は確認できていません。
みらい(新人医療事務)
変更が無いと言い切れるわけではなく、「確認できていない」ということですね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。改定のたびに細かい取り扱いが更新されることもあるので、疑義解釈の追加なども含めて、最新の一次資料を都度確認する姿勢が大事だと考えています。この記事も令和8年度時点の情報として整理しています。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
情報が多かったので、順番を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。まずは自院に入院している患者さんが、措置入院・緊急措置入院・医療保護入院・応急入院のいずれかに該当するかを確認します。次に、精神保健指定医が治療計画を策定し、それに基づく治療管理が行われているかを確認します。そのうえで、施設基準(精神保健指定医の配置、行動制限最小化委員会の活動実績)を満たしているか、様式48での届出が済んでいるかを確認し、届出済みであれば医療保護入院等診療料1が算定候補になります。退院支援のカンファレンスを実施したら、医療保護入院等診療料2についても回数制限の範囲内で算定候補になるかを確認する、という流れです。

自院で確認する順番
対象の入院形態(措置入院・緊急措置入院・医療保護入院・応急入院)に該当するかを確認する 精神保健指定医が治療計画を策定し、治療管理を行っているかを確認する 施設基準(精神保健指定医の配置・行動制限最小化委員会の活動実績)を満たしているかを確認する 様式48での届出が済んでいるかを確認する 多職種による退院支援カンファレンスの実施記録と、回数制限(3か月に1回・6か月に1回)を確認する
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場で見落としやすいポイントって、ありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、医療保護入院等診療料2を「毎月算定できるもの」と勘違いしてしまうケースです。実際は入院から6か月までは3か月に1回、それ以降は6か月に1回が上限なので、算定間隔を取り違えないよう確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
ほかにはどんなところがありますか?
あおい(元・医療事務)
レセプトの摘要欄に、患者さんの入院形態(措置入院・緊急措置入院・医療保護入院・応急入院のどれか)を記載する必要がある点も、留意事項通知に明記されています。記載が抜けていないかの確認も大切です。それから、行動制限最小化委員会の活動実績(月1回程度の会議、年2回程度の研修)が記録として残っているかどうかも、施設基準を維持できているかの確認材料になります。
レセプト記載・記録面での確認ポイント
入院形態の記載: 措置入院・緊急措置入院・医療保護入院・応急入院のいずれかを摘要欄に記載しているかを確認します。 委員会の活動記録: 行動制限最小化委員会の会議や研修の実施記録が残っているかを確認します。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか質問させてください。医療保護入院等診療料1と2は、同じ入院で両方算定候補になることはありますか?
あおい(元・医療事務)
はい、医療保護入院等診療料2は「1を算定した患者に対して」多職種で退院支援を行った場合の評価なので、1を算定していることが前提になります。同じ入院期間中に、要件を満たせば1と2の両方が算定候補になる場面はあり得ます。ただし、それぞれの算定要件(治療計画に基づく治療管理、退院支援カンファレンスの実施)を個別に満たしているかどうかの確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
精神保健指定医が非常勤しかいないクリニックでも、算定候補になることはありますか?
あおい(元・医療事務)
週3日以上常態として勤務し、所定労働時間が週22時間以上の非常勤の精神保健指定医を2名以上組み合わせて、常勤医師と同じ時間帯に配置していれば、基準を満たしているとみなせる扱いがあるとされています。ただし、この条件に自院の勤務体制が当てはまるかどうかは細かい確認が必要なので、判断に迷う場合は施設基準の届出窓口である地方厚生局にも相談することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
退院支援委員会と、医療保護入院等診療料2のためのカンファレンスは、別々に開かないといけないんですか?
あおい(元・医療事務)
医療保護入院の患者さんについては、精神保健福祉法第33条第6項第2号に規定する委員会(医療保護入院者退院支援委員会)の開催をもって、カンファレンスの開催とみなすことができるとされています。ただし、その場合は審議記録の写しを診療録等に添付することが必要とされているので、記録の残し方も含めて確認しておくと安心です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。