みらい(新人医療事務)
先生、「緊急時施設治療管理料」っていう名前の項目を見つけたんですけど、これ、うちのクリニックでも算定候補になりますか? 名前だけ見ると救急外来っぽいんですが…
あおい(元・医療事務)
いい着眼点です。でも名前から想像するイメージとはちょっと違うんですよ。これは救急外来で使うものではなく、特定のタイプの介護老人保健施設に併設している保険医療機関が、その施設の入所者に緊急往診をしたときに算定する項目です。令和8年度時点でも点数表上に残っている項目ですが、対象になる医療機関はかなり限定的です。
みらい(新人医療事務)
併設している医療機関限定なんですね…! じゃあ普通の診療所や病院はまず関係ないってことですか?
あおい(元・医療事務)
多くの医療機関にとっては関係ない、というのが正直なところです。ただ「うちは介護老人保健施設と提携している」という医療機関にとっては見落としやすい項目なので、まず全体像を一緒に整理していきましょう。
この加算は何のための項目か
みらい(新人医療事務)
そもそも、どういう経緯でできた項目なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、第3章「介護老人保健施設入所者に係る診療料」という区分の中に置かれています。介護老人保健施設は本来、介護保険の枠組みで診療料が扱われるのですが、平成18年7月1日から令和6年3月31日までの間に、当時の療養病床から転換して開設された介護老人保健施設(この記事では「介護療養型老健施設」と呼びます)は、従来の介護老人保健施設よりも医療処置が必要な入所者の割合が高い、という事情がありました。そこで、緊急に医療処置が必要になった場合の費用を、医療保険からも給付できるようにしたのがこの項目です。
みらい(新人医療事務)
なるほど、施設の性質によって特別に用意された項目なんですね。「介護療養型老健施設」という言葉、初めて聞きました。
あおい(元・医療事務)
そうですね。もともと療養病床(医療系のベッド)だった施設が、平成11年厚生省令第40号の附則第13条にもとづく転換を行って介護老人保健施設になった、という経緯を持つ施設だけが対象になります。令和6年3月31日でこの転換の受付自体は終わっているので、対象施設が新たに増えることは基本的にありません。
対象になりうる施設のイメージ
平成18年7月1日〜令和6年3月31日の間に、療養病床から転換して開設された介護老人保健施設(介護療養型老健施設)。それ以外の一般的な介護老人保健施設や、それ以降に新設された介護老人保健施設は、この項目の対象にはなりません。
対象になる医療機関・場面
みらい(新人医療事務)
「併設している」っていうのは、具体的にどういう関係を指すんですか? 近くにあるだけでも該当しますか?
あおい(元・医療事務)
単に近くにある、提携しているというだけでは足りません。公式資料では「併設保険医療機関」という言葉が使われていて、これは別の通知(平成14年3月8日保医発第0308008号「併設保険医療機関の取扱いについて」)で定義された、施設と一体的な関係にある保険医療機関を指します。まず自院がこの位置づけに該当するかどうかが出発点です。
みらい(新人医療事務)
そこがまず確認ポイントなんですね。次に何を見ればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次は「場面」です。算定できるかもしれない候補になるのは、次のような流れのときです。
算定候補になりうる基本の流れ
①介護療養型老健施設に入所中の患者の病状が、緊急その他やむを得ない事情で著しく変化した / ②その施設の医師から、併設医療機関の医師に電話等で往診の求めがあった / ③併設医療機関の医師が、夜間または休日に緊急の往診を行った。この3つがそろって、初めて算定候補になります。
みらい(新人医療事務)
日中の往診とか、施設からの依頼なしに自主的に様子を見に行った場合は対象外になりそうですね。
あおい(元・医療事務)
その理解で近いです。あくまで「施設側の医師からの求めに応じた、夜間・休日の緊急往診」という枠組みが基本です。この点は後で疑義解釈もあわせて見ていきます。
点数とコード(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
肝心の点数はいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表(令和8年厚生労働省告示第69号)では、500点と定められています。第3章第1部「併設保険医療機関の療養又は医療に関する事項」の中の項目です。
| 項目 | 内容 | 年度 |
|---|---|---|
| 名称 | 緊急時施設治療管理料 | 令和8年度 |
| 点数 | 500点 | 令和8年度 |
| 医科診療行為マスターコード | 180709110 | 令和8年度 |
| 算定回数の上限 | 患者1人につき1日1回、1月に4回まで | 令和8年度 |
みらい(新人医療事務)
「1日1回、1月4回まで」ってけっこう細かい制限ですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。同じ患者さんに立て続けに緊急往診が必要になるケースもあるとは思いますが、月4回という上限は必ず意識しておく必要があります。5回目以降は算定候補にならない、ということですね。
他の第3章の項目との違い(参考)
同じ第3章第2部には「施設入所者共同指導料」(600点、退所後の療養を担当する病院が施設の医師と共同で指導した場合に算定)という別の項目もあります。名前が似ていて混同しやすいですが、算定する場面も対象施設の位置づけも異なるため、別項目として個別に確認する必要があります。

緊急時とはどういう状態を指すのか
みらい(新人医療事務)
「緊急」の中身がふわっとしてると、現場で判断に迷いそうです。具体的に決まっているんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、留意事項通知(令和8年3月5日保医発0305第6号)で、対象となる患者の状態が具体的に列挙されています。
| 区分 | 状態の例 |
|---|---|
| ア | 意識障害又は昏睡 |
| イ | 急性呼吸不全又は慢性呼吸不全の急性増悪 |
| ウ | 急性心不全(心筋梗塞を含む) |
| エ | ショック |
| オ | 重篤な代謝障害(肝不全、腎不全、重症糖尿病等) |
| カ | その他薬物中毒等で重篤なもの |
みらい(新人医療事務)
どれもかなり切迫した状態ですね。軽い発熱とか、様子見できそうな体調不良では対象外になりそうです。
あおい(元・医療事務)
その理解で近いです。加えて「当該施設の医師が、医師による直接の処置等が必要と判断し、かつ、やむを得ない理由で対応できない場合」という条件も付いています。施設側の医師が自分で対応できるのであれば、そもそも往診を求める場面にはなりません。
誰が電話をするかも決まりがある(疑義解釈)
みらい(新人医療事務)
さっき「施設の医師から求めがあった場合」っておっしゃってましたけど、施設の職員さんが直接連絡してきた場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
いい質問です。実はこの点、疑義解釈(平成20年度に示されたもの)でも取り上げられています。原則としては、介護療養型老健施設の医師から往診医への電話による依頼があった場合を評価するもので、施設の職員が直接往診医へ連絡した場合は算定の対象になりません。
みらい(新人医療事務)
原則ダメ、なんですね。例外はないんですか?
あおい(元・医療事務)
一部だけ例外があります。患者がショックなど病状が著しく変化していて、緊急の医療処置が必要な状態であり、かつ施設の職員から施設の医師へ連絡した上で、その医師がやむを得ず往診医へ連絡できない場合は、事前の電話等の求めがなくても対象になり得るとされています。ただしこの場合は、患者の病状等について診療録への記載が必要です。
連絡経路の記録に注意
「誰が」「誰に」「いつ」連絡したかは、算定候補かどうかを左右する重要な要素です。施設側の記録と自院の診療録、両方で経緯が整合しているかを確認しておくと安心です。
施設基準・届出について
みらい(新人医療事務)
この項目、届出とか施設基準は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
ここは慎重に説明したいところです。今回確認した公式資料(医科点数表・留意事項通知)の範囲では、緊急時施設治療管理料そのものについて、個別の施設基準の届出を求める記載は見当たりませんでした。算定できるかどうかを左右しているのは、届出の有無というより「自院が介護療養型老健施設の併設保険医療機関に当たるかどうか」という位置づけの部分です。
みらい(新人医療事務)
届出じゃなくて、そもそもの関係性が条件になっているんですね。
あおい(元・医療事務)
そういう理解で大きくは外れません。ただし、これは今回確認できた資料の範囲での整理です。個々の医療機関が実際にこの位置づけに該当するかどうかは、地方厚生局への確認や、施設との契約関係の確認が必要になります。届出関連の資料に見落としがないかも含めて、最終的には自院での確認をお願いします。
算定のタイミングと回数制限
みらい(新人医療事務)
タイミングの整理をもう一度お願いします。いつ、何回まで算定候補になるんでしたっけ?
あおい(元・医療事務)
整理するとこうなります。
自院で確認する順番
- 併設先の介護療養型老健施設の入所患者に、緊急を要する病状の変化があった
- 施設の医師から、電話等で往診の求めがあった(例外的なケースを除く)
- 夜間または休日に、併設医療機関の医師が緊急往診を行った
- 算定候補は患者1人につき1日1回、1月につき4回まで
- 往診した患者の状態・施設の医師の氏名・往診日時を診療録に記載した
- 診療報酬明細書の摘要欄に、往診月の緊急時施設療養費(介護保険側)の算定日時と、対象患者が施設入所者である旨を記載した
みらい(新人医療事務)
診療録だけじゃなくて、明細書の摘要欄にも書くことがあるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。医療保険側の緊急時施設治療管理料と、介護保険側の緊急時施設療養費は、同じ緊急往診に対して両方が関わってくる場面があるので、摘要欄の記載を通じて整合性を取る、という設計になっています。この記載が抜けていると、確認の段階で指摘を受けやすいポイントです。
夜間・休日の要件を忘れずに
留意事項通知では「夜間又は休日に緊急に往診を行った場合」と明記されています。平日日中の往診は、この項目の対象になりません。時間帯の記録も忘れずに残しておきましょう。

令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
前の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の公式資料(令和8年度 医科点数表・留意事項通知)の範囲では、緊急時施設治療管理料の点数(500点)や算定要件について、変更は確認されていません。「平成18年7月1日から令和6年3月31日まで」という転換期間の記載も、令和8年度の告示・通知にそのまま引き継がれています。
みらい(新人医療事務)
転換期間が終わっているのに、条文はそのまま残っているんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。転換自体は令和6年3月31日で受付終了していますが、その期間に転換して開設された施設は現在も存在するため、その施設に併設された医療機関が緊急往診を行う場面は引き続き想定されています。そのため項目自体は令和8年度の点数表にも残っている、という状況です。ただし、これは今回確認できた一次資料をもとにした整理です。より細かい経年変化を確認したい場合は、厚生労働省の官報・告示原文もあわせてご確認ください。
よくある取り漏れ・注意点
見落としやすいポイント
併設の位置づけの確認漏れ: 近隣の介護老人保健施設と協力関係にあるというだけでは対象になりません。「介護療養型老健施設」の併設保険医療機関という位置づけそのものを確認する必要があります。
時間帯の記載漏れ: 夜間・休日という条件があるため、往診を行った時刻の記録が算定候補かどうかの判断材料になります。
回数上限の見落とし: 1月4回という上限を超えて算定してしまうケースは、記録の見直しで防げます。
摘要欄の記載漏れ: 介護保険側の緊急時施設療養費の算定日時、患者が施設入所者である旨の記載は忘れられがちです。
みらい(新人医療事務)
どれも「知らなかった」で終わらせないよう、リストにしておきたいです。
あおい(元・医療事務)
そうですね。特に対象施設との関係性を最初にはっきりさせておくことが、一番の防止策になります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか確認させてください。うちの近くにある介護老人保健施設と提携すれば、この項目の対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
提携しているというだけでは判断できません。その施設が平成18年7月1日から令和6年3月31日までの間に、療養病床から転換して開設された介護老人保健施設(介護療養型老健施設)に当たるかどうかが前提になります。施設側にこの経緯があるかどうかを確認するところから始めることをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
施設の職員さんから直接電話がかかってきて往診した場合は、絶対に対象外ですか?
あおい(元・医療事務)
原則は対象外です。ただし、患者がショックなど病状が著しく変化していて、施設の医師がやむを得ず往診医へ連絡できない場合に限り、例外的に対象になり得るとされています。その場合は病状等の診療録記載が必要です。個別のケースについては、この記事の情報だけで判断せず、審査支払機関にも確認しておくと安心です。
みらい(新人医療事務)
日中の往診で緊急性が高かった場合はどうですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では「夜間又は休日」という条件が明記されているため、日中の往診はこの項目の対象にはなりにくいと考えられます。緊急性が高い場合でも、算定の可否は時間帯の要件と合わせて確認が必要です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。併設先の施設の位置づけや往診の状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。