みらい(新人医療事務)
加算の一覧を見ていたら「海路(波浪)加算」っていう見慣れない名前が出てきたんですけど、これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
これは往診料(区分番号C000)に関係する加算です。船で往診に行くような、離島などの特殊な地域を対象にした仕組みなんですよ。うちのクリニックのような一般的な立地だと、まず対象にならないケースが多いです。
みらい(新人医療事務)
船で往診…想像したことなかったです。どういう場面で出てくるんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科診療報酬点数表で、往診料(720点)には注1から注6までの加算・規定が付いています。そのうちの注4に、こういう記載があります。
往診料 注4(令和8年度・医科診療報酬点数表)
「保険医療機関の所在地と患家の所在地との距離が16キロメートルを超えた場合又は海路による往診を行った場合で、特殊の事情があったときの往診料は、別に厚生労働大臣が定めるところにより算定する。」
みらい(新人医療事務)
「別に厚生労働大臣が定めるところにより算定する」って、また別の資料を見ないといけないってことですよね?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。この注4の委任先が、昭和40年10月20日保発第42号「特殊の事情の下において往診した場合の往診料の算定について」という通知です。海路(波浪)加算は、この通知の中で定められている算定方法の一つになります。
海路(波浪)加算とはどんな加算か
みらい(新人医療事務)
そもそも、どういう状況でこの加算が付くんですか?
あおい(元・医療事務)
まず前提として、往診先の地域が「一号地域」として都道府県知事から指定されている必要があります。通知の原文はこうなっています。
適用地域の指定(昭和40年保発第42号 第一)
「次の各号の一に該当する地域であって、第二に掲げる特殊の事情のいずれかが一般的に存するものについて、都道府県知事が厚生大臣の承認を得て指定した地域とする。」 「医療機関のない島の地域又は通例路程の大部分を海路による以外に往診することが困難な事情にある地域であって医療機関のないもの。(以下「一号地域」という。地域の単位は、原則として、島、部落又は小字とする。)」
あおい(元・医療事務)
つまり「医療機関のない島」や「海路を使わないと往診できない地域」で、かつ都道府県知事の指定を受けている地域が対象になります。自院の判断だけで海路加算の対象地域かどうかは決められず、地域の指定状況を確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
指定地域であればいつでも加算がつくんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そこに「特殊の事情」が重なっている必要があります。通知の第二で、次のような事情が挙げられています。
特殊の事情(昭和40年保発第42号 第二)
「定期に航行する船舶がないか、又は定期に航行する船舶があっても航行回数がきわめて少ないか、若しくは航行に長時間を要すること。」 「海上の状態や気象条件がきわめて悪いため、又は航路に暗礁が散在するため、若しくは流氷等のため航行に危険が伴うこと。」
みらい(新人医療事務)
なるほど、船の便が悪い・海が荒れやすいといった地理的な事情がある地域ってことですね。それに加えて「波浪」っていう条件がさらに付くんですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。海路(波浪)加算そのものは、実際にその往診のときに海が荒れていたかどうかで判断します。通知には具体的な定義があります。
「波浪時」の定義(昭和40年保発第42号 第三の1(1))
「波浪時(波浪注意報の出ていたとき又は波浪により通常の航海時間のおおむね一・五倍以上を要したときとする。)であった海路につき海路距離が片道一キロメートル又はその端数を増すごとに所定点数に医科点数表にあっては「注2」…に規定する点数の一〇〇分の一五〇を加算した点数」
みらい(新人医療事務)
「波浪注意報が出ていた」か「通常のおよそ1.5倍以上の時間がかかった」場合ってことですね。片道1kmごとに150%を上乗せするっていう計算方法もはじめて見ました。
あおい(元・医療事務)
この「100分の150」を、現行の点数表にある注2(患家診療時間加算)の点数に当てはめると、令和8年度時点では1kmあたり150点相当という整理になります。次の見出しで点数の整理を見てみましょう。

点数の整理(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
具体的に何点になるのか、整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
はい。海路(波浪)加算の点数は、往診料本体や他の加算と組み合わせて考える必要があります。令和8年度点数表で確認できる範囲を表にしました。
| 項目 | 点数 | 単位 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 往診料(本体) | 720点 | 1回につき | 医科点数表 C000 |
| 患家診療時間加算(注2) | 100点 | 30分又はその端数を増すごと | 医科点数表 C000 注2 |
| 死亡診断加算(注3) | 200点 | 1回 | 医科点数表 C000 注3 |
| 海路(波浪)加算相当 | 100分の150(注2の点数に対して150%) | 海路距離片道1キロメートル又はその端数を増すごと | 昭和40年保発第42号 第三 |
みらい(新人医療事務)
表の一番下だけ「点」じゃなくて「100分の150」になってますね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。海路(波浪)加算は固定の点数ではなく、「注2に規定する点数の150%を、海路の距離1kmごとに加算する」という計算式なんですね。今の注2(患家診療時間加算)が100点なので、単純に当てはめると1kmあたり150点相当という計算になりますが、これはあくまで当サイトによる整理です。実際の算定にあたっては、地方厚生局や審査支払機関に計算方法を確認することを強くおすすめします。
みらい(新人医療事務)
医科診療行為マスターの数字だけを見ていたら、この計算の仕組みまでは分からなかったです。
あおい(元・医療事務)
マスターの数字は最終的な整理結果であることが多くて、その計算根拠まではマスターだけでは追えません。今回のように、算定方法が別の通知に委任されているケースは特に注意が必要です。
固定の加算ではない点に注意
海路(波浪)加算は、1回の往診につき一律で加算される点数ではありません。波浪時の海路距離(片道1km単位)に応じて加算額が変わる仕組みです。実際の点数は往診ごとの距離・条件によって異なります。
対象になりうる医療機関・場面
みらい(新人医療事務)
どういう医療機関が対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
一般的な都市部・平野部のクリニックや病院は、まず対象にならない可能性が高いです。対象になりうるのは、次のような条件をすべて満たす場合です。
自院で確認する順番
自院がある地域、または往診先の地域が「一号地域(医療機関のない島など)」として都道府県知事の指定を受けているか確認する 往診の移動手段が実際に海路(船)であるか確認する その往診の際に波浪注意報が出ていた、または通常の航海時間のおおむね1.5倍以上を要したか記録で確認する 海路距離(片道の距離)を確認・記録する 地方厚生局・審査支払機関に、具体的な算定方法と必要な届出・記録について確認する
みらい(新人医療事務)
都道府県知事の指定って、クリニック側が届け出るものなんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、施設基準の届出とは少し性質が違います。地域そのものが都道府県知事によって指定される仕組みなので、医療機関側が個別に「施設基準の届出」を出すというよりも、自院の往診先の地域が指定地域に含まれているかどうかを確認する形になります。この地域指定の状況は、当サイトの一次資料だけでは確認できないため、地方厚生局や都道府県の窓口への確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
へき地医療をしているクリニックや診療所が主な対象になりそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。離島やへき地で往診を行う医療機関が中心になると考えられます。ただし、実際にどの地域が指定されているかは地域ごとに異なるため、断定はできません。あくまで「対象になりうる場面」として理解しておいてください。

記録・確認で気をつけたいポイント
みらい(新人医療事務)
実際に算定を検討するとき、どんな記録を残しておけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
いくつかポイントがあります。
記録しておきたい情報
往診日時と天候の状況: 波浪注意報が発表されていたかどうかは、気象庁の発表記録などで裏付けが必要です。 通常の航海時間との比較: 「おおむね1.5倍以上」を満たすかどうかは、通常時の所要時間の記録があると確認しやすくなります。 海路距離: 片道の距離(1km単位)を確認できる資料を残しておきます。 往診先の地域指定の状況: 一号地域としての指定を受けているかどうかを、都道府県・地方厚生局に確認した記録を残します。
みらい(新人医療事務)
どれも「あとから確認できる形」で残しておくのが大事なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。海路(波浪)加算は算定できる場面自体がかなり限られているので、算定を検討する段階で、審査支払機関に事前に確認しておくと安心です。
改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
令和6年度から令和8年度にかけて、この加算に変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
海路(波浪)加算の算定方法(往診料所定点数の100分の150を海路距離1kmごとに加算する仕組み)自体は、昭和40年の通知に基づくもので、当サイトが確認できた一次資料の範囲では、令和8年度改定によるこの算定方法自体の変更は確認されていません。
ベースになる点数は改定のたびに見直される
海路(波浪)加算の計算式自体は変わっていなくても、計算のベースになる往診料本体や患家診療時間加算(注2)の点数は、改定のたびに見直される可能性があります。実際の金額は、必ず最新の点数表で確認してください。
みらい(新人医療事務)
計算の仕組みは変わらなくても、当てはめる数字は毎回チェックが必要ってことですね。
あおい(元・医療事務)
はい。特にこの加算のように特殊な計算式になっている項目は、改定のたびにベースの点数だけ確認して満足せず、算定方法の通知自体が更新されていないかも合わせて確認することをおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。