みらい(新人医療事務)
先輩、レセプトの食事療養の欄に「特別食加算」ってよく出てくるんですが、これって何の加算なんですか?点数表には載ってないですよね?
あおい(元・医療事務)
いいところに気づきましたね。特別食加算は医科点数表の「点」ではなく、入院時食事療養費・入院時生活療養費という別の枠組みで「円」建てになっている加算です。入院時食事療養(Ⅰ)または入院時生活療養(Ⅰ)の届出を行っている保険医療機関で、医師が発行する食事箋に基づいて特別食が提供された場合に算定候補になります。令和8年度でも仕組み自体は変わっていません。
みらい(新人医療事務)
円建てなんですね!具体的にはいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
1食につき76円、1日3食を限度に加算します。厚生労働省の告示にも「1食につき76円を、1日につき3食を限度として加算する」と明記されています。この76円という金額は平成18年度の改定以来ずっと変わっていない水準です。
特別食加算とは
みらい(新人医療事務)
そもそも「特別食」ってどんな食事のことですか?普通の入院食と何が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
特別食は、疾病治療の直接手段として、医師が発行する食事箋に基づいて提供される、患者の年齢・病状等に対応した栄養量および内容を持つ治療食などを指します。厚労省の通知では「加算の対象となる特別食は、疾病治療の直接手段として、医師の発行する食事箋に基づいて提供される患者の年齢、病状等に対応した栄養量及び内容を有する治療食、無菌食及び特別な場合の検査食をいう」とされています。単なる流動食や軟食、離乳食などは対象になりません。
みらい(新人医療事務)
具体的にはどんな病名の食事が対象なんですか?
あおい(元・医療事務)
代表的なものは、腎臓食・肝臓食・糖尿食・胃潰瘍食・貧血食・膵臓食・脂質異常症食・痛風食・てんかん食・フェニールケトン尿症食・楓糖尿症食・ホモシスチン尿症食・ガラクトース血症食・治療乳です。加えて、特別な場合の検査食(潜血食)や無菌食も対象になります。無菌食は無菌治療室管理加算を算定している患者が対象という条件がついています。
みらい(新人医療事務)
減塩食も入りますか?心臓疾患の患者さんとか多いので気になります。
あおい(元・医療事務)
心臓疾患や妊娠高血圧症候群等に対する減塩食は、腎臓食に準じて取り扱うことができます。ただし、単なる高血圧症に対する減塩食は特別食加算の対象にはならない点に注意が必要です。塩分の総量が1日6g未満であることも要件です。混同しやすいところなので、食事箋の病名と塩分量を確認する習慣をつけておくと安心ですね。

令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
特別食加算そのものは前から変わっていないんですね。じゃあ令和8年度の改定では何か変更はなかったんですか?
あおい(元・医療事務)
金額自体(1食76円、1日3食限度)は変更されていませんが、令和8年度改定で対象となる特別食に「嚥下調整食」が新たに追加されました。これが今回の一番の変更点です。摂食機能または嚥下機能が低下した患者に対して、医師が食事箋を発行し、適切な栄養量と内容を持つ嚥下調整食を提供した場合が対象になります。
みらい(新人医療事務)
嚥下調整食って、いわゆる刻み食やペースト食のことですか?
あおい(元・医療事務)
そこは要注意なんです。厚労省の通知では「単にピューレやペースト状にしたもの、常食を刻んだだけのものや刻みにとろみをかけただけのもの、主食のみを嚥下調整食とした場合は該当しない」と明記されています。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類2021を参考に、安全で嚥下しやすいテクスチャーと、食欲を促す食感を両立した食形態であることが求められます。
前回改定(令和6年度)との対比
- 令和6年度: 特別食加算は既存の治療食・無菌食・検査食が対象。嚥下調整食は対象外だった。
- 令和8年度: 上記に加えて「嚥下調整食」が新たに特別食加算の対象に追加された。金額(76円/食)は据え置き。
みらい(新人医療事務)
対象が増えるのはいいことですね!すぐに算定できるようになるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこが断定できないところなんです。嚥下調整食を対象にするには、施設基準として「責任者」の配置が必要になります。厚労省の疑義解釈では、施設基準について「嚥下調整食に係る責任者は、嚥下調整食のテクスチャーや調理方法等に関する実習を伴う適切な研修(嚥下調整食に関する専門的な知識及び技術を有する管理栄養士が、研修内容に関与している場合に限る。)を修了した当該保険医療機関の管理栄養士であること」と示されています。この研修を修了した管理栄養士がいなければ、嚥下調整食としての特別食加算は候補になりません。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関で算定候補になるんですか?外来でも取れますか?
あおい(元・医療事務)
入院時食事療養(Ⅰ)または入院時生活療養(Ⅰ)の届出を行っている病院・診療所の入院患者が対象です。外来診療では特別食加算は算定できません(外来の栄養指導関連の点数とは別枠の話になります)。入院時食事療養(Ⅱ)や生活療養(Ⅱ)を算定している医療機関では、この特別食加算自体の対象になりません。
みらい(新人医療事務)
患者さん側の条件はありますか?
あおい(元・医療事務)
医師が疾病治療の直接手段として特別食を必要と判断し、食事箋を発行していることが前提です。血液検査等の数値が改善しても、医師が食事箋発行の必要性を認めなくなるまでは算定候補として扱われます。逆に言うと、食事箋がなければどれだけ制限食に近い献立でも対象にはなりません。
金額と算定単位
みらい(新人医療事務)
金額のところ、もう一度確認させてください。76円というのは1日あたりですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、1食につき76円で、1日3食が上限です。実際に提供した食数に応じて、1食単位で計算します。1日の必要量を数回に分けて提供した場合は、提供された回数に相当する食数として扱ってよいとされていますが、食事時間外に提供したおやつなどは含めず、1日3食が上限である点は変わりません。
| 区分 | 金額 | 算定単位 | 年度 |
|---|---|---|---|
| 特別食加算(治療食・無菌食・検査食) | 76円 | 1食につき(1日3食限度) | 令和8年度 |
| 特別食加算(嚥下調整食・令和8年度新設対象) | 76円 | 1食につき(1日3食限度) | 令和8年度 |
みらい(新人医療事務)
治療食も嚥下調整食も同じ76円なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。対象となる特別食の種類によって金額が変わるわけではなく、いずれも1食76円という点は共通です。ただし、流動食(市販されているものに限る)のみを経管栄養法により提供したときは、特別食加算そのものが算定できません。この点は見落としやすいので注意してください。
算定できないケースに注意
市販の流動食のみを経管栄養法で提供している患者には、特別食加算は算定できません。また、特別食の献立表が作成されていない場合も、加算の要件を満たしません。
施設基準・届出の確認ポイント
みらい(新人医療事務)
特別食加算そのものに、単独の届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
特別食加算自体は、入院時食事療養(Ⅰ)または入院時生活療養(Ⅰ)の届出を行った保険医療機関であることが前提条件になっています。つまり、特別食加算だけを単独で届け出るという性質のものではなく、(Ⅰ)の届出をしている医療機関で、食事箋に基づいた特別食の提供という運用要件を満たしているかどうかが確認のポイントになります。
みらい(新人医療事務)
嚥下調整食の分は、別に届出が必要になるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこはまだ資料の範囲で確定的なことは言えません。厚労省の疑義解釈では「特別食加算(嚥下調整食)の施設基準」という表現で、責任者となる管理栄養士の研修修了要件が示されていますが、これが独立した届出様式を伴うものかどうかは、自院が算定を検討する段階で地方厚生(支)局に確認することをおすすめします。確認が必要な事項として、まず自院に留めておいてください。
みらい(新人医療事務)
研修の内容についても具体的に決まっているんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。責任者となる管理栄養士向けの研修は、嚥下調整食に関する専門的な知識・技術を有する管理栄養士が関与する10時間以上の研修(うち実習5時間以上)などの要件が疑義解釈で示されています。現時点では、日本摂食嚥下リハビリテーション学会と日本栄養士会が共同認定する「摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士」に係る研修などが該当するとされています。調理師等についても、5時間以上の研修を修了しておくことが望ましいとされています。

自院で確認する順番
自院で確認する順番
- 入院時食事療養(Ⅰ)または入院時生活療養(Ⅰ)の届出を行っているか確認する
- 対象患者について、医師が特別食(治療食・無菌食・検査食・嚥下調整食等)の食事箋を発行しているか確認する
- 特別食の献立表が作成されているか確認する
- 1日3食の範囲で、実際に提供した食数を記録しているか確認する
- 嚥下調整食を提供する場合は、所定の研修を修了した責任者(管理栄養士)がいるか確認する
- 市販の流動食のみを経管栄養法で提供しているケースが混在していないか確認する
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
取り漏れがちなポイントってどんなところですか?
あおい(元・医療事務)
よくあるのは、高血圧症の減塩食を特別食加算の対象と誤って扱ってしまうケースです。心臓疾患や妊娠高血圧症候群に対する減塩食は腎臓食に準じて対象になりますが、単なる高血圧症の減塩食は対象外です。もうひとつは、嚥下調整食を「刻み食」「ペースト食」と同じ扱いにしてしまい、実際にはテクスチャーや献立の要件を満たしていないのに算定してしまうケースです。
よくある取り漏れ・誤りやすいポイント
- 高血圧症のみの減塩食を特別食加算の対象にしてしまう(腎臓食に準じる減塩食との混同)
- 嚥下調整食を「刻み食・ペースト食を出せば自動的に対象」と誤解する
- 市販の流動食のみを経管栄養法で提供しているのに算定してしまう
- 特別食の献立表を作成していない
みらい(新人医療事務)
逆に、算定できるのに見落としているケースもありますか?
あおい(元・医療事務)
てんかん食は、難治性てんかんだけでなく、グルコーストランスポーター1欠損症やミトコンドリア脳筋症の患者に対する治療食としても、ケトン食として特別食加算の対象になり得ます。また、侵襲の大きな消化管手術の術後に胃潰瘍食に準ずる食事を提供する場合も、特別食の加算対象として扱われる余地があります。個別の患者の状態と食事箋の内容を照らし合わせて、確認が必要です。
関連する加算
みらい(新人医療事務)
似たような栄養関連の加算もいろいろありますよね。
あおい(元・医療事務)
特別食を必要とする患者に対する指導という点では集団栄養食事指導料が関連します。また、入院患者全体の栄養管理体制という切り口では入院栄養管理体制加算、嚥下機能に着目した体制という切り口では摂食嚥下機能回復体制加算も合わせて確認しておくとよいと思います。
みらい(新人医療事務)
それぞれ別の届出や体制が必要になるんですよね。
あおい(元・医療事務)
そうです。特別食加算は入院時食事療養(Ⅰ)・生活療養(Ⅰ)の届出が前提ですが、栄養指導料や体制加算はそれぞれ別の施設基準・届出が必要です。自院がどこまで届出済みかを一覧で整理しておくと、抜け漏れに気づきやすくなります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や食事箋の運用、嚥下調整食の責任者体制などを入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。
参考資料(厚生労働省公式・令和8年度)
- 入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第16号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001667180.pdf
- 入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第99号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa7831&dataType=0&pageNo=1
- 疑義解釈資料の送付について(その7)(令和8年5月29日保険局医療課事務連絡)問25 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707505.pdf