みらい(新人医療事務)
先生、レセプトの点数マスターを見ていたら「滞在時間加算」っていう聞き慣れない項目が出てきたんですけど、これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
それは往診料(C000)に関係する加算ですよ。ただし、普段の往診で使うことはほとんどなくて、離島などの特定の地域に往診したときだけ関わってくる加算です。令和8年度の医科点数表がベースになっています。
みらい(新人医療事務)
離島ですか。うちは市街地のクリニックなので、あまり関係なさそうですね。
あおい(元・医療事務)
そう思う方が多いと思います。だからこそ、まずは「どんな場面で出てくる加算なのか」を正確に押さえておくことが大事なんです。順番に確認していきましょう。
滞在時間加算ってどんな加算?
みらい(新人医療事務)
そもそも、往診料に加算がつく場面って他にもたくさんありますよね。緊急往診加算とか、夜間往診加算とか。滞在時間加算はそれとは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、性格が異なります。緊急往診加算や夜間往診加算は「往診に行った時間帯や状況」に応じた加算ですが、滞在時間加算は「保険医療機関の所在地と患家の所在地の距離が16キロメートルを超える、または海路による往診で、地方厚生(支)局長が指定した特定の地域(1号地域)」に対する往診でだけ登場する、特殊な計算方法の一部なんです。
みらい(新人医療事務)
「特定の地域」というのは、具体的にはどういう場所なんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知では、1号地域は次のように定義されています。「医療機関のない島の地域又は通例路程の大部分を海路による以外に往診することが困難な事情にある地域であって医療機関のないもの(以下「1号地域」という。地域の単位は、原則として、島、部落又は小字とする。)。」
みらい(新人医療事務)
つまり、船でしか行けないような離島の患家に往診したときの話なんですね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。そして、その1号地域への往診で「島に上陸してから離島するまでの滞在時間」に応じて加算される点数区分が、この滞在時間加算です。往診料の本体点数720点に、通常の加算(注1〜注5、注8〜注10)を足したうえで、さらにこの滞在時間加算が上乗せされる仕組みになっています。
対象になるのはどんな往診?
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関や患者さんについて、もう少し詳しく教えてください。
あおい(元・医療事務)
対象は「地方厚生(支)局長が厚生労働大臣の承認を得て指定した1号地域」に居住する患者さんへの往診を行う保険医療機関です。この地域指定は医療機関が自分で申請するものではなく、地域そのものが行政によって指定されるという点が特徴です。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、届出とかは特にいらないんですか?
あおい(元・医療事務)
個別の施設基準届出という形ではありません。ただし「往診先が指定された1号地域に該当するかどうか」の確認は必須です。当サイトが確認した範囲の資料には、この加算に対応する独立した施設基準・届出様式の記載はなく、地域指定の有無で判定される加算という整理になっています。この点は必ず地方厚生(支)局への確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
離島以外にも「16キロメートルを超える地域」という条件が出てきましたけど、これは全部同じ扱いになるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そこがポイントです。16キロメートルを超える地域は「1号地域」と「2号地域」に分かれていて、計算方法が違います。留意事項通知では「1号地域以外の地域であって、最寄りの医療機関からの往診距離が片道16キロメートルを超えるもの(以下「2号地域」という。地域の単位は、原則として、部落又は小字とする。)。」と区分されています。2号地域向けの加算は「往診往復時間加算」という別の区分で、こちらは往診往復時間加算の記事で詳しく確認できます。滞在時間加算(1号地域向け)とは対象地域も計算方法も異なるので、混同しないようにしてください。
点数のしくみを確認する(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
肝心の点数ですが、マスターには「200点」と出ていました。これは一律200点が加算されるという理解でいいですか?
あおい(元・医療事務)
そこは注意が必要です。留意事項通知の算定方法には「(ロ) 適用地域における往診に必要とした滞在時間(島に上陸したときから離島するまでの時間)については30分又はその端数を増すごとに100点を加算する方法で算出した点数の100分の200に相当する点数。」と書かれています。つまり、30分(またはその端数)ごとに100点を加算する方法で算出した点数の100分の200、という計算です。100点×200/100=200点ですから、「滞在時間30分(またはその端数)ごとに200点」という単位点数を表しているのがこの200点、という理解が正確です。滞在時間が1時間なら400点、1時間30分なら600点というように、滞在時間に応じて積み上がっていく点数区分になります。
みらい(新人医療事務)
一時金みたいに1回だけ200点、というわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。ここを一律200点と思い込んで請求すると、実際の滞在時間と合わなくなる可能性があるので注意してください。下の表で、往診料の特定地域加算の全体像を整理しておきます。
| 区分 | 対象地域 | 計算方法(令和8年度) |
|---|---|---|
| 往診料(本体) | 全国共通 | 720点 |
| 滞在時間加算(1号地域) | 医療機関のない離島等・地方厚生局長指定 | 滞在時間30分(端数含む)ごとに100点×100分の200=200点 |
| 海路(波浪)加算(1号地域) | 同上・波浪時の海路移動 | 海路距離片道1km(端数含む)ごとに100分の150 |
| 往診往復時間加算(2号地域) | 最寄り医療機関から片道16km超・地方厚生局長指定 | 往復時間30分(端数含む)ごとに100点×100分の300=300点 |

1号地域の往診は複数の加算が重なることがある
1号地域への往診では、波浪時の海路移動に対する「海路(波浪)加算」と、島での滞在時間に対する「滞在時間加算」が、同じ往診の中で両方関わってくることがあります。どちらも算定候補になるかは、実際の移動・滞在の記録をもとに個別に確認が必要です。
算定のタイミングと注意点
みらい(新人医療事務)
似たような名前の加算に「患家診療時間加算」というのもありましたよね。あれとは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、まったく別の加算です。患家診療時間加算は、離島かどうかに関係なく、患家での診療時間が1時間を超えた場合に算定できる加算で、留意事項通知には「2 患家における診療時間が1時間を超えた場合は、患家診療時間加算として、30分又はその端数を増すごとに、100点を所定点数に加算する。」とあります。こちらは通常の往診でも起こり得る加算で、患家診療時間加算の記事で詳しく確認できます。滞在時間加算は「島に上陸してから離島するまでの時間」が対象なのに対し、患家診療時間加算は「患家での診療時間」が対象という違いがあります。名前が似ているので、どちらの記録を根拠にしているかを確認してから請求することが大切です。
みらい(新人医療事務)
なるほど、時間の起点と終点がそもそも違うんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。それから、滞在時間加算は1号地域の往診にだけ関わる加算なので、2号地域向けの往診往復時間加算とは同時に算定するものではありません。往診先がどちらの地域指定に該当するかを、往診の都度きちんと確認してください。
滞在時間の記録は必須
滞在時間加算は「島に上陸したときから離島するまでの時間」で30分単位に計算するため、上陸・離島の時刻を記録していないと算定根拠を示せません。往診記録に時刻を残しておくことが前提になります。
みらい(新人医療事務)
交通費なんかも別に発生しそうですが、それは含まれているんですか?
あおい(元・医療事務)
交通費は別枠です。留意事項通知には「注7に規定する交通費は実費とする」「交通費には自家用車による費用を含む」といった記載があり、滞在時間加算や海路加算とは別に、実費として患家負担になる部分があります。ここも混同しないよう整理しておくとよいでしょう。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、この加算に何か変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した令和8年度診療報酬改定の個別改定項目(在宅医療分野)の資料の範囲では、往診料の1号地域に対する滞在時間加算そのものについて、新設・廃止・点数変更・算定方法の見直しといった記載は確認されていません(確認日: 2026年8月)。往診料本体や関連する在宅医療の加算については個別の見直しが行われていますが、1号地域・2号地域向けの特定地域加算の計算方法自体は、当サイトが参照した資料の範囲では従来の整理が維持されています。
改定差分は資料の範囲での確認
「変更が確認されていない」という記載は、当サイトが参照した公式資料の範囲での結果です。個別の往診について疑問がある場合は、最新の告示・留意事項通知や地方厚生(支)局への確認を優先してください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちのクリニックで、この加算が関わるケースがあるかどうか、どう確認していけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認するのがおすすめです。
自院で確認する順番
- 往診先の患家が、地方厚生(支)局長の指定する1号地域(医療機関のない離島等)に該当するかを確認する
- 該当する場合、島に上陸した時刻と離島した時刻を往診記録に残す
- 往診料本体(720点)と注1〜注5、注8〜注10による通常の加算を確認する
- 滞在時間(30分単位・端数切り上げ)に応じて、100点×100分の200で滞在時間加算を計算する
- 海路移動があった場合は、海路(波浪)加算の対象にもなるかを別途確認する
- 算定候補となる点数の考え方を、審査支払機関または地方厚生(支)局に確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場で取りこぼしやすいポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
よくあるのは次のようなケースです。
よくある取り漏れ
滞在時刻の未記録: 上陸・離島の時刻を記録していないと、滞在時間加算の算定根拠を示せません。往診記録のテンプレートに時刻欄を用意しておくと安心です。
1号地域・2号地域の混同: どちらの地域指定に該当するかで計算方法(200%か300%か、時間の起点が違う)が変わるため、地域区分の確認を省略しないようにしてください。
患家診療時間加算との取り違え: 名前が似ているため、島での滞在時間ではなく患家での診療時間を根拠に請求してしまうケースがあります。どちらの記録を使うかを明確にしておきましょう。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。