みらい(新人医療事務)
あおいさん、加算の一覧を見ていたら「生体皮膚移植(提供者の療養上の費用)加算」っていうのがあって、点数の欄が0点になってるんです。これってバグですか?
あおい(元・医療事務)
バグじゃないですよ。むしろこの加算の一番の特徴がそこなんです。多くの加算は「◯点」と固定されていますが、この加算は違って、実際にかかった費用に応じてそのつど計算する仕組みになっているんです。令和8年度の医科点数表でもそう定められています。
みらい(新人医療事務)
固定点数じゃないんですか? じゃあどうやって金額を決めるんでしょう。
あおい(元・医療事務)
そこを順番に整理していきましょう。まず、この加算がどの手術に付くものかから確認しますね。
この加算は何のための加算か
みらい(新人医療事務)
そもそもこの加算、単独で算定するものじゃないんですよね?
あおい(元・医療事務)
そうです。区分番号「K014」皮膚移植術(生体・培養)という手術の注加算です。厚生労働省の医科点数表(令和8年度)には「K014 皮膚移植術(生体・培養) 6,110点 注1 生体皮膚又は培養皮膚移植を行った場合に算定する。 2 生体皮膚を移植した場合は、生体皮膚の摘出のために要した提供者の療養上の費用として、この表に掲げる所定点数により算定した点数を加算する。」と書かれています(厚生労働省「医科点数表」令和8年度)。
みらい(新人医療事務)
なるほど、「提供者」って皮膚を提供してくれる生体ドナーのことですよね。その人の医療費用を、移植を受けた患者さんの診療報酬に上乗せする形なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。培養皮膚を使う場合ではなく、生体(人)から皮膚を採取して移植する場合に発生します。ドナーの体に検査や処置などの医療行為が必要になるので、その費用相当分を、患者側の診療報酬明細書にまとめて計上する仕組みです。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、点数の計算方法をもう少し詳しく知りたいです。
点数・計算の仕組み
あおい(元・医療事務)
ここが今日の本題です。まず全体像を図で見てみましょう。

みらい(新人医療事務)
「K014 皮膚移植術(生体・培養) 6,110点」がベースで、そこに「実費相当額」を上乗せする、という流れですね。
あおい(元・医療事務)
はい。ベースの6,110点はK014本体の所定点数で、これは固定です。そこに、生体皮膚移植の場合だけ「提供者の療養上の費用」を加算します。厚生労働省の留意事項通知(医科点数表の解釈、令和8年度)には「(1) 皮膚提供者の皮膚採取料及び組織適合性試験の費用は、所定点数に含まれ、別に算定できない。(2) 生体皮膚を移植する場合においては、皮膚提供者から移植用皮膚を採取することに要する費用(皮膚提供者の皮膚採取料及び組織適合性試験の費用は除く。)については、各所定点数により算出し、皮膚移植術(生体・培養)の所定点数に加算する。」と、加算の対象になる範囲が書かれています。
みらい(新人医療事務)
あれ、「皮膚採取料」と「組織適合性試験の費用」は加算に含めない、って書いてありますね。この2つはもうベースの6,110点に含まれているから、別立てで計算しちゃダメってことですか?
あおい(元・医療事務)
よく気づきましたね、そのとおりです。加算の対象になるのは「皮膚を採取することに要する費用」であって、皮膚採取料そのものと組織適合性試験費用は除かれます。たとえばドナーの術前検査や、採取に伴う処置・投薬などが、各項目の所定点数どおりに計算されて積み上がるイメージです。金額があらかじめ決まった点数表として存在するわけではなく、実際に行われた医療行為の点数を積算する仕組みなので、当サイトの一覧で点数欄が「0点」と表示されているのは、固定点数が存在しないという事実を反映したものです。
みらい(新人医療事務)
つまり、レセプトを見て「今回はいくら加算されるか」を都度計算しないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなります。ケースごとに異なるので、算定候補になるかどうかは、実際にドナーへどんな医療行為を行ったかを確認しないと判断できません。ここは断定できるものではなく、必ず個別に確認が必要なポイントです。
対象医療機関・場面
みらい(新人医療事務)
この加算が関係してくるのって、どういう場面なんでしょう。
あおい(元・医療事務)
生体皮膚移植(K014の生体皮膚を用いるケース)を行う保険医療機関全般が対象になり得ます。特に注意したいのは、移植を行った病院と、皮膚を採取した病院が別々のケースです。留意事項通知(令和8年度)には「(3) 皮膚移植を行った保険医療機関と皮膚移植に用いる移植用皮膚を採取した保険医療機関とが異なる場合の診療報酬の請求については、皮膚移植を行った保険医療機関で行うものとし、当該診療報酬の分配は相互の合議に委ねる。なお、請求に当たっては、皮膚移植者の診療報酬明細書の摘要欄に皮膚提供者の療養上の費用に係る合計点数を併せて記載するとともに、皮膚提供者の療養に係る所定点数を記載した診療報酬明細書を添付すること。」と書かれています。
みらい(新人医療事務)
えっ、施設が2つに分かれるパターンがあるんですね。その場合、請求は移植した側の病院がまとめてやる、と。
あおい(元・医療事務)
はい。そして分配は当事者間の合議、つまり病院同士の話し合いで決める、とされています。診療報酬明細書(レセプト)の摘要欄には、提供者の療養上の費用に係る合計点数を書き、さらに提供者側の診療報酬明細書も添付する必要があります。事務作業としてはかなり特殊な部類に入ると思っておいたほうがいいですね。
みらい(新人医療事務)
うちのクリニックみたいな小規模なところで、こんな複雑な移植をやることってあるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
実際にK014皮膚移植術(生体・培養)を実施する医療機関は限られると思いますが、連携先の病院から「提供者側の費用」を扱う立場になるケースもあり得ます。自院がどちらの立場になり得るかは、実施している診療科・提携関係の確認が必要です。
遵守すべきルール・注意点
みらい(新人医療事務)
施設基準みたいな届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
個別の届出については、当サイトが収載している資料の範囲では明確な記載を確認できていません。ただし、算定の前提条件として、留意事項通知(令和8年度)に「(4) 皮膚を移植する場合においては、日本組織移植学会が作成した「ヒト組織を利用する医療行為の安全性確保・保存・使用に関するガイドライン」を遵守している場合に限り算定する。」というガイドライン遵守の要件が明記されています。
みらい(新人医療事務)
つまり、このガイドラインを守っていないと、K014本体も、提供者の療養上の費用の加算も、算定候補にならない可能性があるってことですね。
あおい(元・医療事務)
そう理解しておくのが安全です。ガイドラインの遵守は、K014皮膚移植術(生体・培養)を算定するための前提条件になっていて、それに付随する提供者側の費用加算にも当然影響します。届出の要否については、自院の地方厚生局への確認、または顧問の医事課・審査支払機関への確認をおすすめします。
断定できないポイント
提供者の療養上の費用としてどこまでを加算対象にできるかは、実際にドナーへ行われた医療行為の内容によってケースごとに異なります。院内での判断だけで確定させず、必ず一次資料と審査支払機関への確認を行ってください。
みらい(新人医療事務)
併算定の注意点も気になります。
あおい(元・医療事務)
一番間違えやすいのは、皮膚採取料と組織適合性試験費用を、提供者の療養上の費用に二重で計上してしまうことです。この2つはK014本体の6,110点に含まれているので、加算の計算に含めると過剰請求になってしまいます。留意事項通知の(1)にも「皮膚提供者の皮膚採取料及び組織適合性試験の費用は、所定点数に含まれ、別に算定できない」と明記されています。
よくある取り漏れ・計上ミス
皮膚採取料の二重計上: K014本体の所定点数に含まれるため、提供者の療養上の費用に重ねて計上しない。 組織適合性試験費用の二重計上: 同じく所定点数に含まれる費用として扱う。 摘要欄の記載漏れ: 施設が異なる場合、提供者の療養上の費用に係る合計点数をレセプト摘要欄に記載し忘れると、審査で確認を求められる可能性がある。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちで確認するとしたら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
フローにするとこんな流れになります。

自院で確認する順番
- 実施した手術が区分番号「K014」皮膚移植術(生体・培養)で、かつ生体皮膚を用いたケースかを確認する。
- 移植を行った保険医療機関と、皮膚を採取した保険医療機関が同一か、別施設かを確認する。
- 別施設の場合は、費用分配について相互の合議で取り決めができているかを確認する。
- 提供者に対して行った医療行為(皮膚採取料・組織適合性試験費用を除く)の所定点数を積み上げて計算する。
- レセプト摘要欄への記載事項・添付書類(提供者側の診療報酬明細書)を用意し、算定候補として院内で最終確認する。
みらい(新人医療事務)
5番目まで来て、やっと算定候補って言えるレベルなんですね。結構ハードル高いです。
あおい(元・医療事務)
手術自体が特殊なので、日常的に発生する加算ではありません。だからこそ、実施する機会があったときに手順を飛ばさないことが大事です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
これって令和6年度改定のときから内容が変わってたりするんですか?
あおい(元・医療事務)
そこも確認しておきたいポイントですね。当サイトが収載している一次資料の範囲では、この加算に関する令和6年度からの点数・算定要件の変更点は確認されていません(確認日: 2026年8月)。厚生労働省が公表している改定個別項目の一覧にも、この加算固有の新設・廃止・点数変更の記載は見当たりませんでした。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、以前からある考え方がそのまま令和8年度も続いている、という理解でいいですか?
あおい(元・医療事務)
はい、その理解で大きくは間違っていないと思います。ただし「当サイトが収載する資料の範囲で確認できていない」という言い方にとどめておきますね。改定のたびに個別項目が細かく見直されることもあるので、最終的には厚生労働省の告示・通知の原文、または審査支払機関への確認をおすすめします。
前回改定との比較の目安
令和6年度改定・令和8年度改定のいずれにおいても、K014皮膚移植術(生体・培養)の「提供者の療養上の費用は所定点数により算定した点数を加算する」という構造自体は、当サイトが収載する一次資料の範囲で変更が確認されていません。固定点数化されたわけではない点に注意してください。
関連する加算もあわせて確認
みらい(新人医療事務)
似たような「提供者側の費用を評価する」加算って、ほかにもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。臓器移植の領域では、生体からの臓器提供者に関する管理費用を評価する生体臓器提供管理料という項目があります。対象になる医療行為は皮膚移植とは異なりますが、「提供者側にかかる医療上の費用をどう評価するか」という考え方は共通しています。移植・提供に関わる算定を整理するときは、あわせて確認しておくと理解が深まると思います。
みらい(新人医療事務)
皮膚移植だけじゃなくて、移植系の加算って考え方に共通点があるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし対象手術・点数の仕組みはそれぞれ異なるので、混同せずに、それぞれの条文で確認することが大切です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。