みらい(新人医療事務)
「生体部分肝移植術(提供者の療養上の費用)加算」という項目を見つけたんですけど、これって普通の加算と何か違うんですか? 点数を調べても「0点」としか出てこなくて、混乱しています。
あおい(元・医療事務)
いいところに気づきましたね。これは令和8年度の診療報酬点数表にある区分番号K697-5「生体部分肝移植術」の注に定められた加算で、他の加算のように固定の点数が決まっているタイプではないんです。厚生労働省の告示には「生体部分肝を移植した場合は、生体部分肝の摘出のために要した提供者の療養上の費用として、この表に掲げる所定点数により算定した点数を加算する」と書かれています。つまり、ドナー(臓器提供者)の入院・治療にかかった費用を、通常の点数表のルールで計算して、その分をレシピエント(肝移植を受ける患者)側の手術点数に上乗せする、という「計算方法」の加算なんですよ。
みらい(新人医療事務)
なるほど、決まった点数がある加算じゃなくて、ドナーさんの実際の医療費を計算して足す仕組みなんですね。うちのクリニックでも算定候補になり得るものなんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
結論からいうと、この加算は生体部分肝移植術そのものを実施する医療機関でなければ関わりません。一般的な診療所や、移植を実施しない病院では対象外の可能性が高いです。まずは対象になる場面から順番に確認していきましょう。
対象になる医療機関・場面
みらい(新人医療事務)
具体的にはどんな医療機関が対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
区分番号K697-5「生体部分肝移植術」を実施する医療機関が対象です。この手術は先天性胆道閉鎖症や進行性肝内胆汁うっ滞症、肝硬変(非代償期)、劇症肝炎など、厚生労働省の留意事項通知に定められた対象疾患の患者に対して、生体(親族などの提供者)から提供された肝臓の一部を移植する手術です。この加算は、その手術に伴ってドナー側にかかった療養上の費用を扱うものなので、移植の実施医療機関以外では基本的に発生しません。
みらい(新人医療事務)
レセプトはドナーさん本人ではなく、移植を受けた患者さんの分で請求するんですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。留意事項通知には「請求に当たっては、肝移植者の診療報酬明細書の摘要欄に肝提供者の療養に係る合計点数を併せて記載するとともに、肝提供者の療養に係る所定点数を記載した診療報酬明細書を添付する」とあります。つまり、移植を受けた患者(肝移植者)のレセプトに、ドナー分の点数を書き添え、ドナー分の明細書も別途添付する、という独特の請求方法が定められています。この手続きを踏んでいるかどうかは、確認が必要なポイントです。
点数の考え方とコード
みらい(新人医療事務)
点数はどう考えればいいんでしょうか。表にできますか?
あおい(元・医療事務)
表にまとめますね。年度は令和8年度で確認してくださいね。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手術本体(K697-5生体部分肝移植術) | 227,140点(令和8年度) |
| 提供者の療養上の費用加算(本加算・マスターコード150284910) | 固定点数なし。提供者の療養に要した費用を所定点数のルールで計算し、手術の所定点数に加算 |
| 抗HLA抗体検査加算(注3・任意) | 4,000点(検査を行った場合のみ) |
| 肝移植者の組織適合性試験費用(注2) | 所定点数に含まれ、別に算定できない |
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示では「肝移植者に係る組織適合性試験の費用は、所定点数に含まれる」「抗HLA抗体検査を行う場合には、抗HLA抗体検査加算として、4,000点を所定点数に加算する」とも定められています。抗HLA抗体検査加算については、別ページの抗HLA抗体検査加算でも整理していますので、あわせて確認してみてください。

みらい(新人医療事務)
ドナーさんの療養費用は、どうやって点数化するんですか? 食事なんかも入るんでしょうか。
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に具体的な計算方法が書かれています。「生体肝を移植する場合においては肝提供者から移植肝を摘出することに係る全ての療養上の費用を所定点数により算出し、生体部分肝移植術の所定点数に加算する。なお、肝提供者の生体肝を摘出することに係る療養上の費用には、食事の提供も含まれ、具体的には、『入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の費用の額の算定に関する基準』によって算定した費用額を10円で除して得た点数につき1点未満の端数を四捨五入して得た点数と他の療養上の費用に係る点数を合計した点数とする。この場合、肝提供者に食事療養標準負担額を求めることはできない」とあります。つまり、ドナーの入院中にかかった診療・検査・食事療養などの費用をひとつひとつ通常の点数計算のルールで積み上げて、合計を加算点数にする、という仕組みです。ドナーに食事療養の標準負担額を求められない点も見落としやすいポイントですね。
施設基準について
みらい(新人医療事務)
施設基準はどうなっていますか? 移植だから何か特別な基準がありそうです。
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項通知には「生体肝を移植する場合においては、日本移植学会が作成した『生体肝移植ガイドライン』を遵守している場合に限り算定する」と明記されています。手術そのものが日本移植学会のガイドラインに沿って実施されていることが、算定の前提条件になっているということです。これは加算だけの基準というより、生体部分肝移植術という手術全体にかかる条件なので、移植医療チームでの確認が必要です。
見落としやすいポイント
生体部分肝移植術の対象疾患は、先天性胆道閉鎖症・進行性肝内胆汁うっ滞症(原発性胆汁性肝硬変・原発性硬化性胆管炎を含む)・アラジール症候群・バッドキアリー症候群・先天性代謝性肝疾患・多発嚢胞肝・カロリ病・肝硬変(非代償期)・劇症肝炎などに限定されています。肝硬変(非代償期)に肝癌を合併している場合は、遠隔転移や血管侵襲の有無、腫瘍径・個数など細かい条件があるため、対象疾患に該当するかどうかは診療録と厚生労働省の留意事項通知を突き合わせて確認する必要があります。
届出について
みらい(新人医療事務)
届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
この加算自体に独立した届出様式があるわけではありませんが、生体部分肝移植術(K697-5)という手術を実施するには、施設基準の届出が前提になっている手術区分です。届出済みであれば、この加算も候補になりますが、届出の要否や現在の届出内容は、自院の届出書類と厚生局への確認で必ず裏付けを取ってください。届出をしていない、あるいは内容が古いままだと、算定できない可能性があります。
算定・請求の注意点
みらい(新人医療事務)
請求のときに気をつけることはほかにもありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、灌流にかかる費用について、留意事項通知には「生体部分肝移植術の所定点数には、灌流の費用が含まれる」とあるので、別立てで請求はできません。また「肝採取を行う医師を派遣した場合における医師の派遣に要した費用及び採取肝を搬送した場合における搬送に要した費用については療養費として支給し、それらの額は移送費の算定方法により算定する」ともされていて、医師派遣や搬送にかかる費用は、この加算とは別枠の療養費・移送費として扱われます。
実施医療機関が分かれる場合
留意事項通知では「肝移植を行った保険医療機関と肝移植に用いる健肝を摘出した保険医療機関とが異なる場合の診療報酬の請求は、肝移植を行った保険医療機関で行い、診療報酬の分配は相互の合議に委ねる」とされています。ドナーの肝摘出とレシピエントの移植を別の医療機関で行った場合、請求自体は移植を実施した医療機関がまとめて行い、医療機関同士の分配は当事者間の合議事項になります。連携する医療機関間での取り決めを事前に確認しておくことが必要です。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
前の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できた厚生労働省の一次資料(令和8年度の告示・留意事項通知)の範囲では、この加算の算定要件・計算方法・施設基準に関する主な変更は確認されていません(確認日: 2026年8月)。ただし、当サイトの令和6年度分の一次資料には該当箇所が収録されておらず、直接の新旧比較はできていません。過去の届出内容や運用方法に変更がないか、念のため最新の告示・留意事項通知の原文で確認しておくと安心です。
自院で確認する順番
自院で確認する順番
- 自院が区分番号K697-5生体部分肝移植術を実施している(または実施予定の)医療機関かを確認する
- 手術の実施が日本移植学会「生体肝移植ガイドライン」に沿っているかを移植医療チームに確認する
- 対象疾患・対象患者の条件(先天性胆道閉鎖症、肝硬変(非代償期)等)に該当するかをカルテで確認する
- ドナー(提供者)の入院・検査・食事療養などの費用を通常の点数計算ルールで積み上げて算出する
- 肝移植者の診療報酬明細書の摘要欄への記載と、ドナー分の明細書添付の準備を整える
- 灌流費用・医師派遣費・搬送費など、加算に含まれる費用と別建てになる費用を仕分けする

よくある取り漏れ
ドナー分の明細書添付漏れ
移植者側のレセプトにドナー分の合計点数を記載していても、ドナー分の診療報酬明細書そのものを添付し忘れるケースが想定されます。留意事項通知が求めているのは「記載」と「添付」の両方です。
含まれる費用の別立て請求
灌流の費用は生体部分肝移植術の所定点数に含まれているため、この加算やほかの区分で別途請求すると整合性が取れなくなります。逆に、肝採取のための医師派遣費・搬送費は加算に含まれず、療養費・移送費として別に扱われる点も、含める/含めないを取り違えやすいところです。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。