みらい(新人医療事務)
先生、「生体部分小腸移植術(提供者の療養上の費用)加算」という項目を見つけたんですが、点数の欄が0点になっていて…これって本当に加算できるものなんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
いい着眼点ですね。これは0点だから算定できないという意味ではなく、「あらかじめ決まった固定点数がない」加算なんです。生体部分小腸移植を行ったときに、小腸を提供してくれた方(提供者・ドナー)の入院や検査、手術にかかった費用を、実際に行った医療行為の点数を積み上げて計算し、移植を受けた患者さんの診療報酬明細書に加算する仕組みになっています。
みらい(新人医療事務)
固定の点数がないというのは珍しいですね。どんな場面で関係してくるんですか?
あおい(元・医療事務)
対象になるのは、K716-4「生体部分小腸移植術」を実施する保険医療機関です。生体部分小腸移植では、小腸を提供する方(ドナー)自身にも入院・検査・手術という医療行為が発生しますが、ドナーは病気の治療を受けているわけではありません。そこで、ドナーにかかった療養上の費用を、移植を受けた患者さん側のレセプトにまとめて計算・加算する、という特殊な仕組みが設けられているんです。
生体部分小腸移植術(提供者の療養上の費用)加算とは
みらい(新人医療事務)
つまり、ドナーの医療費を移植を受けた患者さんの点数に乗せる、というイメージですか?
あおい(元・医療事務)
その通りです。厚生労働省の告示では「生体部分小腸を移植した場合は、生体部分小腸の摘出のために要した提供者の療養上の費用として、この表に掲げる所定点数により算定した点数を加算する」と定められています。つまり、ドナーが実際に受けた診察・検査・手術などの医療行為を、当院の点数表(医科点数表)に照らして一つひとつ算定し、その合計点数を生体部分小腸移植術の所定点数に加算する、という考え方です。
みらい(新人医療事務)
定額ではなく、実際にかかった医療行為の積み上げなんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。ですので「何点の加算か」という質問には、定額でお答えできません。ドナーの入院期間や検査内容によって毎回変わる、実費精算に近い加算だと理解しておくとよいと思います。
対象医療機関・対象患者/場面
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんが対象になるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、生体部分小腸移植術の対象症例について「短腸症候群又は機能的難治性小腸不全であって、経静脈栄養を必要とし、経静脈栄養の継続が困難なもの又は困難になることが予測されるもの」とされています。腎移植や肝移植とは対象疾患の性質が異なりますので、レシピエント側の病態が要件に合致しているかがまず出発点になります。
みらい(新人医療事務)
移植を行う医療機関側の要件もあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項では「生体小腸を移植する場合においては、日本移植学会による『生体小腸移植実施指針』を遵守している場合に限り算定する」とされていて、この加算はあくまで生体部分小腸移植術そのものが算定できる場面に付随するものです。実施指針の遵守は生体部分小腸移植術全体の算定要件になりますので、まずそこを満たしているかを確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
提供者(ドナー)側の患者さんは、どういう扱いになるんですか?
あおい(元・医療事務)
ドナーは病気の治療を受けているわけではないので、ドナー自身の名前でレセプトが立つわけではありません。ドナーにかかった療養上の費用は、移植を受けた患者さん(レシピエント)のレセプトの中に、この加算という形でまとめて計上される、という流れです。この関係性を医療事務の方が正しく理解しておくことが、請求ミスを防ぐポイントになります。
点数の考え方(令和8年度)

みらい(新人医療事務)
同じ手術のまわりには、他にも似たような項目がありますよね。整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
生体部分小腸移植まわりの点数をまとめると、次のようになります。
| 項目 | 点数(令和8年度) | 備考 |
|---|---|---|
| K716-4 生体部分小腸移植術(所定点数) | 164,240点 | 移植を受けた患者さんに算定する基本点数 |
| 提供者の療養上の費用加算(本加算) | 実費計算(所定点数により算定した点数を加算) | 固定点数ではなく、ドナーの医療行為に応じて算出 |
| K716-3 移植用部分小腸採取術(生体) | 56,850点 | ドナーから小腸を採取する手術そのものの点数 |
| 抗HLA抗体検査加算 | 4,000点 | 抗HLA抗体検査を行った場合に加算 |
| K915 生体臓器提供管理料 | 5,000点 | 移植を行った保険医療機関で別建てに算定 |
みらい(新人医療事務)
本加算だけ点数の欄が数字じゃないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。留意事項では「小腸提供者から移植小腸を摘出することに係る全ての療養上の費用を所定点数により算出し、生体部分小腸移植術の所定点数に加算する」とされていて、ドナーに行った診療行為ひとつひとつを点数表に当てはめて計算する形になります。K716-3移植用部分小腸採取術(生体)の点数もこの積み上げの中に含まれてくる計算になりますので、単純に足し算するのではなく、実施した医療行為を漏れなく拾うことが大切です。小腸移植者に係る組織適合性試験の費用は所定点数に含まれる扱いとされていますので、二重に算定しないよう注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
食事の費用はどう扱われるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこも独特のルールがあります。留意事項では、ドナーの療養上の費用には食事の提供も含まれるとされていて、具体的には入院時食事療養費の算定基準によって算定した費用額を10円で除して得た点数につき1点未満の端数を四捨五入して得た点数と、他の療養上の費用に係る点数を合計する、という計算方法が示されています。そして、この場合はドナーから食事療養標準負担額を求めることはできない、とも明記されています。つまり、ドナーに食費の自己負担分を請求することはできない、という点は取り違えやすいので気をつけたいところです。
施設基準
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要なんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
この加算そのものに固有の施設基準が定められているかどうかは、当サイトが確認できた一次資料の範囲では明確な記載を確認できていません。土台となるK716-4生体部分小腸移植術の算定にあたっては、日本移植学会の生体小腸移植実施指針を遵守していることが要件とされていますので、まずはその遵守状況を確認するのが第一歩になります。個別の施設基準の要否については、貴院の地方厚生局への確認をおすすめします。
届出要否
みらい(新人医療事務)
届出はどうすればいいですか?
あおい(元・医療事務)
本加算単体の届出手続きについて、当サイトが確認できた一次資料の中には明確な記載が見当たりませんでした。届出が必要かどうか、必要な場合の様式については、地方厚生局が公表している施設基準の届出手続きに関する資料や、貴院を担当する地方厚生局への確認をおすすめします。届出済みであれば算定候補になりますが、未確認のまま算定を進めるのは避けたいところです。
算定タイミング・注意点(併算定・請求のルール)
みらい(新人医療事務)
請求のときに気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
とくに大事なのが、移植を行った保険医療機関と、移植に使う小腸を摘出した保険医療機関が異なるケースです。
摘出病院と移植病院が異なる場合の請求ルール
留意事項では、小腸移植を行った保険医療機関と小腸移植に用いる健小腸を摘出した保険医療機関とが異なる場合、診療報酬の請求は小腸移植を行った保険医療機関で行い、診療報酬の分配は相互の合議に委ねるとされています。請求にあたっては、小腸移植者の診療報酬明細書の摘要欄に小腸提供者の療養上の費用に係る合計点数をあわせて記載するとともに、小腸提供者の療養に係る所定点数を記載した診療報酬明細書を添付することとされています。摘出側・移植側それぞれの医療事務が連携して記載漏れがないか確認することが重要です。
みらい(新人医療事務)
摘要欄への記載を忘れそうで怖いです…。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ここは実務上の取り漏れが起きやすいポイントです。ドナー側の診療報酬明細書を別途添付する必要がある点もあわせて、院内のチェック体制に組み込んでおくと安心です。もうひとつ、小腸移植ならではの規定として、留意事項には「小腸採取を行う医師を派遣した場合における医師の派遣に要した費用及び採取小腸を搬送した場合における搬送に要した費用については療養費として支給し、それらの額は移送費の算定方法により算定する」という定めもあります。医師派遣や小腸の搬送が発生するケースでは、通常の療養上の費用とは別に、療養費・移送費の枠組みで整理する必要がある点も押さえておきたいところです。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、この加算の内容は変わったんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できる一次資料(令和8年度の医科点数表・留意事項通知)の範囲では、この加算の算定方法や計算式そのものに関する前回改定(令和6年度)からの変更点は特定されていません(確認日: 2026年8月)。ドナーの療養上の費用を所定点数により算出して加算するという基本的な考え方は、当サイトが参照できた資料の中では一貫しています。ただし、点数表全体の改定内容は多岐にわたるため、貴院で算定する際は最新の告示・通知を必ずご確認ください。
改定差分は基本点数だけでなく計算方法も確認
改定のたびに、生体部分小腸移植術本体の所定点数(164,240点)だけでなく、提供者の療養上の費用加算の計算方法や、抗HLA抗体検査加算などの周辺項目に変更がないかもあわせて確認しておくと安心です。
自院で確認する順番

みらい(新人医療事務)
実際に算定を検討するとき、どんな順番でチェックすればいいですか?
自院で確認する順番
- 対象患者が短腸症候群又は機能的難治性小腸不全であって、経静脈栄養の継続が困難か確認する
- K716-4生体部分小腸移植術を実施する予定があるか確認する
- 日本移植学会の生体小腸移植実施指針を遵守した診療体制になっているか確認する
- 小腸提供者(ドナー)に行った診療行為(診察・検査・入院・食事等)を洗い出し、点数表に当てはめて算出する
- 摘出を行う保険医療機関と移植を行う保険医療機関が同一か、異なるかを確認する
- 異なる場合は、請求先(移植側)とレセプト摘要欄への記載内容、添付するドナー側明細書の準備を確認する
- 医師派遣や小腸の搬送が発生している場合は、療養費・移送費としての整理が必要か確認する
よくある取り漏れ
ドナーから食費の自己負担を求めていないか
留意事項では、ドナーの療養上の費用の計算には食事の提供も含まれる一方、ドナーから食事療養標準負担額を求めることはできないとされています。ドナーに通常の入院患者と同じ自己負担を求めてしまっていないか、あらためて確認しておきたいポイントです。
組織適合性試験を二重に算定していないか
留意事項では、小腸移植者に係る組織適合性試験の費用は所定点数に含まれるとされています。提供者の療養上の費用加算とは別に、組織適合性試験を単独で別算定していないか、確認しておく価値があります。
医師派遣・搬送費用を療養上の費用に含めていないか
留意事項では、小腸採取を行う医師を派遣した場合の派遣費用や、採取小腸を搬送した場合の搬送費用は、療養費として支給し移送費の算定方法により算定するとされています。提供者の療養上の費用加算の中にまとめて含めてしまっていないか、区分を確認しておきたいところです。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚労省公式資料(令和8年度)を根拠としています。詳細は必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 医科点数表(告示)「K716-4 生体部分小腸移植術」164,240点・注1〜3 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬点数表に関する留意事項通知「K716-4 生体部分小腸移植術」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf
- 診療報酬点数表に関する留意事項通知「K915 生体臓器提供管理料」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf
- 医科点数表(告示)「K915 生体臓器提供管理料」5,000点 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 医科点数表(告示)「K716-6 同種死体小腸移植術」177,980点 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 医科点数表(告示)「K716-3 移植用部分小腸採取術(生体)」56,850点 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf