みらい(新人医療事務)
先生、「造血幹細胞移植(提供者の療養上の費用)加算」っていう項目、レセプトの点数欄を見ても「0点」って表示されていて…これ、本当に算定できる項目なんですか?
あおい(元・医療事務)
いい質問ですね。0点だから算定できない、という意味ではないんです。これは「固定の点数が決まっていない」加算なんですよ。骨髄移植や末梢血幹細胞移植などの造血幹細胞移植を、他人(提供者・ドナー)から幹細胞をもらう「同種移植」で行ったときに、ドナー側にかかった採取の医療行為分を、点数表に照らして積み上げて計算し、移植を受けた患者さんのレセプトにまとめて加算する仕組みなんです。
みらい(新人医療事務)
固定点数がないというのは珍しいですね。どんな場面で関係してくるものですか?
あおい(元・医療事務)
対象になるのは、K922「造血幹細胞移植」を実施する保険医療機関です。造血幹細胞移植のうち、白血球の型(ヒト組織適合性抗原)が概ね一致する他人から幹細胞の提供を受ける「同種移植」を行う場合、ドナー自身にもK921「造血幹細胞採取」という医療行為が発生します。ドナーは病気の治療を受けているわけではないので、その採取にかかった費用を、移植を受けた患者さん側のレセプトにまとめて計上する、という特殊な仕組みが設けられているんです。
造血幹細胞移植(提供者の療養上の費用)加算とは
みらい(新人医療事務)
つまり、ドナーの採取費用を移植を受けた患者さんの点数に乗せる、というイメージですか?
あおい(元・医療事務)
その通りです。厚生労働省の医科点数表(告示)では「K922 造血幹細胞移植」の注1に「同種移植を行った場合は、造血幹細胞採取のために要した提供者の療養上の費用として、この表に掲げる所定点数により算定した点数を加算する」と定められています。つまり、ドナーが実際に受けたK921造血幹細胞採取という医療行為を、点数表に照らして算定し、その点数をK922造血幹細胞移植の所定点数に加算する、という考え方です。
みらい(新人医療事務)
定額ではなく、実際に行った採取行為の点数がそのまま乗る感じなんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。ですので「この加算は何点ですか」という質問には、定額ではお答えできません。同種移植のときだけ発生する、ドナー側の採取行為に連動する加算だと理解しておくとよいと思います。自家移植(患者さん自身の幹細胞を使う移植)の場合は、提供者=患者さん本人になるため、この加算の対象にはなりません。
対象医療機関・対象患者/場面
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関、どんな患者さんが関係してくるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
基本的には、K922造血幹細胞移植(骨髄移植・末梢血幹細胞移植・臍帯血移植)のうち「同種移植」を実施する保険医療機関(移植側)が対象になります。留意事項通知では「同種移植とは、ヒト組織適合性抗原が概ね一致する提供者の造血幹細胞を移植する場合をいう」とされています。
みらい(新人医療事務)
対象になる病気も決まっているんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項通知には「同種移植の対象疾患は、白血病、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、重症複合型免疫不全症等であり、また、自家骨髄移植、自家末梢血幹細胞移植の対象疾患は、化学療法や放射線療法に感受性のある白血病等の悪性腫瘍である」と記載されています。この加算自体は同種移植のときに関係するものなので、まずは対象疾患で同種移植が行われているかを確認するのが出発点になります。
みらい(新人医療事務)
提供者(ドナー)側の患者さんは、どういう扱いになるんですか?
あおい(元・医療事務)
ドナーは病気の治療を受けているわけではないので、ドナー自身の名前で移植分のレセプトが立つわけではありません。ドナーの採取にかかった療養上の費用は、移植を受けた患者さん(レシピエント)のレセプトの中に、この加算という形でまとめて計上される、という流れです。この関係性を医療事務の方が正しく理解しておくことが、請求ミスを防ぐポイントになります。
点数の考え方(令和8年度)

みらい(新人医療事務)
まわりにも似たような点数がいろいろありますよね。整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
K922造血幹細胞移植とK921造血幹細胞採取の関係をまとめると、次のようになります。
| 項目 | 点数(令和8年度) | 備考 |
|---|---|---|
| K922造血幹細胞移植 骨髄移植 | 同種66,450点/自家25,850点 | 移植を受けた患者さん(レシピエント)に算定する基本点数 |
| K922造血幹細胞移植 末梢血幹細胞移植 | 同種66,450点/自家30,850点 | 同上 |
| K922造血幹細胞移植 臍帯血移植 | 66,450点 | 同上(臍帯血バンクからの提供) |
| 提供者の療養上の費用加算(本加算) | 固定点数なし(K921の所定点数により算定した点数を加算) | 同種移植を行った場合のみ。ドナーの採取行為に応じて算出 |
| K921造血幹細胞採取 骨髄採取 | 同種21,640点/自家17,440点 | ドナー側の採取行為の点数(本加算の計算基礎) |
| K921造血幹細胞採取 末梢血幹細胞採取 | 同種21,640点/自家17,440点 | 同上 |
みらい(新人医療事務)
本加算だけ点数の欄が数字じゃないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。告示の注1にあるとおり「造血幹細胞採取のために要した提供者の療養上の費用として、この表に掲げる所定点数により算定した点数を加算する」とされていて、K921造血幹細胞採取の所定点数(同種移植の場合は骨髄採取・末梢血幹細胞採取いずれも21,640点)をベースに、実際に行われた採取行為に応じて計算する形になります。
みらい(新人医療事務)
ドナー側の採取に、他にも加算できるものってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
告示の注では、K922造血幹細胞移植に薬剤を使用した場合の薬剤費加算、6歳未満の乳幼児加算(2,000点)、非血縁者間移植を実施した場合の非血縁者間移植加算(10,000点)、施設基準に適合した場合のコーディネート体制充実加算(1,500点)なども定められています。これらは本加算そのものではなく、K922造血幹細胞移植に付随する別の加算項目なので、混同しないよう整理しておく必要がありますね。
施設基準
みらい(新人医療事務)
この加算自体に、施設基準の届出は必要なんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
本加算(提供者の療養上の費用加算)そのものに固有の施設基準が定められているかどうか、当サイトが確認できた一次資料の範囲では明確な記載を確認できていません。土台となるK922造血幹細胞移植のうち、同種移植を対象疾患(白血病等)に対して適切に実施している体制であることが前提になります。
みらい(新人医療事務)
関連する加算には施設基準があるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。たとえば留意事項通知の別の項目にあるコーディネート体制充実加算は、「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において同種移植を実施した場合」に算定できるとされています。これは本加算とは別の加算ですが、同じK922のまわりで施設基準の届出が関係してくる項目として、あわせて確認しておくとよいと思います。個別の施設基準の要否については、貴院を担当する地方厚生局への確認をおすすめします。
届出要否
みらい(新人医療事務)
届出はどうすればいいですか?
あおい(元・医療事務)
本加算単体の届出手続きについて、当サイトが確認できた一次資料の中には明確な記載が見当たりませんでした。届出が必要かどうか、必要な場合の様式については、地方厚生局が公表している施設基準の届出手続きに関する資料や、貴院を担当する地方厚生局への確認をおすすめします。届出済みであれば算定候補になりますが、未確認のまま算定を進めるのは避けたいところです。
算定タイミング・注意点(併算定・請求のルール)
みらい(新人医療事務)
請求のときに気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかポイントがあります。まず、ドナー側のK921造血幹細胞採取について、留意事項通知では「『K921』造血幹細胞採取の自家移植を行う場合は、『K922』造血幹細胞移植を行わなかった場合においても算定できる。また、『K921』造血幹細胞採取の同種移植を行う場合は、『K922』造血幹細胞移植の同種移植を算定した場合に限り算定できる」とされています。つまり、同種移植の採取は、実際にレシピエント側でK922同種移植が算定されて初めて成立する、セットの関係なんです。
みらい(新人医療事務)
セットで考える必要があるんですね。他に注意点はありますか?
採取した費用の内訳と二重算定に注意
K921の告示注1では「同種移植における造血幹細胞提供者又は自家移植を受ける者に係る造血幹細胞採取、組織適合性試験及び造血幹細胞測定の費用並びに造血幹細胞提供前後における健康管理等に係る費用は、所定点数に含まれる」とされています。またK922の留意事項通知でも「同種移植における造血幹細胞移植者に係る組織適合性試験の費用は所定点数に含まれるものとする」とされていて、組織適合性試験の費用を別建てで算定していないか確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
採取実施医療機関と移植実施医療機関が違う場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
そのケースも留意事項通知に定めがあります。「造血幹細胞採取(臍帯血移植を除く。)を行った医療機関と造血幹細胞移植を行った保険医療機関とが異なる場合の診療報酬の請求は、造血幹細胞移植を行った保険医療機関で行い、診療報酬の分配は相互の合議に委ねる」とされています。また「造血幹細胞採取(臍帯血移植を除く。)を行う医師を派遣した場合における医師の派遣に要した費用及び採取した造血幹細胞を搬送した場合における搬送に要した費用については療養費として支給し、それらの額は移送費の算定方法により算定する」とも定められています。
みらい(新人医療事務)
摘要欄への記載も必要になりますか?
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項通知では「同種移植の請求に当たっては、造血幹細胞移植者の診療報酬明細書の摘要欄に造血幹細胞提供者の療養上の費用に係る合計点数を併せて記載するとともに、造血幹細胞提供者の療養に係る所定点数を記載した診療報酬明細書を添付する」とされています。移植側と採取側の医療事務が連携して、記載漏れがないか確認することが大事なポイントです。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、この加算の内容は変わったんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できる一次資料(令和8年度の医科点数表・留意事項通知)の範囲では、この加算の算定方法(K921の所定点数により算定した点数を同種移植の場合に加算する、という基本的な考え方)そのものに関する前回改定(令和6年度)からの変更点は特定されていません(確認日: 2026年8月)。ただし、K922・K921本体の点数や、コーディネート体制充実加算・非血縁者間移植加算といった周辺の加算は改定のたびに見直される可能性があるため、貴院で算定する際は必ず最新の告示・通知をご確認ください。
改定差分は本体点数だけでなく周辺加算もあわせて確認
改定のたびに、K922造血幹細胞移植本体の所定点数や、K921造血幹細胞採取の所定点数(本加算の計算基礎)だけでなく、非血縁者間移植加算・コーディネート体制充実加算・抗HLA抗体検査加算など周辺項目の点数や要件に変更がないかもあわせて確認しておくと安心です。
自院で確認する順番

みらい(新人医療事務)
実際に算定を検討するとき、どんな順番でチェックすればいいですか?
自院で確認する順番
- K922造血幹細胞移植(骨髄移植・末梢血幹細胞移植・臍帯血移植)を実施する予定があるか確認する
- 同種移植(提供者からの移植)か自家移植(患者さん自身の幹細胞)かを確認する(本加算は同種移植のみ対象)
- 提供者(ドナー)にK921造血幹細胞採取を実施したか、その内容(骨髄採取・末梢血幹細胞採取)を確認する
- 採取を行った保険医療機関と移植を行う保険医療機関が同一か、異なるかを確認する
- 異なる場合は、請求先(移植側)とレセプト摘要欄への記載内容、添付するドナー側明細書の準備を確認する
- 非血縁者間移植加算やコーディネート体制充実加算など、あわせて算定できる周辺項目の有無を確認する
よくある取り漏れ
骨髄穿刺(D404・J011)を別に算定していないか
留意事項通知では「骨髄の採取に係る当該骨髄穿刺を行った場合は、『D404』骨髄穿刺及び『J011』骨髄穿刺の所定点数を別に算定できない」とされています。骨髄採取の一連の中に含まれる骨髄穿刺を、うっかり別立てで算定していないか確認しておきたいポイントです。
非血縁者間移植加算・コーディネート体制充実加算の算定漏れ
告示の注では、非血縁者間移植を実施した場合の非血縁者間移植加算(10,000点)や、施設基準に適合した保険医療機関のコーディネート体制充実加算(1,500点)が定められています。提供者の療養上の費用加算に気を取られて、これらの周辺加算の算定を見落としていないか、あわせて確認する価値があります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚労省公式資料(令和8年度)を根拠としています。詳細は必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 医科点数表(告示)「K922 造血幹細胞移植」66,450点等・注1〜9 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 医科点数表(告示)「K921 造血幹細胞採取(一連につき)」21,640点等・注1〜2 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬点数表に関する留意事項通知「K922 造血幹細胞移植」「K921 造血幹細胞採取」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf