みらい(新人医療事務)
先輩、精神科病棟のカルテを見ていたら「重度認知症加算」という名前が出てきたんですけど、これって何のための加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
いいところに気づきましたね。重度認知症加算は、精神病棟入院基本料(A103)や特定機能病院入院基本料(A104・精神病棟に限る)を算定している病棟で、重度の認知症状態にある患者さんを受け入れている体制を評価する加算です。令和8年度(2026年度)の医科点数表でも、この位置づけで継続しています。
みらい(新人医療事務)
「重度」というのは具体的にどう決まるんですか?
あおい(元・医療事務)
目安になっているのが「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」のランクMです。ランクMに該当する患者さんが対象になりますが、重度の意識障害がある方(JCSでⅡ-3(30)以上、またはGCSで8点以下の状態)は対象から除かれます。ここは自己判断せず、判定基準の原文で確認することが大切です。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
うちみたいな外来だけのクリニックでも関係ありますか?
あおい(元・医療事務)
この加算は、精神病棟入院基本料(A103)または特定機能病院入院基本料(A104・精神病棟に限る)という「入院基本料」に対する加算です。つまり精神病棟を持つ病院の入院患者さんが対象で、外来のみのクリニックでは算定の機会自体がありません。精神科病棟を持つ病院、あるいは精神病棟を持つ特定機能病院が主な対象になります。
みらい(新人医療事務)
病院の中でも、どの病棟でも対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ。地方厚生局長等に施設基準の届出をしている病棟に入院している患者さんが対象です。届出をしていない病棟では、そもそも算定候補になりません。まずは自院の精神病棟がどの入院基本料を届け出ているかを確認するところから始めます。
点数・算定期間(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
肝心の点数はどれくらいなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、精神病棟入院基本料(A103)の注4と、特定機能病院入院基本料(A104・精神病棟に限る)の注4に、それぞれ同じ内容で規定されています。表にまとめると次のとおりです。
| 区分 | 点数 | 算定できる期間 |
|---|---|---|
| 精神病棟入院基本料(A103)注4 | 1日につき300点 | 入院した日から起算して1月以内 |
| 特定機能病院入院基本料(A104・精神病棟に限る)注4 | 1日につき300点 | 入院した日から起算して1月以内 |
| 対象患者の目安 | ランクM該当(重度の意識障害がある者を除く) | ― |

みらい(新人医療事務)
「1月以内」というのは、入院した月の末日までということですか?
あおい(元・医療事務)
そうではなく、入院した「日」から数えて1か月以内という期間の限度です。月をまたいでも、入院日を起点に1か月経過すると算定候補から外れます。カルテ・レセプトで入院日をどう記録しているか、あわせて確認しておくと安心です。
算定期間の考え方に注意
重度認知症加算は「入院した日から起算して1月以内」という期間限定の加算です。1か月を超えて入院が続いても、この加算自体は算定候補になりません。月単位ではなく日単位のカウントである点に注意してください。
施設基準
みらい(新人医療事務)
この300点を算定するには、病棟側で何か基準を満たす必要があるんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい。厚生労働省の「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日 保医発0305第7号)では、精神病棟入院基本料の注4の施設基準として、次の2点が示されています。
みらい(新人医療事務)
具体的にはどんな内容ですか?
あおい(元・医療事務)
1つ目は、「基本診療料の施設基準等」の第五の四の二の(5)のイの基準を満たしていることです。もう1つが、算定対象となる重度認知症の状態について、「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準の活用について」(平成18年4月3日老発第0403003号)のランクMに該当することで、重度の意識障害のある方は除かれます。特定機能病院入院基本料の注4についても、同じイの基準を満たすことが求められています。
施設基準の確認ポイント
「基本診療料の施設基準等」第五の四の二の(5)のイの基準を満たしているか、院内の届出書類で確認できているかがまず出発点です。そのうえで、対象になる患者さんが本当にランクM相当かどうかは、判定基準の原文と照らし合わせて確認することが必要です。
届出の考え方
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たしていれば、自動的に算定できるようになるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、施設基準を満たしたうえで、地方厚生局長等への届出が必要です。届出をしている病棟に入院している患者さんについてのみ、重度認知症加算が算定候補になります。届出をしていない状態で算定してしまうと後で問題になりますので、届出の有無と届出内容を必ず確認してください。
みらい(新人医療事務)
もし届出がまだだったら、どうしたらいいですか?
あおい(元・医療事務)
その場合は、まず届出済みであれば候補になるという前提を確認したうえで、地方厚生局への届出手続きを進める必要があります。届出のタイミングによって算定開始日も変わってきますので、この記事だけで判断せず、自院を管轄する地方厚生局の窓口や公式資料であわせて確認することをおすすめします。
算定タイミング・注意点
みらい(新人医療事務)
他に気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
精神病棟入院基本料の留意事項通知には、重度認知症加算とあわせて、注5の救急支援精神病棟初期加算、注7の精神病棟看護・多職種協働加算など、複数の加算が同じ条文の中で整理されています。これらは対象になる患者や算定要件がそれぞれ異なるため、重度認知症加算とほかの加算を混同しないことが大切です。
みらい(新人医療事務)
併算定できない場合もあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した一次資料の範囲では、精神病棟入院基本料(A103)以外の特定入院料などを算定している病棟では、留意事項通知の規定により重度認知症加算を含む一部の加算が算定できないとされる場合があることが示されています。ただし、この制限がどの入院料に適用されるかは資料ごとに異なるため、自院が算定している入院料の留意事項をあわせて確認することが必要です。
他の入院料との関係に注意
自院の病棟が精神病棟入院基本料(A103)や特定機能病院入院基本料(A104・精神病棟)以外の入院料(特定入院料等)を算定している場合、重度認知症加算を含む一部の加算が算定できないとされることがあります。自院がどの入院料を算定しているかを起点に、該当する留意事項を確認してください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から、この加算に変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した令和8年度の医科点数表・関連通知(精神病棟入院基本料および特定機能病院入院基本料の注4、施設基準通知)の範囲では、重度認知症加算の点数(1日につき300点)・算定期間(入院した日から起算して1月以内)・施設基準の内容について、前回改定(令和6年度)からの変更を示す記述は確認されていません(確認日: 2026年8月・厚生労働省一次情報ベース)。
改定差分の確認方法
点数や算定期間が同じでも、施設基準や対象患者の判定方法が改定のたびに見直されることがあります。「前回と同じはず」と思い込まず、令和8年度の一次資料(医科点数表・施設基準通知)で毎回確認する習慣をつけておくと安心です。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの病院で算定候補になるかどうかは、どういう順番で確認すればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
次のような順番で確認していくと整理しやすいです。
自院で確認する順番
- 自院の病棟が精神病棟入院基本料(A103)または特定機能病院入院基本料(A104・精神病棟)を算定しているか確認する
- 「基本診療料の施設基準等」第五の四の二の(5)のイの基準を満たし、地方厚生局長等に届け出ているか確認する
- 対象患者が認知症高齢者の日常生活自立度判定基準のランクMに該当するか(重度の意識障害がある者を除く)を確認する
- 入院した日から起算して1月以内かどうかを確認する
- 上記すべてを満たす場合に、重度認知症加算が算定候補になる

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなパターンがありますか?
あおい(元・医療事務)
よくあるのは、入院から1か月を過ぎても算定を続けてしまうケースや、逆に届出済みなのに算定対象の患者さんを見落として算定し忘れてしまうケースです。どちらも、入院日の記録と患者評価のタイミングをきちんと管理できているかがポイントになります。
よくある取り漏れの例
入院日からの経過日数を管理表などで可視化していないと、1か月の期限を超えて算定してしまったり、逆に算定できる期間内なのに評価が遅れて算定機会を逃したりしがちです。入院時に「起算日」をカルテに明記しておく運用が有効です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する 精神病棟入院基本料 や 救急支援精神病棟初期加算 の記事もあわせて確認しておくと、精神病棟入院基本料まわりの加算を整理しやすくなります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。