みらい(新人医療事務)
先生、「水晶体嚢拡張リング使用加算」ってレセプトで見かけたんですけど、これってどんな加算なんですか?名前だけだと全然イメージが湧かなくて…。
あおい(元・医療事務)
白内障の手術、正式には「水晶体再建術(K282)」の中で使う特殊な器具に対する加算なんです。すべての白内障手術で算定できるわけではなく、特定の状態のときだけ使う材料に対する上乗せ点数、とイメージしてもらうとわかりやすいですよ。
みらい(新人医療事務)
特定の状態というと?
あおい(元・医療事務)
眼の中でレンズ(水晶体)を支えている「チン小帯」という組織が、加齢や外傷などで弱くなっていたり、切れてしまっていたりするケースです。そういう患者さんに水晶体再建術を行うとき、水晶体嚢(レンズの入っている袋状の組織)を広げて安定させるためのリング状の器具、それが「水晶体嚢拡張リング」です。これを使った場合に算定候補になる加算、というわけです。
この加算はどんな加算?
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関にも条件はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
大前提として、K282水晶体再建術を実施している眼科の医療機関であることが必要です。白内障手術を行っていない医療機関では、そもそもこの加算の出番自体がありません。入院・外来どちらで実施するかは医療機関の体制によりますが、いずれにしても「水晶体再建術を行い、かつチン小帯が脆弱・断裂している症例に水晶体嚢拡張リングを使用した」という事実が算定候補の起点になります。
みらい(新人医療事務)
なるほど。じゃあ対象になる患者さんは、チン小帯が弱っている人限定なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。厚生労働省の医科点数表の解釈(留意事項通知)では、「「注1」に規定する加算は、チン小帯の脆弱・断裂を有する症例に対して、水晶体嚢拡張リングを用いて水晶体再建術を実施した場合に算定する。」と明記されています。裏を返せば、チン小帯に問題がない通常の白内障手術で使ったとしても、この加算の対象にはならないということです。
点数とコードを確認する
みらい(新人医療事務)
点数はいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、K282水晶体再建術の「注1」として「水晶体嚢拡張リングを使用した場合は、所定点数に1,600点を加算する。」と定められています。ベースになる水晶体再建術本体の点数に、1,600点を上乗せする形です。

| 区分 | 内容 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| K282 1イ | 水晶体再建術(縫着レンズを挿入するもの) | 17,840点 |
| K282 1ロ | 水晶体再建術(その他のもの) | 12,100点 |
| K282 2 | 水晶体再建術(眼内レンズを挿入しない場合) | 7,430点 |
| K282 3 | 水晶体再建術(計画的後嚢切開を伴う場合) | 21,780点 |
| K282 注1加算 | 水晶体嚢拡張リング使用加算(本加算) | +1,600点 |
みらい(新人医療事務)
あくまで水晶体再建術の「本体」に上乗せする加算であって、単独では算定できないってことですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。本加算だけが単体で発生することはなく、必ずK282水晶体再建術のいずれかの区分とセットで算定候補になる、という構造を押さえておいてください。
施設基準・届出は必要?
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するには、事前に届出が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
そこはとても大事な確認ポイントです。当サイトが収集している一次資料の範囲では、水晶体嚢拡張リング使用加算そのものに専用の施設基準や事前届出を課す記載は確認されていません。むしろ、前提となるK282水晶体再建術を実施できる体制(眼科手術の実施体制)が整っていることが出発点になります。
みらい(新人医療事務)
じゃあ届出は一切気にしなくていいってことですか?
あおい(元・医療事務)
そう言い切るのは早いです。水晶体再建術自体や、術式によっては関連する施設基準・届出が別途必要になる場合もありますので、「この加算単体の届出は資料上確認できていない」というだけで、「自院の届出状況を確認しなくていい」という意味ではありません。最終的には自院の届出台帳と、実際に算定しようとしている手術区分の要件を突き合わせて確認することをおすすめします。
届出状況は必ず自院で確認
本加算に固有の施設基準は当サイトが収集している一次資料の範囲では確認されていませんが、前提となるK282水晶体再建術の実施体制・届出状況の確認は別途必要です。届出済みであれば算定候補になりますが、最終的な可否は自院の届出内容で確認してください。
算定できる条件を確認する
みらい(新人医療事務)
具体的に、どういう条件がそろえば算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
大きく分けると2つの条件があります。1つ目は「チン小帯の脆弱・断裂を有する症例であること」、2つ目は「水晶体嚢拡張リングを実際に使用して水晶体再建術を実施したこと」です。この2つがそろって初めて、算定候補として検討できます。
みらい(新人医療事務)
記録面で気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
これがもう1つの重要なポイントです。留意事項通知には「水晶体嚢拡張リングを使用した場合は、診療報酬請求に当たって、診療報酬明細書に症状詳記を記載すること。」とあります。さらに、レセプトの摘要欄記載要領でも「水晶体再建術の注の加算」について「症状詳記を記載すること。ただし、記載可能であれば、「摘要」欄への記載でも差し支えない。」と定められていて、「症状詳記(水晶体嚢拡張リング使用加算(水晶体再建術))」という形で記載欄が用意されています。つまり、リングを使った事実だけでなく、なぜ必要だったか(チン小帯の状態など)を診療報酬明細書に具体的に書き添える必要がある、ということです。
取り漏れが起きやすいポイント
チン小帯の状態の記録漏れ: 「脆弱・断裂」の所見がカルテに明記されていないと、症状詳記の記載自体が難しくなります。 症状詳記の未記載: リングを使用した事実だけ記載してあり、症状詳記の記載が抜けているケースは審査でのやり取りにつながりやすい点です。 本体術式との対応関係の確認漏れ: どの区分(イ・ロ・2・3)の水晶体再建術に対する加算なのかを明確にしておく必要があります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定と比べて、何か変わった点はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
前回改定(令和6年度)からの主な変更点について、当サイトが収集している一次資料の範囲では確認されていません(2026年8月時点の確認)。令和8年度の医科点数表においても、水晶体嚢拡張リング使用加算は「所定点数に1,600点を加算する」という形で規定されており、対象となる臨床条件(チン小帯の脆弱・断裂)や症状詳記の記載要件についても、今回確認した資料の範囲で大きな変更点は見当たりません。
改定の確認ポイント
前回改定(令和6年度): 水晶体嚢拡張リング使用加算に関する大きな制度変更は、当サイトが収集している一次資料の範囲では確認されていません。 今回改定(令和8年度): 点数・算定要件(チン小帯の脆弱・断裂、症状詳記の記載)ともに、確認できた資料の範囲では従来の考え方が維持されています。
みらい(新人医療事務)
変更がないなら安心、というわけでもないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。「変更が確認されていない」というのは、あくまで当サイトが確認できた一次資料の範囲での話です。実際に算定を検討する際は、直近の告示・通知やマスターの最新版で改めて確認することをおすすめします。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちの医院やクリニックで確認するとしたら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のような順番で確認していくと整理しやすいです。

自院で確認する順番
自院でK282水晶体再建術を実施しているか確認する 対象患者にチン小帯の脆弱・断裂の所見があるかカルテで確認する 実際の手術で水晶体嚢拡張リングを使用したかを確認する 診療報酬明細書に症状詳記(水晶体嚢拡張リング使用加算)を記載する どの水晶体再建術の区分(イ・ロ・2・3)に対する加算かを確認し、算定候補として整理する
みらい(新人医療事務)
この順番で確認していけば、算定漏れも防ぎやすそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。特にチン小帯の所見の記録と症状詳記の2点は、後から見返しても算定根拠がわかるように残しておくことが大切です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。チン小帯の所見や症状詳記の記載状況などを整理しながら、確認すべきポイントを一緒に整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。