みらい(新人医療事務)
先輩、「術中脳灌流モニタリング加算」ってレセプトで見かけたんですけど、これってうちのクリニックでも算定候補になるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
名前だけだと分かりにくいですよね。これは麻酔の加算の一つで、L008(声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔)という麻酔の項目に対する「注加算」なんです。麻酔そのものとは別に、条件を満たしたときだけ上乗せで算定候補になる点数です。
みらい(新人医療事務)
注加算ってことは、対象になる手術が決まっているんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。厚生労働省の点数表(令和8年度)では、対象になる手術が具体的に列挙されています。まずはそこから確認していきましょう。
術中脳灌流モニタリング加算とは
みらい(新人医療事務)
どんな手術のときに算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表、L008の注11には次のように定められています。「区分番号K561に掲げるステントグラフト内挿術(血管損傷以外の場合において、胸部大動脈に限る。)、K609に掲げる動脈血栓内膜摘出術(内頸動脈に限る。)、K609-2に掲げる経皮的頸動脈ステント留置術又は人工心肺を用いる心臓血管手術において、術中に非侵襲的に脳灌流のモニタリングを実施した場合に、術中脳灌流モニタリング加算として、1,000点を所定点数に加算する。」
みらい(新人医療事務)
4つのパターンがあるんですね。K561、K609、K609-2、それと人工心肺を使う心臓血管手術、と。
あおい(元・医療事務)
はい。それぞれ区分番号が決まっているので、自院で実施している手術がこの4つのどれかに該当するかを、まず手術記録やカルテで確認するのが第一歩になります。加算そのものは1,000点で、麻酔(L008)の所定点数に上乗せする形です。
みらい(新人医療事務)
「非侵襲的に脳灌流のモニタリングを実施した場合」というのは、具体的にどういう意味なんでしょう?
あおい(元・医療事務)
そこは留意事項通知(令和8年度)で補足されています。「『注11』に規定する術中脳灌流モニタリング加算は、近赤外光を用いて非侵襲的かつ連続的に脳灌流のモニタリングを実施した場合に算定できる。」とあります。つまり、近赤外光(NIRS)を使って脳灌流を非侵襲的・連続的にモニタリングしていることが前提です。侵襲的な手法や単発的な測定ではなく、連続モニタリングであることがポイントですね。
算定可否は断定できません
ここまでの内容は、令和8年度の告示・留意事項通知に基づく整理です。実際に算定候補になるかどうかは、手術の術式・モニタリング方法・記録内容によって変わります。断定はできず、自院での確認が必要です。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
うちみたいな診療所でも対象になり得るんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している資料の範囲では、この加算は診療所・病院いずれも算定候補になり得る整理です。対象手術(K561・K609・K609-2、人工心肺を用いる心臓血管手術)はいずれも入院での実施が想定されますが、外来等での取扱いは資料の範囲では確認できていません。対象手術そのものを実施できる体制がある医療機関に限られる、という点も忘れないでください。
みらい(新人医療事務)
つまり、この4つの手術をやっていない医療機関だと、そもそも対象外の可能性が高いということですね。
あおい(元・医療事務)
そういう理解でいいと思います。まず「うちはこの4つの手術のどれかを実施しているか」を確認するのが最初の分かれ道になりますね。
点数・算定単位
みらい(新人医療事務)
点数を表で整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
はい、令和8年度の整理です。
| 項目 | 点数 | 算定単位 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 術中脳灌流モニタリング加算(L008 注11) | 1,000点 | 対象手術に係る麻酔1件につき | 令和8年度医科点数表 L008 注11 |
| 対象となる麻酔本体 | L008(声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔) | 手術の内容により所定点数が異なる | 令和8年度医科点数表 L008 |
みらい(新人医療事務)
L008の本体の点数は書いてないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。L008自体は手術の種類(人工心肺を用いる心臓手術か、腹腔鏡を使うかなど)によって所定点数が細かく分かれています。この記事では術中脳灌流モニタリング加算(1,000点)の要件に絞って整理しているので、L008本体の点数は自院のレセプトコンピュータや点数表で個別に確認してください。
対象手術の一覧

みらい(新人医療事務)
4つの対象手術、もう少し詳しく整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
表にするとこうなります。
| 区分番号 | 手術名 | 条件 |
|---|---|---|
| K561 | ステントグラフト内挿術 | 血管損傷以外の場合において、胸部大動脈に限る |
| K609 | 動脈血栓内膜摘出術 | 内頸動脈に限る |
| K609-2 | 経皮的頸動脈ステント留置術 | — |
| (区分番号なし) | 人工心肺を用いる心臓血管手術 | — |
みらい(新人医療事務)
K561だけ「血管損傷以外の場合」「胸部大動脈に限る」って条件が付いているんですね。
あおい(元・医療事務)
よく気づきましたね。実はK561にはもう一つ、留意事項通知に細かい条件があります。「『K561』ステントグラフト内挿術(血管損傷以外の場合において、胸部大動脈に限る。)については、弓部大動脈においてステント留置を行う若しくは弓部3分枝の血管吻合を行う際に術中に非侵襲的に脳灌流のモニタリングを実施した場合にのみ算定できることとし、その医学的必要性を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。」とされています。
みらい(新人医療事務)
つまりK561の場合は、弓部大動脈でのステント留置か、弓部3分枝の血管吻合のときに限られて、しかも摘要欄に医学的必要性を書かないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。K609・K609-2・人工心肺を用いる心臓血管手術と比べて、K561は条件が一段階細かいので、対象手術がK561のケースでは特に注意して確認してください。
似た名前の加算との取り違えに注意
L008には注10に「非侵襲的血行動態モニタリング加算」(500点)という別の加算もあります。これは動脈圧測定用カテーテルなどの侵襲的モニタリングが行われていない場合に算定候補になる加算で、術中脳灌流モニタリング加算(注11・1,000点)とは対象も点数も異なります。また、人工心肺(K601)の注2には「選択的脳灌流」を行った場合の加算(7,000点)もありますが、これは人工心肺そのものの加算であり、L008の術中脳灌流モニタリング加算とは区分番号も点数も別物です。「脳灌流」という言葉が共通するため混同しやすい点に注意してください。
施設基準・届出について
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要なんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している資料の範囲では、この加算について特別な施設基準の届出要件は確認されていません。ただし、これは「届出が不要と断定できる」という意味ではなく、あくまで当サイトが確認できた範囲での整理です。届出の要否は年度改定で変わることもあるので、算定を検討する際は、自院の地方厚生局への届出状況や、契約している審査支払機関に必ず確認してください。
届出・施設基準は自院で必ず確認
施設基準や届出の要否について、当サイトの整理と自院の実際の届出状況が異なる可能性があります。最終的な判断は、自院の届出書類・公式資料・地方厚生局や審査支払機関への確認をもとに行ってください。
算定要件を満たすには
みらい(新人医療事務)
実際に算定候補にするには、何を揃えておけばいいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
大きく分けると2つです。1つ目は、対象手術(K561・K609・K609-2・人工心肺を用いる心臓血管手術のいずれか)に該当していること。2つ目は、近赤外光を用いた非侵襲的・連続的な脳灌流モニタリングを実施していることです。この2つがカルテや手術記録から確認できるかがポイントになります。
みらい(新人医療事務)
記録の残し方にも決まりがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。診療報酬明細書の記載要領(令和8年度)には、術中脳灌流モニタリング加算に関する記載コードとして「830100870 医学的必要性(術中脳灌流モニタリング加算);その医学的必要性を記載すること」という項目があります。これは主に、K561のステントグラフト内挿術で弓部大動脈のステント留置や弓部3分枝の血管吻合を行った際に、その医学的必要性を摘要欄に記載する場面に対応するものです。該当するケースでは、摘要欄への記載を忘れないようにしましょう。
みらい(新人医療事務)
記載漏れがあると、査定の対象になったりするんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
可能性はあります。ただ、実際にどう扱われるかは審査支払機関の個別判断によるので、断定はできません。記載要件がある場面では、摘要欄への記載を徹底しておくことをおすすめします。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わった点はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
術中脳灌流モニタリング加算そのものについて、当サイトが収録している一次資料の範囲では、前回改定からの変更点は確認されていません(令和8年度の告示・留意事項通知の内容に基づく整理です)。新設・廃止・点数変更などの情報が確認でき次第、この記事も更新していきます。
改定情報は定期的に確認を
点数や算定要件は改定のたびに見直される可能性があります。この記事は令和8年度の一次資料に基づいていますが、実際に算定を検討する際は、最新の告示・留意事項通知や、自院が契約する審査支払機関の案内も併せて確認してください。
自院で確認する順番

みらい(新人医療事務)
結局、うちで確認するときはどういう順番で見ていけばいいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
次のステップで確認していくと整理しやすいと思います。
自院で確認する順番
- 対象手術の確認: K561(胸部大動脈のステントグラフト内挿術・血管損傷以外)、K609(内頸動脈の動脈血栓内膜摘出術)、K609-2(経皮的頸動脈ステント留置術)、人工心肺を用いる心臓血管手術のいずれかを実施しているか、手術記録で確認する
- モニタリング方法の確認: 近赤外光を用いた非侵襲的・連続的な脳灌流モニタリングを術中に実施しているか確認する
- K561該当時の追加条件確認: K561の場合、弓部大動脈でのステント留置または弓部3分枝の血管吻合に該当するかを確認する
- 記載要件の確認: 該当する場合、診療報酬明細書の摘要欄に医学的必要性を記載しているか確認する
- 届出状況の確認: 自院の施設基準の届出状況を、地方厚生局への届出書類で確認する
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなパターンがあるんでしょう?
あおい(元・医療事務)
いくつか整理してみますね。
よくある取り漏れ
注10の非侵襲的血行動態モニタリング加算(500点)と注11の術中脳灌流モニタリング加算(1,000点)は、対象となる手術の種類が異なります(注10は麻酔が困難な患者の腹腔鏡下手術、注11はK561・K609・K609-2・人工心肺を用いる心臓血管手術)。名称が似ているため、算定時に取り違えないよう注意してください。併算定の可否は資料の範囲では確認できていません。該当するケースがあれば自院・審査支払機関で個別に確認してください。また、K561該当症例で摘要欄への医学的必要性の記載が漏れていると、算定候補であっても記録面で不備が生じる可能性があります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、よくある質問をいくつか聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
どうぞ。
みらい(新人医療事務)
この加算は外来でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
対象手術(K561・K609・K609-2、人工心肺を用いる心臓血管手術)はいずれも入院での実施が想定されますが、外来等での取扱いは資料の範囲では確認できていません。外来での実施を検討している場合は、対象になるかどうかを自院・審査支払機関で個別に確認してください。
みらい(新人医療事務)
人工心肺を使わない手術でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
対象手術はK561・K609・K609-2、または人工心肺を用いる心臓血管手術に限られています。これら以外の手術で脳灌流モニタリングを行った場合については、当サイトが収録している資料の範囲では確認できていません。該当するかどうかは自院で個別に確認してください。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出をしていなくても算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できた資料の範囲では特別な届出要件は見当たりませんが、これは断定できるものではありません。届出の要否は自院の状況や地方厚生局の案内で最終確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。