バルーン付肺動脈カテーテル挿入加算とは?まず基本を教えてください
みらい(新人医療事務)
あおいさん、「バルーン付肺動脈カテーテル挿入加算」というレセプト用語を見かけたんですが、これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)の医科点数表では、D230「観血的肺動脈圧測定」という検査に付く注加算です。観血的肺動脈圧測定を行う際に、右心カテーテル法でバルーン付肺動脈カテーテル(いわゆるスワンガンツカテーテルなど)を挿入した場合に、挿入した開始日に限って1,300点が所定点数に上乗せされます。
みらい(新人医療事務)
「観血的肺動脈圧測定」自体がまず何なのか、そこから知りたいです。
あおい(元・医療事務)
肺動脈の圧を体内にカテーテルを入れて直接測定する検査です。告示では点数がこう定められています。「D230 観血的肺動脈圧測定 1 1時間以内又は1時間につき 180点 2 2時間を超えた場合(1日につき) 570点」となっていて、留意事項通知では「肺動脈楔入圧を持続的に測定する場合に所定点数を算定する」とされています。重症の循環管理が必要な患者さんに対して、集中治療室などで行われる検査というイメージです。
みらい(新人医療事務)
その検査に、バルーン付きのカテーテルを使うと加算が付く、という理解でいいですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。告示の注1には「バルーン付肺動脈カテーテルを挿入した場合は、バルーン付肺動脈カテーテル挿入加算として、開始日に限り1,300点を所定点数に加算する。この場合において、挿入に伴う画像診断及び検査の費用は算定しない」と明記されています。カテーテルという「モノ」を体内に挿入する手技そのものを評価する加算、というイメージを持っていただくとわかりやすいと思います。
対象になりうる場面を確認したいです
みらい(新人医療事務)
どんな患者さん・場面で算定候補になるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には次のように書かれています。「(2) 測定のために右心カテーテル法により、バルーン付肺動脈カテーテルを挿入した場合には挿入日にカテーテル挿入加算を算定できる。この場合、使用したカテーテルの本数にかかわらず、一連として算定する。」つまり、観血的肺動脈圧測定(肺動脈楔入圧の持続測定)のために、右心カテーテル法でバルーン付肺動脈カテーテルを挿入した患者さんが対象候補になります。
みらい(新人医療事務)
対象の医療機関に限定はあるんですか?病院だけとか、診療所も含むとか。
あおい(元・医療事務)
そこが大事な確認ポイントで、当サイトが確認できた告示・留意事項通知の範囲では、「病院に限る」「診療所は対象外」といった明文の限定は見当たりません。ただ、観血的肺動脈圧測定自体が右心カテーテル法を用いる検査であり、実施できる体制(集中治療室・循環器の医療機器・技術)がある医療機関が前提になると考えられます。この点は資料上の明文規定ではないため、自院で実際に当該検査・手技を実施できるかどうかとあわせて確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
「スワンガンツカテーテル」という言葉も聞いたことがあります。同じものですか?
あおい(元・医療事務)
別の資料(重症度、医療・看護必要度の判定基準に関する通知)にはなりますが、「肺動脈圧測定は、スワンガンツカテーテルを挿入し、そのカテーテルを介して直接的に肺動脈圧測定を実施した場合を評価する項目である」「スワンガンツカテーテル以外の肺動脈カテーテルによる肺動脈圧測定についても肺動脈圧測定の評価に含める」という記載があります。これは看護必要度の評価基準についての記載であり、バルーン付肺動脈カテーテル挿入加算の算定要件そのものを定めたものではありませんが、用語の理解としては、バルーン付肺動脈カテーテルの代表例がスワンガンツカテーテルである、という参考情報になります。
点数・算定コードを確認したいです
みらい(新人医療事務)
具体的な点数を表で整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)時点の点数はこちらです。
| 項目 | 点数 | 算定できる範囲 |
|---|---|---|
| D230 観血的肺動脈圧測定(1時間以内又は1時間につき) | 180点 | 検査の所定点数 |
| D230 観血的肺動脈圧測定(2時間を超えた場合・1日につき) | 570点 | 検査の所定点数 |
| バルーン付肺動脈カテーテル挿入加算(D230注1) | 1,300点 | 挿入した開始日に限り1回 |

みらい(新人医療事務)
「開始日に限り」というのは、入院期間中に何度も算定できるものではない、ということですか?
あおい(元・医療事務)
はい。告示の文言は「開始日に限り1,300点を所定点数に加算する」ですので、バルーン付肺動脈カテーテルを挿入した最初の日にだけ算定候補になります。さらに注2として「カテーテルの交換の有無にかかわらず一連として算定する」とあるので、途中でカテーテルを交換しても、加算を再度算定できるわけではなく一連の扱いになります。留意事項通知でも「使用したカテーテルの本数にかかわらず、一連として算定する」と重ねて確認できます。
みらい(新人医療事務)
「医科診療行為マスターで確認」というコードの数字もあるみたいですが。
あおい(元・医療事務)
当サイトでは概念上のコードとして「160075170」を紐づけて整理していますが、個別の点数・要件の根拠は今お伝えした告示・留意事項通知の条文です。レセプトコンピュータへの入力時は、必ず自院で使用しているマスターの最新版で該当コードをご確認ください。
施設基準・届出は必要ですか?
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要なんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
ここは正直にお伝えすると、当サイトが確認できた告示・留意事項通知の範囲では、バルーン付肺動脈カテーテル挿入加算そのものに固有の施設基準・地方厚生局への届出を求める記載は見当たりませんでした。外来感染対策向上加算のように「施設基準に適合するものとして届け出た医療機関」という明文の届出要件は、今回確認した資料の中には出てきていません。
みらい(新人医療事務)
じゃあ届出は不要と考えていいんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは断定できません。「明文の届出要件が見当たらなかった」ことと「届出が一切不要」であることは別です。医科点数表の検査に関する通則や、自院が別途参加している施設基準・届出との関係もありますので、最終的には自院の届出状況・レセプト担当・審査支払機関に確認していただくのが確実です。資料に無い前提で「届出不要」と決めつけないようにご注意ください。
施設基準・届出の確認ポイント(令和8年度)
- 本加算固有の施設基準・届出要件は、今回確認した告示・留意事項通知の範囲では見当たりません
- 「見当たらない」=「不要」と断定はできないため、自院の届出状況を確認したうえで判断してください
- D230観血的肺動脈圧測定自体を実施できる体制(集中治療室・循環管理の技術等)があるかも合わせて確認しましょう
併算定・算定タイミングの注意点を教えてください
みらい(新人医療事務)
同じ日に他の検査もしていたら、どうなりますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の(3)に注意点があります。「(3) 観血的肺動脈圧測定と右心カテーテル法による諸検査又は中心静脈圧測定を同一日に実施した場合は、主たるもののみ算定する。」つまり、観血的肺動脈圧測定(バルーン付肺動脈カテーテル挿入加算を含む)と、中心静脈圧測定などを同じ日に行った場合は、主なもの1つだけの算定候補になります。両方を単純に足し算できるわけではありません。
みらい(新人医療事務)
中心静脈圧測定というのはどんな検査なんですか?
あおい(元・医療事務)
D226「中心静脈圧測定(1日につき)」という別の検査項目で、告示には「1 4回以下の場合 120点 2 5回以上の場合 240点」と定められています。観血的肺動脈圧測定と同じ日に実施した場合は、どちらか主たるものだけが算定候補になる、という関係です。
みらい(新人医療事務)
逆に、同じ日でも別に算定できるものはありますか?
あおい(元・医療事務)
あります。留意事項通知の(4)には「左心カテーテル法による諸検査を同一日に実施した場合は別に算定できる」とあります。右心カテーテル法(バルーン付肺動脈カテーテル)と左心カテーテル法は別の手技として扱われる、ということですね。
みらい(新人医療事務)
穿刺した部分のガーゼ交換なども別で請求できますか?
あおい(元・医療事務)
できません。(5)に「穿刺部位のガーゼ交換等の処置料及び材料料は別に算定できない」と明記されています。穿刺部位のケアにかかる処置料・材料料は、この検査・加算の点数に含まれている扱いです。
併算定の注意点(令和8年度)
- 観血的肺動脈圧測定と中心静脈圧測定・右心カテーテル法による諸検査を同一日に実施した場合は主たるもののみ算定候補になります
- 左心カテーテル法による諸検査は同一日でも別に算定できる場合があります(要確認)
- 穿刺部位のガーゼ交換等の処置料・材料料は別算定できません
- バルーン付肺動脈カテーテル挿入加算自体は「挿入した開始日」に限り、カテーテル交換の有無にかかわらず一連の扱いです
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
令和8年度の改定で、この加算に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
今回確認できた一次資料(令和8年厚生労働省告示第69号・診療報酬の算定方法の一部を改正する件、および令和8年3月5日 保医発0305第6号の実施上の留意事項通知)の範囲では、バルーン付肺動脈カテーテル挿入加算の点数(1,300点)や算定要件の変更を明示する記載は確認されていません(確認日: 2026-08)。
みらい(新人医療事務)
令和6年度の同じ資料と見比べたわけではない、ということですか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、令和6年度時点の告示文そのものを当サイトの一次資料として突き合わせられているわけではないため、「変更なし」と断定はできません。今回確認できたのは令和8年度時点の告示・通知の内容までです。改定の経緯を正確に把握したい場合は、厚労省が公開している令和8年度診療報酬改定に関する官報・通知を直接ご確認いただくことをおすすめします。
自院での確認手順
みらい(新人医療事務)
うちの医療機関で算定候補になるか、どういう順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
こんな順番で確認するとわかりやすいと思います。
自院で確認する順番
-
D230観血的肺動脈圧測定を実施しているか確認 — 肺動脈楔入圧を持続的に測定する検査を実施しているかどうか
-
右心カテーテル法でバルーン付肺動脈カテーテルを挿入したか確認 — スワンガンツカテーテル等のバルーン付肺動脈カテーテルを右心カテーテル法で挿入したかどうか
-
挿入した開始日かどうかを確認 — 加算は挿入した開始日に限り算定候補になります。カテーテル交換日は対象外です
-
同一日の他検査との重複を確認 — 中心静脈圧測定・右心カテーテル法による諸検査を同一日に実施していないか、実施している場合は主たるものを確認
-
画像診断・検査費用の重複計上がないか確認 — 挿入に伴う画像診断・検査の費用は別に算定できません
-
施設基準・届出の要否を自院で確認 — 資料上は本加算固有の届出規定が見当たりませんが、断定はできないため自院・審査支払機関へ確認してください

みらい(新人医療事務)
これだけ確認事項があると、自分たちだけで判断するのは少し不安になりますね。
あおい(元・医療事務)
そんなときは加算チェッカーが手がかりになります。自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や実施している検査の内容を入力すると、確認すべきポイントを整理できます。
よくある取り漏れ・間違えやすいポイント
みらい(新人医療事務)
実務でよく間違えやすいところはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。
よくある取り漏れポイント
- バルーン付肺動脈カテーテルを挿入しているのに、挿入加算自体を算定し忘れているケース
- カテーテル交換のたびに加算を重複して算定してしまっているケース(一連として1回のみが原則)
- 挿入に伴う画像診断・検査の費用を、加算とは別に重複して計上してしまっているケース
- 中心静脈圧測定など他の検査と同一日に実施した際、主たるものの選び方を誤っているケース
- 穿刺部位のガーゼ交換等の処置料・材料料を、誤って別に算定してしまっているケース
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後によくある疑問も聞いておきたいです。カテーテルを何本使っても1,300点は変わらないんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項通知に「使用したカテーテルの本数にかかわらず、一連として算定する」と明記されています。本数が増えても加算点数が積み上がるわけではありません。
みらい(新人医療事務)
入院が長引いて、途中でカテーテルを交換した場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
告示の注2に「カテーテルの交換の有無にかかわらず一連として算定する」とあるので、交換のタイミングで加算を再度算定できるわけではありません。あくまで最初に挿入した開始日に限り1,300点が算定候補になる、という整理です。
みらい(新人医療事務)
この加算だけを単独で算定することはできますか?
あおい(元・医療事務)
できません。あくまでD230観血的肺動脈圧測定という検査の「注加算」なので、観血的肺動脈圧測定の所定点数に上乗せする形でしか算定候補になりません。検査本体を実施していることが前提です。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省公式資料を根拠としています。詳細は必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号) https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/000433602.pdf
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・実施内容・公式資料・審査支払機関の判断で必ずご確認ください。