パワー・ベクトル分析加算とは?まず基本を教えてください
みらい(新人医療事務)
あおいさん、レセプトのチェックをしていたら「パワー・ベクトル分析加算」という項目を見つけたんですけど、これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)の医科診療報酬点数表にある、平衡機能検査(区分番号D250)のうち「5 重心動揺計、下肢加重検査、フォースプレート分析、動作分析検査」に対する加算のひとつです。重心動揺計という検査で得られた揺れのデータを、コンピューターで詳しく解析した場合に、所定点数へ200点を上乗せできる仕組みになっています。
みらい(新人医療事務)
重心動揺計というのは、めまいの検査で使う機械のことですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。荷重変動を測る検出器と、そのデータを記録・分析する装置を使って、めまいや平衡障害の病巣診断のために行う検査です。患者さんに台の上に立ってもらい、体の揺れ(重心動揺)を記録します。この検査自体の所定点数は250点で、そこにパワー・ベクトル分析加算200点が上乗せされる、という構造です。
みらい(新人医療事務)
ただ重心動揺計をやるだけじゃダメで、何か特別な分析が必要ということですね?
あおい(元・医療事務)
はい、そこがポイントです。厚生労働省の留意事項通知には「記録された重心動揺軌跡のコンピューター分析を行い、パワー・スペクトル、位置ベクトル、速度ベクトル、振幅確率密度分布を全て算出した場合に算定する」と明記されています。この4項目をすべて算出して初めて算定候補になる、という要件です。
対象となる医療機関・患者さんはどんな場合ですか?
みらい(新人医療事務)
この検査、どんな患者さんに行うものなんですか?
あおい(元・医療事務)
めまいやふらつき、平衡障害が疑われる患者さんの病巣診断のために行う検査です。耳鼻咽喉科や脳神経内科などで、平衡機能検査(D250)の一連の検査の中で実施されることが多い項目です。診療所・病院、外来・入院といった医療機関の類型そのものを制限する記載は、当サイトが収録している一次資料の範囲では確認されていません。
みらい(新人医療事務)
どの医療機関でもすぐに算定候補になるということですか?
あおい(元・医療事務)
そこは慎重に考える必要があります。医療機関の類型を問う記載がないからといって、機器や体制が整っていなければ実施自体ができません。重心動揺計とパワー・ベクトル分析ができる検査機器を保有し、実際に4項目すべてを算出できる体制であることが前提です。自院で対応可能かどうかは、まず検査機器と分析ソフトの仕様から確認するのが実務的です。
点数の考え方を整理してください(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数の構造、もう一度整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)時点の点数表をまとめると、以下のようになります。
| 区分 | 内容 | 点数 | 算定単位 |
|---|---|---|---|
| D250「5」 | 重心動揺計、下肢加重検査、フォースプレート分析、動作分析検査(所定点数) | 250点 | 一連につき |
| D250「5」注 | パワー・ベクトル分析加算(4項目をすべて算出した場合) | +200点 | 所定点数に加算 |
| D250「5」注 | 刺激又は負荷加算(電気刺激・視運動刺激等を加えた場合) | +120点 | 1種目につき加算 |

みらい(新人医療事務)
パワー・ベクトル分析加算と刺激又は負荷加算は、両方まとめて算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
点数表上は、それぞれ別の要件を持つ加算として整理されています。パワー・ベクトル分析加算は「コンピューター分析で4項目を算出したか」、刺激又は負荷加算は「電気刺激・視運動刺激・傾斜刺激・水平運動刺激・振動刺激等の負荷を加えたか」という、それぞれ独立した実施内容が条件です。実施した内容次第では両方が算定候補になり得ますが、断定はできません。カルテと検査記録に基づいて、自院で個別に確認してください。
みらい(新人医療事務)
医科診療行為マスター上のコードはどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトの整理では、パワー・ベクトル分析加算のマスターコードは「160156070」として収録されています。ただし、実際のレセプト入力に使うコード体系はレセプトコンピューターのマスター更新状況によって異なる場合がありますので、必ず自院のレセコン・審査支払機関側の最新マスターで照合してください。
算定要件をもう少し詳しく教えてください
みらい(新人医療事務)
「4項目をすべて算出」というのが引っかかっています。1つでも欠けたらダメなんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項の書きぶりを見る限り、そう読むのが妥当です。「パワー・スペクトル、位置ベクトル、速度ベクトル、振幅確率密度分布を全て算出した場合に算定する」とされていて、「全て」という言葉が使われています。一部の項目だけを算出した場合は、この加算の対象外の可能性があります。
パワー・ベクトル分析加算の算定要件(令和8年度)
- 前提: D250「5」重心動揺計、下肢加重検査、フォースプレート分析、動作分析検査を実施していること
- 必須の4項目(すべて算出)
- パワー・スペクトル
- 位置ベクトル
- 速度ベクトル
- 振幅確率密度分布
- 4項目のうち一部しか算出していない場合は、算定候補になるか確認が必要
- 検査記録・カルテに4項目の算出結果が残っていることが望ましい
みらい(新人医療事務)
重心動揺計自体にも、何か前提条件があるんでしたよね?
あおい(元・医療事務)
よく覚えていましたね。留意事項では「本検査は、『1』の標準検査を行った上、実施の必要が認められたものに限り算定するものである」とされています。「1」の標準検査というのは、上肢偏倚検査や下肢偏倚検査、立ちなおり検査、自発眼振検査などをまとめた一連の検査のことです。まずこの標準検査を行い、その結果として重心動揺計による詳しい検査が必要と判断された場合に限り、重心動揺計を算定できるという構造です。
みらい(新人医療事務)
標準検査をやらずに、いきなり重心動揺計とパワー・ベクトル分析加算だけを算定するのは無理ということですね。
あおい(元・医療事務)
留意事項の文言からはそう読めます。ただし、下肢加重検査・フォースプレート分析・動作分析検査については、過去の疑義解釈で「標準検査を事前に行う必要はない」という整理が示されたこともあります。重心動揺計とその他の検査とで前提条件が異なる可能性がありますので、実施する検査の種類ごとに確認しておくと安心です。
施設基準・届出は必要ですか?
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するのに、施設基準の届出みたいなものは必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、当サイトが収録している一次資料(点数表・留意事項)の範囲では、パワー・ベクトル分析加算に固有の施設基準や地方厚生局への届出を求める記載は確認されていません。平衡機能検査そのものは、検査料の枠組みで実施される項目であり、施設基準の届出を前提とする「加算」とは性質が異なる可能性があります。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、届出なしでそのまま算定していいということですか?
あおい(元・医療事務)
そこは「届出は不要」と断定はできません。医療機関によっては検体検査管理加算など他の検査系の届出と組み合わせて運用しているケースもありますし、地方厚生局への確認や院内の医事担当者への確認は必ず行ってください。届出の要否そのものを、記事だけで確定的に判断することは避けたい部分です。
届出・施設基準についての注意
- 本加算固有の届出要件は、当サイトが収録している一次資料の範囲では確認されていません
- 「届出不要」と断定するものではなく、自院の医事担当・地方厚生局への確認をおすすめします
- 平衡機能検査(D250)自体の実施体制(検査機器・実施者)が整っているかも合わせて確認してください
算定タイミングと注意点を教えてください
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、重心動揺計そのものが「面積(外周・矩形・実効値面積)、軌跡長(総軌跡長・単位軌跡長・単位面積軌跡長)、動揺中心変位、ロンベルグ率を全て計測した場合に算定するもの」とされています。重心動揺計の所定点数を算定できていることが、パワー・ベクトル分析加算の前提になります。
みらい(新人医療事務)
重心動揺計の要件と、パワー・ベクトル分析加算の要件、両方満たさないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。重心動揺計の測定項目(面積・軌跡長・動揺中心変位・ロンベルグ率)を満たした上で、さらにパワー・ベクトル分析の4項目を算出して初めて、200点の加算が算定候補になります。どちらか一方だけでは要件を満たさない可能性があります。
算定タイミングの注意点
- 重心動揺計の所定点数(250点)の要件を満たしていない状態で、加算だけを算定することはできません
- 「1」の標準検査の実施と必要性の判断が前提とされている点に注意
- パワー・ベクトル分析の4項目(パワー・スペクトル・位置ベクトル・速度ベクトル・振幅確率密度分布)は「全て」算出が条件
- 刺激又は負荷加算とは別の要件のため、混同して記録しないよう注意
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
令和8年度の改定で、この加算に何か変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料(令和8年度の医科点数表・留意事項通知)の範囲では、パワー・ベクトル分析加算の点数(200点)や算定要件(4項目をすべて算出)について、前回改定(令和6年度・2024年度)からの変更は確認されていません(確認日: 2026年8月)。D250平衡機能検査という区分自体は長く点数表に存在する項目で、今回の記事執筆時点で入手できた一次資料からは、この加算特有の新設・廃止・点数変更といった情報は見当たりませんでした。
みらい(新人医療事務)
つまり、以前から変わらず続いている加算ということですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できた範囲ではそう捉えられますが、断定はしません。点数表・留意事項は改定のたびに細部が見直されることがあるため、正確な沿革を確認したい場合は、令和6年度以前の点数表・留意事項通知そのものと照らし合わせることをおすすめします。当サイトでは令和8年度時点の一次資料を優先して収録・確認しています。
改定差分の確認状況(令和8年度・前回比)
| 項目 | 確認結果 |
|---|---|
| 点数(200点) | 令和8年度時点の一次資料の範囲で変更は確認されていません |
| 算定要件(4項目すべて算出) | 令和8年度時点の一次資料の範囲で変更は確認されていません |
| 施設基準・届出の記載 | もともと本加算固有の記載は確認されていません |
| 確認日 | 2026年8月(厚労省点数表・留意事項ベース) |
よくある取り漏れ・混同しやすいポイント
みらい(新人医療事務)
実務でありがちな取り漏れとか、間違えやすいポイントはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかご紹介します。
よくある取り漏れ・確認ポイント
- パワー・ベクトル分析加算を算定しているのに、4項目のうち一部しか検査記録に残っていない
- 重心動揺計自体の測定項目(面積・軌跡長・動揺中心変位・ロンベルグ率)の記録が不十分なまま加算だけ算定している
- 「1」の標準検査を実施した記録・必要性の判断根拠がカルテに残っていない
- パワー・ベクトル分析加算と刺激又は負荷加算を混同し、どちらの要件を満たしたのか記録上あいまいになっている
- 施設基準・届出の要否を確認せずに、他の検査加算と同じ運用で扱ってしまっている
みらい(新人医療事務)
記録が大事なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。診療報酬の審査では、検査を「実施したこと」だけでなく「要件を満たす形で実施し、記録が残っていること」が重要になります。特にこの加算のように「全て算出」という条件がある場合は、算出結果がカルテ・検査レポートに明確に残っているかどうかが、後から確認する際の拠り所になります。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちのクリニックでこの加算が算定候補になるか確認したいんですが、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
こんな順番で確認するとスムーズです。
自院で確認する順番
-
重心動揺計等の検査機器・体制を確認 — D250「5」重心動揺計、下肢加重検査、フォースプレート分析、動作分析検査を実施できる検査機器と実施体制があるか
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「1」標準検査の実施状況を確認 — 上肢偏倚検査・下肢偏倚検査・立ちなおり検査・自発眼振検査など、標準検査を先に実施し、重心動揺計の必要性を判断した記録があるか
-
重心動揺計の測定項目を確認 — 面積(外周・矩形・実効値面積)、軌跡長(総軌跡長・単位軌跡長・単位面積軌跡長)、動揺中心変位、ロンベルグ率をすべて計測しているか
-
パワー・ベクトル分析の4項目を確認 — パワー・スペクトル、位置ベクトル、速度ベクトル、振幅確率密度分布をすべて算出できる分析ソフト・体制があるか
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検査記録・カルテへの記載を確認 — 4項目の算出結果が検査レポートやカルテに明確に記載されているか
-
施設基準・届出の要否を医事担当・地方厚生局へ確認 — 本加算固有の届出要件が無いか、念のため自院の医事担当者や地方厚生局に確認しておく

みらい(新人医療事務)
これだけ確認することがあると、自分たちだけで判断するのはちょっと不安になります。
あおい(元・医療事務)
そんなときは、加算チェッカーを活用してみてください。自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や実施内容を入力すると、確認すべきポイントを整理する手助けになります。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚労省公式資料を根拠としています。詳細な要件・届出手続きは必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 医科診療報酬点数表 別表第一 D250 平衡機能検査(令和8年厚生労働省告示第69号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 疑義解釈資料の送付について(その3)医科 問14(D250平衡機能検査「5」の標準検査要件) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21053.html
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。重心動揺計の実施状況やパワー・ベクトル分析の4項目の算出状況を整理しながら、確認すべきポイントを整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。