みらい(新人医療事務)
あおいさん、口腔外科のレセプトを見ていたら「下顎完全埋伏智歯(骨性)又は下顎水平埋伏智歯加算」という項目があったんですが、聞き慣れなくて…。これってどんな時に付く加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
医科点数表のK404「抜歯手術」に定められている加算の一つですよ。埋伏歯(骨の中に埋まった歯)の抜歯をしたときに、それが下顎の完全埋伏歯(骨性)または下顎水平埋伏智歯という難しい状態だった場合に、通常の抜歯手術の点数へ230点を上乗せできる、という令和8年度時点の定めです。
みらい(新人医療事務)
「智歯」って親知らずのことですよね。埋まっている親知らずを抜けば、いつでもこの加算が付くんですか?
あおい(元・医療事務)
そこが確認したいところで、誰にでも付くわけではないんです。抜いた歯の場所や埋まり方によって対象になるかどうかが変わってくるので、まずはその範囲から一緒に見ていきましょう。
対象になる抜歯の範囲(下顎の埋伏歯に限られる)
みらい(新人医療事務)
「埋伏歯」というくくり自体、他の抜歯とは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。K404抜歯手術は1乳歯・2前歯・3臼歯・4埋伏歯の4区分に分かれていて、この加算に関わるのは4の埋伏歯だけです。しかも、告示の注2にはこう定められています。「4については、完全埋伏歯(骨性)又は水平埋伏智歯に限り算定する」という条文で、埋伏歯(1,080点)という区分自体が、完全に骨の中に埋まった歯(完全埋伏歯・骨性)か、横向きに埋まった智歯(水平埋伏智歯)に限られているんです。
みらい(新人医療事務)
なるほど。埋伏歯の区分そのものが、すでに条件付きなんですね。そのうえで、今回の加算はさらに絞られるんですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。告示の注3には「4については、下顎完全埋伏智歯(骨性)又は下顎水平埋伏智歯の場合は、230点を所定点数に加算する」と定められています。つまり230点の加算対象になるのは、区分4(埋伏歯)のうち、さらに「下顎」に限られたケースということです。
条文の記載(K404注2・注3)
注2「4については、完全埋伏歯(骨性)又は水平埋伏智歯に限り算定する」、注3「4については、下顎完全埋伏智歯(骨性)又は下顎水平埋伏智歯の場合は、230点を所定点数に加算する」と定められています。230点加算の対象は区分4(埋伏歯)のうち下顎の完全埋伏歯(骨性)・水平埋伏智歯に限られ、上顎の同様のケースはこの加算の対象に含まれていないと読めます。
みらい(新人医療事務)
上顎の智歯が同じように完全に埋まっていても、この230点は付かないということですか?
あおい(元・医療事務)
条文が「下顎」と明記している以上、上顎の完全埋伏歯(骨性)や水平埋伏智歯については、この230点加算は対象外の可能性が高いと考えられます。抜歯手術自体(区分4・1,080点)は別に算定候補になりますが、加算の部分だけを切り分けて確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関でこの加算が出てくるんですか?歯科医院ならどこでもいいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
ここも整理しておきたいところです。今回の加算は医科点数表に定められているので、医科点数表で算定する医療機関、たとえば病院の口腔外科などが対象になります。実は抜歯手術という処置自体について、令和8年度の疑義解釈でこう整理されています。「歯科医師が、歯科点数表に基づき当該手術を実施した場合は、全身麻酔による手術件数に含めることはできない」という回答で、抜歯手術が「医科点数表と歯科点数表に共通の手術」だと明記されているんです。同じ抜歯手術でも、歯科医師が歯科点数表に基づいて行った場合は歯科点数表側の扱いになり、今回の医科点数表の加算とは別の整理になります。
点数の整理

みらい(新人医療事務)
抜歯手術そのものの点数と、この加算の関係を表にまとめてもらえますか?
あおい(元・医療事務)
K404抜歯手術(1歯につき)の点数と、この加算の関係を表にまとめました。
| 区分 | 内容 | 所定点数(令和8年度) | この加算の対象 |
|---|---|---|---|
| 1 | 乳歯 | 130点 | 対象外 |
| 2 | 前歯 | 160点 | 対象外(別の230点加算が注1にあり) |
| 3 | 臼歯 | 270点 | 対象外(別の230点加算が注1にあり) |
| 4 | 埋伏歯 | 1,080点 | 下顎の完全埋伏歯(骨性)・水平埋伏智歯なら対象(+230点) |
みらい(新人医療事務)
区分4の1,080点に230点が加算されるということは、条件を満たせば合計1,310点が算定候補になるということですね。
あおい(元・医療事務)
条文の要件に当てはまっていることが前提ですが、点数としてはそう整理できます。あわせて、告示の注4には「抜歯と同時に行う歯槽骨の整形等の費用は、所定点数に含まれる」と定められていて、同時に行った歯槽骨の整形などの費用を別立てで算定することはできない点も確認しておきたいところです。
みらい(新人医療事務)
コードのようなものはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、この加算そのものの管理コードとして「150275070」という番号が確認できています。ただし、実際のレセプト記載やマスターコードの運用は医療機関のレセコンによって異なるので、自院のシステムでの取り扱いは委託先やベンダーに確認してくださいね。
施設基準・届出は必要?
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するには、施設基準の届出のような手続きが必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録しているK404抜歯手術の告示の範囲では、この加算について施設基準や事前の届出を求める記載は見当たりませんでした。人員配置や設備要件のような施設基準ではなく、実際に行った抜歯手術の内容(歯の位置や埋伏の状態)によって算定候補になるかどうかが決まるタイプの加算だと考えられます。
みらい(新人医療事務)
それなら、届出は不要と考えていいんですね!
あおい(元・医療事務)
そこは言い切らないでおきましょう。資料の範囲で届出を求める記載が見当たらないというだけで、自院の算定体制によって確認が必要なケースもあり得ます。特に医科歯科併設の医療機関のように、医科点数表と歯科点数表の両方で抜歯手術を行っている場合は、審査支払機関や委託先のレセコンベンダーに一度確認しておくと安心です。
算定のタイミングと注意点
みらい(新人医療事務)
算定するときに、特に気をつけたほうがいいことはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、似た名前で同じ230点の加算に「難抜歯加算」というものがあるんですが、対象がまったく別です。告示の注1には「2又は3については、歯根肥大、骨の癒着歯等に対する骨の開さく又は歯根分離術を行った場合に限り、難抜歯加算として、230点を所定点数に加算する」と定められています。難抜歯加算は区分2(前歯)または区分3(臼歯)が対象で、今回の下顎完全埋伏智歯(骨性)又は下顎水平埋伏智歯加算は区分4(埋伏歯)が対象です。詳しくは難抜歯加算の記事も参考にしてください。
みらい(新人医療事務)
点数がどちらも230点で、名前も似ているので混同しやすそうです…。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。レセプトを見たときに、抜いた歯が前歯・臼歯(区分2・3)なのか、埋伏歯(区分4)なのかをまず確認しないと、どちらの加算にあたるかを取り違えてしまう可能性があります。あわせて、下顎か上顎かの確認も欠かせません。
算定候補であって確定ではありません
ここまでの内容は、抜いた歯の位置・埋伏の状態が条文の条件に当てはまる場合の算定候補についての整理です。実際の診断(完全埋伏歯(骨性)か、水平埋伏智歯か、下顎かどうか)は診療録・画像所見に基づく判断によるため、最終的な算定可否は自院の診療内容と公式資料でご確認ください。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
気になりますよね。正直にお伝えすると、前回改定(令和6年度)からのこの加算の点数(230点)や対象範囲(下顎の完全埋伏歯(骨性)・水平埋伏智歯)について、当サイトが収録している一次資料の範囲では変更点は確認されていません(確認日: 2026年8月・厚労省一次情報ベース)。
みらい(新人医療事務)
「変わっていないはず」ではなく、「確認できていない」ということなんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。点数だけでなく、施設基準や算定要件も含めて、資料で裏付けが取れた範囲でお伝えするようにしています。今後の告示改正や新しい疑義解釈が出ていないかは、実際に算定する時点でも改めて確認しておくと安心です。
自院で確認する順番

みらい(新人医療事務)
実際にうちの病院で算定候補になるか、どんな順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のような順番で見ていくと整理しやすいですよ。
自院で確認する順番
- 抜歯を行ったのが医科点数表の対象となる処置か(歯科点数表側での実施でないか)を確認する
- 抜いた歯が下顎か上顎かを診療録・画像所見で確認する
- 完全埋伏歯(骨性)または水平埋伏智歯にあたる状態だったかを確認する
- K404抜歯手術の区分4(埋伏歯)として算定しているかを確認する
- 上記すべてに該当すれば、230点加算の算定候補として整理する
みらい(新人医療事務)
1番と2番の確認を先にしておけば、上顎のケースを誤って含めてしまうミスも防げそうですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。特に「下顎かどうか」を最初に確認する習慣をつけておくと、上顎の埋伏智歯を誤ってこの加算の対象に含めてしまうミスを防ぎやすくなります。
よくある取り漏れ
下顎と上顎の混同
埋伏智歯の抜歯というだけで機械的に230点を加算してしまうと、実際は上顎のケースだった場合に誤算定になる可能性があります。診療録・画像所見で下顎かどうかを必ず確認しましょう。
難抜歯加算との取り違え
同じ230点で名前も似ている「難抜歯加算」は、対象が前歯・臼歯(区分2・3)です。埋伏歯(区分4)に対して骨の開さくなどを行った場合でも、難抜歯加算(注1)ではなく、今回の下顎完全埋伏智歯(骨性)又は下顎水平埋伏智歯加算(注3)にあたる可能性があるため、区分を確認してください。関連記事: 難抜歯加算
埋伏歯の区分要件の判定漏れ
埋伏歯の区分(1,080点)自体、完全埋伏歯(骨性)または水平埋伏智歯に限定されています。単純な埋伏歯だからといって自動的に区分4で算定できるとは限らないため、診断名と画像所見の記載を確認しておくと安心です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、みんなが気になりそうなことをいくつか聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
どうぞ。
みらい(新人医療事務)
上顎の完全埋伏智歯(骨性)を抜いた場合は、まったく加算できないんですか?
あおい(元・医療事務)
今回ご紹介した230点の加算については、条文が「下顎」の場合に限定しているため、対象外の可能性があります。ただし抜歯手術自体の点数(区分4・1,080点)や、他の加算が別途算定候補になる場合もあるため、個別の状況は自院で確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
歯科医院(歯科点数表)で同じような智歯の抜歯をした場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
今回の加算は医科点数表のK404抜歯手術に定められたものです。歯科医師が歯科点数表に基づいて抜歯手術を実施した場合は、歯科点数表側の項目で確認する必要があり、今回の加算とは別の整理になります。
みらい(新人医療事務)
難抜歯加算と同時に、この加算を算定することはできますか?
あおい(元・医療事務)
難抜歯加算は区分2(前歯)・区分3(臼歯)が対象で、今回の加算は区分4(埋伏歯)が対象です。同じ1本の歯の抜歯について、両方の区分にまたがって同時に算定することは想定しにくく、抜いた歯がどちらの区分にあたるかで、いずれか一方の確認になると考えられます。個別のケースは自院で確認してください。
みらい(新人医療事務)
診療録には、どんなことを書いておけば確認しやすいですか?
あおい(元・医療事務)
条文の要件と照らし合わせられるよう、抜いた歯の位置(下顎か上顎か)、埋伏の状態(完全埋伏歯・骨性か、水平埋伏智歯か)、画像所見などを診療録に残しておくと、後から算定候補かどうかを確認しやすくなりますよ。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。抜いた歯の位置や埋伏の状態を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。