みらい(新人医療事務)
あおいさん、「通院医学管理事前調整加算」っていう加算を見つけたんですけど、これも普通のクリニックで算定候補になるものですか?
あおい(元・医療事務)
結論から言うと、令和8年度時点で当サイトが確認した一次資料の範囲では、対象はかなり限られます。これは「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」、いわゆる医療観察法にもとづく加算で、算定できるのは厚生労働大臣から指定を受けた「指定通院医療機関」に限られています。一般の精神科クリニックや病院がすぐに算定候補になるものではありません。
みらい(新人医療事務)
前に教えてもらった「前期通院対象者通院医学管理料」(前期通院対象者通院医学管理料)と同じ制度の中の加算ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。今回はその中でも、通院決定が出る前の「事前の調整」に着目した加算を整理していきますね。
通院医学管理事前調整加算とはどんな加算か
みらい(新人医療事務)
「事前調整」って、具体的に何を調整するんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示原文(令和8年度改定を反映した現行内容)では、次のように定められています。
告示 注8 原文(算定要件・点数)
「注8 法第42条第1項第2号又は第51条第1項第2号による決定後に通院対象者に対して円滑に通院対象者通院医学管理を行うため、当該通院対象者に係る法第38条(第53条において準用する場合を含む。)による生活環境の調査又は法第101条による生活環境の調整を担当する保護観察所と調整の上、あらかじめ当該決定前に、当該対象者が入院している法第34条第1項の入院に係る医療機関(以下「鑑定入院医療機関」という。)又は指定入院医療機関から情報を収集し、通院対象者通院医学管理の開始に必要な調整を実施した場合、前期通院対象者通院医学管理料の初回算定時に限り、次に掲げる場合に応じ、所定点数に通院医学管理事前調整加算としてそれぞれ次に定める点数を加算する。ただし、当該通院対象者が入院していた鑑定入院医療機関又は指定入院医療機関が引き続き、指定通院医療機関として通院対象者通院医学管理を行う場合は加算することができない。」
みらい(新人医療事務)
一度読んだだけだと難しいです…。要するにどういうことですか?
あおい(元・医療事務)
噛み砕くと、「通院決定が出る前の段階で、指定通院医療機関が保護観察所と連携しながら、対象者が入院していた鑑定入院医療機関や指定入院医療機関から情報をあらかじめ集めて、通院決定後にスムーズに通院医学管理を始められるよう準備しておく」という調整活動を評価する加算です。この準備がしっかりしているほど、退院・通院への移行が円滑になる、という考え方が背景にあります。
みらい(新人医療事務)
なるほど、退院前の橋渡しの手間を評価する加算なんですね。
対象になる医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関の要件は、どこまで確認できていますか?
あおい(元・医療事務)
この加算自体に固有の施設基準は、今回確認した資料の範囲では見当たりません。ただし、加算の前提として、通院対象者通院医学管理料そのものを算定する体制、つまり厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長に届け出た「指定通院医療機関」であることが必要です。指定通院医療機関でなければ、この加算そのものが算定候補になりません。
みらい(新人医療事務)
対象になる患者さんは、どんな人ですか?
あおい(元・医療事務)
「通院対象者」、つまり医療観察法第42条第1項第2号又は第51条第1項第2号による決定(入院によらない医療を受けさせる旨の決定、いわゆる通院決定)を受けた対象者が前提です。そのうえで、この加算は「前期通院対象者通院医学管理料の初回算定時に限り」算定できるとされているので、通院決定後、最初に前期の管理料を算定するタイミングでしか候補になりません。
みらい(新人医療事務)
1回きりのチャンスということですね。
あおい(元・医療事務)
はい。しかも、条文には除外規定もあります。「当該通院対象者が入院していた鑑定入院医療機関又は指定入院医療機関が引き続き、指定通院医療機関として通院対象者通院医学管理を行う場合は加算することができない。」とされているので、入院していた医療機関がそのまま通院医学管理も担当する場合は、この加算の対象外になります。他の医療機関から情報を集めて引き継ぐケースを評価する加算、というイメージです。
点数の整理(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度時点の告示では、対象者の審判結果によって2区分に分かれています。
| 区分 | 該当するケース | 点数 |
|---|---|---|
| イ | 当該通院対象者が当初審判において入院によらない医療を受けさせる旨の決定を受けた者である場合 | 3,000点 |
| ロ | イ以外の場合 | 2,400点 |
みらい(新人医療事務)
「イ」と「ロ」の違いがよくわからないです…。
あおい(元・医療事務)
「イ」は、最初の審判の段階から「入院ではなく通院で医療を受けさせる」という決定を受けた人が該当します。「ロ」はそれ以外、つまり一度入院による医療の決定を受けたあとに、退院して通院に切り替わった人などが該当すると考えられます。どちらのケースに当たるかによって、事前調整の内容や必要な情報収集の範囲が変わりうるため、点数が分かれている形です。

みらい(新人医療事務)
マスターコードはありますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトのデータベースでは、この加算に関連する管理コードとして「188006070」「188010470」の2件を収録していますが、これは医療観察法診療報酬に固有の管理コード体系であり、通常の医科診療報酬点数表のレセプト電算コードとは体系が異なります。どちらのコードがイ・ロのどちらの区分に対応するかは、今回確認した資料の範囲だけでは確定できないため、実際のレセプト請求で使うコードは指定通院医療機関の事務担当者が使用しているシステムやマニュアルで確認することをおすすめします。
算定要件・診療録への記載など留意事項
みらい(新人医療事務)
算定するときに、気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知(障精発0331第3号、令和8年3月31日)には、次のように記載されています。
留意事項通知 原文(記載・算定対象の期限)
「通院対象者通院医学管理の開始に必要な調整を行い、通院医学管理事前調整加算を算定する場合は、当該調整にかかる要点を診療録に記載する。」 「通院医学管理事前調整加算は、法第42条第1項第2号又は第51条第1項第2号による決定がなされた日の前日までに一連の調整が完了しているものを算定の対象とする。」
みらい(新人医療事務)
「決定がなされた日の前日まで」というのがポイントなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。通院決定が正式に出る前に、調整が完了していることが算定の前提です。決定後に調整を始めた場合は対象にならない可能性があります。また、調整の要点を診療録に記載しておくことも必須の留意事項として明記されています。
みらい(新人医療事務)
「必要な調整」の中身についても、もう少し詳しく教えてもらえますか?
あおい(元・医療事務)
同じ留意事項通知には、「必要な調整」の定義も書かれています。
留意事項通知 原文(必要な調整の定義)
「通院対象者通院医学管理の開始に必要な調整とは、法第38条による生活環境の調査若しくは法第101条による生活環境の調整を担当している保護観察所に対して通院対象者通院医学管理の開始に必要な調整を行う旨を伝達の上、予め当該決定前に当該対象者が入院している法第34条第1項に基づき鑑定入院を実施している医療機関(以下「鑑定入院医療機関」という。)若しくは指定入院医療機関から指定通院医療機関が独自に当該対象者の医療等にかかる情報を直接収集して、法第42条第1項第2号又は第51条第1項第2号による決定後に通院対象者通院医学管理を円滑に実施するために必要な体制確保にかかる一連の調整を言う。」
みらい(新人医療事務)
保護観察所への伝達と、鑑定入院医療機関などからの情報収集の両方が必要ということですね。
あおい(元・医療事務)
はい。片方だけでは「一連の調整」とは言えない可能性があるので、両方の要素が診療録から確認できるようにしておくことが大切です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、令和8年度の改定で何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省が公開している令和8年度改定の新旧対照表(厚生労働省告示第146号)を確認したところ、通院医学管理事前調整加算を含む条項の並びは「(略)」と表記されていました。
新旧対照表 原文(変更なし部分の表記)
「注5~注10 (略)」
みらい(新人医療事務)
「(略)」ってことは、変わっていないということですか?
あおい(元・医療事務)
新旧対照表で「(略)」と表記されている項目は、原則として今回の改定で内容の変更がなかった項目です。つまり、当サイトが確認した一次資料の範囲では、通院医学管理事前調整加算の点数区分(イ3,000点・ロ2,400点)や算定要件そのものへの、令和8年度改定による変更は確認されていません(確認日: 2026年8月、厚生労働省の令和8年度医療観察診療報酬改定の新旧対照表・留意事項通知ベース)。
みらい(新人医療事務)
同じ通院料の枠の中で、他に変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。例えば、急性増悪包括管理料が1日単位の点数(急性増悪包括管理料1が1,300点、急性増悪包括管理料2が1,600点)に見直されたほか、急性増悪時等受入調整加算(2,400点)や、通院処遇早期終了加算(通院決定から1年以内なら80,000点、1年以上2年以内なら40,000点)が新設されています。これらは通院医学管理事前調整加算とは別の項目で、対象になる状況も異なります。
適用開始日にも注意
今回の改定にもとづく告示・留意事項は、令和8年6月1日から適用されています。従来の留意事項通知(令和6年3月29日障精発0329第5号)は令和8年5月31日限りで廃止されました。一般の医科診療報酬改定(4月1日適用)と適用開始日が異なる点に注意が必要です。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちの施設が関係するかどうか、どう確認していけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認していくのがおすすめです。
自院で確認する順番
- 自院が厚生労働大臣から「指定通院医療機関」としての指定を受けているかを確認する
- 対象となる患者が、法第42条第1項第2号又は第51条第1項第2号による通院決定(入院によらない医療を受けさせる旨の決定)を受けた「通院対象者」であるかを確認する
- 通院決定が出る前の段階で、保護観察所と調整のうえ、鑑定入院医療機関又は指定入院医療機関から情報収集を行っていたかを確認する
- 対象者が入院していた医療機関が、そのまま通院医学管理も行う場合に該当していないかを確認する(該当する場合は加算の対象外)
- 当初審判の内容(入院によらない決定か、それ以外か)に応じて、区分イ・ロのどちらに当たるかを確認する
- 前期通院対象者通院医学管理料の初回算定時であることを確認し、調整の要点を診療録に記載する

よくある取り漏れ・注意点
初回算定のタイミングを逃す
この加算は「前期通院対象者通院医学管理料の初回算定時に限り」算定できる仕組みです。初回の算定タイミングで診療録の記載や調整内容の確認を済ませておかないと、後から遡って算定候補にするのは難しくなる可能性があります。
引き続き同一医療機関が担当するケースの見落とし
対象者が入院していた鑑定入院医療機関又は指定入院医療機関が、そのまま指定通院医療機関として通院医学管理を行う場合は、この加算の対象外です。院内で「入院から通院まで同一医療機関が一貫して担当したかどうか」を確認しないまま算定してしまうと、除外規定に抵触する可能性があります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。指定通院医療機関としての届出状況や、対象者の決定内容を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。