みらい(新人医療事務)
先輩、「通院対象者社会復帰体制強化加算」っていう名前の加算を見つけたんですけど、これって普通の精神科クリニックでも算定候補になるものですか?
あおい(元・医療事務)
これは一般の診療所・病院向けの加算ではなく、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(医療観察法)に基づいて指定を受けた「指定通院医療機関」だけが対象になる、かなり特殊な加算です。令和8年度(2026年度)時点でも、対象は指定通院医療機関に限定されています。
みらい(新人医療事務)
「指定通院医療機関」ですか。うちみたいな一般クリニックは、最初から対象外ってことですね?
あおい(元・医療事務)
そうなる可能性が高いです。厚生労働大臣(実務上は地方厚生局長経由)から医療観察法上の指定通院医療機関としての指定を受けていない限り、この加算そのものが算定候補になりません。「対象外の可能性」として、まずは自院が指定通院医療機関かどうかを確認するところから始めてください。
みらい(新人医療事務)
もし指定を受けている医療機関だったら、どんな仕組みの加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
一言でいうと、通院対象者の受け入れ体制を手厚くしている指定通院医療機関を評価する加算です。具体的にどんな仕組みか、順番に確認していきましょう。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
まず「通院対象者」ってどういう人のことでしたっけ?
あおい(元・医療事務)
医療観察法に基づいて、地方裁判所の決定により通院による医療を受けることになった対象者のことです。この加算は、指定通院医療機関がこうした通院対象者に対して「通院対象者通院医学管理」を行った場合に、施設基準を満たしていれば加算されるものです。
みらい(新人医療事務)
「通院対象者通院医学管理」というのは、前期・中期・後期みたいな区分があるやつですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。前期・中期・後期の通院対象者通院医学管理料や、急性増悪包括管理料を算定している通院対象者が対象になります。以前確認した医療観察通院前期・中期加算は前期・中期に限定される加算でしたが、この社会復帰体制強化加算は前期・中期・後期を問わず、通院医学管理を行った場合に対象になる点が異なります。
みらい(新人医療事務)
前期・中期に限らないんですね。じゃあ、何がこの加算の分かれ目になるんですか?
あおい(元・医療事務)
分かれ目になるのは、対象患者の通院段階ではなく「その月に、その指定通院医療機関が何名の通院対象者に通院医学管理を行ったか」という人数です。厚生労働省の告示では次のように定められています。
点数・区分
みらい(新人医療事務)
具体的な点数を教えてください。
あおい(元・医療事務)
厚生労働省告示第365号(令和8年3月31日厚生労働省告示第146号による改正後現行版)の医療観察診療報酬点数表には、次のように定められています。
通院対象者社会復帰体制強化加算の点数(令和8年度)
同一月に通院医学管理を行った通院対象者が3名以下の場合: 2,000点 同一月に通院医学管理を行った通院対象者が4名以上の場合: 3,000点
みらい(新人医療事務)
3名以下でも2,000点つくんですね。てっきり人数が多いほど有利なだけかと思っていました。
あおい(元・医療事務)
人数が多いほど点数区分は上がりますが、少人数の受け入れでも一定の評価はされる仕組みです。ただし、この加算そのものを算定するには、後で説明する施設基準への適合と届出が前提になります。人数の条件だけを満たしていれば自動的につく加算ではありません。
| 区分 | 同一月の通院対象者数 | 加算点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| イ | 3名以下 | 2,000点 |
| ロ | 4名以上 | 3,000点 |

みらい(新人医療事務)
1点あたりの単価は、普通の診療報酬と同じ10円で計算していいんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。同じ告示に「指定医療機関に係る医療に要する費用の額は、一点の単価を十円とし、別表医療観察診療報酬点数表に定める点数を乗じて算定するものとする」とありますので、医科の点数表と同様、1点=10円で計算します。
みらい(新人医療事務)
マスターコードのようなものは登録されていますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが整理している医科診療行為マスターでは、この加算に対応する概念コードとして「188006770」「188010370」の2件が登録されています。区分イ・ロのどちらに対応するかまで含めた個別コードの1:1対応は、実際にレセプトを組む際に医科診療行為マスターの原本で確認してください。
施設基準
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するには、何か特別な施設基準を満たす必要があるんですよね?
あおい(元・医療事務)
そうです。厚生労働省告示第147号(令和8年3月31日、施設基準等の一部改正)には、次の2つの基準が定められています。
通院対象者社会復帰体制強化加算の施設基準(令和8年度)
⑴: 通院対象者を常時3名以上受け入れる体制が確保されていること ⑵: 通院対象者通院医学管理を行うにつき従事者の配置の強化による十分な体制が整備されていること
みらい(新人医療事務)
「常時3名以上受け入れる体制」って、具体的にどういう状態を指すんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年3月31日付の障精発0331第4号(施設基準の取扱いについての通知)に、詳しい定義があります。「過去3年間において同時期に、通院対象者を3名以上受入れた実績があり、かつ、地方厚生局等からの受入れに関する協力要請があった時点において、現に受入れている通院対象者が3名に満たない場合に、受け入れ要請に応じることができる体制であること」とされています。
みらい(新人医療事務)
つまり「実際に3名以上を受け入れたことがある実績」と「要請が来たら応じられる余力」の両方が必要なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。なお、同じ通知には「地方厚生局等からの受入れに関する協力要請があった時点において、現に受入れている通院対象者が3名以上の場合にあっても、できるかぎり受入れ要請に応じることが望ましい」という記載もあり、体制面での努力も期待されています。
みらい(新人医療事務)
もう一つの「従事者の配置の強化」というのは、具体的に何人配置すればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
同じ通知に「当該指定通院医療機関に専任の作業療法士、精神保健福祉士又は公認心理師を2名以上配置していること」と明記されています。作業療法士・精神保健福祉士・公認心理師のいずれか、または組み合わせで、専任の職員を2名以上配置している必要があります。
通院対象者通院医学管理料の基本施設基準も別途必要
この加算の施設基準は、通院対象者通院医学管理料そのものの施設基準(常勤の精神保健指定医1名以上配置、通院医学管理を行うにつき十分な体制の整備)とは別に、追加で満たす必要がある基準です。基本の施設基準を満たしているだけでは、この加算の対象にはなりません。
届出要否
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たしていれば、自動的に加算がつくんですか?それとも届出が必要ですか?
あおい(元・医療事務)
届出が必要です。断定はできませんが、地方厚生局への届出が前提になる加算として整理されています。令和8年3月31日付の障精発0331第4号によると、「通院対象者社会復帰体制強化加算の施設基準に係る届出は様式3-3並びに当該治療に従事する作業療法士、精神保健福祉士又は公認心理師の氏名、勤務の態様(常勤・非常勤、専任・非専任の別)及び勤務時間は様式3-4をそれぞれ用いること」とされています。
みらい(新人医療事務)
様式が2種類あるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。様式3-3が施設基準そのものの届出書、様式3-4が配置しているOT・PSW・公認心理師の氏名や勤務態様・勤務時間を記載する様式です。届出が受理されると「通社強」という略称の受理番号が付与される扱いになっています。
みらい(新人医療事務)
届出が受理されるまでの期間って決まっているんですか?
あおい(元・医療事務)
同通知には、要件審査に要する時間は「原則として2週間以内を標準とし、遅くとも概ね1か月以内(提出者の補正に要する期間は除く。)」とする旨の記載があります。届出済みであれば候補になりますが、審査には一定の期間がかかる点は見込んでおく必要があります。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで、特に気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
一番のポイントは「その月に、その指定通院医療機関で何名の通院対象者に通院医学管理を行ったか」を月単位で数えることです。同一月に3名以下だったのか、4名以上だったのかで、加算される点数が変わります。
人数のカウント単位に注意
告示の文言は「同一月に通院医学管理を行った通院対象者が3名以下の場合」「4名以上の場合」という書き方になっており、個々の通院対象者ごとの状態ではなく、指定通院医療機関単位・月単位での受入人数によって加算区分が決まります。月をまたいで人数が変動する場合は、月ごとに区分を確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出をしていれば、対象になる通院対象者全員に自動的についてくる加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
現在確認できている一次資料の範囲では、対象は「通院対象者通院医学管理を行った場合」とされており、前期・中期・後期のいずれの通院医学管理料、あるいは急性増悪包括管理料を算定している通院対象者であっても対象になり得ると読み取れます。ただし、個々のケースでの適用可否は、告示・通知の原文と自院の運用実態に照らして確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
他の加算との併算定で、特に注意することはありますか?
あおい(元・医療事務)
現在確認できている一次資料の範囲では、この加算と他の医療観察関連加算との併算定を明示的に禁止する記載は見当たりません。ただし、医療観察診療報酬の体系には多数の加算・管理料があり、算定の組み合わせによっては別の制限にかかる可能性もあるため、レセプトを組む際は告示・通知の原文で個別に確認することをおすすめします。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、令和8年度の改定で何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
東海北陸厚生局が公開している令和8年3月31日厚生労働省告示第146号(診療報酬の算定方法)と第147号(施設基準)、それぞれの新旧対照表を確認しましたが、「通院対象者社会復帰体制強化加算」という名称や、その点数・施設基準に関する変更箇所としての記載は見当たりませんでした。
改定前後の対比
令和6年度(2024年度)改定時点: 通院対象者社会復帰体制強化加算の枠組み(同一月の受入人数3名以下→2,000点/4名以上→3,000点、施設基準⑴常時3名以上受入体制⑵専任OT・PSW・公認心理師2名以上配置)は既に存在していました。 令和8年度(2026年度)改定(令和8年3月31日厚生労働省告示第146号・第147号、令和8年6月1日適用): 新旧対照表を確認した範囲では、この加算に関する点数・施設基準の変更は確認されていません(2026年8月時点の確認)。
あおい(元・医療事務)
令和8年度改定では、医療観察一般病棟入院料など入院料側で新設・変更された項目が複数ありますが、この加算については、当サイトが確認した一次資料の範囲では据え置きとなっています。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、自院がこの加算の対象になるかどうか、どう確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認していくと整理しやすいです。
自院で確認する順番
- 自院が医療観察法上の指定通院医療機関としての指定を受けているか確認する
- 通院対象者を常時3名以上受け入れる体制(過去3年間の実績を含む)があるか確認する
- 専任の作業療法士・精神保健福祉士・公認心理師を2名以上配置しているか確認する
- 様式3-3・様式3-4で地方厚生局に施設基準の届出を行い、受理されているか確認する
- 対象月に何名の通院対象者へ通院医学管理を行ったかを数え、2,000点/3,000点いずれの区分になるかを確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなパターンがありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつか典型的なパターンがあります。
よくある取り漏れ
受入実績の記録不足: 「過去3年間に同時期3名以上を受け入れた実績」が求められるにもかかわらず、受入人数の推移を台帳で管理しておらず、届出の際に実績を証明できないケース。 従事者要件の見落とし: 専任の作業療法士・精神保健福祉士・公認心理師のいずれかが退職・異動した後も、様式3-4の届出内容を更新しないまま運用してしまうケース。 月単位の人数カウント漏れ: 同一月に通院医学管理を行った通院対象者の人数を月次で正確に数えず、3名以下と4名以上の区分を誤って計算してしまうケース。
みらい(新人医療事務)
どれも「体制の実態を継続的に記録しておく」ことが前提になっていますね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。通院対象者の受入人数や、専任職員の配置状況を月次・年次で管理する台帳的な仕組みを持っておくと、こうした取り漏れや届出内容の陳腐化を防ぎやすくなります。
関連する加算もあわせて確認
みらい(新人医療事務)
他にも医療観察法関連の加算があるみたいですね。
あおい(元・医療事務)
はい。同じ通院医療の枠組みでは、医療観察通院前期・中期加算や、通院医学管理と一緒に確認したい医療観察疾患別等診療計画加算、医療観察療養生活継続支援加算といった加算もあります。指定通院医療機関であれば、あわせて算定候補になっていないか確認しておくとよいでしょう。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。指定通院医療機関としての指定状況や受入体制、届出状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。