みらい(新人医療事務)
あおいさん、「医療観察複数名訪看指導加算」っていう加算名を見つけたんですけど、これって普通の複数名訪問看護加算と何が違うんですか?名前も似ている加算がいくつもあって混乱してます。
あおい(元・医療事務)
いい質問ですね。これは心神喪失者等医療観察法(通称「医療観察法」)に基づく通院処遇の対象者に対して、複数の職員が同時に訪問看護・指導を行った場合の加算の一つです。令和8年度の医療観察診療報酬点数表に規定されていて、一般の医科点数表とは別建ての体系になっています。まず、この加算がどんな場面のものか、順番に整理していきましょう。
この加算は何のための加算ですか
みらい(新人医療事務)
「医療観察法」って、普段の保険診療とは別の制度なんですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。医療観察法は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った方に対する医療・観察に関する法律で、対象となる方への医療は専用の診療報酬点数表(医療観察診療報酬点数表)で算定します。この点数表の中に、複数の職員が同時に訪問看護・指導を行った場合の加算が定められていて、「医療観察複数名訪看指導加算」はそのうちの一つとして当サイトの医科診療行為マスターに登録されています。
あおい(元・医療事務)
具体的には、通院対象者(医療観察法上の通院処遇を受けている方)またはその家族等に対して、保健師・看護師等が他の職員と同時に訪問し、看護や療養上必要な指導を行った場合に、1日につき加算する仕組みです。単独訪問より手厚い体制を評価する加算、とイメージしてください。
似た名前の加算に注意
医療観察法の点数表には、名称がよく似た複数名訪問看護関連の加算が複数存在します(例: 医療観察複数名訪問看護指導加算)。告示条文を確認した範囲では、①指定通院医療機関自身が行う医療観察精神科訪問看護・指導に対する複数名加算と、②訪問看護事業型指定通院医療機関(訪問看護ステーション)が行う医療観察訪問看護に対する複数名加算の、少なくとも2つの根拠条文が存在します。両者は点数区分の構造(同行者の種別・同一建物内人数・1日の回数による区分)が同一であるため混同しやすく、当サイトのマスターに登録された区分がどちらの条文のどの部分に対応するかは、一次資料の記載のみからは一意に確定できませんでした。自院の該当区分は、必ずレセプト電算処理システムマスターや算定実績と突き合わせて確認してください。
対象となる医療機関・対象者
みらい(新人医療事務)
うちみたいな一般のクリニックでも対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
対象は医療観察法上の「指定通院医療機関」、またはそのうち医療観察法上の訪問看護を行う「訪問看護事業型指定通院医療機関」に限られます。一般の保険診療だけを行っているクリニックが、そのままこの加算の対象になることはありません。
あおい(元・医療事務)
告示の条文では、訪問看護事業型指定通院医療機関が行う医療観察訪問看護について、こう定められています。「第3章 医療観察訪問看護 通則 訪問看護事業型指定通院医療機関が、医療観察訪問看護を行った場合、その費用は、1により算定される点数に2及び3により算定される点数を加えた点数とする。」
みらい(新人医療事務)
「訪問看護事業型指定通院医療機関」というのは、普通の訪問看護ステーションとは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
医療観察法上、指定を受けた医療機関の一類型です。通常の訪問看護ステーションが自動的に対象になるわけではなく、医療観察法に基づく指定通院医療機関としての指定を受けている必要があります。また、指定通院医療機関自身(病院・診療所)が医療観察精神科訪問看護・指導を行う場合には、別の根拠条文(第2章11注3)が適用されます。どちらの類型に該当するかで根拠条文は変わりますが、対象者は共通して「通院対象者(医療観察法上の通院処遇決定を受けた方)またはその家族等」です。
点数区分はどうなっていますか
みらい(新人医療事務)
点数はいくらくらいなんですか?
あおい(元・医療事務)
告示本文には、同行する職員の種別(保健師等・准看護師・看護補助者等)と、同一建物内の人数、1日あたりの実施回数の組み合わせで、細かく点数区分が定められています。訪問看護事業型指定通院医療機関が行う医療観察複数名訪問看護加算の告示条文を、そのまま引用しますね。「注4 注1及び注2に規定する場合(いずれも30分未満の場合を除く。)であって、看護師等が当該訪問看護事業型指定通院医療機関の他の看護師等、准看護師、看護補助者又は精神保健福祉士と同時に訪問して、看護又は療養上必要な指導を行った場合は、医療観察複数名訪問看護加算として、次に掲げる区分に従い、1日につき、いずれかを所定点数に加算する。ただし、ハの場合にあっては、週1日を限度として加算する。」

| 同行する職員 | 実施回数 | 同一建物内1〜2人 | 3〜9人 | 10〜19人 | 20〜49人 | 50人以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| イ 他の看護師等 | 1日1回 | 450点 | 400点 | 340点 | 300点 | 270点 |
| イ 他の看護師等 | 1日2回 | 900点 | 810点 | 688点 | 607点 | 546点 |
| イ 他の看護師等 | 1日3回以上 | 1,450点 | 1,300点 | 1,105点 | 975点 | 877点 |
| ロ 准看護師 | 1日1回 | 380点 | 340点 | 280点 | 250点 | 220点 |
| ロ 准看護師 | 1日2回 | 760点 | 680点 | 560点 | 500点 | 440点 |
| ロ 准看護師 | 1日3回以上 | 1,240点 | 1,120点 | 922点 | 823点 | 724点 |
| ハ 看護補助者・精神保健福祉士(週1日限度) | 1日1回 | 300点 | 270点 | 210点 | 190点 | 160点 |
みらい(新人医療事務)
この表、全部で何区分あるんですか?
あおい(元・医療事務)
告示条文の区分をすべて数えると、イ・ロがそれぞれ15区分(5段階の建物内人数×3段階の回数)、ハが5区分で、合計35区分になります。一方、当サイトの医科診療行為マスターには、この加算(令和8年度)に対して250点〜1,105点の範囲で12種類の区分が登録されています。この12区分が、上の35区分のうちどの部分に対応するかは、一次資料の記載だけからは特定できませんでした。表全体の構造を把握したうえで、自院が実際に使う区分はレセプト電算処理システムマスターで確認することをおすすめします。
算定の要件
みらい(新人医療事務)
単に2人で訪問すればいいわけじゃないんですよね?
あおい(元・医療事務)
その通りです。留意事項通知には、複数名加算の算定要件がかなり具体的に書かれています。「(8)イ 『注4』に規定する医療観察複数名訪問看護加算は、同時に看護師等と他の看護師等、准看護師、看護補助者又は精神保健福祉士との同行による医療観察訪問看護を実施した場合(30分未満の場合を除く。)、1日につき『注4』のイ、ロ又はハのいずれかを算定する。(中略)ニ 当該加算は、医師が複数名訪問の必要性があると認め、医療観察精神科訪問看護指示書にその旨の記載がある場合に算定する。ホ 単に2人の看護師等、准看護師、看護補助者又は精神保健福祉士が同時に医療観察訪問看護を行ったことのみをもって医療観察複数名訪問看護加算を算定することはできない。」
あおい(元・医療事務)
つまり、①医師が複数名訪問の必要性を認め、指示書にその旨が明記されていること、②通院対象者または家族等の同意を得ていること、③実際に患家で複数の職員が同時に滞在する一定の時間が確保されていること、が求められます。単に人手が2人揃っただけでは算定候補になりません。
よくある取り漏れ・誤算定の確認ポイント
医療観察精神科訪問看護指示書に「複数名訪問の必要性」の記載があるか、患家での同時滞在の実態が記録されているかは、審査で必ず確認される部分です。記載や記録が欠けている場合は、算定候補から外れる可能性があるため要確認です。
施設基準・届出
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は別に必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
告示・通知の該当部分を確認した範囲では、複数名加算そのものに対する独立した施設基準・届出条項は見当たりませんでした。ただし、この加算の前提となる医療観察訪問看護基本料(Ⅰ)・(Ⅲ)自体に、次のような届出要件があります。「医療観察訪問看護基本料(Ⅰ)については、通院対象者(同一建物居住者を除く。)又はその家族等に対して、(中略)別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長に届け出た訪問看護事業型指定通院医療機関の保健師、看護師又は作業療法士(以下『看護師等』という。)が、訪問して看護又は療養上必要な指導を行った場合に算定する。」
あおい(元・医療事務)
つまり、複数名加算そのものよりも、まず「訪問看護事業型指定通院医療機関」として地方厚生局への指定・届出を受けているかどうかが前提になります。届出済みであれば候補になりますが、届出状況は必ず自院で確認してください。
併算定・回数制限の注意
みらい(新人医療事務)
何回でも算定していいわけじゃないですよね?
あおい(元・医療事務)
はい。ハの区分(看護補助者または精神保健福祉士が同行する場合)は「週1日を限度」という制限が告示に明記されています。また、複数名加算の元になる医療観察訪問看護基本料自体にも、週3回または週5回(前期通院対象者通院医学管理料を算定する月)という上限があります。
算定回数の上限に注意
ハの区分(看護補助者・精神保健福祉士同行)は週1日が上限です。イ・ロの区分にも、基本料側の週の実施回数制限が及ぶため、月内の算定回数が要件を超えていないか、レセプト作成時に必ず確認してください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、令和8年度改定で構造的な見直しがありました。近畿厚生局が公開している改定資料には、次のように書かれています。「同一建物に居住する利用者への訪問看護の評価の見直し(医療観察複数名精神科訪問看護・指導加算等の見直し): 医療観察複数名精神科訪問看護・指導加算等について、同一建物居住者に同一日に当該加算等を算定している人数に応じた評価に見直す。」
あおい(元・医療事務)
これは、同一建物居住者に対する複数名訪問時の評価を、算定している人数に応じた段階的な区分に見直したという内容です。見直し前の具体的な区分(何段階に分かれていたか)は、公開資料の範囲では確認できていません。令和8年度時点では、上の点数表のとおり「1〜2人」「3〜9人」「10〜19人」「20〜49人」「50人以上」の5区分になっています。「等」という表記があるため、精神科訪問看護・指導料側の複数名加算だけでなく、関連する訪問看護側の複数名加算も同様の見直し対象に含まれると考えられますが、この記事の対象である本加算(令和8年度・12区分)への個別の影響(旧点数からの増減)は、公開資料からは確認できていません。
あおい(元・医療事務)
また、近畿厚生局のまとめページでは、令和8年3月31日厚生労働省告示第146号が令和8年6月1日から適用されたこと、そして令和8年5月12日付で告示第146号の全文のうち「医療観察訪問看護基本料: 第3章 通則1 注4 イ(3)」(本加算のイ区分・1日3回以上の場合)について記載の差し替えが行われたことが公表されています。この差し替えの具体的な内容までは公開資料から確認できておらず、点数自体の増減を意味するものかは要確認です。
改定差分の要点
・令和8年度改定で、複数名訪問時の同一建物居住者の評価が算定人数に応じた区分に見直された(令和8年度時点は1〜2人/3〜9人/10〜19人/20〜49人/50人以上の5区分。見直し前の区分は公開資料の範囲では確認できていません)。 ・令和8年3月31日厚生労働省告示第146号は令和8年6月1日から適用。 ・同告示の複数名訪問看護加算に関する部分(第3章通則1注4イ⑶)は令和8年5月12日付で記載の差し替えが行われている(変更内容の詳細は要確認)。
自院で確認する順番
自院で確認する順番
- 自院が医療観察法上の「訪問看護事業型指定通院医療機関」、または「指定通院医療機関」として指定・届出を受けているかを確認する
- 医療観察精神科訪問看護指示書に「複数名訪問の必要性」の記載があるかを確認する
- 通院対象者または家族等から複数名訪問への同意を得ているかを確認する
- 実際の訪問で、複数の職員が患家で同時に一定時間滞在している記録があるかを確認する
- 同一建物内の人数・1日の実施回数の区分を、レセプト電算処理システムマスターと突き合わせて確認する

よくある質問
みらい(新人医療事務)
訪問看護ステーションのスタッフ2人がたまたま同じ日に同じ患者さんを訪問した場合も対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
それだけでは対象になりません。留意事項通知に「単に2人の看護師等、准看護師、看護補助者又は精神保健福祉士が同時に医療観察訪問看護を行ったことのみをもって算定することはできない」と明記されています。医師の指示書への記載と、通院対象者側の同意が前提です。
みらい(新人医療事務)
普通の複数名精神科訪問看護・指導加算(医療観察法対象ではないもの)とは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、別の加算です。医療観察法の対象外の通常の精神科訪問看護における複数名加算は、別建ての医科点数表上の複数名精神科訪問看護・指導加算で算定します。医療観察法上の通院対象者に対する訪問看護・指導の基本部分は、精神科訪問看護・指導料とも制度が異なるので、対象患者が医療観察法上の通院処遇を受けているかどうかがまず分かれ目になります。
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)ではどうだったんですか?
あおい(元・医療事務)
医療観察診療報酬点数表自体は、令和6年3月29日厚生労働省告示第163号(令和6年6月1日適用)による改正を経て、今回の令和8年3月31日厚生労働省告示第146号(令和8年6月1日適用)に至っています。この記事で紹介した同一建物居住者区分の細分化は令和8年度改定での見直しとして公表されているものであり、令和6年度時点の具体的な点数までは今回の裏取りでは確認できていません。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。医療観察法上の指定状況や訪問体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。