みらい(新人医療事務)
あおいさん、レセプトを見ていたら「褥瘡対策加算」という項目が出てきました。療養病棟の患者さんに付いているみたいなんですけど、これってどういう加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
いい着眼点ですね。褥瘡対策加算は、令和8年度(2026年度)の診療報酬点数表で、療養病棟入院基本料(A101)や有床診療所療養病床入院基本料(A109)の「注」に規定されている、1日につき算定する加算です。褥瘡(じょくそう)、いわゆる床ずれの対策を行った患者さんについて、褥瘡の状態に応じて所定点数に上乗せする仕組みです。
みらい(新人医療事務)
入院基本料そのものではなく、その中の「注」に付いている加算なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。だから単独の診療行為というより、療養病棟入院基本料や有床診療所療養病床入院基本料を算定している患者さんに、条件を満たしたときに付ける加算だと考えるとわかりやすいですよ。まずは全体像から整理していきましょう。
この加算は何のための加算か
みらい(新人医療事務)
そもそも、なぜこういう加算が用意されているんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
長期に療養する患者さんは、寝ている時間が長くなりがちで、褥瘡(床ずれ)ができやすい状態にあります。褥瘡対策加算は、そうした患者さんに対して必要な褥瘡対策を行い、褥瘡の状態をきちんと評価しながらケアしていくことを評価する加算です。令和8年度の告示では「入院患者が別に厚生労働大臣が定める状態にあり、必要な褥瘡対策を行った場合は、患者の褥瘡の状態に応じて、1日につき次に掲げる点数を所定点数に加算する」と定められています。
みらい(新人医療事務)
なるほど。ただ床ずれの処置をしたら付く、というものではなさそうですね。
あおい(元・医療事務)
そこがポイントです。厚生労働大臣が定める状態にある患者さんが対象で、しかも褥瘡の状態を継続的に評価することが前提になっています。評価の方法は後で詳しく見ますね。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はどれくらいなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数区分はこちらです。

| 加算区分 | 点数(1日につき) | イメージ |
|---|---|---|
| 褥瘡対策加算1 | 15点 | 評価を始めて間もない時期などに算定 |
| 褥瘡対策加算2 | 5点 | 状態が一定条件で悪化した日に算定 |
あおい(元・医療事務)
加算1が15点、加算2が5点で、いずれも1日につきの点数です。療養病棟入院基本料と有床診療所療養病床入院基本料の両方の「注」に同じ区分が置かれているので、点数区分としては合わせて4通りの登場の仕方をします。
みらい(新人医療事務)
加算1と加算2は、どちらか片方だけを算定するイメージですか?
あおい(元・医療事務)
はい、同じ日に両方を算定するものではありません。どちらを算定するかは、その日の褥瘡の評価結果と算定日のルールで決まります。ここは取り違えやすいので、あとで算定日の考え方をもう少しかみ砕きますね。
点数を煽り文句にしないでください
点数はあくまで要件を満たしたときの目安です。「15点取れる」と単純に考えるのではなく、対象患者・評価・算定日の条件を満たしているかを先に確認してください。金額の大小だけで算定を判断するのは避けましょう。
対象になる患者・場面
みらい(新人医療事務)
具体的に、どんな患者さんが対象になるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
対象は、療養病棟入院基本料や有床診療所療養病床入院基本料を算定している病棟・病床の入院患者さんのうち、「別に厚生労働大臣が定める状態」にあり、必要な褥瘡対策を行った患者さんです。令和8年度の留意事項通知では、褥瘡対策加算1及び2は「ADL区分3の状態の患者について」、別紙様式46の「褥瘡対策に関する評価」を用いて褥瘡の状態を確認し、治療及びケアの内容を踏まえて毎日評価することとされています。
みらい(新人医療事務)
ADL区分3というのが一つの目安になるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。日常生活の自立度が低く、褥瘡のリスクが高い状態の患者さんが中心になります。ただし、自院の患者さんがこの状態に該当するかどうかは、実際の評価票と患者さんの状態で判断する必要があります。ここは加算の可否を左右する大事なところなので、記録もあわせて確認してください。
みらい(新人医療事務)
一般病棟の患者さんには関係ないんですか?
あおい(元・医療事務)
この加算は療養病棟入院基本料と有床診療所療養病床入院基本料の「注」に規定された加算です。療養病棟の運用に興味があれば、療養病棟入院基本料のページもあわせて見ておくと、加算が付く土台の入院料の全体像がつかめますよ。
褥瘡の評価方法(DESIGN-R2020)
みらい(新人医療事務)
「褥瘡の状態を評価する」というのは、どうやってやるんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の留意事項通知では、別紙様式46「褥瘡対策に関する評価」を用いて評価すること、そして「深さ」の項目の点数を除いたDESIGN-R2020の合計点を用いることが定められています。暦月内でこのDESIGN-R2020の合計点が最も低かった日の点数を、その月の「実績点」と呼びます。
みらい(新人医療事務)
毎日評価するのは大変そうですね。
あおい(元・医療事務)
評価そのものは毎日行うのが原則です。ただ、治療の必要から褥瘡を創傷被覆材で覆っていて、その日の状態を確認できない場合の取扱いも示されています。厚生労働省の疑義解釈では、創傷被覆材を用いている間は、用いる直前の状態など直近で確認した際の状態で評価し、確認できない旨を診療録等に記載することとされています。
みらい(新人医療事務)
褥瘡が複数箇所ある患者さんは、点数を足し合わせるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そこは注意が必要です。疑義解釈では、複数の褥瘡がある場合は、重症度の高い褥瘡の点数を用いることとされています。合算しない、という点は取り違えやすいので覚えておいてください。
評価まわりで押さえるポイント
別紙様式46でDESIGN-R2020(深さの点数は除く)を用いて評価します。暦月内で合計点が最も低かった日の点数が「実績点」です。創傷被覆材で確認できない日は直近の状態で評価し、診療録等に記載します。褥瘡が複数箇所ある場合は、重症度の高い褥瘡の点数を用います。
加算1と加算2はどう使い分けるのか
みらい(新人医療事務)
さっきの「算定日のルール」を、もう少し詳しく教えてください。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の留意事項通知では、それぞれ次のように定められています。褥瘡対策加算1は、入院後もしくは新たに当該加算に係る評価を始めて暦月で3月を超えない間、または褥瘡対策加算2を算定する日以外の日に算定します。
みらい(新人医療事務)
では褥瘡対策加算2のほうは?
あおい(元・医療事務)
褥瘡対策加算2は、直近2月の実績点が2月連続して前月の実績点を上回った場合であって、DESIGN-R2020の合計点が前月の実績点より上回った日に算定します。実績点が「上回る」というのは、点数が高い=褥瘡の状態が相対的に良くない方向に動いた、というイメージです。
みらい(新人医療事務)
つまり、評価を始めて間もない時期は加算1、状態の指標が一定の条件で悪化した日は加算2、という整理ですか?
あおい(元・医療事務)
おおまかにはその理解でよいと思います。ただし、実際の算定日の判定は暦月ごとの実績点の推移や評価の記録に基づく必要があるので、月単位の記録を見ながら慎重に当てはめてください。自己判断で「たぶんこちら」と決めず、評価票と算定日ルールに沿って確認するのが安全です。

施設基準・届出はどうなっているか
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するには、別に届出が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
褥瘡対策加算は、療養病棟入院基本料や有床診療所療養病床入院基本料の「注」に規定された加算です。留意事項通知や告示では、この加算そのものについて新たな施設基準の届出を求める記載は確認されていません。土台となる入院基本料を算定していることが前提で、そのうえで対象患者・評価・算定日の条件を満たすかどうかが算定可否を左右します。
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんでも常に算定できるわけではない、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。特に注意したいのが、特別入院基本料を算定する場合です。留意事項通知では「特別入院基本料を算定する場合は、当該加算は算定できない」と明記されています。ここは見落としやすいので、自院がどの入院基本料を算定しているかを必ず確認してください。
特別入院基本料では算定できません
療養病棟入院基本料等で特別入院基本料を算定している場合、褥瘡対策加算は算定できないと留意事項通知に明記されています。自院の届出・算定状況を確認したうえで判断してください。
有床診療所療養病床でも同じ考え方か
みらい(新人医療事務)
有床診療所の療養病床でも、療養病棟と同じように考えていいんですか?
あおい(元・医療事務)
基本的な考え方は共通です。令和8年度の留意事項通知では、有床診療所療養病床入院基本料(A109)の「注」に規定する褥瘡対策加算1及び2について、「A101」療養病棟入院基本料の例による、とされています。つまり点数区分(加算1が15点、加算2が5点)も、評価や算定日の考え方も、療養病棟と同じ枠組みで運用します。
みらい(新人医療事務)
施設の種類が違っても、評価のやり方は変わらないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。別紙様式46によるDESIGN-R2020の評価という点は共通です。有床診療所でも療養病床で長期療養の患者さんを診ている場合は、対象になり得るかを一度確認しておくとよいと思います。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
令和8年度の改定で、この加算に何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
記事作成時点(2026年8月)で厚生労働省の一次情報(告示・留意事項通知・疑義解釈)を確認した範囲では、前回改定(令和6年度・2024年度)からの主な変更は確認されていません。点数区分(加算1が15点、加算2が5点)や、別紙様式46によるDESIGN-R2020評価という枠組みは、令和8年度も引き続き運用されています。
前回改定からの差分(確認結果)
確認日: 2026年8月(厚生労働省の告示・留意事項通知・疑義解釈ベース)。褥瘡対策加算1・2の点数区分および評価の枠組みについて、前回改定(令和6年度)からの主な変更は確認されていません。今後、疑義解釈や訂正通知が出る可能性はあるため、最新の一次情報もあわせてご確認ください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
自院で「算定候補になるか」を確かめたいときは、どこから見ればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認すると整理しやすいですよ。
自院で確認する順番
- 対象の病棟・病床か確認する(療養病棟入院基本料、または有床診療所療養病床入院基本料を算定しているか)。
- 特別入院基本料を算定していないか確認する(算定している場合は褥瘡対策加算は算定できません)。
- 対象患者か確認する(ADL区分3の状態で、必要な褥瘡対策を行っている患者か)。
- 別紙様式46でDESIGN-R2020(深さの点数を除く)の評価を毎日行い、記録しているか確認する。
- 暦月ごとの実績点の推移から、その日が加算1・加算2のどちらの算定日に当たるか判定する。
- 以上を満たせば算定候補として、公式資料と自院の届出状況で最終確認する。
みらい(新人医療事務)
こうして並べると、評価と記録がそろっているかがカギになりそうですね。
あおい(元・医療事務)
まさにそこです。点数の区分よりも、対象患者であること・評価が記録されていることを先に固めるのが近道ですよ。
よくある取り漏れ・注意点
みらい(新人医療事務)
実務でつまずきやすいところはどこでしょう?
あおい(元・医療事務)
いくつか代表的なものを挙げますね。
よくある取り漏れ・取り違え
評価を毎日行っているのに、別紙様式46への記載や診療録の記録が抜けていて根拠が示せないケース。褥瘡が複数箇所あるときに点数を合算してしまうケース(正しくは重症度の高い褥瘡の点数を用います)。加算1と加算2の算定日を取り違えるケース。特別入院基本料を算定しているのに褥瘡対策加算を付けてしまうケース。
みらい(新人医療事務)
記録が伴っていないと、評価していても説明できないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。褥瘡対策加算は評価と記録がセットの加算なので、日々の評価票と診療録の整備が結果的に算定の土台になります。ほかの療養病棟の加算、例えば栄養サポートチーム加算やデータ提出加算とあわせて、記録・様式の運用を見直しておくと安心です。褥瘡関連では褥瘡ハイリスク患者ケア加算もありますが、算定する入院料や要件が異なるので、混同しないよう別々に確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。療養病棟入院基本料等の算定状況や患者さんの状態、評価・記録の運用を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。本記事は令和8年度(2026年度)の厚生労働省の告示・留意事項通知・疑義解釈をもとにした一般的な解説です。