みらい(新人医療事務)
先輩、レセプトの勉強をしていたら「通院処遇早期終了加算」という見慣れない名前の加算が出てきました。これ、うちのクリニックでも算定候補になるものですか?
あおい(元・医療事務)
これは少し特殊な加算なんです。医科診療行為マスターのコード(188025370・188025470)は令和8年度も収録されていますが、算定できるのは「指定通院医療機関」に限られます。まずはこの加算がどういう制度の中にあるものか、一緒に整理していきましょう。
みらい(新人医療事務)
「指定通院医療機関」というのも初めて聞く言葉です。普通の診療所とは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。これは心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)に基づいて、厚生労働大臣が指定した病院・診療所のことです。裁判所の決定で「通院処遇」となった対象者(通院対象者)の医療を担当する医療機関だけが対象になります。一般の医科点数表とは別に、この加算は「医療観察診療報酬点数表」という専用の点数表で定められています。
通院処遇早期終了加算とはどんな加算か
みらい(新人医療事務)
名前から想像すると、「通院処遇が早く終わったときに算定する加算」ということでしょうか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。厚生労働省の告示(平成17年厚生労働省告示第365号、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律第八十三条第二項の規定による医療に要する費用の額の算定方法)の別表「医療観察診療報酬点数表」第2節通院料の注11には、次のように定められています。「通院対象者通院医学管理料を算定している通院対象者が、法第56条第1項第2号に基づき処遇終了決定がされ、通院医学管理が終了した場合は、通院処遇早期終了加算として、次に掲げる区分に従い、通院医学管理が終了した月において、1回に限りいずれかを加算する。」(厚生労働省告示第365号 別表)
みらい(新人医療事務)
つまり、通院処遇そのものが裁判所の決定で早く終わったときに、その終了した月に1回だけ加算できる、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。国立精神・神経医療研究センターの解説によると、医療観察法の通院処遇は標準で3年間、最長でも5年までとされています。裁判所は保護観察所長の申立てに基づいて、期間の途中でも処遇の終了を決定できます。この「早期終了」が実際に起きた月に算定候補になるのが、この加算です。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
この加算はどんな医療機関、どんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
対象医療機関は、地方厚生局長への届出を済ませ、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして指定を受けた「指定通院医療機関」です。告示の注1には次のようにあります。「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長に届け出た指定通院医療機関において、法第42条第1項第2号又は第51条第1項第2号による決定を受けた対象者(以下「通院対象者」という。)に対して通院対象者通院医学管理が行われた場合に、当該施設基準に係る区分に従い、1月に1回を限度として、それぞれ所定点数を算定する。」(厚生労働省告示第365号 別表)
みらい(新人医療事務)
一般の診療所や病院は、指定を受けていなければそもそも対象外ということですね。
あおい(元・医療事務)
はい。まずここが対象外の可能性が高いポイントです。対象患者は「通院対象者」、つまり医療観察法の審判で通院決定を受けた方に限られます。さらに、その方が「通院対象者通院医学管理料」(前期・中期・後期のいずれか)を現に算定されていることが前提になります。
点数・コードの区分
みらい(新人医療事務)
肝心の点数はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
医科診療行為マスター(令和8年度)では、通院決定日からの経過期間によって2つのコード・点数に分かれています。
| 区分 | コード | 名称 | 点数 |
|---|---|---|---|
| イ | 188025370 | 通院処遇早期終了加算(通院決定日から起算して1年以内) | 80,000点 |
| ロ | 188025470 | 通院処遇早期終了加算(通院決定日から起算して1年以上2年以内) | 40,000点 |
あおい(元・医療事務)
告示の原文でも同じ区分が示されています。「イ 通院決定日から起算して1年以内の場合 80,000点/ロ 通院決定日から起算して1年以上2年以内の場合 40,000点」(厚生労働省告示第365号 別表)

みらい(新人医療事務)
通院決定からどれくらいの期間で処遇が終わったかによって、点数がまったく違うんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。1年以内という早い段階での終了ほど高い点数、1年以上2年以内での終了はその半分、という設計になっています。なお、通院決定から2年を超えて終了した場合にこの加算が算定候補になるかどうかは、告示の文言(イ・ロの2区分のみ)からは確認できません。この点は自院での確認が必要です。
算定要件をもう少し詳しく
みらい(新人医療事務)
「処遇終了決定」というのは、誰がどうやって決めるんですか?
あおい(元・医療事務)
医療観察法第56条第1項第2号に基づいて、地方裁判所が決定します。保護観察所長の申立てを受けて、対象者の病状や生活状況を踏まえて判断される制度です。この決定によって通院医学管理そのものが終了した場合に、加算の算定候補になります。
みらい(新人医療事務)
通院対象者通院医学管理料の区分(前期・中期・後期)によって、加算の点数が変わったりはしないんですか?
あおい(元・医療事務)
加算の点数区分は、あくまで「通院決定日からの経過期間」(1年以内か、1年以上2年以内か)で決まります。参考までに、通院対象者通院医学管理料そのものの区分と点数も告示に定められています。
| 区分 | 対象期間 | 点数(1月につき) |
|---|---|---|
| 前期通院対象者通院医学管理料 | 通院決定日から6月を経過する日の属する月まで | 8,402点 |
| 中期通院対象者通院医学管理料 | 前期の翌月から、通院決定日から2年を経過する日の属する月まで | 7,386点 |
| 後期通院対象者通院医学管理料 | 通院決定日から2年を経過する日の属する月の翌月以降 | 6,370点 |
1回限り・対象を混同しない
通院処遇早期終了加算は、通院医学管理が終了した月において1回に限りいずれかの区分で算定します。前期・中期・後期の管理料そのものとは別建ての加算であり、区分イ・ロを重複して算定することはできません。
施設基準・届出
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は、この加算のために別途必要になるんですか?
あおい(元・医療事務)
告示上、この加算に固有の施設基準は定められていません。前提となっているのは、「指定通院医療機関」としての厚生労働大臣の指定と、通院対象者通院医学管理料を算定するための施設基準(地方厚生局長への届出)です。つまり、通院対象者通院医学管理料を現に算定できている指定通院医療機関であれば、処遇終了決定という事実が発生した月に、届出済みであれば算定候補になります。
みらい(新人医療事務)
逆に言うと、通院対象者通院医学管理料を算定していない医療機関は対象外の可能性が高い、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。指定通院医療機関としての指定自体を受けていない一般の医療機関は、この加算の対象にはなりません。確認すべき項目を整理すると、次のようになります。
| 確認項目 | 確認内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 医療機関の指定 | 医療観察法上の「指定通院医療機関」として厚生労働大臣の指定を受けているか | 告示第365号 本文 |
| 通院対象者通院医学管理料の算定 | 対象患者について現に算定できているか(前期・中期・後期のいずれか) | 告示第365号 別表 第2節通院料 注1 |
| 処遇終了決定 | 法第56条第1項第2号に基づく地方裁判所の処遇終了決定と決定日 | 医療観察法第56条第1項第2号 |
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定と比べて、この加算は何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
医科診療行為マスター(令和8年度)に収録されているコード188025370・188025470の点数は、イ区分80,000点・ロ区分40,000点で、告示第365号の現行条文とも一致しています。当サイトが確認できた一次資料(告示第365号の現行条文および医科診療行為マスター)の範囲では、前回改定(令和6年度)からの点数・区分の変更は確認されていません(確認日: 2026年8月・厚労省告示ベース)。
医療観察法の点数表は独立している
医療観察診療報酬点数表は、通常の医科点数表の改定サイクルとは別に、告示第365号自体の改正という形で見直されます。改定内容を確認する際は、通常の医科点数表の改定資料だけでなく、この告示の現行条文を直接確認することが大切です。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちが指定通院医療機関だったとして、どんな順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認していくと整理しやすいです。
自院で確認する順番
- 自院が医療観察法上の「指定通院医療機関」として厚生労働大臣の指定を受けているか確認する
- 対象患者が「通院対象者」であり、通院対象者通院医学管理料(前期・中期・後期のいずれか)を現に算定しているか確認する
- 法第56条第1項第2号に基づく処遇終了決定が地方裁判所からなされているか、決定日を確認する
- 通院決定日から処遇終了までの経過期間を数え、1年以内か、1年以上2年以内かを判定する
- 通院医学管理が終了した月において、区分イ・ロのいずれか1回のみで算定候補として扱う

よくある取り漏れ
処遇終了決定の情報が現場に届いていない
処遇終了決定は裁判所・保護観察所からの通知に基づくものです。医事課にその情報が届くタイミングが遅れると、算定すべき月を過ぎてから気づくケースがあります。ケア会議や保護観察所との連絡調整の際に、処遇終了決定の有無を確認する運用にしておくと取り漏れを防ぎやすくなります。
通院決定日の起算点を取り違えない
区分イ・ロの判定は「通院決定日」からの経過期間で数えます。入院処遇から通院処遇に移行した対象者の場合、入院決定日ではなく通院決定日を基準にする必要があるため、対象者ごとの決定日を診療録や決定書で確認することが欠かせません。
公式資料の根拠
あおい(元・医療事務)
今回の内容は、厚生労働省告示第365号(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律第八十三条第二項の規定による医療に要する費用の額の算定方法、別表「医療観察診療報酬点数表」)の現行条文、および当サイトが収録している医科診療行為マスター(令和8年度)を根拠にしています。通院処遇の標準期間・終了決定の制度については、国立精神・神経医療研究センターの解説ページも参照しています。
みらい(新人医療事務)
あわせて確認しておくとよい加算はありますか?
あおい(元・医療事務)
関連する加算として、前期通院対象者通院医学管理料や通院医学管理情報提供加算もあわせて確認しておくと、通院処遇全体の算定構造が把握しやすくなります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。