急性薬毒物中毒加算とは
みらい(新人医療事務)
あおいさん、レセプトの入院料の欄に「急性薬毒物中毒加算」っていう項目を見つけたんですけど、これって何のための加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
いい質問ですね。これは令和8年度(2026年度)の診療報酬で、救命救急入院料(A300)の「注5」に定められている加算なんです。急性の薬物中毒や毒物中毒の患者さんに対して救命救急医療を行った場合に、入院初日に限って所定点数へ上乗せできる仕組みですよ。
みらい(新人医療事務)
薬や毒物の中毒って、たとえば市販薬をたくさん飲んでしまった、みたいなケースですか?
あおい(元・医療事務)
そうですね、そういった急性の中毒が対象になります。ただし公式の要件では「催眠鎮静剤、抗不安剤による中毒を除く」とされていて、対象になる中毒の範囲は決められています。あくまで救命救急入院料を算定している入院が土台になる加算なので、どんな入院でも取れるわけではない点は押さえておきたいところです。
みらい(新人医療事務)
なるほど、まず救命救急入院料が前提になるんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。救命救急入院料そのものが、救命救急センターなどの施設基準を届け出た医療機関で算定するものなので、この加算も「救命救急入院料を算定できる体制があること」が出発点になります。詳しくは 救命救急入院料 のページも参考にしてくださいね。
点数と区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
具体的には何点くらいの加算になるんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数表では、急性薬毒物中毒加算は次の2区分に分かれています。図で整理してみますね。

| 区分 | 内容 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| 急性薬毒物中毒加算1 | 機器分析 | 5,000点 |
| 急性薬毒物中毒加算2 | その他のもの | 350点 |
あおい(元・医療事務)
どちらも救命救急入院料の所定点数に、入院初日に限って加算するものです。加算1と加算2で点数がかなり違うのは、算定の要件が異なるからなんですよ。
みらい(新人医療事務)
5,000点と350点だと、10倍以上ちがいますね…!何が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
加算1は「機器分析」を行った場合、加算2は「その他のもの」という位置づけです。加算1のほうが、原因物質を機器で分析するという手間のかかる対応を求められる分、点数が高く設定されています。次の章で要件を見ていきましょう。
点数の扱いについて
ここで挙げた点数は令和8年度(2026年度)の救命救急入院料「注5」に基づくものです。加算1と加算2は同時に両方を算定できるものではなく、実施した内容に応じてどちらかを判断します。実際の算定区分は自院の診療内容と公式資料でご確認ください。
加算1(機器分析)の算定要件
みらい(新人医療事務)
さっき出てきた「機器分析」って、具体的にはどういう条件なんですか?
あおい(元・医療事務)
公式の留意事項通知(令和8年保医発0305第6号)では、急性薬毒物中毒加算1について、こう定められています。原因物質について、日本中毒学会が作成する「急性中毒標準診療ガイド」における機器分析法に基づく機器分析を、当該保険医療機関において行い、必要な救命救急管理を実施した場合に算定する、とされているんです。
みらい(新人医療事務)
つまり、ただ中毒を疑うだけじゃなくて、実際に機器で分析することが求められるんですね。
あおい(元・医療事務)
そこがポイントです。ガイドで示された機器分析法に基づいて、自院で分析を行うことが前提になっています。さらに、必要な救命救急管理を実施したうえで算定するという条件も付いています。分析だけ、管理だけ、では要件を満たさないと読めますね。
みらい(新人医療事務)
外部の検査機関に出した場合はどうなるんでしょう?
あおい(元・医療事務)
そこは「当該保険医療機関において行い」という文言が効いてくるところで、自院で行うことが求められると読めます。ただ、個別のケースが要件に当てはまるかどうかは判断が分かれる部分もあるので、迷ったら審査支払機関や公式資料で確認するのが安全です。断定はできませんが、まずは「自院で機器分析を実施したか」を確認するのが第一歩になります。
加算1で見落としやすいポイント
機器分析の実施主体: 「当該保険医療機関において行い」とあり、自院で機器分析を行ったかが要件になります。 救命救急管理の実施: 機器分析に加えて、必要な救命救急管理を実施したことも算定の条件です。 対象から除かれる中毒: 催眠鎮静剤、抗不安剤による中毒は対象から除くとされています。
加算1を算定するときのレセプト記載
みらい(新人医療事務)
加算1を算定するときに、レセプトで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
あります。留意事項通知では、急性薬毒物中毒加算1を算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に、急性薬毒物中毒の原因物質として同定した薬物を記載する、と定められています。
みらい(新人医療事務)
摘要欄に、原因物質を書くんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。機器分析で同定した薬物を摘要欄に記載するところまでがセットになっているイメージです。記載が漏れると、算定内容の説明が不十分と見なされる可能性があるので、加算1を算定する運用では記載ルールを院内で共有しておきたいですね。
摘要欄記載を忘れずに
急性薬毒物中毒加算1を算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に、原因物質として同定した薬物を記載することが求められます。加算2(その他のもの)とは要件が異なるため、どちらを算定しているかを院内で明確にしておきましょう。
届出・施設基準の考え方
みらい(新人医療事務)
この加算だけの届出って、別に必要なんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
そこは少し整理が必要です。急性薬毒物中毒加算は救命救急入院料(A300)の「注5」に位置づけられた加算で、加算そのものについて「厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た」という文言は、公式資料では確認できていません。一方で、土台となる救命救急入院料自体には施設基準と届出が必要です。
みらい(新人医療事務)
つまり、救命救急入院料が算定できる体制があることが前提ってことですね。
あおい(元・医療事務)
はい、そう考えるのが自然です。ただ、加算単独の届出要否については断定を避けたいところなので、自院の届出状況と最新の施設基準通知で必ず確認してください。届出済みであれば算定候補になりますが、体制が整っているかどうかは自院の状況次第です。
自院で確認する順番
- 救命救急入院料(A300)を算定している入院かを確認する
- 対象が急性薬毒物中毒の患者か(催眠鎮静剤・抗不安剤による中毒を除く)を確認する
- 加算1は機器分析法に基づく機器分析を自院で実施し、必要な救命救急管理を行ったかを確認する
- 入院初日であるかを確認する
- 加算1を算定する場合は摘要欄への原因物質の記載を準備する
あおい(元・医療事務)
確認の順番はこの図のイメージです。

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
この加算で、よくある取り漏れってどんなものがありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかありますね。まず、入院初日に限る加算なので、初日以外に算定してしまう、あるいは初日の算定を忘れる、というタイミングのずれです。それから、加算1で機器分析までしているのに摘要欄の記載を忘れる、というのも起こりがちです。
みらい(新人医療事務)
機器分析はしているのに、加算2で算定してしまうこともありそうですね。
あおい(元・医療事務)
まさにそこも見落としポイントです。要件を満たしていれば加算1の候補になりますが、区分の判断は自院の診療内容によります。逆に、要件を満たさないのに加算1で算定すると過大算定になりかねないので、機器分析の実施と救命救急管理の内容を記録で確認しておくことが大切です。
取り漏れ・注意チェック
入院初日の確認: 入院初日に限る加算のため、算定日を取り違えないようにします。 区分の判断: 機器分析を実施したかで加算1・加算2のどちらの候補かが変わります。 記録の整備: 機器分析の内容と救命救急管理の実施が、後から確認できる記録になっているかを見ておきます。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
令和6年度から令和8年度になって、この加算は何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
厚労省の一次情報で確認した範囲では、急性薬毒物中毒加算について、前回改定(令和6年度)からの主な変更は確認されていません(確認日: 2026年8月・厚労省一次情報ベース)。加算1(機器分析)5,000点、加算2(その他のもの)350点という区分と、入院初日に限る取り扱いは、令和8年度(2026年度)の点数表でも同じ枠組みで示されています。
みらい(新人医療事務)
大きく変わっていないなら、これまでの運用を確認しておけば良さそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただ、疑義解釈や訂正通知で細かい取り扱いが示されることはありますので、最新の通知は折に触れて確認しておくと安心です。変更がない、という確認自体も、運用が安定していることの裏づけになりますよ。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制、実施した内容を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。本記事は令和8年度(2026年度)の厚生労働省一次情報をもとに事実を整理したものです。