みらい(新人医療事務)
「有床診療所療養病床入院基本料」って名前だけ見ると難しそうです……。うちは19床の有床診療所で、療養病床も持っているんですけど、これって何の入院料なんですか?
あおい(元・医療事務)
区分番号A109の入院基本料ですね。有床診療所のうち、療養病床(長期の療養が必要な患者さんが入院する病床)に入院している患者さんについて、1日ごとに算定する基本の入院料です。令和8年度(2026年度)の医科点数表に基づいてご説明しますね。
みらい(新人医療事務)
「療養病床」っていうのは、一般の入院用の病床とは別なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、別枠です。有床診療所の入院基本料には、一般病床向けの有床診療所入院基本料(A108)と、療養病床向けの「A109有床診療所療養病床入院基本料」があります。今日はこのA109について、点数区分・施設基準・算定の考え方を整理していきます。
この入院料はどんな仕組みですか?
みらい(新人医療事務)
普通の入院基本料みたいに、日数で点数が変わるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、A109は日数による区分ではなく、患者さんごとの「疾患、状態、ADL等」に応じた区分によって点数が変わる仕組みです。厚生労働省の告示では、こう定められています。
告示(A109注1)の要点
- 有床診療所(療養病床に係るものに限る)であって、看護配置その他の事項につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た診療所である保険医療機関に入院している患者について
- 当該患者の疾患、状態、ADL等について別に厚生労働大臣が定める区分に従い、当該患者ごとにそれぞれ所定点数を算定する
- 1日に2つ以上の区分に該当する場合は、該当するもののうち最も高い点数の区分を算定する
みらい(新人医療事務)
つまり、患者さん一人ひとりの状態を見て、どの区分に当てはまるかを判定して算定する、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。区分の判定基準(医療区分・ADL区分等の詳細)は別途、厚生労働大臣が定める基準に従いますので、この記事では点数区分の全体像と、算定・届出の流れを中心にご案内します。
対象となる医療機関・患者さんは?
みらい(新人医療事務)
どんな診療所が対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
対象は「有床診療所であって、療養病床に係るもの」です。一般病床のみの有床診療所には適用されません。加えて、看護配置その他の施設基準に適合していると地方厚生局長等に届け出ていることが前提になります。
みらい(新人医療事務)
患者さんの側の条件は何かありますか?
あおい(元・医療事務)
明確な疾患名の指定はなく、「当該有床診療所(療養病床)に入院している患者」であって、疾患・状態・ADL等の区分判定を受けた方が対象になります。長期の療養が必要な患者さんを想定した入院料、という位置づけです。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
具体的な点数を教えてください。
あおい(元・医療事務)
A109は1日につき算定する入院料で、患者さんの区分に応じてA〜Eの5段階、それに加えて経過措置の特別入院基本料があります。
| 区分 | 点数(1日につき) | 生活療養を受ける場合 |
|---|---|---|
| 入院基本料A | 1,131点 | 1,116点 |
| 入院基本料B | 1,018点 | 1,002点 |
| 入院基本料C | 899点 | 884点 |
| 入院基本料D | 723点 | 708点 |
| 入院基本料E | 633点 | 618点 |
| 特別入院基本料(注2・経過措置) | 528点 | 513点 |

みらい(新人医療事務)
「特別入院基本料」というのは何ですか?
あおい(元・医療事務)
注2に定めがあります。「注1に規定する有床診療所以外の療養病床を有する有床診療所」、つまり施設基準(注1の看護配置基準等)を満たしていない療養病床を持つ有床診療所について、当分の間、地方厚生局長等に届け出た場合に限り、528点(生活療養時513点)を算定できるという経過措置です。あくまで届出が前提で、届出なしでは算定候補にはなりません。
点数区分の判定について
A〜Eのどの区分に該当するかは、患者さんの疾患・状態・ADL等について別に厚生労働大臣が定める区分に基づいて決まります。この判定は医療上の評価を伴うため、自院で「うちは高い区分になりそうだ」と決め打ちせず、区分判定の基準そのものを公式資料で確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
急に容体が悪くなって、療養病床から一般病床に移った場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
注1ただし書に規定があります。「注1」の入院基本料を算定している患者さんが急性増悪により、同一医療機関の療養病床以外の病室へ転室する場合や、他医療機関の一般病棟・有床診療所の療養病床以外の病室へ転院する場合は、その日から起算して3日前までの間、入院基本料Eを算定する取り扱いになっています。転室・転院した日を基準に遡って3日分、という考え方です。
施設基準・届出の確認ポイント
みらい(新人医療事務)
施設基準はどう確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
告示では「看護配置その他の事項につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た診療所である保険医療機関」であることが要件です。看護配置の具体的な基準は基本診療料の施設基準等の告示・通知で個別に定められていますので、自院の看護配置がその基準に適合しているか、施設基準の原文で確認する必要があります。
届出で確認したいこと
- 療養病床に係る看護配置その他の施設基準に、現状の人員配置が適合しているか
- 地方厚生局への届出が受理されているか(届出済みかどうかで、そもそも注1の入院基本料A〜Eの対象になるかが変わります)
- 施設基準を満たさない療養病床の場合は、経過措置の特別入院基本料(528点/生活療養513点)の届出対象になり得るか
みらい(新人医療事務)
届出をしていないと、そもそも算定候補にならないということですか?
あおい(元・医療事務)
はい。注1の入院基本料A〜Eは「施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た診療所」が対象です。届出が未了の場合は、まず届出の準備・手続き状況を確認する必要があります。届出をせずに算定した場合は過誤請求になりますので、必ず届出の受理状況を確認してください。
入院基本料に含まれる費用(包括範囲)
みらい(新人医療事務)
この入院料を算定すると、検査代とかは別に請求できないんですか?
あおい(元・医療事務)
その点は注3に定めがあります。A109を算定している患者さんに行った第3部検査、第5部投薬、第6部注射、第13部病理診断、そして第4部画像診断・第9部処置のうち別に厚生労働大臣が定めるもの(フィルム費用を含み、除外薬剤・注射薬の費用を除く)は、入院基本料に含まれるものとされています。つまり、これらは基本的に別建てで算定できません。
みらい(新人医療事務)
例外はありますか?
あおい(元・医療事務)
あります。患者さんの急性増悪により、同一医療機関の療養病床以外への転室や、他医療機関の一般病棟・有床診療所の療養病床以外の病室への転院をする場合は、その日から起算して3日前までの費用については、この限りでない(=包括対象から外れる)とされています。
上乗せできる主な加算
みらい(新人医療事務)
この入院料に上乗せできる加算にはどんなものがありますか?
あおい(元・医療事務)
注4〜注12に、さまざまな加算の規定があります。主なものを整理しますね。
A109に定められた主な加算(注4〜注12)
- 褥瘡対策加算(注4): 褥瘡対策加算1 15点/褥瘡対策加算2 5点(1日につき、患者の褥瘡の状態に応じて)
- 重症児(者)受入連携加算(注5): 入院初日に限り2,000点。他の保険医療機関で入退院支援加算3を算定した患者を受け入れた場合
- 有床診療所急性期患者支援療養病床初期加算(注6前段): 1日につき300点。急性期医療を担う他院の一般病棟からの転院患者について、転院日から21日を限度
- 有床診療所在宅患者支援療養病床初期加算(注6後段): 1日につき350点。介護老人保健施設・介護医療院・自宅等からの入院患者について、意思決定支援を行った場合に入院日から21日を限度
- 看取り加算(注7): 1,000点(在宅療養支援診療所は2,000点)。入院の日から30日以内に看取った場合
- 栄養管理実施加算(注10): 12点(1日につき)。算定する場合、入院栄養食事指導料は別途算定不可
- 有床診療所療養病床在宅復帰機能強化加算(注11): 10点(1日につき)
- 慢性維持透析管理加算(注12): 100点(1日につき)。人工腎臓・持続緩徐式血液濾過・血漿交換療法・腹膜灌流を自院で行っている患者
みらい(新人医療事務)
ほかにも入院基本料等加算が算定できるんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい。注8に列挙されている入院基本料等加算(在宅患者緊急入院診療加算、診療録管理体制加算、医師事務作業補助体制加算〔50対1・75対1・100対1補助体制加算に限る〕、電子的診療情報連携体制整備加算、乳幼児加算・幼児加算、超重症児(者)入院診療加算・準超重症児(者)入院診療加算、地域加算、離島加算、HIV感染者療養環境特別加算、診療所療養病床療養環境加算・療養環境改善加算、重症皮膚潰瘍管理加算、有床診療所緩和ケア診療加算、口腔管理連携加算、医療安全対策加算、感染対策向上加算、患者サポート体制充実加算、報告書管理体制加算、身体的拘束最小化推進体制加算、入退院支援加算〔1のハ又は2のロに限る〕、医療的ケア児(者)入院前支援加算、薬剤総合評価調整加算、排尿自立支援加算、協力対象施設入所者入院加算)についても、それぞれの算定要件を満たす場合に算定候補になります。個別の加算ごとに施設基準・届出の有無を確認する必要があります。
注意: すべて自動で加算されるわけではない
上記の加算は、A109を算定していれば自動的に付くものではありません。それぞれの加算ごとに施設基準・届出・算定要件が定められています。「入院基本料は算定しているのに加算だけ算定漏れしている」というケースが起こりやすいポイントですので、加算ごとに個別で確認してください。
記録・診療録の要件
みらい(新人医療事務)
この入院料を算定するうえで、記録面で気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に基づく実務上のポイントとして、次のような記録が求められます。
自院で確認する順番
-
定期的な状態評価と療養計画の見直し — 少なくとも月に1回、患者の状態を評価し、入院療養の計画を見直して、その要点を診療録に記載する
-
入院時・退院時のADL記載 — 入院時と退院時のADLの程度を診療録に記載する
-
状態変化時の随時評価 — 患者の状態に著しい変化がみられた場合は、その都度状態を評価したうえで治療・ケアを見直し、要点を診療録等に記載する
-
転室・転院時の摘要欄記載 — 医療上の必要性により他の病床へ患者を移動させた場合は、その医療上の必要性についてレセプトの摘要欄に詳細に記載する(入院基本料Eを算定した場合も同様)
あおい(元・医療事務)
これらは施設基準の届出とは別に、日々の算定実務で求められる記録要件です。届出さえしていれば形式的に算定できる、というものではない点に注意してください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、何か変わったところはありますか?
あおい(元・医療事務)
今回の記事でご紹介した告示・留意事項通知(令和8年度版)で確認できる範囲では、点数・施設基準・算定要件についての明確な変更点は確認されていません(確認日: 2026年8月)。過去改定との詳細な項目単位の比較は、厚生労働省が公表する「個別改定項目について」等の一次資料で確認する必要があります。自院での届出内容が最新の基準に沿っているかは、必ず現行の公式資料でご確認ください。
改定差分の確認について
点数が変わっていない場合でも、施設基準・人員配置・記録要件などが改定で変更されているケースがあります。「点数が同じだから何も変わっていない」と思い込まず、届出内容と現行の施設基準が一致しているかを定期的に確認することをおすすめします。
算定上の注意点・よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
実務でつまずきやすいポイントを教えてください。
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。
算定上の注意点
- 区分の判定根拠: A〜Eのどの区分で算定しているか、判定の根拠(疾患・状態・ADL等の評価記録)を診療録に残しておく必要があります
- 施設基準の届出なしでの算定はできません: 注1の入院基本料A〜Eは届出が前提です。特別入院基本料(528点/513点)も届出が必要な経過措置です
- 包括範囲の請求誤り: 注3で入院基本料に含まれるとされる検査・投薬・注射・病理診断等を、誤って別建てで請求してしまうケース
- 加算の算定漏れ: 褥瘡対策加算・看取り加算・栄養管理実施加算など、要件を満たしているのに届出や記録が不足して算定できていないケース
- 転室・転院時の記載漏れ: 急性増悪による転室・転院時の入院基本料E算定や、摘要欄への医療上の必要性の記載が漏れているケース
よくある取り漏れポイント
- 褥瘡対策加算(15点/5点)の対象患者の褥瘡状態評価が記録されていないケース
- 重症児(者)受入連携加算(2,000点)の対象となる転院元での入退院支援加算3算定の確認が漏れているケース
- 有床診療所急性期患者支援療養病床初期加算・在宅患者支援療養病床初期加算の21日限度のカウントを取り違えているケース
- 看取り加算の対象(在宅療養支援診療所か否か)で1,000点と2,000点を混同しているケース
自院での確認手順
みらい(新人医療事務)
うちの診療所で確認するとしたら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
こんな順番で確認するとスムーズです。
自院で確認する順番
-
療養病床を有する有床診療所かどうか確認 — A109の対象は「有床診療所であって、療養病床に係るもの」であることが前提
-
施設基準(看護配置その他)の届出状況を確認 — 注1の入院基本料A〜Eを算定候補にするには、地方厚生局への届出が受理されている必要がある
-
患者ごとの区分判定の根拠を確認 — 疾患・状態・ADL等の区分判定基準に基づいて、どの区分(A〜E)に該当するかの評価記録が残っているか
-
記録要件を確認 — 月1回以上の状態評価・療養計画見直し、入退院時のADL記載が診療録にあるか
-
上乗せ加算の候補を洗い出す — 褥瘡対策加算・看取り加算・栄養管理実施加算など、届出・要件を満たす加算がないか個別に確認する
-
経過措置(特別入院基本料)の対象かどうかも確認 — 注1の施設基準を満たしていない療養病床の場合、届出により特別入院基本料の対象になり得るか確認する

みらい(新人医療事務)
これだけ確認項目があると、自分たちだけで判断するのは不安になります……。
あおい(元・医療事務)
そうですよね。区分判定や施設基準の適合可否は医療上の評価が絡む部分もあるので、自院だけで判断が難しいときは加算チェッカーを活用してみてください。自院の状況を入力すると、算定候補になりそうか、確認すべきポイントが整理できます。自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省の公式資料を根拠としています。点数区分・施設基準・届出の詳細は、必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚生労働省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)医科点数表 第1章第2部入院料等 区分番号A109 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について(告示・留意事項通知等の情報ページ) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21053.html
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。区分の判定・施設基準の充足・届出の有効性は、自院の実際の体制と公式資料を照らし合わせたうえで確認が必要です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。