みらい(新人医療事務)
先輩、「ハイリスク妊産婦連携指導料1」って名前を見つけたんですけど、これってどんな時に算定候補になるんですか? 産科の患者さんならみんな対象になるんでしょうか。
あおい(元・医療事務)
いいところに気づきましたね。これは全部の妊産婦さんが対象になる加算ではなくて、精神疾患を持つ、または疑いがある妊産婦さんに対して、産科・産婦人科と精神科・心療内科が連携して指導した場合に算定候補になるものなんです。令和8年度(2026年度)の点数表では区分B005-10として整理されています。
みらい(新人医療事務)
精神科との連携かあ、ちょっとイメージが湧きにくいです。もう少し具体的に教えてもらえますか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。今日はこの加算について、対象患者・点数・施設基準・注意点まで、一つずつ確認していきましょう。
どんな患者が対象になるか
みらい(新人医療事務)
まず、対象になる患者さんの条件を教えてください。
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示ではこう定められています。「入院中の患者以外の患者であって、精神疾患を有する又は精神疾患が疑われるものとして精神科若しくは心療内科を担当する医師への紹介が必要であると判断された妊婦又は出産後2月以内であるものに対して、当該患者の同意を得て、産科又は産婦人科を担当する医師及び保健師、助産師又は看護師が共同して精神科又は心療内科と連携し、診療及び療養上必要な指導を行った場合」に算定候補になります。つまり入院中ではない、外来の妊婦さんか出産後2か月以内の方が対象になります。
みらい(新人医療事務)
「精神疾患が疑われる」というのは、どうやって判断するんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、当該保険医療機関で精神療法が実施されている患者、または他の医療機関で精神療法が実施されていて診療情報が文書提供されている患者、あるいはエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)等でメンタルヘルスのスクリーニングを行い、精神科・心療内科への文書での情報提供が行われた妊婦・産後2か月以内の方、と定められています。自己判断でのスクリーニングだけでなく、文書による情報提供の実績が要件になっている点は見落としやすいポイントです。
みらい(新人医療事務)
文書での情報提供が必須なんですね。口頭のやり取りだけでは足りないと。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。カルテ記載だけでなく、診療情報提供書のような文書が残っているかを確認することが大切です。
点数区分(令和8年度)

みらい(新人医療事務)
点数はどのくらいなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数表では、以下のように整理されています。
| 区分番号 | 名称 | 担当診療科 | 点数 | 算定回数 |
|---|---|---|---|---|
| B005-10 | ハイリスク妊産婦連携指導料1 | 産科又は産婦人科 | 1,000点 | 患者1人につき月1回 |
| B005-10-2 | ハイリスク妊産婦連携指導料2 | 精神科又は心療内科 | 750点 | 患者1人につき月1回 |
みらい(新人医療事務)
産科側が指導料1、精神科側が指導料2、という役割分担なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。同じ患者さんについて、産科・産婦人科側が算定候補になるのが指導料1、精神科・心療内科側が算定候補になるのが指導料2、という構成です。ただし、後で説明しますが、同一の保険医療機関で両方を同じ患者さんに算定することはできません。
施設基準・要件
みらい(新人医療事務)
この加算を算定候補にするには、施設基準の届出が必要なんですよね? 具体的にはどんな体制が求められるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、届出が前提になります。留意事項通知には、次のような要件が列挙されています。
みらい(新人医療事務)
全部覚えるのは大変そうです……。
あおい(元・医療事務)
大丈夫、順番に見ていきましょう。まず(1)対象患者の範囲(先ほど説明した精神療法実施中またはスクリーニング実施済みの妊婦・産後2か月以内の方)、(2)精神療法が他院で実施されている場合は、患者さんの同意を得て、その医療機関との間で診療情報を相互かつ定期的に提供していること、(3)必要に応じて小児科と連携できる体制を有していること、が求められます。
みらい(新人医療事務)
面接やカンファレンスの頻度についても決まりがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。(4)産科・産婦人科の医師またはその指示を受けた保健師・助産師・看護師が、概ね月1回の頻度で、患者さんの心理的不安を軽減するための面接及び療養上の指導を行うこと。(5)患者さんの診療方針等に関するカンファレンスを概ね2か月に1回の頻度で開催し、産科・産婦人科の医師、精神科・心療内科の医師、両診療科それぞれの保健師・助産師・看護師、市町村または都道府県の担当者が参加すること。必要に応じて精神保健福祉士・社会福祉士・公認心理師等、訪問看護ステーションの職員も加わります。
みらい(新人医療事務)
カンファレンスは必ず対面で集まらないといけないんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
(6)原則は関係者が一堂に会して実施することですが、ビデオ通話が可能な機器を用いて実施した場合でも算定候補になる、と留意事項に明記されています。ただし患者さんの個人情報を画面上で共有する際は本人の同意を得ること、電子カルテなど医療情報システムと共通のネットワーク上で実施する場合は厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」への対応が必要です。
みらい(新人医療事務)
市町村の担当者が都合で参加できない回もありそうですが……。
あおい(元・医療事務)
そのケースも想定されていて、(7)カンファレンスに市町村等の担当者が参加しなかった場合は、その都度、患者さんの同意を得たうえで、市町村等の担当者へ結果を文書で情報提供することに代えてもよいとされています。さらに(8)出産後の養育支援が必要と認められる場合は、その旨を患者さんに説明し、同意を得たうえで市町村等に相談・情報提供を行うこと、(9)実施にあたっては日本産婦人科医会作成の「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル」を参考にすること、も留意事項に含まれています。
施設基準チェックの見落としポイント
面接の頻度: 「概ね月1回」の実施記録が残っているか確認しましょう。 カンファレンスの参加者: 産科・産婦人科側と精神科・心療内科側、双方から医師・保健師/助産師/看護師が参加しているか(片方の診療科からしか参加していないと要件を満たさない可能性があります)。 文書での情報提供: 市町村担当者が欠席した回に、文書での情報提供に代えた記録が残っているか。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
施設基準はわかりました。じゃあ届出ってどうすればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た」ことが算定の前提になっています。届出済みであれば算定候補になりますが、届出をしていない場合はこの加算を算定することはできません。届出の様式や添付書類は地方厚生局ごとに案内されているため、実際に自院が届出済みかどうか、担当部署に確認することが第一歩になります。
みらい(新人医療事務)
産科・産婦人科を標榜していれば自動的に対象になるわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。「産科又は産婦人科を標榜する保険医療機関」であることに加えて、施設基準の届出が必要です。標榜科だけで判断せず、届出状況を必ず確認してください。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定回数や、他の点数との組み合わせで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
大事な注意点が2つあります。1つ目は、告示の注2に「同一の保険医療機関において、区分番号B005-10-2に掲げるハイリスク妊産婦連携指導料2を同一の患者について別に算定できない」と明記されている点です。つまり、同じ医療機関の中で同じ患者さんについて、指導料1と指導料2を両方算定することはできません。
みらい(新人医療事務)
産科と精神科が院内に両方あっても、片方しか算定候補にならないということですか。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。院内に両診療科がある場合は、どちらの診療科がメインで連携指導を行っているかを踏まえて、算定する区分を整理しておく必要があります。もう1つの注意点は、留意事項(10)に「当該連携指導料を算定する場合は、『B009』診療情報提供料(Ⅰ)は別に算定できないこと」とある点です。
併算定の注意
ハイリスク妊産婦連携指導料1・2は、同一保険医療機関・同一患者について同時算定できません。また、この連携指導料を算定する場合、診療情報提供料(Ⅰ)(区分番号B009)は別に算定できないとされています。レセプト作成時は他の管理料・指導料との組み合わせを個別に確認してください。
みらい(新人医療事務)
算定できる回数にも上限があるんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい、告示の注1に「患者1人につき月1回に限り算定する」と明記されています。月をまたいでの重複算定や、同一月内での複数回算定はできません。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度診療報酬改定にあたって、当サイトが確認できた一次資料(告示・留意事項通知)の範囲では、ハイリスク妊産婦連携指導料1・2について、点数・算定要件・施設基準に関する明確な変更点は確認されていません(確認日: 2026年8月)。今回の記事は令和8年度の告示・留意事項通知の内容をもとに作成しています。
改定情報の確認について
診療報酬改定では、点数が据え置きでも施設基準や算定要件が見直されるケースがあります。前回改定からの変更点をより詳しく確認したい場合は、厚生労働省の「個別改定項目について」等の一次資料、または地方厚生局の告知を直接ご確認ください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの医療機関で算定候補になるかどうか、どういう順番で確認したらいいですか?
あおい(元・医療事務)
おすすめの確認手順はこちらです。

自院で確認する順番
対象患者に該当するか確認する: 精神疾患を有する、または疑いがある妊婦、または出産後2か月以内の方かどうかを確認します。 連携体制を確認する: 産科・産婦人科と精神科・心療内科が、月1回の面接、2か月に1回のカンファレンスを実施できる体制にあるかを確認します。 施設基準の届出状況を確認する: 地方厚生局へ施設基準の届出が済んでいるかを確認します。未届出の場合は、この加算は算定候補になりません。 併算定・回数制限を確認する: 指導料2や診療情報提供料(Ⅰ)との重複がないか、月1回の上限を超えていないかをレセプト作成前に確認します。
みらい(新人医療事務)
この順番なら、自分でも一つずつ確認できそうです。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でよくある取り漏れのパターンってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつか典型的なケースがあります。
よくある取り漏れ①
スクリーニング(EPDS等)は実施しているものの、その結果を精神科・心療内科へ文書で情報提供した記録が残っていないケース。留意事項では文書による情報提供が要件に含まれているため、口頭連携のみでは要件を満たさない可能性があります。
よくある取り漏れ②
カンファレンスは開催しているが、参加者の記録(誰が、どの診療科から参加したか)が残っていないケース。要件では産科・産婦人科側、精神科・心療内科側それぞれからの参加が求められているため、議事録に参加者と所属診療科を残しておくことが大切です。
みらい(新人医療事務)
記録を残す、というのが共通のポイントなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。要件を満たす連携をしていても、記録が残っていなければ、後から算定の妥当性を説明するのが難しくなります。面接・カンファレンスの都度、日時・参加者・内容を記録しておくことをおすすめします。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省の公式資料を根拠としています。詳細な施設基準・届出手続きは、必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示・点数表本体): https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 令和8年度診療報酬改定について(留意事項通知等の一覧・厚生労働省公式ページ): https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や連携体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する加算として、ハイリスク妊娠管理加算、ハイリスク分娩管理加算、診療情報提供料(Ⅰ) もあわせて確認しておくと、産科・周産期領域の加算全体を整理しやすくなります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。