みらい(新人医療事務)
「精神科救急急性期医療入院料」って、名前が長くてちょっと身構えちゃいます……。これはどんな入院料なんですか?
あおい(元・医療事務)
区分番号A311の特定入院料ですね。精神病棟を持つ病院が、施設基準を満たして地方厚生局長等に届け出た上で、措置入院・緊急措置入院・応急入院など救急性の高い精神疾患の患者さんを受け入れた場合の入院料です。令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づく内容として、一緒に整理していきましょう。
みらい(新人医療事務)
「特定入院料」というのは、いつもの入院基本料とは別物ということですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。入院基本料の代わりに、精神科救急に特化した体制を評価する入院料として1日につき算定します。ただし、届け出た病棟に入院していても、算定要件に該当しない患者さんについては、精神病棟入院基本料の15対1入院基本料の例により算定することになります。この仕組みは大切なので、あとで詳しく確認していきますね。
対象となる医療機関・患者
みらい(新人医療事務)
うちは診療所なんですが、対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
この入院料は病院の精神病棟が対象で、診療所・外来・在宅では算定候補になりません。当サイトが収録している一次資料の範囲では、対象は「精神病棟を有する病院」に限られています。
みらい(新人医療事務)
病院なら、精神科の患者さん全員が対象になるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、対象患者にも条件があります。厚生労働省の留意事項通知では、大きく分けて次のような患者が対象と整理されています。
対象患者の目安(令和8年度・厚労省一次情報ベース)
- 措置入院患者・緊急措置入院患者・応急入院患者(精神保健福祉法に基づく入院形態)
- 上記以外で、入院前3か月に精神病棟への入院歴がなく、入院基本料の起算日に当たる患者(満床等の理由で一旦他病棟に入院し2日以内に転棟した患者を含む)
- 救命救急入院料・特定集中治療室管理料・ハイケアユニット入院医療管理料等を算定する病棟から転棟・転院した患者
- クロザピンを新規に導入する目的で、他の病棟・他の保険医療機関から転棟・転院した患者
あおい(元・医療事務)
どの区分に当てはまるかは患者さんごとに個別の確認が必要です。自院の患者さんがこれに該当するかどうかは、診療録・入院経路を突き合わせて確認することが候補になるかの出発点になります。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
肝心の点数はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
入院日からの経過期間によって3段階に分かれています。表で見てみましょう。
| 入院期間の区分 | 点数(1日につき) |
|---|---|
| 30日以内の期間 | 2,516点 |
| 31日以上60日以内の期間 | 2,216点 |
| 61日以上90日以内の期間 | 2,014点 |
あおい(元・医療事務)
この入院料は、入院日から起算して90日を限度として算定します。90日を超えた場合は、この入院料の対象から外れることになるので注意が必要です。

みらい(新人医療事務)
加算のようなものもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、代表的なものが3つあります。いずれも施設基準や算定要件が個別に定められているので、それぞれ確認が必要です。
主な加算(令和8年度・1日につき)
- 非定型抗精神病薬加算 15点: 統合失調症の患者に計画的な医学管理の下で非定型抗精神病薬による治療と療養上必要な指導を行い、使用する抗精神病薬が2種類以下の場合
- 看護職員夜間配置加算 70点: 施設基準の届出病棟で、入院した日から起算して30日を限度に算定
- 精神科救急医療体制加算 600点(体制加算1)または500点(体制加算2): 施設基準の届出区分に応じて、入院した日から起算して90日を限度に算定
あおい(元・医療事務)
どの加算も「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た」病棟であることが前提です。本体の入院料が算定候補になっても、加算は別途の施設基準確認が要る点は見落としやすいところです。
施設基準(届出が必要な項目)
みらい(新人医療事務)
施設基準、ちょっと多そうな予感がします……。
あおい(元・医療事務)
そうですね、この入院料は特に人員配置と実績要件が細かく定められています。カテゴリーに分けて整理しますね。
みらい(新人医療事務)
まずは人員体制からお願いします。
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の施設基準通知では、次のような人員配置が求められています。
人員配置に関する施設基準(令和8年度)
- 精神保健指定医が4名以上常勤していること
- 各病棟に2名以上の常勤の精神保健福祉士が配置されていること
- 各病棟の常勤医師数は、入院患者数16人(またはその端数)ごとに1人以上であること
- 日勤帯以外の時間帯は、看護師が常時2名以上配置されていること
みらい(新人医療事務)
病棟の作りにも条件があるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。次のような病棟構造・体制の要件です。
病棟構造・体制に関する施設基準(令和8年度)
- 病床数は1看護単位当たり60床以下であること
- 病床のうち、隔離室を含む個室が半数以上を占めていること
- 必要な検査およびCT撮影が、必要に応じて速やかに実施できる体制にあること(CT撮影は他院との連携でも可)
- 精神科救急急性期医療入院料と精神科急性期治療病棟入院料を合わせた病床数が300床以下であること
あおい(元・医療事務)
さらに、受け入れ実績や退院支援の実績も基準に含まれています。
実績要件は特に見落としやすい
- 1か月間の延べ入院日数のうち、4割以上が新規患者の延べ入院日数であること
- 新規入院患者の6割以上が「精神科救急等病棟必要性チェックリスト」で3点以上であること
- 都道府県内(または精神科救急医療圏内)の直近1年間の措置入院・緊急措置入院・応急入院の新規入院患者のうち、原則として4分の1以上または20件以上を自院で受け入れていること
- 措置入院患者・鑑定入院患者・医療観察法入院患者・クロザピン新規導入目的の患者を除いた新規入院患者のうち、4割以上が入院日から3か月以内に自宅等へ退院していること
- データ提出加算に係る届出を行っていること
これらは単月の体制だけでなく、直近の実績データの集計が前提になっています。自院の実績集計がこの基準を満たしているかどうかは、施設基準通知の原文とあわせて確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
精神科救急医療体制加算のほうにも、別の施設基準があるんですよね?
あおい(元・医療事務)
そうです。体制加算1と2でそれぞれ施設基準が分かれていて、たとえば体制加算1では常勤の精神保健指定医5名以上や年間の入院件数実績など、本体の入院料よりさらに高い水準が求められます。加算だけの届出漏れも起こりやすいので、本体の入院料と加算の施設基準は別物として確認することをおすすめします。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たしていたら、あとは届け出るだけですか?
あおい(元・医療事務)
はい。厚生労働省の施設基準通知では、届出に使う様式が具体的に示されています。
届出に必要な様式(令和8年度・厚労省一次情報ベース)
- 精神科救急急性期医療入院料本体: 様式9・様式20(精神保健指定医は指定医番号を備考欄に記載)・様式53・様式54を用い、病棟の配置図(隔離室の位置がわかるもの)を添付
- 看護職員夜間配置加算: 様式9・様式13の3・様式20・別添2の様式48を用いる(医療保護入院等診療料の届出を行っている場合は様式48の届出省略可)
- 精神科救急医療体制加算: 様式53・様式54の2を用いる
あおい(元・医療事務)
届出は地方厚生局長等に対して行うものなので、様式の最新版・提出先・受理日については地方厚生局の案内もあわせて確認してください。届出が受理された日以降でないと算定候補になりません。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定するときに気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、この入院料は入院日から起算して90日が上限です。次に、要件に該当しない患者さんが入院した場合は、精神病棟入院基本料の15対1入院基本料の例で算定することになっていて、この入院料をそのまま使えるわけではありません。
包括される費用の範囲に注意
この入院料の点数には、医師事務作業補助体制加算・地域加算・精神科身体合併症管理加算・データ提出加算・精神科入退院支援加算など、多くの加算・診療費用が含まれる(包括される)ことが留意事項通知で示されています。個別に算定できるかどうかは加算の種類ごとに異なるため、レセプト作成時は除外項目の一覧を一次資料で必ず確認してください。
みらい(新人医療事務)
病院なら精神病棟であればどこでも対象になる可能性がある、と考えていいですか?
あおい(元・医療事務)
そこは慎重にお伝えしたいところです。対象は精神病棟を有する病院のうち、施設基準に適合する届出済みの病棟に限られ、さらに患者さんごとに算定要件への該当性も個別に確認が必要です。「精神病棟があるから対象外の可能性は低い」と一律には言えず、届出状況・病棟体制・患者要件のすべてを確認する必要があります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、当サイトが収録している一次資料の範囲では、精神科救急急性期医療入院料について前回改定(令和6年度)からの変更点を確認できる比較資料が確認できていません(確認日: 2026年8月)。点数・施設基準の項目自体はクロザピン新規導入患者の扱いや「精神科救急等病棟必要性チェックリスト」など、細かい運用ルールを含む内容になっているため、前回との差分を確認したい場合は、厚生労働省の令和8年度診療報酬改定に関する特設ページや個別改定項目の資料で最新の状況をご確認ください。
改定情報の確認先
令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省) から、関連する告示・通知・改定項目の資料を確認できます。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
情報量が多いので、確認する順番を整理してほしいです!
あおい(元・医療事務)
では自院でチェックする順番をまとめますね。
自院で確認する順番
-
精神病棟を有する病院かを確認 — 診療所・外来・在宅は対象外の可能性が高いため、まず病院かつ精神病棟の有無を確認
-
人員配置を確認 — 精神保健指定医4名以上常勤、精神保健福祉士2名以上常勤、常勤医師数(患者16人ごとに1人以上)、夜間看護師常時2名以上を満たしているか
-
病棟構造を確認 — 1看護単位60床以下、隔離室を含む個室が半数以上、検査・CT体制が整っているか
-
受入・退院実績を確認 — 新規患者の延べ入院日数割合、必要性チェックリストの該当割合、措置入院等の受入実績、3か月以内の自宅等退院割合の集計データがあるか
-
加算の対象になるかを個別に確認 — 非定型抗精神病薬加算・看護職員夜間配置加算・精神科救急医療体制加算はそれぞれ別の要件・施設基準があるため、本体の入院料と分けて確認する
-
届出様式を準備 — 様式9・20・53・54(加算はさらに別様式)を用意し、病棟配置図を添付して地方厚生局へ届出
-
算定時の要件該当性を患者ごとに確認 — 対象患者の区分(措置入院等・転棟条件・クロザピン新規導入等)に該当するかをレセプト作成前に確認

みらい(新人医療事務)
よくある取り漏れのようなものはありますか?
あおい(元・医療事務)
あります。特に多いのが次のようなケースです。
よくある取り漏れ・確認漏れ
- 本体の入院料は届け出ていても、精神科救急医療体制加算1・2は別施設基準であることに気づかず未届出のまま
- 対象患者の区分(措置入院等・転棟条件・クロザピン新規導入等)を個別確認せず、要件非該当の患者に本入院料を適用してしまう
- 実績要件(新規患者割合・退院割合・受入件数)の集計を年1回しか見直しておらず、基準を下回った状態に気づかない
- 90日の算定上限を超えて算定してしまう
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事は以下の厚生労働省の公式資料を根拠としています。施設基準・届出の詳細な要件は、必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)— 精神科救急急性期医療入院料の点数・注(A311) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省特設ページ。留意事項通知・施設基準通知など関連資料への入口) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00074.html
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号)・基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第7号)— 精神科救急急性期医療入院料の対象患者・算定要件・施設基準・届出様式(最新版は上記特設ページからご確認ください)
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や病棟体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。加算・入院料の算定に際しては、施設基準の充足と届出の有効性を必ず自院で確認してください。