みらい(新人医療事務)
精神科病棟のある病院で、「精神療養病棟入院料」っていう入院料があるって聞いたんですけど、これって普通の入院基本料とは別物なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、別物です。区分番号はA312で、精神病棟を対象にした特定入院料の一つです。厚生労働省の令和8年度(2026年度)医科点数表では「A312 精神療養病棟入院料(1日につき) 1,174点」と定められています。入院基本料のように病棟単位で決まった基本点数を1日ごとに算定する仕組みですね。
みらい(新人医療事務)
「精神療養病棟」って、どんな患者さんが入院する病棟なんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の留意事項通知では「精神療養病棟は、主として長期にわたり療養が必要な精神障害患者が入院する病棟として認められたものであり、医療上特に必要がある場合に限り他の病棟への患者の移動は認められる」とされています。つまり、短期集中の急性期治療というより、長期の療養を必要とする精神障害患者さんの病棟という位置づけです。
みらい(新人医療事務)
うちは精神科クリニック(無床診療所)なんですけど、対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、対象外の可能性が高いです。当サイトが収録している一次資料の範囲では、この入院料は病院の入院(精神病棟)が対象で、外来や在宅は対象になっていません。無床の診療所は届出の対象になる病棟自体を持たないため、対象外と考えられます。ただし個別の判断は自院の届出状況で最終確認してくださいね。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
病院ならどこでも算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、届出が前提です。注1には「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た精神病棟を有する保険医療機関において、当該届出に係る精神病棟に入院している患者について、所定点数を算定する」と定められています。つまり、①施設基準に適合し、②地方厚生局長等に届出済みの精神病棟であること、③その病棟に現に入院している患者であること、の3つがそろって初めて算定候補になります。
みらい(新人医療事務)
届出さえしていれば、その病院のどの病棟でも算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは誤解しやすいポイントです。届出はあくまで「病棟単位」です。同じ病院内でも、精神療養病棟として届け出た病棟に入院している患者さんだけが対象で、他の一般病棟や別の精神科病棟に入院している患者さんは対象になりません。自院のどの病棟が届出済みかを、まず確認する必要があります。
対象になりやすい/なりにくいケースの整理
対象になりやすい: 精神療養病棟として施設基準に適合し届出済みの病棟に、長期療養が必要な精神障害患者が入院しているケース。
対象外の可能性: 精神科クリニック(無床診療所)、外来診療、在宅医療、届出をしていない病棟への入院。無床診療所は病棟を持たないため、この入院料の対象になる可能性は低いと考えられます(自院の届出状況で要確認)。
点数の内訳(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数は1,174点だけなんですか? それとも加算もあるんですか?
あおい(元・医療事務)
基本点数のほかに、要件を満たせば加算がつく仕組みです。一次資料に基づく令和8年度の点数は、次の表のとおりです。

| 項目 | 点数(令和8年度) | 算定の目安 |
|---|---|---|
| 精神療養病棟入院料(基本点数) | 1,174点 | 1日につき |
| 重症者加算1 | 60点 | 別に厚生労働大臣が定める状態の患者。重症者加算1は施設基準の届出が別途必要 |
| 重症者加算2 | 30点 | 別に厚生労働大臣が定める状態の患者 |
| 精神保健福祉士配置加算 | 30点 | 施設基準に適合し届出済みの病棟に入院している患者。1日につき |
| 非定型抗精神病薬加算 | 15点 | 統合失調症の患者に計画的な医学管理の下で非定型抗精神病薬による治療・指導を行い、1日当たりの使用薬剤が2種類以下の場合 |
みらい(新人医療事務)
非定型抗精神病薬加算って、条件が細かいですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。一次資料には「当該病棟に入院している統合失調症の患者に対して、計画的な医学管理の下に非定型抗精神病薬による治療を行い、かつ、療養上必要な指導を行った場合には、当該患者が使用した1日当たりの抗精神病薬が2種類以下の場合に限り、非定型抗精神病薬加算として、1日につき15点を所定点数に加算する」と書かれています。対象疾患が統合失調症に限定されている点と、薬剤数の要件(2種類以下)の両方を満たす必要がある点は見落としやすいポイントです。
包括される費用に注意
注2には、注3〜注5の加算や一部の入院基本料等加算、臨床研修病院入院診療加算、医師事務作業補助体制加算(50対1・75対1・100対1補助体制加算に限る)、地域加算、離島加算、データ提出加算、精神科入退院支援加算などを除いた診療に係る費用は、精神療養病棟入院料に含まれるとされています。除外項目に該当しない検査・投薬等は、別途の算定候補にならない可能性があるため、レセプト作成時に自院の算定システムで包括範囲を必ず確認してください。
施設基準(届出が必要な要件)
みらい(新人医療事務)
施設基準って、具体的に何を確認すればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第7号)の第17に、精神療養病棟入院料の施設基準等がまとまっています。主なものを挙げますね。
施設基準の主な項目(第17 精神療養病棟入院料)
病床数の上限: 「医療法の規定に基づき許可を受け、若しくは届出をし、又は承認を受けた病床の数以上の入院患者を入院させていないこと」
人員配置: 「当該病棟に精神科医師である常勤の専任医師及び常勤の作業療法士又は作業療法の経験を有する常勤の看護職員が配置されていること」
専任医師の兼任制限: 「当該病棟における専任の精神科医師は他の病棟に配置される医師と兼任はできない。また、当該医師の外来業務及び他病棟の入院患者の診療業務への従事は週2日以内とすること」
精神保健福祉士・公認心理師の配置: 「当該保険医療機関に、精神保健福祉士又は公認心理師が常勤していること」
1看護単位当たりの病床数: 「当該病棟の病床数は、1看護単位当たり60床以下であること」
みらい(新人医療事務)
結構、細かい要件が並んでいますね…。うちの病棟がこれを満たしているか、事務だけで判断していいものなんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
そこは正直、事務だけで判断しきれない部分です。専任医師の配置状況や看護職員の経験年数、病棟の面積要件などは、実際の勤務実績表や病棟の平面図と突き合わせないと確定できません。看護部門・医師・施設管理の担当者と一緒に、届出書類の様式に沿って確認するのが確実です。
重症者加算1・精神保健福祉士配置加算は別届出が必要
重症者加算1は「精神科救急医療確保事業において常時対応型施設として指定を受けている医療機関又は身体合併症救急医療確保事業において指定を受けている医療機関であること」など、基本の施設基準に加えて追加の施設基準を満たし届け出た場合のみ加算対象です。精神保健福祉士配置加算も「当該病棟に、専従の常勤精神保健福祉士が1名以上配置されていること」という独立した施設基準があり、基本部分の届出だけでは自動的に算定候補になりません。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
届出はどういう書類を出せばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料には「精神療養病棟入院料の施設基準に係る届出は、別添7の様式9、様式20(作業療法等の経験を有する看護職員については、その旨を備考欄に記載すること。)、様式24の2、様式55の2及び様式55の3を用いること」とあります。様式55の2は重症者加算1、様式55の3は退院支援相談員に関する届出書添付書類です。加算の種類ごとに必要な様式が分かれているので、算定したい加算に応じて過不足がないか確認してください。
みらい(新人医療事務)
もし届出をしていない病棟だったら、算定候補にはならないんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、届出をしていなければ算定候補にはなりません。「届出済みであれば候補」という位置づけで、届出そのものが算定の前提条件です。届出の有無・受理日は必ず地方厚生局への提出書類の控えで確認してください。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
併算定できない項目もあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、注意が必要です。まず精神保健福祉士配置加算と精神科入退院支援加算の関係ですが、精神科入退院支援加算(区分番号A246-2)の一次資料には「ただし、区分番号A103に掲げる精神病棟入院基本料の注8若しくは区分番号A312に掲げる精神療養病棟入院料の注5に規定する精神保健福祉士配置加算、区分番号A230-2に掲げる精神科地域移行実施加算又は区分番号I011に掲げる精神科退院指導料を算定する場合は、算定できない」と明記されています。つまり、精神保健福祉士配置加算(A312注5)を算定している場合、精神科入退院支援加算は算定できないという関係です。同じく病棟入院患者の退院支援に関わる精神科地域移行実施加算も、この注5の加算とは別の施設基準・要件で判断される加算です。
併算定除外は条文で個別に確認する
包括される費用の範囲や、精神保健福祉士配置加算と他加算との併算定関係は、条文の言い回しが細かく、加算どうしの組み合わせによって扱いが変わります。「取れそう」と見えても、実際に条文の除外項目に該当していないかを、算定するたびに確認する運用をおすすめします。
みらい(新人医療事務)
薬剤料はどうなるんですか? 精神療養病棟に入院している間の投薬って、別に算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料には「精神療養病棟入院料を算定する日に使用するものとされた投薬に係る薬剤料は、精神療養病棟入院料に含まれ、別に算定できない」と明記されています。投薬に係る薬剤料は基本点数に含まれるため、原則として別立てでは算定できない扱いです。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集している令和8年度の一次資料の範囲では、精神療養病棟入院料に関する前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません(確認日: 2026-08)。点数(1,174点)や重症者加算・精神保健福祉士配置加算・非定型抗精神病薬加算の点数、施設基準の主要な要件についても、当サイトが参照した一次資料の中では明確な改定差分の記載は見当たりませんでした。
改定差分の確認について
点数が変わっていなくても、施設基準や算定要件だけが改定で変更されるケースは他の加算では見られます。この記事は当サイトが収集している一次資料の範囲での確認結果であり、届出前には必ず最新の告示・通知の原文で改定差分の有無をご自身でも確認してください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの病院で確認するとしたら、どういう順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
確認する順番はこのとおりです。
自院で確認する順番
- 対象の病棟が「精神病棟」であり、主に長期療養が必要な精神障害患者が入院する病棟に該当するか確認する
- 精神療養病棟入院料の施設基準(人員配置・専任医師の兼任制限・病床数・精神保健福祉士や公認心理師の常勤配置など)を病棟の実態と突き合わせて確認する
- 施設基準に係る届出(様式9・様式20・様式24の2・様式55の2・様式55の3)を地方厚生局長等に提出済みか、控えで確認する
- 重症者加算1・重症者加算2、精神保健福祉士配置加算、非定型抗精神病薬加算など、追加で算定候補になる加算がないか、それぞれの施設基準・算定要件を個別に確認する
- 包括される費用の範囲と、精神科入退院支援加算などとの併算定除外の条件を確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなパターンがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
いくつか整理しておきますね。
よくある取り漏れ
精神保健福祉士配置加算の未届出: 精神保健福祉士を常勤配置しているのに、加算の施設基準届出(様式など)が別途必要なことに気づかず、届出をしていないケース。
重症者加算1の追加施設基準の見落とし: 重症者加算2は満たしているつもりでも、重症者加算1には精神科救急医療体制に関する追加の施設基準があり、そちらの届出をしていないと算定候補になりません。
専任医師の兼任・外来業務の週2日超過: 専任の精神科医師が他病棟の診療や外来業務に従事する時間が、条文の「週2日以内」を超えていないか、実際の勤務実績表で確認できていないケース。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。