みらい(新人医療事務)
「地域移行機能強化病棟入院料」って名前、初めて見ました。どういう入院料なんですか?
あおい(元・医療事務)
区分番号A318の入院料ですよ。長期入院になっている精神科の患者さんが、地域で安定して生活できるように、退院に向けた訓練や支援を集中的に行う病棟に対して算定できる、令和8年度時点の特定入院料です。
みらい(新人医療事務)
「長期入院」というのは、具体的にどれくらいの期間ですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示では「当該保険医療機関に1年以上入院している患者又は当該保険医療機関での入院が1年以上に及ぶ可能性がある患者」が対象とされています。つまり、すでに1年以上入院している方だけでなく、これから1年以上になりそうな方も対象になり得ます。
みらい(新人医療事務)
なるほど。じゃあ、対象になる病棟や患者さんについて、もう少し詳しく教えてください。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
まず、どんな病院のどんな病棟が対象なんですか?
あおい(元・医療事務)
精神病棟を有する保険医療機関のうち、施設基準に適合しているとして地方厚生局長等に届け出た精神病棟が対象です。届出をしていない病棟では、この入院料自体を算定できません。
みらい(新人医療事務)
届出をしている病棟に入院していれば、みんな対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そこは注意が必要です。厚生労働省の告示には「当該病棟に入院した患者が当該入院料に係る算定要件に該当しない場合は、区分番号A103に掲げる精神病棟入院基本料の精神病棟入院料の15対1入院基本料の例により算定する」とあります。つまり、届出病棟であっても、対象患者の要件(1年以上の入院、または1年以上に及ぶ可能性)を満たさない患者さんについては、この入院料ではなく精神病棟入院基本料の例で算定することになります。
みらい(新人医療事務)
病棟が対象でも、患者さん一人ひとりの状態を見て判断が要るんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。地域移行機能強化病棟そのものの位置づけについても、公式資料に定義があります。「地域移行機能強化病棟は、当該保険医療機関に1年以上入院している患者又は当該保険医療機関での入院が1年以上に及ぶ可能性がある患者に対し、退院後に地域で安定的に日常生活を送るための訓練や支援を集中的に実施し、地域生活への移行を図る病棟であること」と定義されています。単なる長期療養の場ではなく、退院支援を集中的に行う機能を持つ病棟という位置づけです。
点数・算定単位【令和8年度】
みらい(新人医療事務)
気になっていたんですけど、点数はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、地域移行機能強化病棟入院料は1日につき1,627点です。入院1日ごとに算定する入院料になります。
| 項目 | 点数(令和8年度) | 算定単位 |
|---|---|---|
| 地域移行機能強化病棟入院料 | 1,627点 | 1日につき |
| 非定型抗精神病薬加算 | 15点 | 1日につき(要件を満たす場合) |
| 重症者加算1・2 | 状態区分に応じた点数 | 1日につき(要件を満たす場合) |
みらい(新人医療事務)
非定型抗精神病薬加算というのがありますね。これはどういう時に付くんですか?
あおい(元・医療事務)
公式資料には「当該病棟に入院している統合失調症の患者に対して、計画的な医学管理の下に非定型抗精神病薬による治療を行い、かつ、療養上必要な指導を行った場合には、当該患者が使用した1日当たりの抗精神病薬が2種類以下の場合に限り、非定型抗精神病薬加算として、1日につき15点を所定点数に加算する」とあります。対象は統合失調症の患者さんで、使用している抗精神病薬が1日当たり2種類以下であることが条件です。
みらい(新人医療事務)
重症者加算というのもありますよね。
あおい(元・医療事務)
はい。厚生労働大臣が定める状態の患者さんについて、区分に応じた点数が1日につき加算されます。ただし重症者加算1については「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者についてのみ加算する」とされていて、追加の施設基準が必要です。重症者加算の具体的な点数は当サイトが収載している一次資料の範囲では確認できていないため、算定を検討する場合は最新の点数表原本での確認をおすすめします。
みらい(新人医療事務)
点数が分からないまま算定してしまうと危険ですもんね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。分からないことは分からないままにせず、確認するのが基本です。

施設基準
みらい(新人医療事務)
この入院料、届出が必要なんですよね。施設基準はどんな内容ですか?
あおい(元・医療事務)
人員配置に関する項目がかなり細かく定められています。まず、当該病棟に精神科医師である常勤の専任医師、そして常勤の専任作業療法士(または作業療法の経験を有する常勤の看護職員)が配置されていることが必要です。
みらい(新人医療事務)
専任というのは、他の病棟と兼任できないということですか?
あおい(元・医療事務)
はい。公式資料には「当該病棟における専任の精神科医師は他の病棟に配置される医師と兼任はできない。また、当該医師の外来業務及び他病棟の入院患者の診療業務への従事は週2日以内とすること」と明記されています。専任医師の他業務は週2日以内という制限も付いています。
みらい(新人医療事務)
他にはどんな人員が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
日勤時間帯以外の時間帯には、看護要員・作業療法士・精神保健福祉士が常時2人以上配置されていて、そのうち1名以上は看護職員であることが必要です。さらに、常勤の公認心理師の配置、専従の常勤精神保健福祉士1名以上の配置も求められます。
みらい(新人医療事務)
退院支援の担当者も必要なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。当該保険医療機関内に退院支援部署を設置し、専従する1人の従事者(看護師・作業療法士・精神保健福祉士・社会福祉士・公認心理師のいずれか1名)を配置する必要があります。さらに、患者1人につき1人以上の「退院支援相談員」を指定した上で、そのうち1名以上(入院患者数が40を超える場合は2名以上)は当該病棟に専任の常勤の者であることが必要です。1人の退院支援相談員が同時に担当できる患者数は20人以下という上限もあります。
施設基準で見落としやすいポイント
病床数の基準として「当該病棟の病床数は、1看護単位当たり 60 床以下であること」という上限があります。また、退院支援委員会の設置、退院支援相談員による月1回以上の面談・委員会開催など、運用面の継続的な要件も含まれます。人員配置だけでなく、運用の実施記録が伴っているかどうかも確認ポイントです。
みらい(新人医療事務)
退院実績みたいな数値要件もあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。届出時点で、届出前月の平均入院患者数などから算出される病床利用に関する指標が0.85以上であること、さらに「当該保険医療機関に1年以上入院していた患者のうち、当該病棟から自宅等に退院した患者の数の1か月当たりの平均(届出の前月までの3か月間における平均)÷当該病棟の届出病床数×100(%)」が3.3%以上であることが求められます。算定開始後も、同様の計算式で3.3%以上を継続する必要があります。
みらい(新人医療事務)
届出した後も、退院実績を維持し続けないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。1年ごとに許可病床数の見直し申請を行う必要もあり、届出を取り下げる際にも許可病床数に関する条件があります。単発の届出で終わらず、継続的な運用が前提になっている入院料です。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
届出はどうやって行うんですか?
あおい(元・医療事務)
地域移行機能強化病棟入院料に係る届出は、別添7の様式9、様式20、様式57の4を用いて行うとされています。作業療法士の代わりに作業療法の経験を有する看護職員を配置する場合は、様式20の備考欄にその旨を記載する扱いになります。
みらい(新人医療事務)
いつでも届出できるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは要注意です。公式資料には「当該届出は令和12年3月31日までに限り行うことができるものであること」と明記されています。届出には期限が設定されているため、届出を検討している場合は早めに準備を進めておく必要があります。
届出には期限があります
地域移行機能強化病棟入院料の届出は、令和8年度時点の資料では「令和12年3月31日まで」に限られています。届出済みであれば算定候補になりますが、期限や様式の詳細は必ず地方厚生(支)局への確認をおすすめします。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定する上で、他に気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
まず、この入院料を算定する日に使用する投薬に係る薬剤料は、入院料に含まれていて別に算定できません。公式資料にも「地域移行機能強化病棟入院料を算定する日に使用するものとされた投薬に係る薬剤料は、地域移行機能強化病棟入院料に含まれ、別に算定できない」とあります。
みらい(新人医療事務)
薬剤料が別立てにならないんですね。他の診療との併算定はどうですか?
あおい(元・医療事務)
退院を予定している患者さんについて、他の保険医療機関で「I008-2」精神科ショート・ケアや「I009」精神科デイ・ケアを利用する場合、通常の入院料の基本点数の控除を行わないという特例があります。ただしこれは「指定特定相談支援事業者又は居宅介護支援事業者が退院後のサービス等利用計画を作成している患者に限る」という条件付きです。
みらい(新人医療事務)
医療保護入院の患者さんについても何か特例があるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。医療保護入院の患者については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定する委員会の開催をもって、退院支援委員会の開催とみなすことができるとされています。ただし、その場合は該当する審議記録の写しを診療録等に添付する必要があります。
対象要件を満たさない場合の算定
届出病棟であっても、患者さんが対象要件(1年以上入院、または1年以上に及ぶ可能性)に該当しない場合は、地域移行機能強化病棟入院料ではなく精神病棟入院基本料の15対1入院基本料の例により算定するとされています。病棟単位ではなく患者単位での要件確認が必要です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収載している令和8年度の一次資料の範囲では、点数(1,627点)や施設基準の枠組みに関する明確な変更点は確認されていません(確認日: 2026年8月)。資料の中には「令和6年5月31日において現に地域移行機能強化病棟入院料の届出を行っている病棟については」という経過措置の記載があり、令和6年度改定時点で整備された枠組みが令和8年度も継続している構成になっています。
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定の時はどうだったんですか?
あおい(元・医療事務)
令和6年度(2024年度)改定の際に、退院実績に関する経過措置(算定開始や算定年数の読み替え規定など)が整備された記載が資料に残っています。今回の令和8年度改定においても、その経過措置を踏まえた記述が引き続き使われている状況です。ただし、令和6年度時点の告示・通知そのものとの逐条比較までは、当サイトの資料の範囲では行っていません。変更の有無を正確に把握したい場合は、厚生労働省の改定関連資料を直接ご確認ください。
改定差分の確認スタンス
点数や人員配置基準に変更がないように見えても、届出様式や経過措置の期限(例: 令和12年3月31日までの届出期限)が改定のたびに更新されることがあります。「変更なし」と思い込まず、届出前には必ず最新の公式資料を確認することをおすすめします。

自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
情報が多くて、どこから確認すればいいか迷ってしまいます。
あおい(元・医療事務)
順番に整理してみましょう。
自院で確認する順番
- 対象になりそうな患者さんがいるか(1年以上入院、または1年以上に及ぶ可能性がある患者)を確認する
- 精神科医師である専任常勤医師、専従の常勤精神保健福祉士、公認心理師など、必要な人員配置基準を満たせるか確認する
- 退院支援部署・退院支援委員会・退院支援相談員の体制を整備できるか確認する
- 届出前月の病床利用や退院率に関する実績要件を満たしているか確認する
- 様式9・様式20・様式57の4を用いて地方厚生(支)局長等へ届出を行う(届出期限に注意)
みらい(新人医療事務)
人員配置と退院実績、両方をクリアしないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。どちらか一方だけでは算定候補にはならない点が、この入院料の特徴です。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
実際に運用していく中で、見落としやすいポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。
よくある取り漏れ
対象患者の見極め: 届出病棟に入院しているというだけで、1年以上入院(または1年以上に及ぶ可能性)の要件を満たしているか確認しないまま算定してしまうケース。
退院支援相談員の担当患者数: 1人が同時に担当できる患者数は20人以下という上限を超えて割り当ててしまうケース。
退院実績のモニタリング漏れ: 届出後も継続して3.3%以上の退院実績を維持する必要があるにもかかわらず、届出時点の確認で終わってしまうケース。
薬剤料の重複算定: 地域移行機能強化病棟入院料を算定する日の投薬に係る薬剤料を、誤って別に算定してしまうケース。
みらい(新人医療事務)
届出して終わりじゃなくて、その後の運用まで見ないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい、継続的な確認が必要な入院料だと考えておくとよいと思います。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する 精神科地域移行実施加算 とあわせて、退院支援の体制づくりを検討する際の参考にしてみてください。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。