認知症治療病棟入院料とは?まず基本を教えてください
みらい(新人医療事務)
あおいさん、「認知症治療病棟入院料」ってうちの法人でも話題になったんですけど、そもそもどんな入院料なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)現在の診療報酬では、区分A314に定められている特定入院料のひとつです。精神症状及び行動異常が特に著しい重度の認知症患者を対象に、急性期に重点をおいた集中的な治療を行う病棟について、1日につき算定する入院料になります。
みらい(新人医療事務)
「行動異常が特に著しい重度の認知症患者」って、具体的にはどういう状態の方なんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には「ADLにかかわらず認知症に伴って幻覚、妄想、夜間せん妄、徘徊、弄便、異食等の症状が著しく、その看護が著しく困難な患者をいう」と定義されています。ADL(日常生活動作の自立度)ではなく、精神症状・行動異常の程度で対象が判断される点がポイントです。
みらい(新人医療事務)
ということは、認知症の患者さんなら誰でも入院すれば算定できる、というわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。対象となる病棟も限られています。認知症治療病棟入院医療を行う病棟は、重度認知症患者を入院させる施設として特に認められたものであり、他の病棟への移動は医療上特に必要がある場合に限られます。単に検査のために短期間他の病棟へ転棟することは認められていません。
点数・算定コードの確認(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
具体的に何点になるのか、コードも含めて確認したいです。
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)時点での点数表を確認すると、区分A314の中に「認知症治療病棟入院料1」と「認知症治療病棟入院料2」の2区分があり、それぞれ入院期間に応じて3段階の点数が設定されています。
| 区分 | 入院期間 | 点数(1日につき) |
|---|---|---|
| 認知症治療病棟入院料1 | 30日以内の期間 | 1,897点 |
| 認知症治療病棟入院料1 | 31日以上60日以内の期間 | 1,589点 |
| 認知症治療病棟入院料1 | 61日以上の期間 | 1,289点 |
| 認知症治療病棟入院料2 | 30日以内の期間 | 1,397点 |
| 認知症治療病棟入院料2 | 31日以上60日以内の期間 | 1,192点 |
| 認知症治療病棟入院料2 | 61日以上の期間 | 1,066点 |

みらい(新人医療事務)
入院料1のほうが点数が高いんですね。1と2はどう違うんですか?
あおい(元・医療事務)
主に人員配置の要件が違います。詳しくは施設基準のところで説明しますね。それと、注意しておきたいのは「同一保険医療機関内に認知症治療病棟入院料1を算定すべき病棟と認知症治療病棟入院料2を算定すべき病棟が混在することはできない」と施設基準通知に明記されている点です。1つの医療機関の中で病棟ごとに1と2を使い分けることはできません。
みらい(新人医療事務)
あと「注2」に加算があるって聞いたんですけど。
あおい(元・医療事務)
はい、「認知症夜間対応加算」です。当該病棟が別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして届け出た病棟である場合に、入院期間に応じて1日につき加算されます。
| 加算名 | 入院期間 | 点数(1日につき) |
|---|---|---|
| 認知症夜間対応加算 | 30日以内の期間 | 84点 |
| 認知症夜間対応加算 | 31日以上の期間 | 40点 |
みらい(新人医療事務)
これは別途届出が必要な加算なんですね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。認知症治療病棟入院料の届出とは別に、認知症夜間対応加算の施設基準の届出が必要になります。
施設基準: どんな体制が必要ですか?
みらい(新人医療事務)
算定するにはどんな体制が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準通知(基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて)に、認知症治療病棟入院料の施設基準として詳しく定められています。まず大前提として「精神科を標榜している病院である保険医療機関であること」が必要です。
みらい(新人医療事務)
精神科の標榜がまず前提条件なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。そのうえで、入院料1と入院料2でそれぞれ人員配置や病棟の要件が定められています。
認知症治療病棟入院料1の施設基準(主な内容・令和8年度)
- 人員配置: 精神科医師及び認知症治療病棟に専従する作業療法士がそれぞれ1人以上勤務していること
- 看護職員: 病棟に勤務する看護職員の最小必要数の半数以上は、精神病棟に勤務した経験を有する看護職員であること
- 看護補助者: 病棟に勤務する看護補助者の最小必要数の半数以上は、精神病棟に勤務した経験を有する看護補助者であること
- 専従職員: 保険医療機関内に、専従する精神保健福祉士又は専従する公認心理師のいずれか1人以上勤務していること
- 1看護単位: 概ね40床から60床までを上限とすること
- 病室面積: 患者1人当たりの面積は、内法による測定で18平方メートル(管理部分を除く)を標準とすること
- 生活機能回復訓練室: 広さ60平方メートル以上(内法による測定)の専用の生活機能回復訓練室を有し、患者1人当たり1日4時間・週5回の訓練及び指導を行うこと
みらい(新人医療事務)
入院料2はどう違うんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準通知では「(3)のイからエまでを満たしている」ことが前提とされたうえで、次のような違いがあります。
認知症治療病棟入院料2の施設基準(主な内容・令和8年度)
- 精神科医師及び認知症治療病棟に専従する作業療法士がそれぞれ1名以上勤務していること(ただし、認知症患者の作業療法の経験を有する看護師が1人以上勤務し、作業療法士が週1回以上評価を行う場合は、当分の間、作業療法士が1人以上勤務しているものとみなされます)
- 1看護単位は概ね60床を上限とすること
- 病室面積は、内法による測定で18平方メートル(管理部分を除く)以上とすること
- 生活機能回復訓練室の要件は入院料1と概ね同様ですが、従事者に「精神保健福祉士」も含まれる形で規定されています
みらい(新人医療事務)
入院料1のほうが看護単位の上限が狭い(40〜60床)ぶん、より手厚い体制ということなんですね。
あおい(元・医療事務)
そういう整理になります。あくまで施設基準の条文上の違いなので、自院がどちらに該当するかは、実際の人員配置と病棟の状況を照らし合わせて確認する必要があります。
認知症夜間対応加算の施設基準も確認しておきましょう
みらい(新人医療事務)
さっきの「認知症夜間対応加算」の施設基準も教えてください。
あおい(元・医療事務)
施設基準通知には次のように定められています。
認知症夜間対応加算の施設基準(令和8年度)
- 認知症治療病棟入院料1、認知症治療病棟入院料2のいずれの場合も、夜勤を行う看護要員が3名以上の場合に算定できる
- 行動制限最小化に係る委員会において、基本指針の整備、月1回程度の検討会議の開催、精神科診療に携わる職員全てを対象とした研修会の年2回程度の実施などの活動を行っていること
みらい(新人医療事務)
夜勤の看護要員が3人以上必要、というのは意外と見落としそうなポイントですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。病棟の日中の人員配置は満たしていても、夜勤帯の体制が届出時点の要件を満たしているかどうかは、別途チェックが必要です。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
具体的にはどんな書類で届出をするんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準通知によると、認知症治療病棟入院料に係る施設基準の届出は、別添7の様式9・様式20・様式56を用いることとされており、当該病棟の平面図を添付する必要があります。また、「注2」の認知症夜間対応加算の施設基準に係る届出は、別添7の様式9・様式20及び特掲診療料施設基準通知の別添2の様式48を用いることとされています。
みらい(新人医療事務)
様式がいくつも必要なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。病棟の勤務実績表で看護要員の職種が確認できる場合は、様式20の当該看護要員のみを省略できる、という取り扱いもあります。届出済みであれば算定候補になりますが、実際の届出内容が最新の勤務状況と合っているかは、定期的に確認しておくと安心です。
算定タイミング・注意点
みらい(新人医療事務)
算定するときに注意すべきポイントはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。特に見落としやすいのはこちらです。
算定上の注意点(令和8年度)
- 薬剤料は入院料に含まれます。留意事項通知には「認知症治療病棟入院料を算定する日に使用するものとされた投薬に係る薬剤料は、認知症治療病棟入院料に含まれ、別に算定できない」と明記されています
- 他病棟への転棟は限定的です。医療上特に必要な場合に限られ、検査目的だけの短期転棟は認められません。転棟した場合はその医療上の必要性をレセプトに詳細に記載する必要があります
- 診療に係る費用の多くが包括されます。医師事務作業補助体制加算(50対1・75対1・100対1に限る)、地域加算、離島加算、医療安全対策加算、感染対策向上加算、データ提出加算、認知症患者リハビリテーション料(H007-3)など、点数表に列挙された項目を除く診療に係る費用は、認知症治療病棟入院料に含まれるものとされています
- 生活機能回復訓練の記録が必要です。訓練及び指導の内容の要点と実施に要した時間は、診療録等に記載することとされています
みらい(新人医療事務)
「包括される」というのは、個別に別で請求できないということですよね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。何が包括の対象で何が対象外かは項目が多いため、点数表の該当箇所(区分A314の注3)を実際に確認しながらレセプトを作成することをおすすめします。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、この入院料は何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲で確認したところ、認知症治療病棟入院料そのものの点数・施設基準・算定要件について、前回改定(令和6年度)からの明確な変更点は確認されていません(2026年8月確認・厚労省一次情報ベース)。
確認の考え方(令和8年度)
点数が変わっていなくても、施設基準や算定要件が改定で変わっているケースは他の加算では珍しくありません。この記事の点数・施設基準は、当サイトが収録している令和8年度診療報酬点数表・関連通知の内容に基づいています。前回改定からの差分を厳密に把握したい場合は、厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定について」のページで公式の改定資料をあわせてご確認ください。
みらい(新人医療事務)
「変更なし」と決めつけるんじゃなくて、資料で確認した範囲だよ、ということなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。一次資料に記載がないことを断定的に書くことはできないので、そこは慎重に扱っています。
自院での確認手順
みらい(新人医療事務)
じゃあ、うちの病院が算定候補になるか確認するには、どういう順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
こんな順番で確認するとスムーズです。
自院で確認する順番
-
精神科を標榜する病院かどうか確認 — 認知症治療病棟入院料は「精神科を標榜している病院である保険医療機関」が前提です
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入院料1か2、どちらの体制に該当するか確認 — 精神科医師・専従作業療法士・看護職員の経験要件・1看護単位の病床数などを照らし合わせます
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病棟の面積・生活機能回復訓練室の要件を確認 — 内法18平方メートル基準や、60平方メートル以上の専用訓練室の有無を確認します
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専従の精神保健福祉士又は公認心理師の配置を確認 — いずれか1人以上の配置が必要です
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認知症夜間対応加算の該当有無を確認 — 夜勤看護要員が3名以上か、行動制限最小化委員会の活動実績があるかを確認します
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届出様式を準備 — 様式9・様式20・様式56(認知症夜間対応加算は様式48も)と病棟平面図を準備します
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地方厚生局への届出状況を確認 — 届出が受理されているか、記載内容が現状の人員配置と一致しているかを確認します

みらい(新人医療事務)
これだけ確認することがあるんですね。自院が算定候補になるかどうか、もっと手軽に確認できたらいいのに。
あおい(元・医療事務)
そんなときは、加算チェッカーが便利ですよ。自院の状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
実務でよく間違えやすいポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
こんなケースが挙げられます。
よくある取り漏れポイント
- 認知症夜間対応加算の施設基準(夜勤看護要員3名以上)は満たしているのに、届出そのものが未完了になっているケース
- 生活機能回復のための訓練及び指導の内容・実施時間の記載が診療録に残っていないケース
- 検査目的などで短期間他病棟へ転棟した際に、医療上の必要性がレセプトに詳細記載されていないケース
- 入院料1と入院料2の要件が混同され、届出内容と実際の人員配置に食い違いが生じているケース
- 認知症治療病棟入院料に含まれる(包括される)費用を、誤って別途算定してしまっているケース
関連する入院料・加算について
みらい(新人医療事務)
認知症治療病棟入院料と一緒に確認しておいたほうがいい加算ってありますか?
あおい(元・医療事務)
対象病棟は異なりますが、一般病棟等に入院している認知症患者を対象とした認知症ケア加算という加算もあります。認知症治療病棟入院料が精神科の専門病棟を対象とするのに対し、認知症ケア加算は対象となる病棟の仕組みが異なりますので、混同しないよう注意が必要です。自院にどちらの入院料・加算が該当しうるかは、病棟の種別と患者の状態から個別に確認することになります。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は以下の厚労省公式資料を根拠としています。詳細な施設基準・届出手続きは必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)医科点数表 区分A314 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第7号)第19 認知症治療病棟入院料 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732097.pdf
- 令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省・関連通知一覧) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。加算の算定に際しては、施設基準の充足と届出の有効性を必ず自院で確認してください。