みらい(新人医療事務)
精神科病院の事務さんから「うちの病棟、精神科救急・合併症入院料って取れますか?」って聞かれたんですけど、正直よくわからなくて…。これって普通の精神科病棟とは違う入院料なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、精神科救急・合併症入院料(区分番号A311-3)は、精神疾患と身体合併症を同時に抱える患者さんを、精神科救急の体制で受け入れる病棟のための特定入院料です。令和8年度(2026年度)の診療報酬でも、1日につき算定するかたちで設定されています。誰でもすぐ算定候補になるものではなく、届出と施設基準の両方が前提になるので、まずは全体像を整理していきましょう。
みらい(新人医療事務)
「合併症」ってところがポイントなんですね。普通の精神科の入院料とはどう違うんですか?
あおい(元・医療事務)
そうですね。この入院料は、精神症状に加えて呼吸器疾患や心疾患、骨折、糖尿病などの身体疾患を併せ持つ患者さんを、精神科病棟の中に設けた「合併症ユニット」で治療するための体制を評価するものです。一般の精神科病棟入院基本料よりも、医師や看護職員の配置が手厚く求められる点数区分になっています。
対象となる医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
まず、どんな医療機関が対象なんですか?
あおい(元・医療事務)
対象は病院に限られます。診療所(外来)は対象外です。当サイトが収載している一次資料の範囲では、精神病棟を有する保険医療機関のうち、施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た病棟に入院している患者について算定する、とされています。
みらい(新人医療事務)
患者さん側の条件もあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。厚生労働省の留意事項通知では、対象患者を大きく5つのパターンに整理しています。
対象患者となりうるケース(令和8年度・留意事項通知に基づく整理)
- ア: 措置入院患者、緊急措置入院患者又は応急入院患者
- イ: ア以外で、入院前3か月に他の精神病棟への入院歴がなく、入院日が入院基本料の起算日にあたる患者
- ウ: 精神科救急・合併症入院料を算定した後に身体合併症が悪化し、特定集中治療室管理料等を算定してから再度当該病棟へ入院した患者
- エ: 他の医療機関の救命救急入院料等を算定する病棟等から、精神病棟入院基本料や精神科救急急性期医療入院料等を経て転院した患者
- オ: クロザピンを新規に導入する目的で、他病棟・他医療機関から転棟・転院した患者
みらい(新人医療事務)
パターンが結構細かいんですね。この条件に当てはまらない患者さんが入院したらどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
その場合は精神科救急・合併症入院料ではなく、精神病棟入院基本料の15対1入院基本料の例により算定する、と留意事項通知に明記されています。つまり「病棟に入院した=自動的にこの入院料」ではなく、患者ごとの該当性確認が必要ということですね。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
肝心の点数はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、入院からの経過日数に応じて3段階に分かれています。
| 区分 | 点数(1日につき) |
|---|---|
| 30日以内の期間 | 3,805点 |
| 31日以上60日以内の期間 | 3,504点 |
| 61日以上90日以内の期間 | 3,304点 |
あおい(元・医療事務)
そして、この入院料は入院日から起算して90日を限度に算定します。クロザピンを新規導入した患者さん(前述のオに該当)については、投与を開始した日から起算して90日が限度という別ルールになっている点にも注意してください。

みらい(新人医療事務)
加算とかもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、注3・注4に加算が定められています。
主な加算(令和8年度)
- 非定型抗精神病薬加算: 統合失調症患者に計画的な医学管理のもと非定型抗精神病薬による治療を行い、使用する抗精神病薬が1日あたり2種類以下の場合、1日につき15点
- 看護職員夜間配置加算: 別に定める施設基準に適合し届け出た病棟で、入院した日から起算して30日を限度に、1日(別に厚生労働大臣が定める日を除く)につき70点
あおい(元・医療事務)
なお、精神科救急・合併症入院料を算定する日に使用した投薬に係る薬剤料は、この入院料に含まれ、別に算定できないとされています。ここは見落としやすいポイントです。
施設基準
みらい(新人医療事務)
ここが一番気になるところです。どんな体制が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の施設基準通知(基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて)の「第16の2 精神科救急・合併症入院料」に、主な要件がまとまっています。人員・病床の要件だけでも複数あるので、順に見ていきましょう。
施設基準の主な項目(令和8年度・一次資料に基づく抜粋)
- 医療法上許可・届出・承認を受けた病床数以上の入院患者を入院させていないこと
- 当該保険医療機関内に精神科医師が5名以上常勤していること
- 当該病棟以外に他の精神病棟がある場合、その病棟は10対1・13対1・15対1・18対1・20対1入院基本料又は特定入院料を算定する病棟であること
- 当該病棟の常勤医師数は、入院患者数が16又はその端数を増すごとに1以上であること
- 当該病棟に常勤の精神保健福祉士が2名以上配置されていること
- 日勤帯以外の時間帯は、看護師が常時2人以上配置されていること
- 病床数は1看護単位あたり60床以下であること
- 病棟内に合併症ユニットを有し、隔離室を含む個室が病床の半数以上を占めること
みらい(新人医療事務)
「合併症ユニット」というのも、何か細かい要件があるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。合併症ユニットは病棟の病床数の2割以上の治療室単位で、入院患者の常時8割以上が呼吸器系疾患・心疾患・骨折・重篤な代謝性疾患・意識障害・全身感染症など、通知で列挙された特定の身体疾患を持つ精神障害者であることが求められます。加えて、救急蘇生装置・除細動器・心電計・呼吸循環監視装置を病棟内に常時備えていること、必要な検査やCT撮影が必要に応じて速やかに実施できる体制にあることも要件です。
あおい(元・医療事務)
さらに、精神科救急医療体制整備事業において基幹的な役割を果たしていることも求められます。具体的には、常時精神科救急外来診療が可能であること、精神疾患に係る時間外・休日・深夜の入院件数が年間20件以上であること、すべての入院形態の患者受入れが可能であることの3点をいずれも満たす必要があります。
みらい(新人医療事務)
地域の受け入れ実績みたいなものもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。都道府県(または精神科救急医療圏)における直近1年間の措置入院・緊急措置入院・応急入院の新規入院患者のうち、原則としてその4分の1以上又は5件以上を当該病棟で受け入れていることも施設基準の一部です。ここまで見てきたとおり、単に病床を確保するだけでなく、地域の精神科救急医療体制の中核として機能していることが前提になる入院料です。
届出の実務
みらい(新人医療事務)
施設基準がわかったら、次はどうすればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
地方厚生局長等への届出が必要です。届出には、様式9・様式20(精神保健指定医は指定医番号を備考欄に記載)・様式53・様式55に加えて、合併症ユニットと隔離室の位置がわかる病棟の配置図を添付するとされています。注4の看護職員夜間配置加算を届け出る場合は、別途の届出様式が必要です(詳細は施設基準通知でご確認ください)。
あおい(元・医療事務)
また、届出のタイミングにも注意が必要です。基本診療料の施設基準等の届出に関する手続きの通知では、精神科急性期治療病棟入院料・精神科救急急性期医療入院料・精神科救急・合併症入院料の施設基準については、届出前4か月の実績を有していることが求められると整理されています。一般的な届出前1か月の実績とは異なるので、準備は早めに始める必要があります。
届出は断定できません
届出が受理されるかどうかは、地方厚生局による個別の審査事項です。この記事は要件の整理にとどまり、実際に届出が受理されるかは自院の体制と地方厚生局の判断によります。
改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
これは正直にお伝えしますが、当サイトが収載している令和8年度の一次資料(点数表・留意事項通知・施設基準通知)の範囲では、精神科救急・合併症入院料について前回改定(令和6年度)からの点数・施設基準の変更点を具体的に示す記述は確認されていません(2026年8月時点)。点数や施設基準の要件を変更前後で比較する記述そのものが手元の資料にないため、「変更なし」と断定することも避け、「確認できていない」という状態としてお伝えします。
あおい(元・医療事務)
この入院料は人員配置や合併症ユニットの要件が細かく、改定のたびに見直しが入りやすい項目でもあります。既に届出をしている病院も、届出をこれから検討する病院も、最新の一次資料で施設基準の各項目を確認することをおすすめします。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
情報量が多いので、実際どこから確認すればいいのか整理してほしいです。
自院で確認する順番
- 精神科医師の常勤数を確認 — 病院全体で5名以上常勤しているか、病棟の入院患者数に対して常勤医師数が基準を満たしているか
- 精神保健福祉士・看護配置を確認 — 常勤精神保健福祉士2名以上、夜間の看護師常時2人以上配置ができているか
- 合併症ユニットの体制を確認 — 病床数の2割以上の治療室で、対象疾患の患者が8割以上を占めているか、救急蘇生装置等の機器が常備されているか
- 精神科救急医療体制整備事業の役割を確認 — 常時救急外来診療・年間20件以上の時間外等入院・全入院形態の受入れができているか
- 地域の受け入れ実績を確認 — 都道府県内の措置入院等の新規患者のうち、4分の1以上又は5件以上を受け入れているか
- 対象患者の区分を確認 — 入院してくる患者がア〜オのいずれかに該当するか、該当しない場合の15対1入院基本料での算定ルールを理解しているか
- 届出書類と実績期間を確認 — 様式9・20・53・55等の準備と、届出前4か月の実績を満たしているか

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
「取れるはずなのに取れていない」みたいなケースってあるんですか?
確認しておきたいポイント
- 薬剤料を別算定してしまっていないか: 精神科救急・合併症入院料を算定する日の投薬に係る薬剤料は入院料に含まれ、別に算定できません
- 対象患者の区分(ア〜オ)を都度確認しているか: 入院時点で該当性を確認しないと、後から15対1入院基本料への振り替えが必要になる場合があります
- 90日の起算日を誤っていないか: クロザピン新規導入患者(オに該当)は投与開始日が起算日になるなど、通常の入院日起算とは異なるケースがあります
- 看護職員夜間配置加算の30日限度を把握しているか: 注4の加算は入院した日から起算して30日が限度で、入院期間全体に自動適用されるわけではありません
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や人員体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省公式資料を根拠としています。詳細な施設基準・届出手続きは必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚生労働省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保医発0305第6号・令和8年3月5日) https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/000433602.pdf
- 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第7号・令和8年3月5日) https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/kihon080305.pdf
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。加算・入院料の算定に際しては、施設基準の充足と届出の有効性を必ず自院で確認してください。