みらい(新人医療事務)
先輩、救急車に先生が同乗して患者さんを搬送してきたケースがあったんですけど、これって何か算定できるものがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
それは「救急搬送診療料」の算定候補になりそうですね。区分番号はC004で、令和8年度も1,300点として点数表に残っている項目です。医師が救急用の自動車等に同乗して診療を行った場合に算定を検討する診療料なんですよ。
みらい(新人医療事務)
同乗するだけでいいんですか?それとも何か条件があるんですか?
あおい(元・医療事務)
同乗していれば無条件、というわけではありません。厚生労働省の告示では「患者を救急用の自動車等で保険医療機関に搬送する際、診療上の必要から、当該自動車等に同乗して診療を行った場合に算定する」とされています。つまり「診療上の必要があって同乗した」という実態が前提になります。まずはこの記事で全体像を確認して、自院のケースが算定候補になりそうか一緒に見ていきましょう。
対象医療機関・対象患者・対象場面
みらい(新人医療事務)
どんな場面を想定していますか?救急車に乗るケースって、うちみたいな診療所でもあり得るんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
想定されているのは、患者を救急用の自動車等(消防・都道府県の救急隊の救急自動車や、道路交通法上の緊急自動車であって当該保険医療機関に属するもの)で保険医療機関へ搬送する際に、医師が同乗して診療を行った場合です。留意事項では「救急用の自動車とは、消防法及び消防法施行令に規定する市町村又は都道府県の救急業務を行うための救急隊の救急自動車並びに道路交通法及び道路交通法施行令に規定する緊急自動車であって当該保険医療機関に属するものをいう」と定義されています。診療所・病院を問わず、対象の自動車等に医師が同乗して診療した実態があるかどうかがポイントです。
みらい(新人医療事務)
ヘリコプターで搬送するケースもニュースで見たことがあります。あれも対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、その場合も対象になり得ます。留意事項には「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法第2条に規定する『救急医療用ヘリコプター』により搬送される患者に対して、救急医療用ヘリコプター内において診療を行った場合についても救急搬送診療料を算定することができる」と明記されています。救急車だけでなくドクターヘリのケースも算定候補になり得るということですね。
みらい(新人医療事務)
搬送先の病院の先生が立ち会うような場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
そのケースにも留意事項の定めがあります。「搬送先の保険医療機関の保険医に立会診療を求められた場合は、『A000』初診料、『A001』再診料又は『A002』外来診療料は1回に限り算定し、『C000』往診料は併せて算定できない。ただし、患者の発生した現場に赴き、診療を行った後、救急用の自動車等に同乗して診療を行った場合は、往診料を併せて算定できる」とされています。往診料との組み合わせは条件次第で変わるので、個別の状況ごとに確認が必要です。
点数・コード(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
肝心の点数を教えてください!
あおい(元・医療事務)
基本点数は1,300点です。これに患者の年齢や搬送時間、患者の重症度に応じた加算が付く構造になっています。令和8年度の告示ではこう定められています。「C004 救急搬送診療料 1,300点」。加算の内訳も見てみましょう。

| 区分 | 点数 | 条件 |
|---|---|---|
| 救急搬送診療料(基本) | 1,300点 | 診療上の必要から救急用の自動車等に同乗して診療を行った場合 |
| 新生児加算 | +1,500点 | 新生児に対して当該診療を行った場合 |
| 乳幼児加算 | +700点 | 6歳未満の乳幼児(新生児を除く)に対して当該診療を行った場合 |
| 長時間加算 | +700点 | 診療に要した時間が30分を超えた場合 |
| 重症患者搬送加算 | +1,800点 | 施設基準に適合し届出済みの保険医療機関が、重篤な患者に対して診療を行った場合 |
みらい(新人医療事務)
加算だけでも結構な種類があるんですね。全部の条件を満たせば重ねて算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは告示の条文の書き方をそのまま確認するのが確実です。告示では「注2 新生児又は6歳未満の乳幼児(新生児を除く。)に対して当該診療を行った場合には、新生児加算又は乳幼児加算として、それぞれ1,500点又は700点を所定点数に加算する」「注3 注1に規定する場合であって、当該診療に要した時間が30分を超えた場合には、長時間加算として、700点を所定点数に加算する」「注4 注1に規定する場合であって、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関が、重篤な患者に対して当該診療を行った場合には、重症患者搬送加算として、1,800点を所定点数に加算する」と、それぞれ独立した条件で加算する構成になっています。個別の患者ごとに、どの条件を満たすかを確認していく形が確実です。
施設基準(重症患者搬送加算)
みらい(新人医療事務)
重症患者搬送加算だけ「施設基準に適合」って書いてありましたけど、これは何が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
重症患者搬送加算(注4)だけは、事前の届出と体制整備が前提になります。特掲診療料の施設基準等の通知では「当該保険医療機関内に、以下から構成される重症患者搬送チームが設置されていること。ア 集中治療の経験を5年以上有する医師 イ 看護師 ウ 臨床工学技士」とされています。医師・看護師・臨床工学技士の3職種でチームを組む必要があるということですね。
みらい(新人医療事務)
看護師や臨床工学技士にも経験年数の条件があるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。「(1)のイに掲げる看護師は、集中治療を必要とする患者の看護に従事した経験を5年以上有し、集中治療を必要とする患者の看護に係る適切な研修を修了した専任の看護師であることが望ましいこと」、臨床工学技士については「『A300』救命救急入院料、『A301』特定集中治療室管理料、『A301-2』ハイケアユニット入院医療管理料、『A301-3』脳卒中ケアユニット入院医療管理料又は『A301-4』小児特定集中治療室管理料を届け出た治療室を有する保険医療機関で5年以上の経験を有することが望ましいこと」とされています。加えて「関係学会により認定された施設であること」「重症患者搬送に関わる職員を対象として、重症患者搬送に関する研修を年2回以上実施すること」も求められています。かなり体制が整った医療機関向けの加算候補と言えそうです。
みらい(新人医療事務)
これって、うちのような一般的な診療所ではまず難しそうですね……。
あおい(元・医療事務)
そうですね。重症患者搬送加算は救命救急入院料や特定集中治療室管理料クラスの体制を持つ医療機関が対象になりやすい加算候補です。一方で救急搬送診療料の基本部分(1,300点)自体は、施設基準の届出が要件として明記されていません。届出が要るのは重症患者搬送加算(注4)だけ、という切り分けをまず押さえておくとよいと思います。重症患者搬送加算そのものの届出要件や算定候補になるかどうかは、重症患者搬送加算 の記事でも別途整理していますので、あわせて確認してみてください。
届出要否
みらい(新人医療事務)
結局、この記事の救急搬送診療料は届出が必要なんですか?不要なんですか?
あおい(元・医療事務)
基本の救急搬送診療料(1,300点および新生児加算・乳幼児加算・長時間加算)は、当サイトが収録している一次資料の範囲では施設基準の届出は明記されていません。ただし重症患者搬送加算(注4・1,800点)だけは「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関が」算定する、と条文上明記されているため、届出済みであれば候補になる、という整理です。届出の要否は算定する加算の種類によって変わるので、どの加算を算定しようとしているのかをまず特定してから確認するのが確実です。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
初診料・再診料・往診料との重複に注意
留意事項では、同一日の取扱いについて次のように定められています。「診療を継続して提供した場合、『A000』初診料、『A001』再診料又は『A002』外来診療料は、救急搬送の同一日に1回に限り算定する」。また「搬送先の保険医療機関の保険医に立会診療を求められた場合は、『A000』初診料、『A001』再診料又は『A002』外来診療料は1回に限り算定し、『C000』往診料は併せて算定できない。ただし、患者の発生した現場に赴き、診療を行った後、救急用の自動車等に同乗して診療を行った場合は、往診料を併せて算定できる」とされています。ケースごとに条件が分岐するため、算定前に自院の状況を条文と照らし合わせて確認してください。
みらい(新人医療事務)
入院中の患者さんを他の病院へ搬送するケースはどうなるんでしょう?
あおい(元・医療事務)
そこは原則と例外がはっきり分かれています。留意事項では「入院患者を他の保険医療機関に搬送した場合、救急搬送診療料は算定できない」が原則で、「ただし、以下のいずれかに該当する場合においては、入院患者についても救急搬送診療料を算定することができる。ア 搬送元保険医療機関以外の保険医療機関の医師が、救急用の自動車等に同乗して診療を行った場合 イ 救急搬送中に人工心肺補助装置、補助循環装置又は人工呼吸器を装着し医師による集中治療を要する状態の患者について、日本集中治療医学会の定める指針等に基づき、患者の搬送を行う場合」という例外が定められています。入院患者の搬送は特に慎重に条件を確認したいところです。
みらい(新人医療事務)
複数の医療機関の先生が同じ搬送に関わった場合の請求はどうするんですか?
あおい(元・医療事務)
そのケースにも定めがあります。「同一の搬送において、複数の保険医療機関の医師が診療を行った場合、主に診療を行った医師の所属する保険医療機関が診療報酬請求を行い、それぞれの費用の分配は相互の合議に委ねることとする」とされています。請求は主に診療を行った医師の所属先が行い、費用分配は医療機関同士の合議、という整理ですね。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、この救急搬送診療料って何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトで確認できた厚生労働省の一次資料の範囲では、救急搬送診療料(区分C004)本体の点数(1,300点)や、新生児加算・乳幼児加算・長時間加算・重症患者搬送加算の各点数・要件について、前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません(2026年8月確認・厚生労働省一次資料ベース)。なお、同じ区分番号帯にある「救急患者連携搬送料」(C004-2)は今回の改定で評価の見直しが行われていますが、これは救急搬送診療料(C004)とは別の項目です。搬送に関する加算を検討する際は、C004とC004-2のどちらの項目を見ているか、区分番号で必ず確認してください。
改定差分の確認範囲
今回確認したのは、点数・算定要件・施設基準・留意事項の4点です。これらの範囲では厚生労働省の一次資料上の変更は見当たりませんでした。届出様式や運用の細部まで変更が無いとは限らないため、実際に算定・届出を検討する際は、最新の告示・通知の該当箇所を必ず直接ご確認ください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
情報量が多くて、結局どの順番で確認すればいいのか迷ってしまいます……。
あおい(元・医療事務)
それでは、自院で確認する順番を整理してみましょう。

自院で確認する順番
- 医師が救急用の自動車等(消防・都道府県の救急隊の救急自動車、道路交通法上の緊急自動車、または救急医療用ヘリコプター)に同乗して診療を行ったかを確認する
- 単なる同乗ではなく「診療上の必要」があったといえる実態かを確認する
- 患者が新生児・乳幼児(6歳未満)にあたるか、診療時間が30分を超えたか、重篤な患者にあたるかなど、加算の対象になりそうな条件を確認する
- 重症患者搬送加算を検討する場合は、重症患者搬送チーム(集中治療経験5年以上の医師・看護師・臨床工学技士)の体制が整い、施設基準の届出が済んでいるかを確認する
- 同一日の初診料・再診料・外来診療料・往診料との重複がないかを確認する
- 判断に迷う点が残る場合は、加算チェッカーや厚生局への確認も含めて最終確認する
よくある取り漏れ
同乗の実態記録が薄い
「診療上の必要から同乗した」という要件が条文上明記されているため、単に救急車に乗っていただけでは算定候補として説明しづらい場合があります。同乗の経緯や診療内容をカルテに残しておくことが、後から算定根拠を説明する際の助けになります。
重症患者搬送加算の届出漏れ
重症患者搬送加算(1,800点)は、体制が整っていても地方厚生局長等への届出が済んでいなければ算定候補になりません。チーム体制の整備と届出の両方がそろっているかを、担当部署に確認しておくとよいでしょう。
往診料・初再診料との重複算定
搬送先での立会診療や、現場に赴いた後の同乗診療など、往診料との関係は条件によって算定可否が分かれます。同一日に複数の診療行為が発生したケースでは、留意事項の該当箇所を毎回確認する習慣をつけておくと取り漏れ・重複算定の両方を防ぎやすくなります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。