みらい(新人医療事務)
部長、「在宅麻薬等注射指導管理料」という名前を初めて見たんですが、これはどういう加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
在宅で療養している患者さんに、麻薬などの注射薬を使った痛みや症状のコントロールについて、医師が指導管理を行った場合に算定する在宅指導管理料の一つですよ。区分番号はC108です。
みらい(新人医療事務)
「麻薬」というと、がんの終末期をイメージしますが、それだけなんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、実は3つのパターンがあります。悪性腫瘍の場合だけでなく、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーの場合、そして緩和ケアを要する心不全・呼吸器疾患・腎不全の場合も対象になります。この記事では、令和8年度(2026年度)の告示・留意事項通知をもとに、対象患者・点数・算定タイミングの確認ポイントを整理していきますね。
どんな患者さんが対象になるの?(3つのパターン)
みらい(新人医療事務)
まず対象になる患者さんの条件を教えてください。
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)では、区分ごとに次のように定められています。
| 区分 | 対象患者 |
|---|---|
| 1 悪性腫瘍の場合 | 悪性腫瘍の患者であって、入院中の患者以外の末期の患者 |
| 2 筋萎縮性側索硬化症又は筋ジストロフィーの場合 | ALS又は筋ジストロフィーの患者であって、入院中の患者以外の患者 |
| 3 心不全、呼吸器疾患又は腎不全の場合 | 1又は2に該当しない場合であって、緩和ケアを要する心不全、呼吸器疾患又は腎不全の患者であって、入院中の患者以外の末期の患者 |
みらい(新人医療事務)
区分2だけ「末期」という言葉が入っていないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。区分2(ALS・筋ジストロフィー)は「末期」の限定がなく、区分1(悪性腫瘍)と区分3(心不全等)は「末期の患者」という条件が付いています。留意事項通知でも、区分1・2の在宅注射について「末期の悪性腫瘍又は筋萎縮性側索硬化症若しくは筋ジストロフィーの患者であって、持続性の疼痛があり鎮痛剤の経口投与では疼痛が改善しない場合に、在宅において実施する注射による麻薬等の投与をいう」と説明されていて、患者が末期かどうかは在宅療養を担当する保険医の判断によるとされています。
みらい(新人医療事務)
区分3の「緩和ケアを要する心不全、呼吸器疾患又は腎不全」というのは、もう少し具体的な基準があるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項通知に細かい基準が書かれています。心不全の場合は、適切な治療が実施されていることに加えて、慢性的にNYHA重症度分類Ⅳ度の症状に該当し頻回又は持続的に点滴薬物療法を必要とする状態であること、そのうえで左室駆出率が20%以下であること、または医学的に終末期であると判断される状態であることのいずれかに該当する必要があります。呼吸器疾患の場合は、適切な治療の実施に加えて、在宅酸素療法やNPPV(非侵襲的陽圧換気)を継続的に実施していること、さらに過去半年以内に10%以上の体重減少を認めることのすべてを満たす必要があります。腎不全の場合は、適切な治療が実施されていることに加えて、日本腎臓学会慢性腎臓病重症度分類でStage G5以上に該当し腎代替療法を必要とする状態であることが前提になります。そのうえで、血液透析療法又は腹膜透析療法を実施していてPalliative Performance Scale(PPS)が40%以下であること、あるいは腎代替療法を必要とする状態であるものの透析療法の開始又は継続が困難であること、のいずれかに該当する必要があります。かなり詳細な基準なので、該当するかどうかは主治医の医学的判断が中心になりますね。
点数はいくら?(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はどの区分でも同じなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の告示では、3区分とも同じ点数です。表にまとめますね。
| 区分 | 点数(令和8年度) |
|---|---|
| 1 悪性腫瘍の場合 | 1,500点 |
| 2 筋萎縮性側索硬化症又は筋ジストロフィーの場合 | 1,500点 |
| 3 心不全、呼吸器疾患又は腎不全の場合 | 1,500点 |

みらい(新人医療事務)
どの区分に該当しても同じ1,500点になるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし区分ごとに対象患者の条件がまったく異なりますから、点数が同じでも「どの区分で算定するか」の判断はきちんと分けて考える必要があります。
施設基準・届出は必要?
みらい(新人医療事務)
この加算、施設基準の届出は必要なんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集している告示・留意事項通知の範囲では、在宅麻薬等注射指導管理料そのものに施設基準の届出は求められていません。届出が不要な在宅指導管理料の一つとして整理されています。
みらい(新人医療事務)
届出がいらないなら気軽に算定していいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
そこは注意が必要です。届出の要否と、実際にこの患者さんに算定してよいかどうかは別の話です。対象患者の該当性(末期かどうか、心不全等の基準を満たすかどうか)は医師の医学的判断が前提ですし、最終的な届出状況の確認は自院の状況によって変わることもありますから、必ず自院の記録と地方厚生局への確認を行ってくださいね。
届出不要でも医学的判断は必須
施設基準の届出は不要と整理されていますが、対象患者に該当するかどうかは医師の医学的判断が前提です。届出の要否は自院の状況によって変わる場合もあるため、疑問があれば地方厚生局にご確認ください。
算定のタイミングと回数の注意
みらい(新人医療事務)
算定できるタイミングや回数に制限はありますか?
あおい(元・医療事務)
まず大前提として、対象は「入院中の患者以外」です。入院中の患者には算定できません。回数については、月何回までという明示的な上限は告示に書かれていませんが、実施した指導管理の実態に基づいて算定することが基本です。
みらい(新人医療事務)
悪性腫瘍の患者さんで、抗悪性腫瘍剤の注射も一緒に行う場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは重要な切り替えルールがあります。留意事項通知では「在宅において同一月に抗悪性腫瘍剤の注射を行うものについては、在宅麻薬等注射指導管理料は算定せず、『C108-2』在宅腫瘍化学療法注射指導管理料を算定する」と明記されています。同一月に抗悪性腫瘍剤の注射があるかどうかで、算定する項目そのものが変わるということですね。
同一月に抗悪性腫瘍剤の注射がある場合
同一月に在宅で抗悪性腫瘍剤の注射を行う場合は、在宅麻薬等注射指導管理料ではなく在宅腫瘍化学療法注射指導管理料(区分番号C108-2)を算定します。取り違えないよう、月内の注射内容を確認してから請求しましょう。
併算定できないもの・切り替えのルール
みらい(新人医療事務)
ほかに気をつけたい併算定のルールはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、在宅麻薬等注射指導管理料を算定する月は、留意事項通知で「『G003』抗悪性腫瘍剤局所持続注入の費用は算定できない。ただし、抗悪性腫瘍剤局所持続注入に用いる薬剤に係る費用は算定できる」とされています。手技料は算定できませんが、薬剤費用は別扱いという点がポイントです。
みらい(新人医療事務)
外来化学療法加算との関係はどうですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に「在宅麻薬等注射指導管理料を算定する月は『B001-2-12』外来腫瘍化学療法診療料等及び第6部『通則6』に規定する外来化学療法加算は算定できない」と明記されています。同じ月に外来での化学療法関連の点数と重複算定することはできません。
みらい(新人医療事務)
注射の手技料はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
これも通知に具体的な記載があります。「在宅麻薬等注射指導管理料に係る『G000』皮内、皮下及び筋肉内注射、『G001』静脈内注射、『G004』点滴注射、『G005』中心静脈注射及び『G006』植込型カテーテルによる中心静脈注射を行った場合の手技料、注射薬(在宅で使用していない抗悪性腫瘍剤も含む。)及び特定保険医療材料の費用は算定できない。ただし、当該在宅麻薬等注射指導管理料に係らない場合の手技料、注射薬及び特定保険医療材料の費用は算定できる」とされています。つまり、この指導管理に関係する注射の手技料等はまとめて指導管理料に含まれる一方、関係しない注射であれば別途算定できる、という切り分けです。
よくある取り漏れ①
同じ月に外来腫瘍化学療法診療料や外来化学療法加算を別の受診時に算定してしまい、あとから重複が発覚するケースがあります。月単位での算定状況を確認する仕組みを作っておくと安心です。
よくある取り漏れ②
在宅患者訪問診療料(C001・C001-2)を算定する日に行った皮内・皮下・筋肉内注射や点滴注射などの手技料も、この指導管理料に関係する範囲では別途算定できません。訪問診療と同日の注射実施日を突き合わせて確認しましょう。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の令和6年度改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集している一次資料の範囲では、令和6年度から令和8年度にかけての在宅麻薬等注射指導管理料の点数・対象患者・算定要件についての変更は確認されていません(確認日: 2026年7月)。
みらい(新人医療事務)
変わっていないと言い切れる根拠はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の留意事項通知に「実施に当たっては、関係学会の定める診療に関する指針を遵守すること」という記載がありますが、これと同じ趣旨の要件は令和6年度(2024年度)に公表された疑義解釈でも取り上げられていて、当時から継続している運用であることがうかがえます。ただし、当サイトが保有する一次資料には令和6年度時点の告示・留意事項通知の本文そのものは含まれていないため、点数や対象患者の細部まで完全に一致するかは確認できていません。変更があった場合は、その都度この記事を更新します。
前回改定(令和6年度)からの参考情報
令和6年度(2024年度)に公表された疑義解釈資料では、「関係学会の定める診療に関する指針」として、急性・慢性心不全診療ガイドラインや非がん性呼吸器疾患緩和ケア指針などが具体的に示されました。令和8年度の留意事項通知でも同じ趣旨の記載が続いています。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にこの加算の対象になりそうな患者さんがいたら、どんな順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
大きく4つのステップで確認するとわかりやすいですよ。

自院で確認する順番
- 患者さんが悪性腫瘍・ALS/筋ジストロフィー・心不全等のどのパターンに当てはまるかを確認する
- 入院中の患者ではないことを確認する
- 悪性腫瘍または心不全等の区分では、末期の状態にあたるかを在宅医の医学的判断で確認する
- 在宅における麻薬等の注射による指導管理を実際に行い、同一月の抗悪性腫瘍剤注射の有無や併算定の可否を確認したうえで算定候補として記録する
みらい(新人医療事務)
この順番で確認していけば、算定候補かどうかの整理がしやすそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし、あくまで確認の順番の目安です。最終的な該当性の判断は医師の診療内容と自院の記録に基づいて行ってください。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後によくある疑問をまとめて聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。順番に見ていきましょう。
みらい(新人医療事務)
悪性腫瘍以外の在宅での麻薬注射にも、この加算は使えますか?
あおい(元・医療事務)
悪性腫瘍以外でも、ALS・筋ジストロフィーの患者さん、または緩和ケアを要する心不全・呼吸器疾患・腎不全の末期の患者さんであれば、区分2または区分3の対象になる可能性があります。ただし区分3は詳細な医学的基準を満たす必要があるため、算定候補になるかどうかは主治医の判断と記録の確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
同じ月に抗悪性腫瘍剤の注射も行った場合、両方算定できますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ。留意事項通知の定めにより、同一月に抗悪性腫瘍剤の注射を行った場合は在宅麻薬等注射指導管理料ではなく在宅腫瘍化学療法注射指導管理料を算定することになっています。両方を同じ月に併算定することはできません。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出をしていないと算定できませんか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集している一次資料の範囲では、在宅麻薬等注射指導管理料に施設基準の届出は求められていません。ただし、対象患者への該当性の判断や記録は必要ですので、届出不要だからといって確認を省略してよいわけではありません。
みらい(新人医療事務)
令和6年度改定と比べて、この加算の内容は変わりましたか?
あおい(元・医療事務)
令和6年度(2024年度)改定からの主な変更は、当サイトが確認している範囲では見当たりません。関係学会の診療指針を遵守するという要件は令和6年度の疑義解釈でも取り上げられており、令和8年度(2026年度)の留意事項通知にも同じ趣旨の記載が続いています。
関連する在宅指導管理料も確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
似たような在宅の指導管理料も他にありますよね?
あおい(元・医療事務)
はい。在宅で自己注射を行う場合の在宅自己注射指導管理料や、同じ在宅指導管理料のカテゴリにある在宅寝たきり患者処置指導管理料なども、対象患者や算定要件がそれぞれ異なります。似た名前の加算が多い分野なので、患者さんの状態に合わせてどの区分に当てはまるかを一つずつ確認していくのがおすすめです。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。対象患者の状態や届出状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
関連する加算として、同じ在宅療養指導管理料の在宅腫瘍化学療法注射指導管理料や在宅強心剤持続投与指導管理料も、対象患者や併算定の考え方を比較する際の参考になります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。