みらい(新人医療事務)
部長、心不全の患者さんに在宅で強心剤を持続的に投与しているケースが増えてきたんですが、「在宅強心剤持続投与指導管理料」ってうちのクリニックでも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
いいところに気づきましたね。在宅強心剤持続投与指導管理料は、令和8年度(2026年度)の医科点数表でC108-3として定められている在宅療養指導管理料の一つです。輸液ポンプを使って強心剤を持続投与している入院外の患者さんに、在宅心不全管理に関する指導管理を行った場合の算定候補になる項目ですよ。
みらい(新人医療事務)
「持続投与」って、具体的にはどんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこが一番大事なところです。厚生労働省の告示と留意事項通知の内容を、順番に整理していきましょう。
在宅強心剤持続投与指導管理料とは

あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示(令和8年度診療報酬改定の医科点数表)では、次のように定められています。
告示(令和8年度)の該当条文
C108-3 在宅強心剤持続投与指導管理料: 1,500点。注: 別に厚生労働大臣が定める注射薬の持続投与を行っている入院中の患者以外の患者に対して、在宅心不全管理に関する指導管理を行った場合に算定する。
みらい(新人医療事務)
1,500点なんですね。届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、この管理料に個別の施設基準・届出は設けられていません。ただし算定する医師には要件があります。それは後ほど詳しく見ていきますね。まずは概要をテーブルで整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加算名 | 在宅強心剤持続投与指導管理料(C108-3) |
| 点数 | 1,500点 |
| 算定単位 | 月1回が原則(在宅療養指導管理料の通則による) |
| 対象医療機関 | 診療所・病院(外来・在宅) |
| 届出 | 資料の範囲では届出の規定は確認されていません |
| 年度 | 令和8年度(2026年度) |
対象患者・算定要件
みらい(新人医療事務)
心不全の患者さんなら誰でも対象になるわけではないんですよね?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。留意事項通知(保医発)では、対象患者を次のように限定しています。
留意事項通知(令和8年度)に定める対象患者
在宅強心剤持続投与指導管理料は、循環血液量の補正のみでは心原性ショック(Killip分類class Ⅳ)からの離脱が困難な心不全の患者であって、安定した病状にある患者に対して、輸液ポンプを用いて強心剤の持続投与を行い、当該治療に関する指導管理を行った場合に算定する。なお、実施に当たっては、関係学会の定める診療に関する指針を遵守すること。
みらい(新人医療事務)
「関係学会の定める診療に関する指針」って、具体的にはどの指針を指すんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは前回改定(令和6年度・2024年3月28日公表)の疑義解釈で示されています。現時点では、日本心不全学会及び日本在宅医療連合学会の「重症心不全患者への在宅静注強心薬投与指針」を指すとされていますよ。
みらい(新人医療事務)
なるほど。心不全の原因になった病気によって対象が変わることはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
同じ疑義解釈で、原因疾患を問わず、循環血液量の補正のみではKillip分類classⅣ相当の心原性ショックからの離脱が困難な心不全の患者であれば、要件を満たせば算定候補になるとされています。「安定した病状」であることも要件の一部なので、この点は主治医の判断・カルテ記載の確認が欠かせません。
輸液ポンプの構造要件
みらい(新人医療事務)
「輸液ポンプを用いて」とありますが、どんなポンプでもいいわけじゃないんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい、留意事項通知で構造要件が定められています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 薬液の取り出し | 薬液が取り出せない構造であること |
| 注入速度の変更 | 患者等が注入速度を変えることができないものであること |
あおい(元・医療事務)
この2点をどちらも満たす輸液ポンプでないと、算定の対象にならない可能性があります。使用しているポンプの仕様を、購入・リース時の資料で確認しておくと安心です。
医師の要件
みらい(新人医療事務)
この管理料、担当する医師にも条件があるんですよね?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。留意事項通知でこう定められています。
医師要件(断定はできません)
在宅強心剤持続投与指導管理料を算定する医師は、心不全の治療に関し、専門の知識並びに5年以上の経験を有する常勤の医師である必要がある、と留意事項通知に定められています。常勤要件・経験年数の該当性は、資料の記載だけで機械的に判定できるものではないため、自院での確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
「5年以上の経験」って、心不全診療全般の経験でいいんでしょうか。それとも専門医の資格が必要とか…?
あおい(元・医療事務)
通知の文言は「専門の知識並びに5年以上の経験を有する常勤の医師」という表現にとどまっていて、当サイトが確認した一次資料の範囲では、特定の専門医資格の保有までは明記されていません。判断に迷う場合は、届出窓口や地方厚生局への確認が必要な項目です。
併算定の取り扱い
みらい(新人医療事務)
この管理料を算定している患者さんが、外来で注射を受けたときの扱いはどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
ここは請求ミスが起きやすいポイントです。留意事項通知では、同日の注射手技料等の扱いを次のように区別しています。
同日の注射との関係(留意事項通知)
在宅強心剤持続投与指導管理料を算定する日に行った「G001」静脈内注射、「G004」点滴注射、「G005」中心静脈注射及び「G006」植込型カテーテルによる中心静脈注射の手技料、注射薬及び特定保険医療材料の費用は算定できない。ただし、在宅強心剤持続投与指導管理料に係らない同注射を行った場合の費用は算定できる。
みらい(新人医療事務)
「係らない」注射というのは、強心剤の持続投与とは別件の注射という意味ですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。たとえば強心剤の持続投与とは無関係な感染症治療の点滴を同日に行った場合などは、その点滴の手技料等は別途算定できる整理です。ただ、強心剤持続投与そのものに関連する注射行為は、管理料に含まれる扱いになるので、レセプト作成時に「どちらの注射か」を明確に区別できる記録が必要です。
みらい(新人医療事務)
あと、在宅患者訪問診療料との関係も気になります。
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、この管理料を算定している患者について、当該保険医療機関で「C001」在宅患者訪問診療料(Ⅰ)又は「C001-2」在宅患者訪問診療料(Ⅱ)を算定する日に行った同注射(G001・G004・G005・G006)の手技料等も同様に算定できない、と定められています。在宅患者訪問診療料(Ⅰ)を算定している患者さんについては、あわせて確認しておきたいところです。
算定タイミング・回数制限
みらい(新人医療事務)
月に何回まで算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
在宅療養指導管理料の通則(第1款)で、次のように定められています。
在宅療養指導管理料の通則(令和8年度)
本款各区分に掲げる在宅療養指導管理料は、特に規定する場合を除き、月1回に限り算定し、同一の患者に対して1月以内に指導管理を2回以上行った場合においては、第1回の指導管理を行ったときに算定する。
あおい(元・医療事務)
在宅強心剤持続投与指導管理料について、この通則を上書きする個別の回数規定は資料の範囲では確認されていないので、月1回が原則と整理できます。同一月内に複数回の指導管理を行っても、算定は最初の1回分にとどまる点に注意してください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この管理料、前の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した一次資料の範囲でお答えしますね。令和6年度(2024年度)改定の直後に公表された疑義解釈(2024年3月28日付)で、対象患者の考え方や「関係学会の定める診療に関する指針」の内容が示されています。令和8年度(2026年度)の告示・留意事項通知でも、点数(1,500点)と算定要件・対象患者・医師要件の文言は同一の内容で確認できました。
改定差分は事実ベースで確認範囲を明示します
前回改定(令和6年度)から令和8年度改定にかけて、点数・施設基準・算定要件に変更があったことを示す一次資料は、当サイトが確認した範囲では見当たりませんでした。負担が増えた・軽減されたといった評価は、その趣旨を示す公式資料が無いため記載していません。
みらい(新人医療事務)
変更がないなら、これまでどおりの理解で大丈夫そうですね。
あおい(元・医療事務)
はい、ただし疑義解釈や告示は今後も更新される可能性があります。算定前には必ず最新の一次資料を確認する習慣をつけておきましょう。
自院で確認する順番

みらい(新人医療事務)
実際にうちの患者さんで算定候補になるか、どう確認していけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
順番に見ていくと整理しやすいですよ。
自院で確認する順番
- 対象患者に該当するか(循環血液量の補正のみでは心原性ショック〈Killip分類class Ⅳ〉からの離脱が困難な心不全で、病状が安定しているか)をカルテで確認する
- 使用している輸液ポンプが、薬液を取り出せない構造・患者が注入速度を変更できない構造であるかを確認する
- 治療にあたって関係学会の指針(重症心不全患者への在宅静注強心薬投与指針など)を遵守しているかを確認する
- 算定する医師が、心不全治療の専門知識と5年以上の経験を有する常勤医であるかを確認する
- 同日に静脈内注射・点滴注射・中心静脈注射等を別途算定していないか、レセプトの重複を確認する
あおい(元・医療事務)
この順番で確認して、すべて満たしていそうであれば算定候補として院内で検討できます。最終的な判断は、資料と自院の記録をあわせて行ってください。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場で見落としがちなポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかありますよ。
見落としやすいポイント
輸液ポンプの構造確認漏れ: リース更新などでポンプの機種が変わった際に、構造要件を再確認していないケースがあります。同日注射の重複算定: 強心剤持続投与に関連する注射の手技料等を、誤って別途算定してしまうケースがあります。医師要件の記録不足: 「5年以上の経験」を示す経歴・実績がカルテや届出資料に残っていないケースがあります。
みらい(新人医療事務)
どれも、後から指摘されると対応が大変そうですね…。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。算定のたびに要件を再確認する運用にしておくと、こうした取り漏れ・過誤請求のリスクを減らせます。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか確認したいことがあります。届出をしていない場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
この管理料自体には、当サイトが確認した資料の範囲で個別の届出規定は見当たりません。ただし医師要件などの充足は必要なので、届出の有無にかかわらず、要件を満たしているかどうかの確認が欠かせません。
みらい(新人医療事務)
入院中の患者さんは対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
告示の注に「入院中の患者以外の患者」と明記されているので、入院中の患者さんは対象外の可能性が高いです。在宅・外来の患者さんが対象になる整理です。
みらい(新人医療事務)
心不全の原因になった病気は問われないんでしたっけ?
あおい(元・医療事務)
はい、疑義解釈で、原因疾患を問わず、要件を満たせば算定候補になり得ると示されています。ただし「循環血液量の補正のみでは心原性ショックからの離脱が困難」という状態像や「病状が安定している」という条件は、個別に確認が必要です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。対象患者の状態や輸液ポンプの仕様、医師の経験年数などを入力すると、確認すべきポイントが整理できます。あわせて在宅寝たきり患者処置指導管理料など、在宅療養指導管理料の他の項目もチェックしておくと、取り漏れの防止につながります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。