地域包括診療加算とは何のための加算か

みらい(新人医療事務)
「地域包括診療加算」って名前をよく聞くんですが、どんな加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
一言でいうと、複数の慢性疾患や認知症を抱えた患者さんを、診療所が主治医として継続的に診る体制を評価する加算です。再診のたびに算定候補になります。
みらい(新人医療事務)
継続的に診る、というのがポイントなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。患者さんの受診している医療機関を全部把握して、飲んでいる薬を一括管理して、介護保険の相談にも応じる。その「かかりつけ機能」を果たしている診療所を評価するのが趣旨です。令和8年度(2026年度)の点数表では、A001再診料の「注12」に規定されています。
みらい(新人医療事務)
病院でも算定できますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、診療所のみ対象です。病院は対象外です。また、地域包括診療料(月1回の管理料)の届出を行っている医療機関は、この加算を届け出ることができません。どちらか一方の選択になります。
対象患者と点数の区分
みらい(新人医療事務)
具体的にどんな患者さんが対象なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度時点で、大きく2つのグループに分かれます。まず「認知症を有する患者等」、もうひとつが「その他の慢性疾患等を有する患者」です。
みらい(新人医療事務)
慢性疾患というのは、どんな疾患ですか?
あおい(元・医療事務)
DBの要件から確認すると、脂質異常症・高血圧症・糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病・認知症の6疾病のうち2以上を有する患者が対象です。1種類だけでは対象外になります。
みらい(新人医療事務)
2種類以上持っていないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。では点数を整理しましょう。
| 区分 | 対象 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| 地域包括診療加算1 | 認知症を有する患者等 | 38点 |
| 地域包括診療加算1 | その他の慢性疾患等を有する患者 | 28点 |
| 地域包括診療加算2 | 認知症を有する患者等 | 31点 |
| 地域包括診療加算2 | その他の慢性疾患等を有する患者 | 21点 |
出典: 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)A001再診料 注12
みらい(新人医療事務)
加算1と加算2で点数が違うんですね。何が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準の要件が違います。加算1は往診・訪問診療の提供実績など、より手厚い体制が求められます。加算2はそれより少し要件が緩くなっています。詳しくは後述の施設基準のセクションで確認してください。
加算のタイミングは「再診時」のみ
地域包括診療加算は、再診(外来再診)のたびに算定候補になります。ただし、以下の場合は算定できません。
- 初診時
- 往診時
- 訪問診療時(訪問診療料の算定時)
施設基準と届出
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するには届出が必要なんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい、地方厚生局長等への届出が必要です。届出なしには算定候補になりません。まず自院の届出状況を確認するところから始まります。
みらい(新人医療事務)
加算1と加算2で、届出の要件はどう違いますか?
あおい(元・医療事務)
施設基準告示(令和8年厚生労働省告示第70号)第七に規定されています。共通する要件と、加算1だけに求められる要件があります。
自院で確認する順番
施設基準の共通要件(加算1・加算2 共通)
- 当該診療所において、慢性疾患を有する患者等に対して療養上必要な指導等を行うにつき必要な体制が整備されていること
- 当該診療所において、適切な意思決定支援に関する指針を定めていること(人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン等を踏まえた指針)
- 地域包括診療料の届出を行っていないこと
- 健康保険法に基づく3年以内期限付き指定診療所以外の保険医療機関であること
加算1のみの追加要件
- 往診または訪問診療を行っている患者のうち、継続的に外来診療を行っていた患者が一定数いること(往診・訪問診療の提供実績が求められます)
加算2は加算1の「1〜4」を満たすものであれば届出可能
出典: 基本診療料の施設基準等の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第70号)第七
みらい(新人医療事務)
意思決定支援の指針って、どんなものを作ればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえた、自院独自の指針書です。外部の様式を参考に作成している診療所が多いです。指針がないと届出要件を満たさないため、まず確認が必要な項目です。
算定時に診療所がすること
みらい(新人医療事務)
届出さえあれば、再診のたびに自動で算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
そうではないんです。算定時には、担当医が対象患者に対して実際に一定の医療管理を行っていることが前提になります。
みらい(新人医療事務)
どんなことをする必要があるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知(A001再診料の注12関連)に規定された対応を行います。カグヤで確認できた主な対応内容は次のとおりです。
算定時の主な対応(令和8年度)
- 緊急時の対応体制や連絡先を、院内掲示・文書交付・診察券への記載等で患者に周知すること
- 標榜時間外の電話等による問い合わせに対応可能な体制を持ち、連絡先を患者に情報提供すること
- 患者または患者の家族等から連絡を受けた場合には、受診の指示等、速やかに対応すること
- 健康診断や検診の受診勧奨を行い、その結果を把握すること
- オンライン資格確認・電子処方箋システム等を活用し、受診医療機関と処方医薬品を全て把握して診療録に記載すること
- 担当医は、慢性疾患の指導に係る適切な研修を修了していること
担当医の研修要件に注意
当該患者を担当する医師は「慢性疾患の指導に係る適切な研修を修了した医師」であることが要件です。未修了の場合、算定要件を満たさない可能性があります。自院の担当医の研修状況を確認することをお勧めします。
みらい(新人医療事務)
担当医が決まっている必要もあるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。患者さんごとに担当医を定め、その担当医が継続的な医学管理を行う体制が前提です。複数の医師がいる診療所では、患者ごとの担当割り振りを明確にしておく必要があります。
加算1と加算2の主な違い
みらい(新人医療事務)
結局、加算1と加算2のどちらに届け出ればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
自院の体制によって異なります。加算1の要件(往診・訪問診療の実績)を満たすかどうかを確認して選ぶことになります。
| 項目 | 加算1 | 加算2 |
|---|---|---|
| 往診・訪問診療実績 | 必要(一定数の実績) | 不要 |
| 意思決定支援指針 | 必要 | 必要 |
| 地域包括診療料との併用 | 不可 | 不可 |
| 認知症患者等の点数 | 38点 | 31点 |
| 慢性疾患患者の点数 | 28点 | 21点 |
みらい(新人医療事務)
往診の実績がない診療所は加算2しか選べないということですか?
あおい(元・医療事務)
厳密には、往診または訪問診療の実績が一定数あるかどうかで判断が変わります。現状の実績を確認した上で届出区分を選ぶことが重要です。加算2でも十分な評価があります。
外来データ提出加算(令和8年度 注13)

みらい(新人医療事務)
先ほど「外来データ提出加算」という言葉が出てきましたが、何ですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)から、地域包括診療加算の算定医療機関が外来診療データを厚生労働省に継続して提出した場合に算定できる加算です。A001再診料の注13に規定されています。
みらい(新人医療事務)
点数はどれくらいですか?
あおい(元・医療事務)
月1回 10点の加算です。ただし、算定するには別途施設基準の届出が必要で、データ提出の実績要件もあります。疑義解釈(令和8年3月23日事務連絡)では、令和8年11月20日までに様式7の10の届出を行い、令和9年4月1日までに様式7の11の届出を行った医療機関から算定可能と示されています。
外来データ提出加算は別途届出が必要
外来データ提出加算(月1回10点)は、地域包括診療加算を届け出ている医療機関がさらに別の届出手続きを行う必要があります。自動的に算定候補になるわけではありません。届出のスケジュールや手順は、疑義解釈(令和8年3月23日)および厚生労働省から発出される事務連絡をご確認ください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
令和6年度(2024年度)から令和8年度(2026年度)にかけて、何か変わりましたか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度改定で確認できる主な変更は、外来データ提出加算(注13: 月1回10点)の新設です。地域包括診療加算を算定している医療機関が外来診療データを継続提出する場合に、さらに加算できる仕組みが追加されました。
令和6年度→令和8年度 主な変化
- 新設: 外来データ提出加算(注13):月1回10点。地域包括診療加算算定医療機関が外来データを継続提出する場合に算定候補。別途届出要。(出典: 告示第69号 A001注13・疑義解釈令和8年3月23日)
- 点数・施設基準・対象疾患: 現行(令和8年度)の点数(加算1: 38点/28点、加算2: 31点/21点)および対象疾患・施設基準については、令和8年度告示・施設基準通知で確認しており、前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません(2026年6月・厚労省一次情報ベース)。
みらい(新人医療事務)
外来データ提出加算は、すぐに届け出れば令和8年6月から算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
疑義解釈によると、まず試行データの提出実績が求められるため、即時には算定できません。届出スケジュール(令和8年11月20日までに様式7の10)を確認し、計画的に準備することが必要です。
自院チェックリスト
みらい(新人医療事務)
実際に算定できるかどうかを確認するには、何から始めればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の手順で確認するのが確実です。
自院で確認する順番
算定候補かどうかを確認する順番
- 診療所かどうかを確認する(病院は対象外)
- 地域包括診療加算1または2の施設基準届出が済んでいるかを確認する(地方厚生局長等への届出が必要)
- 地域包括診療料を届け出ていないことを確認する(両方の届出は不可)
- 患者が対象かどうかを確認する(認知症、または慢性疾患2種以上)
- 当日が再診かどうかを確認する(初診・往診・訪問診療時は算定不可)
- 患者の同意を得ているか確認する
- 担当医の研修修了状況を確認する
- 意思決定支援の指針が自院に整備されているか確認する
みらい(新人医療事務)
意外とチェック項目が多いですね。
あおい(元・医療事務)
特に「施設基準の届出状況」と「担当医の研修修了」は見落としやすい項目です。算定しているつもりでも届出が完了していなかった、というケースが現場でよくあります。まず届出状況の確認から始めることをお勧めします。
よくある取り漏れ・確認ポイント
よくある取り漏れ
- 「往診した日に算定してしまった」: 地域包括診療加算は往診・訪問診療の日は算定できません。外来再診のみです
- 「担当医が研修未修了だった」: 担当医の研修状況は採用時・届出時だけでなく定期的な確認が必要です
- 「慢性疾患が1種類しかない患者に算定した」: 「その他の慢性疾患等」区分は2種類以上の慢性疾患を有する患者が対象です
- 「初診月に算定してしまった」: 初診時は算定できません。要件を再確認してください
- 「地域包括診療料と両方届け出てしまった」: 地域包括診療加算と地域包括診療料は同時に届け出ることができません
よくある質問
みらい(新人医療事務)
患者さんが「慢性疾患が2種類あるかどうか」って、毎回確認しなきゃいけないんですか?
あおい(元・医療事務)
継続受診の患者さんであれば、診療録に疾患管理の記録が蓄積されているはずです。初回算定時に対象確認を行い、その後は状態変化のたびに診療録を更新していく形になります。
みらい(新人医療事務)
加算1を届け出た後、訪問診療を始められなくなったら届出を変更しなきゃいけませんか?
あおい(元・医療事務)
施設基準を満たせなくなった場合は速やかに地方厚生局への届出変更・辞退の手続きが必要です。基準を満たしていない状態での算定は返還対象になる可能性があります。定期的な自院の要件確認が重要です。
みらい(新人医療事務)
複数の慢性疾患はあるけど、ほかの病院にも通っている患者さんでも対象ですか?
あおい(元・医療事務)
他医療機関でも受診している患者さんの場合、この加算の算定要件の一つとして「受診している医療機関を全て把握し、処方薬剤を全て管理して診療録に記載する」ことが求められます。他院での処方内容の把握ができていることが前提になります。
自院が算定候補かを確認する
自院の施設基準届出状況・対象患者の要件を確認したいときは、加算チェッカー で対話的に確認できます。施設基準の届出状況・担当医の研修要件・対象疾患の判定など、具体的な質問に回答できます。
まとめ
地域包括診療加算(令和8年度)は、複数の慢性疾患や認知症を抱えた患者を主治医として継続管理する診療所を評価する加算です。算定候補になるためには、地方厚生局への施設基準届出(加算1または2)・担当医の研修修了・意思決定支援指針の整備・対象患者の確認・患者同意など、複数の要件を同時に満たす必要があります。令和8年度からは外来データ提出加算(月1回10点)も新設されており、別途届出が必要です。
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。