みらい(新人医療事務)
あおいさん、「経頭蓋磁気刺激療法」って初めて聞きました。区分はI000-2って書いてあるんですけど、これってどんな治療なんですか?
あおい(元・医療事務)
経頭蓋磁気刺激療法は、磁気の刺激で脳の特定部位を刺激してうつ病の症状改善をめざす治療法です。略してTMSやrTMSと呼ばれることもあります。令和8年度の診療報酬では、区分I000-2として精神科専門療法の中に位置づけられていますよ。
みらい(新人医療事務)
精神科専門療法ということは、精神科のクリニックなら基本的にどこでも算定候補になるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
そこが今日いちばん大事な確認ポイントです。結論から言うと、算定候補になるかどうかは病院か診療所かという区分だけでなく、届け出ている施設基準と対象患者の状態によって変わります。断定はできないので、まずは対象と要件を一つずつ確認していきましょう。
経頭蓋磁気刺激療法とは(対象患者・対象医療機関)

みらい(新人医療事務)
対象になる患者さんって、具体的にどんな方なんですか?
あおい(元・医療事務)
告示の注に書かれている表現をそのまま紹介しますね。「薬物治療で十分な効果が認められない成人のうつ病患者に対して、経頭蓋治療用磁気刺激装置による治療を行った場合に限り算定する」とされています。つまり、抗うつ剤による治療をすでに行っていて、それでも十分な効果が出ていない成人のうつ病患者さんが対象です。
みらい(新人医療事務)
「十分な効果が認められない」という表現、けっこう幅がありそうですね。
あおい(元・医療事務)
そう感じますよね。留意事項通知ではもう少し詳しく書かれています。「経頭蓋磁気刺激療法は、抗うつ剤を使用した経験があって、十分な効果が認められない成人のうつ病患者に用いた場合に限り算定できる」とした上で、除外される患者像も具体的に示されています。双極性感情障害、軽症うつ病エピソード、持続気分障害などの軽症例や、精神病症状を伴う重症うつ病エピソード、切迫した希死念慮、緊張病症状など、電気痙攣療法(ECT)が推奨されるような重症例は対象から除かれます。
みらい(新人医療事務)
なるほど、軽すぎても重すぎても対象外になり得るということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。対象医療機関については、次に説明する施設基準を満たした上で地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に限られます。精神科を標榜していない病院や、施設基準の届出をしていない医療機関では、対象外の可能性が高いと考えてください。
点数と算定要件(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はいくらになるんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数表では、I000-2 経頭蓋磁気刺激療法は2,000点です。1回の点数ではなく、告示・留意事項の記載に沿って一連の治療という単位で理解しておくといいですよ。回数の考え方は後ほど詳しく説明しますね。
| 区分 | 名称 | 点数 | 年度 |
|---|---|---|---|
| I000-2 | 経頭蓋磁気刺激療法 | 2,000点 | 令和8年度 |
みらい(新人医療事務)
算定できる場面の条件、もう一度確認したいです。
あおい(元・医療事務)
告示の注をそのまま引くと「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、薬物治療で十分な効果が認められない成人のうつ病患者に対して、経頭蓋治療用磁気刺激装置による治療を行った場合に限り算定する」となっています。ポイントは「施設基準への適合」「地方厚生局長等への届出」「対象患者への該当」の3つがすべて揃うことです。どれか1つでも欠けると算定候補にはなりません。
断定できない理由
点数表の記載だけでは、個々の患者さんが対象患者の定義に当てはまるかまでは判断できません。診療録の記載内容や治療歴を踏まえて、自院で個別に確認する必要があります。
施設基準(人員・届出)
みらい(新人医療事務)
施設基準の中身、詳しく教えてください。
あおい(元・医療事務)
特掲診療料の施設基準等(第9・令和8年保医発0305第8号)には、大きく4つの要件が示されています。1つずつ見ていきましょう。
みらい(新人医療事務)
お願いします。
あおい(元・医療事務)
まず(1)精神科を標榜している病院であることです。精神科の標榜がない医療機関は、この時点で施設基準を満たしません。次に(2)うつ病の治療に関し、専門の知識及び少なくとも5年以上の経験を有し、本治療に関する所定の研修を修了している常勤の精神科の医師が1名以上勤務していることが求められます。経験年数と研修修了の両方が条件になっている点に注意してください。
みらい(新人医療事務)
経験年数だけでも、研修だけでもダメなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。さらに(3)認知療法・認知行動療法に関する研修を修了した専任の、認知療法・認知行動療法に習熟した医師が1名以上勤務していることも必要です。(2)の精神科医とは別に、認知療法・認知行動療法の研修を修了した医師の配置が求められている点は見落としやすいポイントですよ。
| 施設基準の項目 | 内容 |
|---|---|
| (1) 標榜科 | 精神科を標榜している病院であること |
| (2) 精神科医の配置 | うつ病治療の専門知識・5年以上の経験・所定研修修了の常勤精神科医1名以上 |
| (3) 認知療法・認知行動療法の医師 | 研修修了・専任・習熟した医師1名以上 |
| (4) 関連加算の届出 | 下表いずれかの届出を行っている病院であること |
みらい(新人医療事務)
(4)の「関連加算の届出」って、具体的にはどれのことですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項に列挙されている、次のいずれかの施設基準に係る届出を行っている病院であることが条件です。届出先の加算名を一覧にしますね。
| 記号 | 関連加算 |
|---|---|
| イ | 精神科リエゾンチーム加算 |
| ロ | 精神科救急搬送患者地域連携紹介加算 |
| ハ | 精神科救急搬送患者地域連携受入加算 |
| ニ | 精神科急性期医師配置加算 |
| ホ | 精神科救急急性期医療入院料 |
| ヘ | 精神科急性期治療病棟入院料 |
| ト | 精神科救急・合併症入院料 |
見落としやすいポイント
(4)は「いずれか1つ」の届出があればよい要件です。すべてを満たす必要はありませんが、逆に言うと自院がこの7つのどれにも該当しない場合は、施設基準を満たさない可能性が高くなります。まずは自院の既存の届出状況を確認しましょう。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
施設基準はわかりました。じゃあ届出ってどうすればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
経頭蓋磁気刺激療法に関する施設基準に係る届出は、別添2の様式44の8を用いることとされています。届出済みであれば算定候補になりますが、届出をしていない状態では、たとえ人員体制が整っていても算定できません。「体制はあるが未届出」というケースは実務でよくあるので、まず自院の届出状況を医事課・地方厚生局への提出履歴で確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
届出さえ出せば、体制のチェックはあまり厳密じゃなくてもいいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、逆です。届出は体制が整っていることの証明として提出するものなので、常勤精神科医の経験年数や研修修了の実態、認知療法・認知行動療法研修医師の配置実態を裏付ける資料を整えたうえで届け出る必要があります。実態と届出内容にズレがあると、後から指摘を受けるリスクがあるため、要確認の姿勢で進めてください。
算定タイミング・回数制限・治療経過の記録

みらい(新人医療事務)
算定できる回数にも制限があるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、留意事項に明確な回数制限が書かれています。「初回の治療を行った日から起算して8週を限度として、計30回に限り算定できる。また、治療開始日と終了日の年月日を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること」とされています。8週間という期間の上限と、30回という回数の上限の両方を意識してください。
みらい(新人医療事務)
摘要欄への記載も忘れずに、ですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。加えて、治療の実施方法についても細かい規定があります。「経頭蓋磁気刺激療法は、関連学会の定める適正使用指針に基づき、適正時間の刺激により治療が行われた場合に算定できる。時間については、治療装置による治療の前後の医師又は看護師によって行われる面接の時間及び治療装置の着脱に係る時間は含まない」とされていて、使用した医療機器、治療を行った日時、刺激した時間を診療録に記載することが求められます。
みらい(新人医療事務)
評価もするんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。治療開始前にHAMD17又はHAMD24(ハミルトンうつ病症状評価尺度)による評価を行い、その分析結果および患者さんへの説明内容の要点を診療録に記載します。さらに治療開始から第3週目・第6週目にも同じ尺度で再評価を行うことになっています。
みらい(新人医療事務)
再評価の結果によって、治療の続け方が変わるんですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。第3週目の評価で合計スコアがHAMD17で7以下、HAMD24で9以下であれば「寛解」と判断し、治療は中止または漸減します。漸減する場合は第4週目は最大週3回、第5週目は最大週2回、第6週目は最大週1回までしか算定できません。また、第3週目の評価で寛解と判断されず、かつ治療開始前の評価より改善が20%未満の場合は中止することとされています。
実施方針は関連学会の適正使用指針が前提
経頭蓋磁気刺激療法は「当該治療を実施する場合は関連学会の定める適正使用指針を遵守すること」が留意事項の最初に明記されています。院内の実施体制を、適正使用指針に沿って整えているかどうかもあわせて確認してください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、当サイトが収録している令和8年度の一次資料(告示・留意事項通知)の範囲では、前回改定からの変更点を裏付ける記載は確認できていません(2026年8月時点)。点数・施設基準・算定要件のいずれについても、変更を明示した公式資料が見当たらないため、断定的な比較はできない状態です。
みらい(新人医療事務)
「変わっていない」とは言い切れないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。改定差分は厚生労働省が公表する「個別改定項目について」などの資料で明示されるのが通常ですが、経頭蓋磁気刺激療法についてその種の記載を当サイトの一次資料の範囲では確認できていません。前回改定時の点数・要件と比較したい場合は、令和6年度の告示・留意事項通知そのものにあたって確認することをおすすめします。
改定差分の確認姿勢
「変更なし」と決めつけず、「当サイトの一次資料の範囲では変更点を確認できていない」という言い方にとどめています。自院で正確な比較が必要な場合は、厚生労働省の告示・留意事項通知の原文を年度ごとに突き合わせてください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちのクリニックや病院で確認すべき順番を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
はい、次のステップで確認していくとわかりやすいですよ。
自院で確認する順番
- 精神科を標榜している病院かどうかを確認する
- うつ病治療の専門知識・5年以上の経験・所定研修を修了した常勤精神科医が1名以上いるかを確認する
- 認知療法・認知行動療法研修を修了した専任医師が1名以上いるかを確認する
- 精神科リエゾンチーム加算など、留意事項に列挙された7つの関連加算のいずれかを届け出ているかを確認する
- 上記が整っていれば、様式44の8で地方厚生局長等に施設基準の届出を行う
- 対象患者(薬物治療で十分な効果が認められない成人のうつ病患者で、軽症例・重症例に該当しない方)かどうかを診療録で確認する
- 治療開始前にHAMD17又はHAMD24による評価を行い、診療録に記載する準備を整える
みらい(新人医療事務)
この順番で一つずつ埋めていけば、抜け漏れが少なくなりそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。特に4番目の「関連加算の届出」は精神科の入院医療に近い病棟をお持ちの病院で該当しやすい傾向がありますが、届出が無い場合は算定候補から外れる可能性が高いので、早めに確認しておくことをおすすめします。
よくある取り漏れ・見落としポイント
経験年数と研修修了は別々の証跡が必要
施設基準(2)は「5年以上の経験」と「所定の研修修了」がどちらも満たされている必要があります。ベテランの精神科医だからといって、所定の研修を修了していなければこの要件は満たしません。研修修了証などの証跡を確認しておきましょう。
30回の上限には漸減期間も含まれる
第3週目の評価で寛解と判断されて漸減に入った場合も、回数は8週・計30回の上限の中でカウントされます。治療開始日と終了日をレセプト摘要欄に正確に記載し、回数の管理を怠らないようにしてください。
参照した公式資料
みらい(新人医療事務)
今日の内容って、どの資料に基づいているんですか?
あおい(元・医療事務)
点数と算定要件は、厚生労働省の令和8年度診療報酬点数表(告示)のI000-2 経頭蓋磁気刺激療法に基づいています。施設基準・算定タイミング・回数制限などの詳細は、令和8年保医発0305第8号(特掲診療料の施設基準等)および同第6号(留意事項通知)に基づいて整理しました。留意事項通知の該当ページは資料の更新でURLが変わることがあるため、最新版は厚生労働省の診療報酬改定ページで確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や人員体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。