認知療法・認知行動療法とはどんな加算?
みらい(新人医療事務)
「I003-2 認知療法・認知行動療法」って名前を聞いたんですけど、これって精神科の患者さんに何かカウンセリングをしたら算定できる、みたいなイメージで合ってますか?
あおい(元・医療事務)
おおまかにはそのイメージで合っています。認知療法・認知行動療法は、うつ病などの気分障害や強迫性障害といった特定の精神疾患の患者さんに対して、決まった手順で行う精神療法です。医師が行う場合、医師と看護師が共同で行う場合、公認心理師が心理支援を担う場合の3区分があり、それぞれ点数が違います。令和8年度(2026年度)の点数と算定要件を一緒に確認していきましょう。
みらい(新人医療事務)
3区分もあるんですね。誰が担当するかで分かれてるってことですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。厚生労働省の告示では「I003-2 認知療法・認知行動療法(1日につき) 1 医師による場合 480点 2 医師及び看護師が共同して行う場合 350点 3 公認心理師による心理支援を伴う場合 330点」と定められています(厚生労働省 令和8年厚生労働省告示第69号 医科診療報酬点数表 別表第一)。区分1は医師が単独で行う場合、区分2は医師と看護師が共同で行う場合、区分3は公認心理師が心理支援を担う場合、という整理です。
対象になる患者・場面
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんが対象になるんですか?「うつ病の人ならなんでも」というわけではないですよね?
あおい(元・医療事務)
そうですね、対象疾患は留意事項通知で具体的に列挙されています。「認知療法・認知行動療法とは、入院中の患者以外のうつ病等の気分障害、強迫性障害、社交不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、神経性過食症又は不眠症の患者に対して、認知の偏りを修正し、問題解決を手助けすることによって治療することを目的とした精神療法をいう」とされています(厚生労働省 医科診療報酬点数表に関する留意事項について I003-2 認知療法・認知行動療法(1))。つまり対象は「入院中の患者以外」で、うつ病等の気分障害・強迫性障害・社交不安障害・パニック障害・PTSD(心的外傷後ストレス障害)・神経性過食症・不眠症の7疾患群に限られます。それ以外の悩みへのカウンセリングは、この加算の対象ではありません。
みらい(新人医療事務)
不眠症も入ってるんですね。ちょっと意外でした。
あおい(元・医療事務)
不眠症は他の疾患と回数の扱いが違うので、後で回数制限のところで詳しく触れますね。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数のところ、もう少し詳しく教えてください。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数区分を表にまとめました。いずれも「1日につき」の点数です。
| 区分 | 実施者 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| 1 | 医師による場合 | 480点 |
| 2 | 医師及び看護師が共同して行う場合 | 350点 |
| 3 | 公認心理師による心理支援を伴う場合 | 330点 |

みらい(新人医療事務)
区分1・2・3って、患者さんごとに選ぶんですか?それとも同じ患者さんの中で使い分けるんですか?
あおい(元・医療事務)
一連の治療の中で使い分けることもできます。留意事項通知には「認知療法・認知行動療法の「1」、「2」及び「3」は、一連の治療において同一の点数を算定する。ただし、「2」又は「3」の要件を満たす場合のうち、医師と看護師又は公認心理師が同席して30分以上の面接を行った日に限り、「1」の点数を算定できる」と定められています(厚生労働省 医科診療報酬点数表に関する留意事項について I003-2 認知療法・認知行動療法(16))。基本は一連の治療の中で同じ区分の点数を算定し続ける前提ですが、初回同席のような特定の場面だけ例外的な扱いがある、という規定です。この判断は自院だけで進めず、必ず一次資料と照らして確認が必要です。
施設基準
みらい(新人医療事務)
施設基準はどうなっていますか?届出が必要そうな雰囲気がします。
あおい(元・医療事務)
はい、区分ごとに施設基準が定められていて、届出が前提です。区分1の施設基準は「当該保険医療機関内に、専任の認知療法・認知行動療法に習熟した医師が1名以上勤務していること」と定められています(厚生労働省 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて 第9 認知療法・認知行動療法に関する施設基準)。
あおい(元・医療事務)
区分2は、区分1の医師に加えて、認知療法・認知行動療法に係る経験を有し、当該療法についての研修を修了した専任の看護師の配置が求められます。施設基準の届出一覧でも「認知療法・認知行動療法2 認知療法・認知行動療法に係る経験を有し、認知療法・認知行動療法についての研修を修了した専任の看護師」と整理されています(厚生労働省 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて)。
あおい(元・医療事務)
区分3(公認心理師)は、さらに勤務経験の条件が細かく決められています。留意事項通知には「認知療法・認知行動療法の「3」は、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合するものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関において、入院中の患者以外の患者に対して、医師が治療を行うに当たり必要と判断した場合に、一連の治療に関する計画に基づき、認知行動療法的アプローチに基づく心理支援に係る面接を、認知療法・認知行動療法を実施している保険医療機関において週1日以上常態として勤務しており、かつ、所定労働時間が週22時間以上の勤務を2年以上行った経験のある専任の公認心理師が実施した場合に算定する」とあります(厚生労働省 医科診療報酬点数表に関する留意事項について I003-2 認知療法・認知行動療法(14))。
研修の内容は疑義解釈で確認する
対象となる研修: 区分3の施設基準にある「認知療法・認知行動療法についての研修」は、厚生労働省の疑義解釈で「厚生労働省認知行動療法研修事業による2日間の「認知療法・認知行動療法ワークショップ」」「日本精神科病院協会による2日間の「認知行動療法研修会」」「一般財団法人公認心理師試験研修センターによる2日間の公認心理師を対象とする認知療法・認知行動療法研修会」の3つが該当すると案内されています(厚生労働省 疑義解釈資料の送付について(その2)医科 問78・令和8年度)。 確認方法: 自院のスタッフが受講した研修がこの一覧に該当するかどうかは、必ず現行の疑義解釈で個別に確認してください。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
施設基準はわかりました。じゃあ、うちが対象かどうかは届出さえ出せばすぐわかるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、届出済みであることが前提になるので、まずは自院がどの区分の施設基準届出を出しているか(あるいは出していないか)を確認するところからです。届出をしていない区分の点数は算定候補にならないので、この確認は欠かせません。届出の要否や様式は、厚生局への確認が必要です。
算定回数・時間・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
回数や時間の制限もあるんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい、大事なポイントが3つあります。1つ目は診療・面接に要した時間です。告示の注3に「診療に要した時間が30分を超えたときに限り算定する」と明記されています(厚生労働省 令和8年厚生労働省告示第69号 医科診療報酬点数表 別表第一 I003-2 注3)。
あおい(元・医療事務)
2つ目は回数の上限です。留意事項通知には「一連の治療又は面接につき16回に限り算定する。ただし、不眠症に対する治療又は面接については8回に限り算定する」とあります(厚生労働省 医科診療報酬点数表に関する留意事項について I003-2 認知療法・認知行動療法(3))。不眠症だけ上限が8回と、他の6疾患群(16回)より少なく設定されている点に注意してください。
あおい(元・医療事務)
3つ目は併算定の扱いです。留意事項通知には「認知療法・認知行動療法と同一日に行う他の精神科専門療法は、別に算定できない」と定められています(厚生労働省 医科診療報酬点数表に関する留意事項について I003-2 認知療法・認知行動療法(4))。
同日の他の精神科専門療法は別算定不可
同じ日に他の精神科専門療法を行っても、認知療法・認知行動療法とは別に算定できません。レセプト作成時にダブルカウントしていないか、必ず確認してください。
みらい(新人医療事務)
うつ病と不眠症を両方合併している患者さんの場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
そのケースは疑義解釈で扱いが示されています。「うつ病又は不安障害を合併した不眠症の患者に対して、不眠症に対する認知療法・認知行動療法と併存症に対する認知療法・認知行動療法の両者を実施した場合、どのように算定するのか」という質問に対し、「両者の実施が医学的に妥当であると判断した場合に限り、それぞれの上限回数を限度として算定できる」と回答されています(厚生労働省 疑義解釈資料の送付について(その2)医科 問86・令和8年度)。医学的に妥当と判断できる場合に限り、それぞれの上限回数まで算定候補になり得る、という整理です。個別の判断は主治医と院内の記録に基づいて慎重に行ってください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収載している一次資料(告示・留意事項通知・疑義解釈)の範囲では、認知療法・認知行動療法(I003-2)の点数区分(480点・350点・330点)、対象疾患、施設基準、算定回数の上限について、前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません(確認日: 2026年8月)。
変更なし=確認不要ではない
点数や要件が変わっていなくても、自院の届出状況や研修受講の記録は改定のたびに再確認しておくと安心です。特に研修修了者の異動があった場合は、施設基準の充足が崩れていないかを必ずチェックしてください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの医院で算定候補になるかどうか、どういう順番で確認すればいいんでしょう?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認していくとわかりやすいです。
自院で確認する順番
- 対象患者か: うつ病等の気分障害・強迫性障害・社交不安障害・パニック障害・PTSD・神経性過食症・不眠症のいずれかに該当するか(入院中の患者は対象外)
- 施設基準の届出があるか: 区分1〜3のうち、どの区分の施設基準届出を自院が提出しているか
- 治療計画と説明が整っているか: 認知療法・認知行動療法に習熟した医師が一連の治療計画を作成し、患者に説明しているか
- 時間要件を満たしているか: 診療・面接の時間が30分を超えているか
- 回数の範囲内か: 一連の治療で16回以内か(不眠症は8回以内か)

みらい(新人医療事務)
これを順番にチェックしていけば、算定候補かどうか見えてきそうです。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし、5つとも満たしているように見えても、最終的な判断は自院の記録と一次資料の突き合わせが必要です。
よくある取り漏れ
研修修了者の異動を見落とす
区分2・3は、研修を修了した専任の看護師や公認心理師の配置が施設基準の要件です。担当者が異動・退職した場合、要件を満たさなくなっている可能性があります。人員異動のタイミングで施設基準の充足状況を必ず見直してください。
診療時間の記録が30分ちょうどで切れている
「30分を超えたとき」が要件なので、記録上ちょうど30分だと要件を満たしません。診療録に診療時間を明確に記載し、30分を超えていることがわかるようにしておく必要があります。留意事項通知でも「認知療法・認知行動療法を行った場合は、その要点及び診療時間を診療録に記載する」ことが求められています(厚生労働省 医科診療報酬点数表に関する留意事項について I003-2 認知療法・認知行動療法(12))。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。