みらい(新人医療事務)
先生、精神科のレセプトで「通院・在宅精神療法」ってすごくよく出てくるんですけど、点数の付け方が複雑で毎回迷ってしまいます…。これって、時間や医師の資格で点数が変わるんですよね?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。通院・在宅精神療法(区分I002)は、精神科の外来診療の中核になる加算で、診療時間・初診日かどうか・精神保健指定医が行ったかどうかで点数が細かく分かれています。令和8年度(2026年度)の告示・留意事項通知の内容にそって、まず全体像から確認していきましょう。
みらい(新人医療事務)
お願いします! まずこれって、どんな患者さんが対象なんですか?
対象になる患者・医療機関
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、通院・在宅精神療法について「入院中の患者以外の患者であって、精神疾患又は精神症状を伴う脳器質性障害があるもの(患者の著しい病状改善に資すると考えられる場合にあっては当該患者の家族)に対して、精神科を担当する医師が一定の治療計画のもとに危機介入、対人関係の改善、社会適応能力の向上を図るための指示、助言等の働きかけを継続的に行う治療方法をいう」と定義されています。
みらい(新人医療事務)
「精神科を担当する医師」っていうのがポイントですか?
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項通知には「通院・在宅精神療法は、精神科を標榜する保険医療機関の精神科を担当する医師が行った場合に限り算定する」ともあります。精神科を標榜していない診療科の医師が行った場合は対象外になりますし、「同時に複数の患者又は複数の家族を対象に集団的に行われた場合には算定できない」とも明記されているので、個別の診療であることも前提です。
みらい(新人医療事務)
なるほど、まず「うちは精神科を標榜しているか」「精神科の担当医が個別に診療しているか」から確認するんですね。
点数区分(通院精神療法・在宅精神療法)
あおい(元・医療事務)
ここからが本題です。通院・在宅精神療法は「1 通院精神療法」と「2 在宅精神療法」に分かれ、それぞれ診療時間・精神保健指定医かどうかで点数が細分化されています。告示の点数表(I002)の区分を、そのまま表にまとめました。

表1: 通院精神療法(1)
| 区分 | 内容 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| イ | 措置入院後の退院支援計画に基づき、計画上の担当医療機関の精神科医師が行った場合 | 660点 |
| ロ(1)① | 初診料算定の初診日、60分以上、精神保健指定医による場合 | 650点 |
| ロ(1)② | 初診料算定の初診日、60分以上、①以外 | 550点 |
| ロ(2) | 初診料算定の初診日、精神保健指定医による30分以上60分未満 | 550点 |
| ハ(1)① | イ・ロ以外、30分以上、精神保健指定医による場合 | 410点 |
| ハ(1)② | イ・ロ以外、30分以上、①以外 | 390点 |
| ハ(2)① | イ・ロ以外、30分未満、精神保健指定医による場合 | 315点 |
| ハ(2)② | イ・ロ以外、30分未満、①以外 | 290点 |
表2: 在宅精神療法(2)
| 区分 | 内容 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| イ | 措置入院後の退院支援計画に基づき、計画上の担当医療機関の精神科医師が行った場合 | 660点 |
| ロ(1)① | 初診料算定の初診日、60分以上、精神保健指定医による場合 | 650点 |
| ロ(1)② | 初診料算定の初診日、60分以上、①以外 | 600点 |
| ロ(2) | 初診料算定の初診日、精神保健指定医による30分以上60分未満 | 550点 |
| ハ(1)① | イ・ロ以外、60分以上、精神保健指定医による場合 | 590点 |
| ハ(1)② | イ・ロ以外、60分以上、①以外 | 540点 |
| ハ(2)① | イ・ロ以外、30分以上60分未満、精神保健指定医による場合 | 410点 |
| ハ(2)② | イ・ロ以外、30分以上60分未満、①以外 | 390点 |
| ハ(3)① | イ・ロ以外、30分未満、精神保健指定医による場合 | 315点 |
| ハ(3)② | イ・ロ以外、30分未満、①以外 | 290点 |
みらい(新人医療事務)
通院と在宅で「ハ」の時間区分の数が違うんですね。在宅は60分以上・30〜60分・30分未満の3段階なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。告示の原文でもそのように区分数が異なっているので、そのまま載せています。実務では「初診日かどうか」「精神保健指定医が診療したかどうか」「診療時間」の3点をカルテで確認できるようにしておくことが、点数区分を正しく選ぶための第一歩になります。
算定できる回数とタイミング
週の算定回数と時間要件(令和8年度)
週の回数: 「入院中の患者以外の患者について、退院後4週間以内の期間に行われる場合にあっては1と2を合わせて週2回、その他の場合にあっては1と2を合わせて週1回に限り算定する」とされています。ただし、特定疾患療養管理料(B000)または生活習慣病管理料(Ⅱ)(B001-3-3)を算定している患者については算定しません。
診療時間の下限: 「通院・在宅精神療法は、診療に要した時間が5分を超えたときに限り算定する」が原則です。ただし「区分番号A000に掲げる初診料を算定する初診の日において通院・在宅精神療法を行った場合は、診療に要した時間が30分を超えたときに限り算定する」とされ、初診日は下限が引き上げられます。
時間の数え方: 留意事項通知では「診療に要した時間とは、医師が自ら患者に対して行う問診、身体診察(視診、聴診、打診及び触診をいう。)及び当該通院・在宅精神療法に要する時間をいい、これら以外の診療及び医師以外の職員による相談等に要する時間は含まない」と定義されています。
みらい(新人医療事務)
「週1回」か「週2回」かは、退院してからの期間で決まるんですね。カルテの退院日をちゃんと見ておかないと…。
あおい(元・医療事務)
そうですね。退院後4週間以内かどうかで上限回数が変わるので、退院日の記録が算定候補かどうかの判断材料になります。
主な加算(届出が必要なものが多い)
みらい(新人医療事務)
通院・在宅精神療法には、他にも色々な加算があるって聞きました。
あおい(元・医療事務)
はい、注3から注13まで多数の加算・減算規定があります。特に届出が前提になっているものが多いので、代表的なものを整理します。
| 加算・規定 | 主な点数 | 届出の要否 | 主な制限 |
|---|---|---|---|
| 20歳未満加算(注3) | 320点 | 特別な届出の記載なし(精神科を最初に受診した日から1年以内が条件) | 注4・注10の加算と併算定不可 |
| 児童思春期精神科専門管理加算(注4) | イ 500点/300点、ロ 1,200点 | 特定機能病院・児童思春期精神科入院医療管理料の届出、または別途の施設基準の届出が必要 | ロは1回限り、注3・注10と併算定不可 |
| 特定薬剤副作用評価加算(注5) | 25点 | 記載なし | 月1回限り。精神科継続外来支援・指導料の同種加算と同月は算定不可 |
| 措置入院後継続支援加算(注7) | 275点 | 記載なし(1のイを算定する患者が対象) | 3月に1回限り |
| 療養生活継続支援加算(注8) | イ 500点/ロ 350点 | 施設基準の届出が必要 | 初回算定月から1年を限度に月1回 |
| 心理支援加算(注9) | 280点 | 施設基準の届出が必要(公認心理師による支援) | 初回算定月から2年を限度に月2回 |
| 児童思春期支援指導加算1・2(注10) | 加算1: 1,100点等/加算2: 500点等 | 施設基準の届出が必要 | 20歳未満が対象。注3・注4と併算定不可 |
| 早期診療体制充実加算1〜3(注11) | 10〜50点 | 施設基準の届出が必要 | 精神科初診から3年以内かどうかで点数が変わる |
| 情報通信機器加算(注12) | 566点/479点/357点/274点(順にロ(1)①・ロ(2)・ハ(1)①・ハ(2)①に対応) | 施設基準の届出が必要 | 対象区分は1のロ(1)①・ロ(2)・ハ(1)①・ハ(2)①の4区分(いずれも精神保健指定医による場合)に限定。②(①以外の場合)は対象外 |
みらい(新人医療事務)
表を見るだけでも、届出が要件になっている加算がたくさんありますね…!
あおい(元・医療事務)
そうなんです。基本部分(表1・表2)は精神科標榜医療機関であることが前提ですが、これらの加算の多くは「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関」であることが条件になっています。加算ごとに届出の有無をまず確認することが、算定候補かどうかの分かれ目になります。
施設基準の確認ポイント
児童思春期精神科専門管理加算の施設基準(抜粋・令和8年度)
- 人員配置: 精神保健指定医に指定されてから5年以上、主として20歳未満の患者の精神医療に従事した経験を有する専任の常勤精神保健指定医が1名以上勤務していること。
- 診療実績: 過去6か月間に当該療法を実施した16歳未満の患者数が、月平均40人以上であること。
- 診療所の追加要件: 診療所の場合は、過去6か月間の実施患者のうち50%以上が16歳未満であることも求められます。
- 療養生活継続支援加算の施設基準: 専任の精神保健福祉士が1名以上勤務し、担当する対象患者数は1人につき30人以下であることが必要です。
これらは施設基準の一部を抜粋したものです。実際の充足判断は必ず告示・施設基準通知の原文でご確認ください。
みらい(新人医療事務)
人員配置の年数や実績人数まで細かく決まっているんですね。これは自院だけでは判断しづらそうです。
あおい(元・医療事務)
はい、この部分は当サイトの整理だけで「充足している」と判断せず、必ず施設基準通知の原文と自院の勤務実態を照らし合わせてください。届出の要否や充足状況の最終判断は、地方厚生局への確認も含めて自院で行っていただく必要があります。
自院で確認する順番

通院・在宅精神療法の確認ステップ
- 精神科を標榜する保険医療機関で、精神科を担当する医師が個別に診療しているか確認する
- 対象患者が入院中でないか、集団診療になっていないかを確認する
- 診療時間(初診日は30分超、それ以外は5分超が原則)をカルテに記録できているか確認する
- 直近の算定回数が週1回(退院後4週間以内は週2回)の上限内かを確認する
- 児童思春期精神科専門管理加算・療養生活継続支援加算・心理支援加算など、対象になりそうな加算の施設基準届出の有無を確認する
減算・注意すべきルール
点数が下がる・変わるケース(令和8年度)
多剤処方の場合: 「当該患者に対して、1回の処方において、3種類以上の抗うつ薬又は3種類以上の抗精神病薬を投与した場合であって、別に厚生労働大臣が定める要件を満たさない場合、所定点数の100分の50に相当する点数により算定する」とされています。
未届出医療機関の場合: 表1・表2の「①以外の場合」(精神保健指定医以外による診療)の点数区分の一部(1のロ(1)②、1のハ(1)②・(2)②、2のロ(1)②、2のハ(1)②・(2)②・(3)②)について、「地方厚生局長等に届け出た保険医療機関以外の保険医療機関において行われる場合は、所定点数の100分の60に相当する点数を算定する」という規定があります。表の点数がそのまま使えるかどうかは、この届出の有無の確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
「①以外の場合」の点数も、実は別の届出が前提になっていることがあるんですね…! これは見落としそうです。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。表の点数だけを見て安心せず、注13のような細かい規定まで一次資料で確認することが大切です。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、この加算に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料(告示第69号・留意事項通知)の範囲では、通院・在宅精神療法について前回改定(令和6年度)からの変更点を具体的に示す記述は確認できていません(2026年8月確認)。改定のたびに加算の新設や施設基準の見直しが行われることがある区分ですので、正確な差分については厚生労働省の「個別改定項目について」など、改定の概要資料でご確認いただくことをおすすめします。
よくある取り漏れ
見落としやすいポイント
- 時間の記録不足: 診療時間の下限(初診日30分超、それ以外5分超)を満たしているかがカルテ上で確認できないと、算定区分の判断ができません。
- 精神保健指定医かどうかの記録漏れ: 点数区分が精神保健指定医によるかどうかで変わるため、診療した医師が精神保健指定医であるかの記録も必要です。
- 加算の届出見落とし: 児童思春期精神科専門管理加算・療養生活継続支援加算・心理支援加算・児童思春期支援指導加算・早期診療体制充実加算・情報通信機器加算は、いずれも施設基準の届出が前提です。要件を満たしていても届出がなければ算定候補にはなりません。
- 併算定不可の見落とし: 20歳未満加算(注3)・児童思春期精神科専門管理加算(注4)・児童思春期支援指導加算(注10)は互いに併算定できない組み合わせがあるため、複数の加算候補がある場合は優先順位の確認が必要です。
公式資料の根拠
あおい(元・医療事務)
この記事は以下の厚生労働省の公式資料を根拠にしています。加算の詳細な要件や施設基準は、必ず一次資料の原文でご確認ください。
参考資料(厚生労働省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)区分番号I002 通院・在宅精神療法 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号)I002 通院・在宅精神療法(当サイトが収録している資料ではURLが変更されている可能性があるため、厚生労働省の改定関連ページから最新版をご確認ください)
- 特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第71号)通院・在宅精神療法に関する各種加算の施設基準を含む https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001675855.pdf
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。診療時間の記録や届出状況を整理しながら入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。