みらい(新人医療事務)
精神科病棟の担当になったんですけど、レセプトに「入院精神療法」ってよく出てきます。これってどんな加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
入院精神療法(区分I001)は、入院中の精神疾患の患者さんに対して、医師が精神面から働きかけて不安や葛藤を和らげ、症状の改善につなげる治療を評価する項目です。令和8年度(2026年度)の医科点数表では、ⅠとⅡの2種類(Ⅱはさらにイ・ロに分かれます)で構成されています。名前だけ聞くと難しそうですが、精神科病棟であればほぼ日常的に算定される項目なんですよ。
みらい(新人医療事務)
「入院精神療法」って、具体的にはどんな行為を指すんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料では「入院中の患者であって精神疾患又は精神症状を伴う脳器質性障害があるものに対して、一定の治療計画に基づいて精神面から効果のある心理的影響を与えることにより、対象精神疾患に起因する不安や葛藤を除去し、情緒の改善を図り洞察へと導く治療方法」と説明されています。つまり、単なる病状説明や声かけではなく、治療計画に基づいた精神療法そのものを指す点がポイントです。
対象になる患者・実施できる医師
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんが対象で、誰が行っても算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
対象は、入院中の精神疾患または精神症状を伴う脳器質性障害がある患者さんです。実施できるのは、精神科を標榜する保険医療機関の精神保健指定医、またはその他の精神科を担当する医師で、当該医療機関内の精神療法を行うにふさわしい場所で、必要な時間行った場合に限り算定候補になります。
みらい(新人医療事務)
うちは精神科を標榜していないんですが、それでも算定候補はありますか?
あおい(元・医療事務)
原則は精神科標榜医療機関が対象ですが、例外があります。「精神科リエゾンチーム加算」(A230-4)の届出を行っている医療機関は、精神科を標榜していない場合でも入院精神療法を算定候補にできるとされています。この点は自院の届出状況の確認が必要です。
確認しておきたいポイント
実施医師: 精神保健指定医か、その他の精神科担当医かで、区分(Ⅰ)の算定可否が変わります。 実施場所: 精神療法を行うにふさわしい場所(プライバシーが確保された場所など)で行われているか。 精神科非標榜の医療機関: 精神科リエゾンチーム加算の届出があるかどうかを必ず確認します。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はどうなっているんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、次の3区分に分かれています(いずれも1回につき)。
| 区分 | 内容 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| 入院精神療法(Ⅰ) | 精神保健指定医が30分以上行った場合 | 400点 |
| 入院精神療法(Ⅱ)イ | 入院の日から起算して6月以内の期間に行った場合 | 150点 |
| 入院精神療法(Ⅱ)ロ | 入院の日から起算して6月を超えた期間に行った場合 | 80点 |

みらい(新人医療事務)
(Ⅰ)と(Ⅱ)って何が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
(Ⅰ)は精神保健指定医が30分以上かけて行った場合に限られる、より手厚い区分です。一方(Ⅱ)は、指定医に限らずその他の精神科担当医が行った場合を含み、入院からの経過期間(6月以内か超か)で点数が変わる区分になっています。どちらに該当するかは、実施した医師の資格と診療時間の記録から確認する必要があります。
点数だけで判断しない
どの区分に該当するかは、点数表の記載だけでなく、実施医師の資格(精神保健指定医かどうか)・診療時間・入院からの経過期間の3点をあわせて確認する必要があります。診療録の記載が不十分だと、区分の判断自体が難しくなります。
算定できる回数・タイミングの制限
みらい(新人医療事務)
毎日算定できるわけじゃないんですよね?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。区分ごとに上限が決まっています。
週あたりの算定回数の目安
入院精神療法(Ⅰ): 精神保健指定医が30分以上行った場合に、入院の日から起算して3月を限度として、週3回に限り算定候補になります。 入院精神療法(Ⅱ): 入院の日から起算して4週間以内の期間に行われる場合は週2回、4週間を超える期間に行われる場合は週1回をそれぞれ限度とします。ただし、重度の精神障害者である患者に対して精神保健指定医が必要と認めて行われる場合は、入院期間にかかわらず週2回に限り算定候補になります。
みらい(新人医療事務)
「重度の精神障害者」ってどういう患者さんを指すんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料では、措置入院患者、医療保護入院患者、および任意入院であるが何らかの行動制限を受けている患者などとされています。任意入院であっても行動制限があれば該当し得るので、入院形態だけでなく実際の行動制限の有無も確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
算定できる回数そのものにも上限はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。入院精神療法として算定できる回数は、医学的に妥当と認められる回数を限度とするとされています。また、同時に複数の患者や複数の家族を対象に集団的に行った場合は算定できないとされている点にも注意が必要です。さらに、入院精神療法(Ⅰ)を算定した週と同一週に行われた入院精神療法(Ⅱ)は、別に算定できないとされています。
自院で確認する順番
- 入院からの経過日数(4週間以内か超か、6月以内か超か)を確認する
- 実施医師が精神保健指定医かどうかを確認する
- その週にすでに算定した回数を確認する
- 重度の精神障害者に該当するか(行動制限の有無)を確認する
- 診療録に要点((Ⅰ)は実施時間も)が記載されているか確認する
家族に対する入院精神療法
みらい(新人医療事務)
患者さん本人だけじゃなくて、ご家族に対して行う場合もあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。ただし対象はかなり限定的です。一次資料では、患者の家族に対する入院精神療法は、統合失調症の患者であって、家族関係が当該疾患の原因または増悪の原因と推定される場合に限り、当該保険医療機関における初回の入院の時に、入院中2回に限り算定候補になるとされています。
みらい(新人医療事務)
家族への病状説明とかも対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、患者の病状説明や服薬指導等、一般的な療養指導である場合は算定できないとされています。単なる説明ではなく、精神療法としての働きかけであることが前提です。なお、家族に対して行った場合は、診療報酬明細書の摘要欄に「家族」と記載するとされています。
同日実施の注意
患者に対して入院精神療法を行った日と同一の日に家族に対しても行った場合、その費用は患者に対する入院精神療法の費用に含まれ、別に算定できないとされています。同日実施の記録がある場合は特に確認が必要です。
併算定・関連する加算との関係
みらい(新人医療事務)
他の精神科の治療と一緒に行った場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
いくつか調整のルールがあります。入院中の対象精神疾患の患者に、入院精神療法にあわせて「I004」心身医学療法が算定できる自律訓練法や森田療法等の療法を行った場合でも、入院精神療法のみで算定するとされています。また、同じ日に入院精神療法と「I003」標準型精神分析療法を行った場合は、標準型精神分析療法の方で算定するとされています。
みらい(新人医療事務)
緩和ケアや精神科リエゾンチームの加算とも関係があるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。緩和ケア診療加算を算定する患者については、入院精神療法の算定は週1回までとされています。また精神科リエゾンチーム加算や精神科慢性身体合併症管理加算、精神疾患診療体制加算など、精神科の体制系の加算とあわせて算定する場合は、それぞれの算定要件の中に入院精神療法の回数や算定可否に関する調整規定が置かれていることがあるため、あわせて確認しておくと安心です。
併算定チェックの視点
同日・同週の重複: 入院精神療法(Ⅰ)を算定した週の(Ⅱ)、標準型精神分析療法との同日実施は特に見落としやすいポイントです。 体制系加算との調整: 緩和ケア診療加算など、算定患者について入院精神療法の回数上限が別途定められている加算がないか確認します。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回改定(令和6年度)から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した令和8年度の一次資料(告示・留意事項通知)の範囲では、入院精神療法の点数や算定要件について、前回改定(令和6年度)からの変更を示す記述は見当たりませんでした。前回改定(令和6年度)からの主な変更は確認されていません(2026年6月確認・厚労省一次情報ベース)。ただし、これは当サイトが確認できた資料の範囲での結果であり、個別改定項目の資料もあわせてご確認いただくことをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
点数が変わっていないなら、確認しなくても大丈夫そうですね。
あおい(元・医療事務)
点数が同じでも、施設基準や算定要件が改定で変わっているケースは他の加算でもあるので、油断は禁物です。入院精神療法についても、届出状況や実施医師の要件は改定のたびに確認する習慣をつけておくと安心です。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの病院で算定候補になるかどうか、どう確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認していくとわかりやすいです。

自院で確認する順番
- 対象患者か(入院中で、精神疾患または精神症状を伴う脳器質性障害があるか)
- 実施医療機関の要件を満たすか(精神科標榜、または精神科リエゾンチーム加算の届出があるか)
- 実施医師が精神保健指定医か、その他の精神科担当医か
- 区分(Ⅰ)(Ⅱ)イ・ロのどれに該当するか(実施時間・入院からの経過期間で判断)
- その週・その入院期間ですでに算定した回数を確認する
- 診療録の記載内容(要点、(Ⅰ)は実施時間も)を確認する
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
見落としがちなポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。
見落としやすいケース
診療録の記載不足: 要点の記載が不十分で、区分(Ⅰ)を算定していても30分以上行った根拠が診療録から確認できないケースがあります。 週をまたいだ重複算定: 入院精神療法(Ⅰ)を算定した週に(Ⅱ)も算定してしまっていないか、週単位で確認が必要です。 家族への一般的な説明との混同: 病状説明や服薬指導のみを「家族に対する入院精神療法」として算定してしまっていないか、内容を確認します。
みらい(新人医療事務)
逆に、取り漏れてしまうケースもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。精神科リエゾンチーム加算の届出がある医療機関で、精神科を標榜していないために入院精神療法自体を検討していなかった、というケースは取り漏れの典型例です。届出状況を一度洗い出してみることをおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。実施医師の資格や届出状況、算定回数の状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。