みらい(新人医療事務)
「依存症集団療法」っていう加算、名前は見たことあるんですけど、内容がよくわからなくて…。区分番号はI006-2って書いてあります。
あおい(元・医療事務)
I006-2 依存症集団療法ですね。令和8年度(2026年度)の医科診療報酬点数表に定められている、精神科専門療法のひとつです。薬物依存症・ギャンブル依存症・アルコール依存症のそれぞれについて、入院中でない患者さんに集団療法(グループでの認知行動療法)を実施した場合に算定候補になる項目です。
みらい(新人医療事務)
「I006」の通院集団精神療法と名前が似てますけど、別物なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、別物です。ここが取り違えやすいポイントなので最初に整理しますね。I006(通院集団精神療法)は精神疾患一般を対象にした集団療法で、届出不要で実施できる一方、I006-2(依存症集団療法)は薬物・ギャンブル・アルコールという特定の依存症を対象に、認知行動療法の手法を使ったプログラムを行うもので、地方厚生局長等への届出が必要な施設基準が定められています。区分番号が似ているだけに、算定候補を検討するときは必ずどちらの区分かを確認してください。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
対象は入院中の患者さん以外(外来)で、次の3つの区分に分かれます。
対象患者の3区分(令和8年度)
「1」薬物依存症の場合: 覚醒剤、麻薬、大麻、危険ドラッグ等に対する物質依存の状態にある患者 「2」ギャンブル依存症の場合: ギャンブル等依存症対策基本法に規定するギャンブル等に対する依存の状態にある患者 「3」アルコール依存症の場合: アルコールに対する依存の状態にある患者
みらい(新人医療事務)
対象になる患者さんがいれば、どの医療機関でも算定候補になるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
そこは断定できません。後で説明する施設基準(専任の精神科医・看護師・作業療法士の配置と研修修了)を満たし、地方厚生局長等に届出を行っていることが前提です。届出をしていない医療機関では、対象患者さんがいても算定候補にはなりません。
点数区分(令和8年度)

みらい(新人医療事務)
点数はいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、区分ごとに次のように定められています。単位は「1回につき」です。
| 区分 | 対象 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| 1 | 薬物依存症の場合 | 340点 |
| 2 | ギャンブル依存症の場合 | 300点 |
| 3 | アルコール依存症の場合 | 300点 |
みらい(新人医療事務)
薬物依存症だけ点数が高いんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。実施する人数や時間の基準が区分ごとに異なっていて、それが点数の違いにもつながっているようです。詳しくは次の章で説明します。
算定要件(回数・期間の上限)
みらい(新人医療事務)
1回算定したら、その後は何回でも算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、区分ごとに算定できる期間と回数の上限が決まっています。ここは請求で間違えやすいので、区分ごとに丁寧に確認しましょう。
区分ごとの算定回数・期間の上限(令和8年度)
「1」薬物依存症の場合: 治療開始日から起算して6月を限度に、週1回まで算定候補です。精神科の医師が特に必要性を認め、6月を超えて実施した場合は、治療開始日から起算して2年を限度に、さらに週1回かつ計24回まで算定候補になります。 「2」ギャンブル依存症の場合: 治療開始日から起算して3月を限度に、2週間に1回まで算定候補です。 「3」アルコール依存症の場合: 週1回かつ計10回まで算定候補です。
みらい(新人医療事務)
同じ日に他の精神科の治療も一緒に行ったら、それぞれ算定できますか?
あおい(元・医療事務)
それはできません。依存症集団療法と同一日に行う他の精神科専門療法は、依存症集団療法の所定点数に含まれる扱いになります。同一日の他の専門療法を別立てで算定することは想定されていない点に注意してください。
実施体制・施設基準(届出が必要です)
みらい(新人医療事務)
実際にプログラムを行うときは、どんな体制が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
これも区分によって細かく決まっています。共通しているのは、精神科医または精神科医の指示を受けた看護師・作業療法士・精神保健福祉士・公認心理師で構成される2人以上のスタッフが、認知行動療法の手法を用いて指導を行うという点です。このうち1人以上は、その療法の実施時間に専従する精神科医・看護師・作業療法士で、それぞれの依存症集団療法に関する適切な研修を修了している必要があります。
区分ごとの実施人数・時間・プログラム(令和8年度・留意事項通知ベース)
薬物依存症(1): 1回に20人まで、90分以上実施。厚生労働科学研究費補助金の研究班が作成した物質使用障害治療プログラムに沿って実施します。 ギャンブル依存症(2): 1回に10人まで、60分以上実施。日本医療研究開発機構の研究班が作成した「ギャンブル障害の標準的治療プログラム」に沿って実施します。 アルコール依存症(3): 1回に10人まで、60分以上実施。動機付け面接及び認知行動療法の考え方に基づくプログラムで実施します。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出のほうはどうなっているんですか?
あおい(元・医療事務)
薬物依存症の区分(1)については、当サイトが収録している資料の範囲で、専任の精神科医、および専任の看護師または専任の作業療法士がそれぞれ1名以上勤務していること(いずれも薬物依存症に対する集団療法に係る適切な研修を修了した者に限る)という施設基準を確認できています。この研修は、国または医療関係団体等が主催する14時間以上の研修で、依存症の疫学、依存性薬物の薬理学的特徴、依存症患者の精神医学的特性などの内容を含むものとされています。
みらい(新人医療事務)
ギャンブル依存症とアルコール依存症の区分も同じ研修条件なんですか?
あおい(元・医療事務)
人員配置の詳細な条文までは、今回当サイトで確認できた資料の範囲には含まれていませんでした。ここは推測で書かず「要確認」としておきます。過去の疑義解釈では、ギャンブル依存症区分の施設基準にある「依存症専門医療機関」について、都道府県等が選定した専門医療機関を指すことや、研修の実施機関(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター等)が示されています。ただし、これらの疑義解釈は令和2年度・令和4年度に発出されたものなので、現在も同じ内容かどうかは、届出前に必ず最新の施設基準通知でご確認ください。
施設基準・研修要件は必ず原文で確認
研修の実施主体や時間数、届出様式は改定や運用で更新されることがあります。本記事の内容だけで届出可否を判断せず、必ず地方厚生局への届出様式・最新の施設基準通知の原文をご確認ください。
届出について
みらい(新人医療事務)
届出をしていないと、対象の患者さんがいても算定候補にならないんですよね?
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
前回改定(令和6年度)からの変更点について、当サイトが収録している一次資料の範囲では、区分番号I006-2の新設・廃止や点数の変更を示す情報は確認されていません(確認日: 2026年8月)。区分ごとの算定回数・期間の上限、実施人数・時間の基準についても、大きな変更を示す一次資料は今回見つかりませんでした。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、令和6年度のときと同じ内容と考えていいんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは注意が必要です。「確認できる範囲で変更が見当たらない」ことと「変更がまったくない」ことは、意味が異なります。当サイトが持っている資料は令和8年度時点のものが中心で、令和6年度版との一次資料同士の突き合わせまではできていません。届出や算定回数の要件を実務で使う際は、最新の告示・留意事項通知・施設基準通知の原文で改めて確認してください。
自院で確認する順番

みらい(新人医療事務)
うちのクリニックで確認するとしたら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のステップで確認していくと整理しやすいです。
自院で確認する順番
- 対象患者の有無を確認する: 薬物依存症・ギャンブル依存症・アルコール依存症のいずれかで、入院中ではない外来患者さんが実際にいるかを確認します。
- 実施体制を確認する: 精神科医、または精神科医の指示を受けた看護師・作業療法士・精神保健福祉士・公認心理師で、区分ごとの研修を修了したスタッフを2人以上配置できるかを確認します。
- 施設基準の届出状況を確認する: 該当区分の施設基準に適合し、地方厚生局長等に届出済みかどうかを確認します。未届出であれば、届出の要否を地方厚生局に確認します。
- プログラム内容・実施人数・時間を確認する: 区分ごとに定められた人数上限・実施時間・使用するプログラム(研究班作成のプログラム等)に沿って実施できる体制かを確認します。
- 算定回数・期間の上限を確認する: 治療開始日からの期間・回数の上限を、患者ごとの記録で管理できる体制かを確認します。
よくある取り漏れ・注意点
みらい(新人医療事務)
現場でよく間違えやすいポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まとめておきますね。
取り漏れ・記載漏れになりやすいポイント
区分の取り違え: 薬物依存症(1)・ギャンブル依存症(2)・アルコール依存症(3)で点数と算定回数の上限が異なります。診療録・レセプトへの記載時に区分を取り違えないよう注意してください。 I006(通院集団精神療法)との混同: 名称が似ていますが、対象・施設基準・届出の要否が異なる別区分です。 同一日の他の精神科専門療法の重複算定: 依存症集団療法と同一日に行う他の精神科専門療法は、所定点数に含まれ、別立てでは算定できません。
回数・期間の上限管理を診療録で
薬物依存症(6月・週1回、延長時は2年・計24回)、ギャンブル依存症(3月・2週間に1回)、アルコール依存症(週1回・計10回)と、区分ごとに上限が異なります。治療開始日を診療録に明記し、算定回数を区分ごとに管理する体制が必要です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。対象患者の状況や実施体制、届出状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。